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エピローグ 俺の中の理想郷
その1 この手の中の理想郷
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ギリギリだった。
ワゴン車の天板と、俺とアラサーOLとの間にはわずかな隙間しかなかった。
俺のバッグも手元にある。
俺は戻ってきたのだ。
◇◇◇◇
その後、おまわりさんの制止を振り切って、俺は約束の場所へと急ぐ。
駅前のファミレスが約束の場所だ。
「はぁはぁ、ごめん! 遅くなった!」
約束の時間からは30分遅れていた。
「いいのよ。それに謝るのはこっちの方だから」
彼女は、芽ヶ野 瞳は、すっかり冷めてしまったコーヒーを口に含んだ。
「やっぱりな。全て瞳さんの掌の上だったって事か」
俺は理解した。
彼女が俺を異世界に送り込んだ張本人だ。
いや、留守中のあの世界の女神だ。
「いつごろから、気づいたの?」
「2回目の転移の時にシリーが『これ、めがみ! しりーしってる! めがみ!』と言った時から薄々とな」
「ああ、あの子」
「俺が遺した女神のイメージはルーの時代からシリーの時代の間の拙い芸術、いや技術では満足に伝わっていないはずだ。なのに、シリーは一発で女神の像と分かった。とすれば、別の方法で女神の姿を見たと考えるのが妥当だからな」
「正解よ、あたしは代々の巫女に神託を伝えていたわ。あなたが会っていない巫女たちにもね」
それで知っていたのか。
「君には聞きたい事がいっぱいある」
「うん、わかってる」
「だが、その前に……」
俺はバッグの中から彼女の像を取り出す。
注文を取りに来た店員さんの表情が固まったが気にしない。
「これは、君をイメージして作った俺の気持ちだ! どうか受け取ってくれ!」
「あ、ありがとう……嬉しいわ」
よかった! この時点で逃げ出されてもおかしくなかったからな。
「ふぅ、とりあえず今日の一番の目的は果たせたかな」
それでは、次の目的だ。
「ずっと、君のおっぱいが好きだった! 俺と付き合ってくれ!」
言えた! 俺にとっては、4年と1日ぶりだったが、俺の気持ちは変わっていない!
店員さんが、天地返しでもくらったようにずっこけてたが、気にしない。
彼女のCカップこそ、俺の理想の中の極上おっぱい!
そして、その気持ちを素直に伝えた時、彼女がそれを受け入れてくれれば、俺の人生は幸せになる!
母さんが言っていた『大切な気持ちを素直に伝えて、それを受け入れてくれる人こそが運命の人よ!』と。
「ごめんなさい、それはできないわ」
ですよねー、ですよね~、ですよね……。
「そうか、それは残念だ」
本当に残念だ。
しばらくは芸術に生きよう。
くすん。
「その代わり、聞きたい事には何でも誠実に答えるわ」
「うん、まあ……」
聞きたい事はいっぱい、おっぱいあるが、いや、思考回路がまとまらないな。
あの世界では、自分でも『俺ってこんなに冴えてたっけ』てくらい頭も体も調子が良かったのに。
そうだ!
「手から人類光線!」
ビームは出なかった。
隣の席の人が俺を可哀想な人を見るような目をして会計に進んだ。
言っておくが、ホモの意味はホモサピエンスのホモだからな!
声にして言わないけど。
「ビームでないな」
「そりゃそうよ、ここは地球人類がいっぱいだもの」
事情を知ってそうな口調で彼女が言う。
いや、知っているのだろう。
「そこだ、その理由が知りたい。どうして、あの時、俺はチート能力を発動できたんだ?」
「理由は簡単よ、あなたが、あなたたちがチートだからよ」
「へ? 俺だけじゃない」
「そう、あなたたちの創造主が”偉大なる父”なのは知っているわね」
「あれって、神話の話だろ?」
「いいえ、真実よ。地球人類はこの世界、広さすら観測できない大宇宙を創った偉大なる父の創造物よ」
「うーん、スケールが大きすぎて理解出来ないな」
これは、宗教の話か? SFなのか? それともファンタジーの話なのか?
