異世界人類を現代知識チートで導け!

相田 彩太

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第三章 ここは彼方の理想郷

その14 これは! 良い事だ!

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 「さて、気を取り直して、作業を続けるぞ。この樟脳を超スゴイお酒で溶かして、この前の燃える布を混ぜてこねる」
 「超スゴイお酒はエタノール、燃える布はニトロセルロースでしたね」
 「そうそう、よく覚えていたな。そうして出来た物を日陰で乾かせば、セルロイドの完成だ!」
 
 俺は板状に延ばしたセルロイドを何層も重ねて言う。
 ちなみに、延ばすための麺棒も教えてやったよ!
 無償にラーメンを食いたくなる時ってあるよね!

 「乾かすって、どれくらいですか?」
 「15日くらいだな」
 「ながっ!」
 
 そして出来たセルロイドは、温めると柔らかくなり、冷やすと固まる性質を持った物体だ。
 人類が最初に創った合成樹脂プラスチック、それがセルロイド。
 この不思議な素材にメーは夢中になった。
 
 「神様! これって、皿にもなるし、棒にもなるし、釣り針にも、アクセサリーにも、何でもなります!」

 メーはすごい石の家の長だけあって賢い。
 セルロイドの可塑性かそせいと、その可能性にもう気づいている。

 「さすがです! 神様!」

 うん、モモ―はもうちょっと語彙を増やそうな。

 ◇◇◇◇◇

 その後、俺はモモ―やメーに色々な事を教えた。
 特に重要だと教え込んだのは度量衡どりょうこう、すなわち、重さや長さといった単位についてだ。
 これには、財布の中にあった1円玉が役に立った。
 1円玉は重量1g、半径1cmである。
 これを基準に重さと長さの単位を教えた。
 容積は水を使って教えた。
 1円玉1000個、すなわち1kgと釣り合う重さの水の容積が1リットルだ。
 アルコールとガラスで温度計も作った。
 水が氷る温度が0℃、沸騰するのが100℃と教えた。
 北のトカゲ人の住んでいた所は、冬は氷点下になるのだ。

 ミニチェアだったが、都市計画に必要な流通技術も教えた。
 都市と都市をつなぐ線路、これは物や人の移動を容易にする。
 そして、コンテナ、規格化されたコンテナは荷物を載せたり、降ろしたりするのに効果的だ。
 その規格に合った木製クレーンや台車を用意する事にも繋がる。
 コークスを用いた高炉による上質な鉄の生産が進めば、これは実現できるだろう。

 さて、左手の数字が7を切った時、俺は最後にやるべき事に取り掛かった。
 ちなみに、右手の数字は、今回は何度も変化した。
 最初はー285だったが、その後ー12に変わり、最後には一気に24186になった。
 なんとなく、右手の数字が意味する所が分かってきたが、まだ確証がないので、俺の胸に秘めておこう。
 最後にやるべきことは、もちろん女神のおっぱい像を作る事だ。
 今回は、新素材! セルロイドで作るよ!
 セルロイドの独特の風合いが美しい!
 ギリギリだったが、何とか最終日に間に合った。

 ◇◇◇◇◇

 さて、別れの夜がやってきた。
 別れは笑顔で、という俺の言い伝えは守られていたらしく、やはり宴が催された。
 俺は、メーと一緒に、こっそりサプライズも用意しておいた。

 「つよいぞ、かみさま! おっぱい! おっぱい!」
 「おれたちの、きゅうせいしゅー! かみさま! おっぱい!」
 「ビールおいしい! かみさま! おっぱい!」
 「やさしい、かみさまー! おっぱい! おっぱい!」

 もはや神殿には入りきらない。
 神殿前に集まった人々、獣人、魚人、トカゲ人を俺は見下ろす。
 俺は今、ピラミッドの頂点に座っている。
 もちろん、いつものバッグと一緒に。
 土嚢どのうのピラミッドだけどね!

 身体の軽い獣人たちが、俺と横に座るモモ―、ヤー、ガルー、パトー、ゲイに食べ物と酒を持ってくる。
 竹紙で包んだ、魚の奉書焼、水牛のステーキ、干し魚と肉のスープで作ったラーメン、ブドウやイチジク、デーツといった果物、そしてお酒。
 最初はデーツしかなかった環境も、今やここまで進化した。
 器も木からプラスチック製に進化している。
 現代人の気分的には器は貧乏っぽくなったが。

 「かみさまー、つよいー! むてきー! みんなをまもる、きゅうせいしゅー! おっぱいまもる、きゅうせいしゅー! やさしく、つよく、かしこいかみさまー! まもれよ、おっぱい! わすれるなブラジャー! かみにささげよー! おっぱい、ささげよー!」

 あいかわらずだが、いい歌だ。
 ナイスおっぱい!

