異世界人類を現代知識チートで導け!

相田 彩太

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エピローグ 俺の中の理想郷

あとがきのような、解説のような、参考文献のようなもの(これまでのネタバレあり)

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 最終章(後半) 文明レベル 産業革命~第一次世界大戦(1800年~1930年くらい)

 再び、最終章(後半)の解説です。
 スチームパンク物とか第一次世界大戦物はこのあたりになりますでしょうか。

・グアノ
 鳥の糞が時間を経過して化石化した物です。
 硫酸と混ぜる事で過リン酸石灰となり、化学肥料になります。
 かつて、これを巡って戦争が起きたほどです。
 化学肥料は食料問題に直結するので、歴史の表には出なくても、実は重要です。 

・電信と電波通信
 電信は電気があれば比較的簡単です。
 電磁石を作って、そこに電流を入れたり切ったりすれば、カチカチと音を鳴らす事が出来るので、そこに法則性を決めれば、モールス信号で通信が可能です。
 というか、法則性を普及させたのがモールスさんです。
 電線は銅線をゴムでコーティングすれば大丈夫です。

 電波通信は電磁波を発生させて、それをアンテナで受ける通信手段です。
 電磁波の発生は単純な物であれば、電磁火花を発生させる方法があり。
 作中では、ヘルツ実験装置と同じ手法でそれを実現しています。
 電磁火花が発生できれば、受け取る側でも電流が流れますので、あとは、モールス信号と同じく法則性を付ければ通信可能です。
 
 ちなみに、最も参考にしたのは2016年の夏アニメ『タイムトラベル少女~マリ・ワカと8人の科学者たち』だったりします。

・ヨウ素と消毒液
 ヨウ素は天然ガスと一緒に出る地下水や海藻灰から採れます。
 日本でもヨウ素が多く取れ、輸出出来るくらいの生産量があります。
 昔は海藻灰にヨウ化ナトリウムが含まれているので、それに塩素を加え熱した後、昇華させたヨウ素ガスを冷やして精製していました。
 色が紫色なので分かりやすいです。
 現代ではブローアウト法というヨウ素の含まれた地下水と亜硫酸ガスを使った還元で生産しています。

 ヨウ素のアルコール溶液がヨードチンキで、グリセリン溶液がルゴール液です。
 皮膚の表面にはヨードチンキが、喉の消毒にルゴール液が使われます。
 アルコールの刺激が喉には悪いのでグリセリンに溶かしているのです。

 ヨウ化ナトリウム  塩素    ヨウ素   塩化ナトリウム
 2NaI    + Cl2 → I2  + 2NaCl  

・冷蔵庫
 圧縮と開放、そして気化熱による熱を奪う作用により冷蔵庫は実現出来ます。
 圧縮と開放は圧縮機コンプレッサを使い、細長い楕円を密閉空間で回転させるというロータリー型でを圧縮と開放を実現します。 
 冷媒は作中ではジエチルエーテルを使いました。
 エタノールと硫酸を混ぜて130~140℃にすると抽出できます。
 温度を高めるとポリエチレンの原料となるエチレンが抽出されるのは作中に書いた通りです。
 3章で温度計を開発したので、温度管理が出来るようになりました。

・気球
 18世紀にモンゴルフィエ兄弟が熱気球を作った事が始まりとされています。
 空気より軽い気体を袋に詰めれば完成ですが、選択肢が熱気球か水素気球かヘリウム気球しかありません。
 現代は熱気球とヘリウム気球が主です。
 水素は爆発性があるので、事故が起こりやすく、過去に事故が発生しているので、有人飛行には向かないのです。

 水素は水の電気分解で発生させる事が可能です。
 もしくは、金属(マグネシウムや亜鉛)に塩酸を入れれば水素が発生します。

・機雷と地雷
 ナイチンゲールさん激おこぷんぷん丸な兵器です。
 ナイチンゲールさんは、クリミア戦争の時に看護婦として活躍というか、看護の基礎を築きました。
 この機雷はクリミア戦争の時にロシアが設置し、多数の死者や怪我人をもたらしました。

 構造は比較的単純で、目標が機雷や地雷に触れるとスイッチが押され、雷管に電気が流れて起爆します。
 作中では省略しましたが、浮遊機雷は簡単な一次電池であるマンガン電池を使用した雷管を用いています。

 雷管はダイナマイトの発明家である、アルフレッド・ノーベルが発明しました。
 元々はダイナマイトを安全に起爆させる装置でしたが、ダイナマイトと一緒にやがて戦争に使用される事になります。
 また、クリミア戦争時にはアルフレッド・ノーベルの父もロシアで機雷の製造と生産に関わっています。
 ノーベルが死の商人と言われた所以ゆえんですね。

