異世界人類を現代知識チートで導け!

相田 彩太

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最終章 ここから始まる理想郷

その9 俺と勝者なき最終決戦

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 「落ち着いたか」
 「ふん、おかげ様でね」

 食事を取ったドトーは俺の天幕に運ばれてきた。
 
 「ここは、不思議な松明があるのね」

 メルーの頑張りのおかげで、電灯の試作は済み、今は量産計画中だとか。
 そういえば、黄色いタングステンっぽい鉱石も発見したとか。

 「さあ、体を洗って準備はできているわよ。とっととドトーを辱めなさい」
 「そんな事はしないさ」
 「そうです! 神様は、あなたのような、汚泥の匂いをする者に興味をもったりしません!」

 もちろん、この場にはバス―も、メルーも侍女たちも居る。

 「なぜ! 敗者を好きなようにするのが勝者の特権でしょうに!」
 「俺は勝っていないからな」
 
 そう、俺は勝っていない。
 むしろ敗者の側だ。

 「いえいえ、神様は見事に勝利を収めましたよ。ばさーは全て降伏、こっちの被害は極少、これが大勝利でなくてなんでしょうか」
 「勝利とは、相手の心を屈する事だ。ここで俺がこいつを辱めたり、殺したりしたら、こいつは心の中で勝利を確信しながらほくそ笑むだろうな」
 「気づいていたの!?」
 「神が気づかんとでも思ったか?」

 俺はにやりと笑う。

 「うふふ、そうね、そうね、神様がドトーよりバカなはずがないものね」
 「そうだな、だから、ここは俺の負けだよ。いや、最初から負けしかなかったのさ」
 「あのー、神様、バス―にも説明してくれませんか」
 「ああ、そうだな。こいつの目的は最初から、俺たちにばさーの庇護をさせるつもりだったのさ」
 「その通り! なんだ、ばれてたの。正確には最初からじゃなく、最初の戦いで手土産を持たされた時ね」
 
 そうか、そこで方針転換したのか。

 「ドトーたちは最初は本気で勝利するつもりだったわ。あの最初の戦いであたしたちが戻らなければ、第二陣や第三陣が別の町に攻め込むつもりだったし、その覚悟もしていたわ」
 「そうだろう。だが、お前はミスをした。食料を手土産に渡されたとは言わずに、勝利して奪ってきたとばさーたちに伝えたのだろう」
 「だって、そう言わずにはいられないじゃない。相手に情けをかけられて食料を施されて戻ってきたなんて。しかも、その後、定期的に持ってこられたら、ドトーの襲撃に恐れをなしたヒトが貢物を持ってきたと、言ってしまうわよ」
 「ああ! 理解しました。神様はそうやって第二陣と第三陣の侵攻を防いだのですね。勝って、貢物がくるのなら、あえて危険をおかして攻め込む意味がなくなりますから」

 そう、俺は最初の侵攻の時、捕らえたダチョウ人が空腹であった事、そして、ドトーが失敗したら殺すという発言から気づいていた。
 こいつらダチョウ人は、背に腹は代えられぬ状態で攻め込んできていると。
 そして、ここで、こいつらを処分すれば、第二陣が別の町に攻めるかもしれない可能性に。
 戦力が手薄で、俺がいない町に攻めてこられたら、守りきれない。
 行軍速度はダチョウ人が最速なのだ。

 「そう、だからドトーたちは、ここに留まるしかなかった。ここを新天地にしようという意見もあったわ。だけど、それはヒトの恩情である事をドトーは知っていた」
 「だからお前は自分が敗者になる事を選んだのか。脱走するバサーたちが敗者にならないために」
 「あれだけの被害を与え、貢物を受けた以上、だれかが敗者にならないとおさまらないわ。わたしはできるだけ多くの同士がそうならない事を考えただけ」
 「俺は、それに乗った。まあ、目的を達成するという意味では、こいつは勝者なのさ」
 「あなたも最初からそうするつもりだったのでしょう?」
 「そうさ」
 「だったら、あなたも勝者ね」