 「神様、わたしのような者にも慈悲を下さりありがとうございます!」
 「お前は愛によって動いたのだ。愛は美しい、そして美しい物はいいものだ」
 「はい! おっぱい!」 

 ヤーが涙を流し、俺に感謝を伝える。

 「神様、がるーの、きゅうせいしゅ、このガルガー、たとええ死んでも、あなたに仕えます」
 「いや、ガルガーや獣人の足の速さが無ければ、今回の戦いには勝てなかった。お前が、がるーの救世主だ」

 ホント、戦争に機動力って重要だよ。
 
 「神様! おいしいものいっぱい知ってる! ラーメンおいしい! ウィスキーたのしみ!」
 「ウィスキーが出来るのは、最低でも3年度だ」
 「3年後って?」
 「1000の昼と夜を繰り返してだ」
 「がーん! でもまつ!」

 魚人のパトーは食べる事で頭がいっぱいだ。
 だが、料理からも科学は進化する。
 事実、すごいお酒用の蒸留装置が十分になかったら、1年間では満足に技術は伝えられなかっただろう。 

 「神様、あなたの偉大な優しさを子々孫々ししそんそんに伝えます」
 「ああ、ヤーと幸せにな」
 「はいっ!」

 母は偉大だ。
 ヤーのどこが良いのかは分からないが、彼女のこころざしは歪んだ物ではなかった。
 であれば、トカゲ人は人類の良き友となれるだろう。

 「神様、モモ―は何も出来ませんでした。ガルガーのような速さも、メーのような賢さもありません。おっぱいも……女神の足元にも及ばないのです」
 「違うぞモモ―、お前は常に俺のそばに居てくれた。それだけでも心が休まるものだ。それにお前は可能性だ、未来への可能性があるおっぱいほど心強い物はない」

 これは事実だ。
 モモ―のおっぱいは、この1年間でAカップからBカップに成長していた。
 そのおっぱいが! いかに! 俺のモチベーションアップにつながったか!
 うむ、よいぞよいぞ。

 「はい! モモ―は、いつまでも、どこまでもお傍にいます!」

 そうか、その気持ちだけでも嬉しいよ。

 さて、そろそろ別れの時間だ。

 「みなよ! この前の戦いは覚えているか!」

 うぉぉぉぉー! という歓声が上がる。

 「だが、あの音と火は、本来の使い方ではない! 本来、あれは、こうやって使うのだ!」

 それが合図だった。
 ヒューという音に続いて、俺の後ろから光がす。
 続いて、ドーンという音が響いた。
 花火だ。

 黒色火薬に銅が混じった鉱石やカルシウムの含まれた貝殻や骨粉を混ぜると、緑やだいだいの炎を上げて爆発する。
 炎色反応というやつだ。
 その他にもリチウム、ナトリウム、ルビジウム、ストロンチウムなど、色は様々だ。
 それっぽい鉱物の粉を混ぜて、紙で包んだ小さい火薬玉を、中央の打ち上げ用の火薬の周囲に配置して、さらに大きい火薬玉、いや花火玉を作る。
 金属の大筒で打ち上げれば、打ち上げ花火の完成だ。
 何で、こんな事を知っているかって!?
 四姉よんねえが『芸術家なら、ウェディングの時にオリジナル花火の100発や200発、打ち上げるのが常識よね』と、俺を挑発したせいだ!

 2回目の戦いが終わってから、俺は悩んでいた。
 銃や火薬を戦いの道具として遺したくない。
 だから、俺はそれを素晴らしく、みなを楽しませる芸術のための物だと教えたかったのだ。
 メーとの秘密の協力の甲斐もあって、何とか数発、完成させる事が出来た。
 
 「これが! 正しい使い方である! みなよ! 忘れるな! 女神を称えよ! 叫べ! おっぱい!」
 「おっぱい! おっぱい!」
 「いっぱい! おっぱい!」
 「もっかい! おっぱい!」

 そして、再び花火の光と音がすると、視界が暗転し、俺は消えた。

 ◇◇◇◇◇

 ハァハァ

 俺はおっぱいに顔をうずめ、ハァハァしている。
 これが、ダンプカーから女子中学生を守るための行動でなければ、俺は犯罪者として通報されていただろう。
 通報されました。

 おまわりさんが来て、ダンプカーのドライブレコーダーを確認すると、俺は簡単な注意を受けただけで、開放された。

 待ち合わせの時間に遅れそうだ。
 事前にメッセージを彼女に送っておいて良かった。
 俺はスマホを確認する。
 彼女から返事が来ていた。

 『ごめん、交通トラブルでちょっと遅れるかもしれない』
 
 『知ってる』

 彼女からはシンプルだが、深いメッセージが届いていた。
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