・タングステン
 作中は嘘800です。
 タングステンワイヤーを作るには、かなりの高度な技術レベルが必要でして、これは第一次世界大戦レベルではなく、第二次世界大戦レベルの技術力が必要になります。

 主な鉱石は灰重石かいじゅうせきで主成分はタングステン酸カルシウム(CaWO4)です。
 これに塩酸を加えてタングステン酸にし、高温高圧で水と反応させて三酸化タングステンを作ります。
 そして三酸化タングステンに炭素か水素で高温還元して、タングステンにします。

 タングステン酸カルシウム  塩酸     塩化カルシウム  タングステン酸
 CaWO4     +   2HCl → CaCl2  + H2WO4

 タングステン酸      水     三酸化タングステン
 H2WO4 (高温) → H2O + WO3

 三酸化タングステン   水素        タングステン  水
 WO3      + 3H2 (高温) → W    + 3H2O

 タングステンワイヤは高い強度を持ち、高温に強く、鋼鉄を遥かに上回ります。
 よく小説や漫画でもタングステンワイヤーを使う糸使いがよく登場していますよね。
 タングステンの融点は金属最高の約3400℃なので、普通の炎(1500℃程度)では全く溶かせません。
 ただ、700℃程度で表面が酸化タングステンになってしまい、引っ張り強度は落ちてしまいます。
 ここら辺も嘘800ですね。
 作品のインパクト重視って事でご容赦下さい。

 炭化タングステン(WC)は炭素とタングステンを混ぜて1500~2000℃で熱すると生成されます。
 超硬合金として知られ、鋼鉄の約2倍の強度を持ち、旋盤のフライスといった切削工具に使われています。
 硬すぎて刀として加工するのは難しいです。
 ダイアモンドの粉で砥がないといけないのです。
 また、割れ、欠けが起きやすいので鋼との合金にしないと作中のような使い方は難しいでしょう。
 ここらへんも創作が混じっていますね。

 参考文献
 日本鉱業会誌/97 1122  日本新金属(株)の タングステン,モリブデ ン精錬 森本 滋

 参考URL
 日本タングステン株式会社
 <ttps://www.nittan.co.jp/tech/all/detail05.html> アクセス日:2017/9/18

・アセチレン
 現代でもバーナーの燃料として使われています。
 純粋酸素と混ぜて燃焼させる事で3000℃を超す温度になります。
 それでもタングステンの融点3400℃には届きません。

 アセチレンは酸化カルシウム(生石灰)と炭素(コークス)を2000℃以上の高温で反応させるカーバイド法で作ります。
 2000℃は高炉ではギリギリで作れるくらいです。
 大型発電施設があれば、電気炉を用いて作れます。

 酸化カルシウム  炭素   炭化カルシウム  一酸化炭素
 CaO   +  3C → CaC2   + CO  ※要高温

 炭化カルシウム  水    アセチレン  水酸化カルシウム
 CaC2  +  H2O →C2H2 + Ca(OH)2

 ドラゴンは鉄をも溶かす炎を吐くというファンタジー設定がありますが、現実的に考えるとアセチレンを体内で生成して吐いているのではないかと考えて、本作の設定にしました。
 石灰石や石炭を食べて、電気ウナギのように体内電気で生成しているのではないかなーと。
 うーん、ファンタジー。

 また、銅や銀と反応してアセチリドを生成します。
 銅アセチリドや銀アセチリドは爆発性がありますので、アセチレン炎で銀製品や銅製品を切るのはNGです。
 ドラゴンの炎を浴びた銅像が後に大爆発を起こすと考えるとファンタジー映画っぽいですよね。
 十分に爆発させるには炎ではなく、アセチレンそのものを浴びせる必要がありますが。
 毒霧を吐くドラゴン……これもファンタジーだよね。 

・かすみ網
 細かったり、ポリエチレンのような半透明の糸で作った網です。
 野鳥の捕獲に使われていましたが、捕ってはいけない絶滅危惧な鳥まで捕れてしまうので、今は禁止されています。
 ドラゴンに効くかと言われると、真偽は不明ですが、網はその伸縮性と一本の線が切れてもまとわり付くので、翼を封じるには活用できるのではないかなーと。
 
・鏡
 太古の鏡は青銅鏡の金属鏡です。
 現代の鏡の出現は14世紀以降のヨーロッパで錫メッキの鏡になります。
 これは作るのに時間と手間が掛かり、一部の貴族の物でした。
 銀鏡反応を用いた現代の鏡が出来るのは19世紀です。
 以降、庶民にも鏡が広まって行きます。
 それまでは、鏡は一般的には金属鏡でした。
 日本も明治以降にガラスの鏡になります。