 ドトーは頭が良い。
 少なくとも、かなりの文明を持っているか、教育を受けなければ、こうはならない。
 こいつの最初の時の態度は演技だったのだろう。
 しかし、ダチョウ人の文明レベルは低い。
 だとしたら、誰かがドトーにだけ教育を施したと考えるのが妥当だ。
 そして、もうひとつ問題がある。
 どうして、ダチョウ人たちは、今までの住処を捨てて、こっちに来たのかだ。
 俺の世界でも似たケースは発生している。
 ゲルマン大移動、古代ローマが滅んだ原因の一つとなったゲルマン民族の侵入だが、それには理由がある。
 フン族がゲルマン民族の領地に侵入してきたからだ。

 「で、ここがお前たちの新天地となるわけだが、旧天地を脅かしたのは何だ」

 ストレートに俺は聞く。

 「そこまでわかっていたの。それは竜族、この世界の支配者よ」

 えっ!? 

 「えっと……、それは大きめのちょろーですか?」
 「あんなのじゃないわ。象より大きな飛翔する存在よ」

 完全にファンタジーじゃないか!
 この世界の揚力はどうなっているんだ!

 「竜族の存在は、バス―も存じています。南の山脈を超えた台地のさらに奥にある火山島に住んでいると。ぎょーたちは、何度か捧げものをしているとも」

 えっ!? 知ってたの?

 「そうか、今のぎょーたちの長を呼んでくれ」
 「はい、明日には来ると思います」

◇◇◇◇◇

 今日は疲れた。
 しかし、ドラゴンが相手になるのか。
 ますますファンタジーっぽくなってきたな。
 ここは、最後の秘密兵器に頼らざるを得ないかもしれない。
 できれば、話し合いで解決したいな。
 明日、魚人の長と会ったら、ドラゴンに会えるようセッティングしてもらおう。

 「どーん! ドトー参上! 神様! 大変! 逃げる!」

 俺の天幕の入り口を突き破って、ドトーが侵入してくる。

 「なんだ! おっぱいに何かあったのか!?」
 「ちがうちがう! 竜族が来る! ドトー分かる!」

 げっ!

 「バス―!」

 俺は隣のバス―の天幕に入る。

 「あっ、あら!? 神様! やっとその気に……」

 あーもう、こいつは思考と本能が直結しているな。

 「みなを避難させよ! ここから逃げるのだ! 竜族とやらが来るぞ!」
 「えっ!? はっ、はい!」

 バス―がみなに指示を出している間に俺は最終兵器を取りに自分の天幕に戻る。
 そして、そいつは来た。
 朝の薄日の中に見えるそのシルエットは、全長10mはあろうかという羽のあるトカゲ。
 ファンタジー世界でおなじみの西洋風ドラゴンだ。
 そして、そいつは地に降り立った。

 「ヒトよ、我はこの世界の支配者、竜族の王子である」

 しゃべったぁぁぁー!
 いや、これくらいじゃ、驚かんな。

 「うむ、人の守護者、神である」

 俺はずずいと前に出て言う。

 「神? 冗談も甚だしい、お前はヒトであろう」

 ばれてるー。

 「神様は神様です! 大いなる叡智でわたしたちを導いてきました。これからもそうです!」
 
 ありがとう! バス―!

 「ふむ、神と言えば女神のみと母から聞いていたが、まあいいだろう。ヒトよ、これからここは我の縄張りだ。
貢物をよこせば、地を這う事は許そう」

 うわー、すごい上から目線。

 「悪いが、ここはヒト、いや俺たちの縄張りだ。ともだちになって一緒に暮らしたいなら止めないがな」

 ここで、従うという手もある。
 だが、このドラゴンは母が居ると言った。
 つまり、個体数が増える。
 その影響でダチョウ人は住処を追われ、さらにここまで進出したのだろう。
 だったら、増えたドラゴンはいずれ人類の住む領域を食いつくす。

 「そうか、なら死ね!」

 
 えっ!? 話し合う余地が全くない!
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