・銀鏡反応
 銀を硝酸に溶かした硝酸銀にアンモニアを入れると酸化銀(Ⅰ)の沈殿が発生します。
 硝酸アンモニウムは水にとても良く溶けるのと、この先の反応に影響しないので無視してかまいません。
 ちなみに、硝酸アンモニウムは肥料になります。

 硝酸銀    アンモニア   水     酸化銀(Ⅰ)   硝酸アンモニウム    水
 2AgNO3 + NH3   + H2O → Ag2O   + 2NH4NO3   + H2O

 
 酸化銀に、さらにアンモニアを加えると銀アンモニア錯イオンを生じて、沈殿が消えます。

 酸化銀(Ⅰ) アンモニア   水    銀アンモニア錯イオン   水酸化物イオン
 Ag2O   +  4NH3   +  H2O  →  2[Ag(NH3)2]+   +   2OH-
 

 そこに還元性のあるアセトアルデヒドを加えて温めると、銀が析出します。
 この時、ガラス面に張り付いて鏡になります。
 アセトアルデヒドでなくても、アルデヒド基を持つ物質(ブドウ糖とか)ならば代用可能です。
 

 アセトアルデヒド          銀アンモニア錯イオン   水酸化物イオン   酢酸       銀     アンモニア  水
 CH3-CHO     +   2[Ag(NH3)2]+   +  2OH-     →  CH3COOH  +  2Ag  +  4NH3  +  H2O


 簡単に書きましたが、その前提となる物が必要です。
 銀と硝酸とアンモニアは以前にも説明しましたが、アセトアルデヒドってどうやって作るの? という所です。

 アセトアルデヒドは工業的にはエチレンに塩化バナジウムと塩化銅を触媒としたワッカー酸化で工業的には生成するのですが、エチレンは石油からでないと大量に取れません。
 なので、作中では実験室的にエタノールに酸化銅を反応させてアセトアルデヒドを作りました。
 火で炙って赤熱した銅を温めたエタノールに入れて作ります。

 エタノール      酸化銅     アセトアルデヒド   銅    水
 CH3CH2OH + CuO  →  CH3-CHO  + Cu + H2O

・板ガラス
 さらにさらに、等身大の板ガラスも必要になります。
 吹き込み法の底を使う方法では綺麗な平面にならず、さらに大きさも不十分です。
 手鏡程度の大きさにしかなりません。

 なので、作中では1851年のロンドン万国博覧会のクリスタルパレスでも使われた円筒法という板ガラスを作る方法で、板ガラスを作りました。

 円筒法は吹き込み法の応用です。
 筒に溶けたガラスを付け、左右に振って長い円筒を作ります。
 その上下を切って、さらに縦に切れ目を入れて、炉で熱しながら円筒を平らにならして作ります。
 ペットボトルの側面を広げて作るような形ですね。
 これで等身大サイズの板ガラスが作れるようになりました。
 
 参考文献
 国立科学博物館
 技術の系統化調査報告 第9集 2007
 板ガラス製造技術発展の系統化調査 森 哲

・銀板写真
 発明者のルイ・ジャック・マンデ・ダゲールの名前から別名ダゲレオタイプとも言います。
 19世紀後半に大流行した写真です。

 銀鏡反応や電気メッキで銅板に銀メッキをします。
 そこに、ヨウ素蒸気を浴びせて、ヨウ化銀の膜を生成します。
 ヨウ化銀は光に当てると微量な銀を生成します。
 レンズと箱を組み合わせて、古いカメラの形を作り、銀板を感光させて写真を撮ります。
 暗室でそれに水銀蒸気を当てると水銀アマルガム(水銀と銀の合金)を生成します。
 それを高温飽和食塩水で洗えば、定着して銀板写真の完成です。
 この水銀アマルガム白色なので、目に映った通りの写真になります。(左右は反転します)

 初期型では撮影に10分~20分の時間が掛かり、被写体はその間、動けません。
 後に臭素を加えて数十秒に短縮する技術が出来ます。
 日本にも明治時代の写真が数多く残っています。
 欠点は1つの板で1枚の写真しか出来ない事です。

 デジタルカメラしか扱った事しかない10代の方々には分かり難いかもしれません。
 昭和~平成初期のフィルムカメラは白黒が反転したネガを使って、さらにそれを白黒逆転させて写真にしていました。
 フィルムカメラはネガがあれば、増産(焼き増し)が可能ですので、銀板写真は20世紀ではすたれていきました。
 現代では芸術の分野にわずかに残っているだけです。
 ですが、その解像度はフィルムカメラより高く、芸術性という意味では優れています。


 
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