「難しく考えなくていいわ。地球人類は、偉大なる父がその姿を模して創った。それも、たっぷりの愛情を注いで、数多の潜在能力を込めて」
「その潜在能力ってのは?」
「何かのきっかけで『覚醒』する様々な超常能力よ」
「それって『即死耐性』とか『神への叛逆』とか『神殺し』とか?」
俺はさっきの戦いで九官鳥が叫んだスキルを声にする。
「そう、ピンチや意志によりスキルを身に着けるのが『覚醒』、地球人類が覚醒出来る潜在能力は、さっき貴方が言っただけじゃないわ。『超常耐性』『神速移動』『高速演算』『絶対記憶』『弱点看破』『協力強力』『無明光線』『死後復活』『愛の奇跡』などなど、おおよそ神話と創作に出てくる能力は全て使える潜在能力があると思っていいわ。チートね!」
「でも、そんな超常能力は俺も、地球人類も使えないぜ。ほら」
俺は手を銃の形にして、バンと打つポーズを取る。
無論、何も起こらない。
彼女のハートを撃ち抜こうと思ったのだが。
「そうね。ここでは何も起こらない。でも、それには理由があるの」
「理由って?」
「もし、あなたが様々なスキルに覚醒出来るとして、同じように覚醒出来る地球人類と戦ったらどうなると思う?」
「そりゃ、『絶対死ぬビーム!』、『絶対死なないバリアー!』、『絶対バリア破壊光線!』、『無敵回避ダーッシュ!』 となって、平和になるな。そこの公園で子供がきっとやってるよ」
そうだ、もし、そんな何でも出来るスキルに覚醒出来るとしたら、後だしジャンケンになり、決着が着かない。
「だから、あなたたちには『覚醒封じ』の潜在能力も持ってるの。その他にも『スキル抑制』とかね」
「ああ、弱体化か」
「そう、潜在能力は覚醒してなくても、その百分の一くらいは無意識に発動しているの。『怪力』の潜在能力を持つ人が細身の割に力持ちなくらいにはね」
そういう事か。
「わかったよ。この地球には約60億人の人類が居る。その60億の『覚醒封じ』と『スキル抑制』が俺の、この世界みんなの超常に弱体化を掛けているんだな」
「理解が早くて助かるわ。だから、地球人類の人口が少なかった神話や太古の時代には、今の常識で考えられない英雄が出現した。もし、地球人類が居ない世界に行ったら、抑制されない潜在能力は覚醒し放題ってわけ。やっぱりチートだわ」
「あれ? それじゃあ、バス―達のような、あっちの人類は、俺たちと違うのか?」
「ええ、こんな全部載せチート地球人類は販売されていないわ。わたしたちのような未熟な神は、世界を創る時に、その素材を買ってくるの、植物とか動物とか知的生物とか。マイルド人類は人気素材よ」
「ふーん、ジオラマみたいな物なんだな」
「ええ、わたしは簡単初心者キット『地球古代モデル』を買って、それをベースにマイルド人類とか獣人とか魚人とかドラゴンとかも買って、わたしの世界に配置したの」
「なるほど、だから植生や動物環境、微生物までもが地球に酷似していたのか」
「しかし、マイルド人類って、どれくらいマイルドなの?」
あっちの世界の人類は、少し閃きに欠ける所はあったが、それは歴史が足りないだけで、同じように思える。
「あなたたちとは雲泥の差よ。ステータスで言うと2億倍くらい違うわ。わたしも貴方を4年レンタルするだけで、この世界で何十年ものバイト代がすっかりオケラよ」
空っぽになった財布を振る仕草で彼女は答えた。
うむ、彼女の言動が少し昭和な気がしていたが、それは彼女が女神で、この世界で長年、芽ヶ野 瞳としてバイトしていたからなのか。
「そんなに!?」
「ええ、それに扱い難いわ。気を抜くと『神殺し』とか『神格化』とかで、世界を乗っ取られちゃう可能性も高いわね」
うーんチートだ。
「えっ!? じゃあ、俺が望めば、あんな手間の掛かる真似をしなくても良かったんじゃ……」
俺は苦労して、文明と文化を授けて、おっぱい! を素晴らしく育てた。
だけど、それって、超常の力で難なくできたんじゃね?
「ええ、あなたが望めば、一気に世界の支配者になったり、おっぱいを好きなように改造ったり出来たと思うわ。でも、それを貴方はしなかった。どうして?」
「どうしてって、努力で叶う物を超常の力で何とかしようと思わなかったからな」
「そうね、そこがあなたたちの良い所ね。困難に直面した時、『神様! お助け下さい!』じゃなく、『この程度の試練、神様の手を煩わせるまでもありません』と立ち向かうのが、地球人類よね」
「そうだなぁ『神がやらねば俺がやる!』とか、『神が居るのなら俺を止めてみせろ!』とか、『物理の数式には神が宿っているとしか思えない!』とか、けっこう前向きで、好戦的で、挑戦的だよね」
「しかし、なんで”私の父なる神”は地球人類にヤバそうな潜在能力を授けたのだろうな? 『神への叛逆』とか『神殺し』とか『禁断欲情』とかは最初から与えなければ良いのに」
「さあ? 偉大なる父がそう望まれたのじゃない?」
◇◇◇
「で、君の目的は?」
「神なら誰しも同じよ」
「君を信仰する生物を増やす事か?」
「違うわ。ヒントはあなたの右手の数字よ」
俺の右手の数字は、今は消えてしまっているが、最後には100万近くに増えていたはずだ。
俺は、俺の右手の数字は、女神の信者の数だと思っていたが、彼女の言葉からは、そうではないと感じられる。
俺はしばし考える……
「ああ!」
俺は手をポンと叩いた。
ヒントはあった。
あのポンコツ女神が言っていた『展示するから』という台詞だ。
「わかったよ。あれだ、SNSの”いいね”と”だめだね”ボタンみたいなものだ」
「あら、流石ね。魂内に知恵の実が入っているだけの事はあるわ」
うーん、そうだったとは。
「神はね、世界を買ったり、創ったりして、他の神様に自慢するの。それを見て、他の神は”すてき!”と”ダメじゃん!”の投票をして、その差が右手の数字だったってわけ」
「悪趣味だな」
「そうね。でも、あなたたち地球人類の芸術祭やペットのコンテストみたいな物よ」
そう言われると、ぐうの音も出ない。
扱っているのが違うだけで、本質は同じだからだ。
「自分の創造物から信仰を集めるのは簡単よ。そういう風に創ればいいのだから」
「あたし理科ちゃん! あなたがだいすき! とおもちゃの人形に言わせるようなものか」
「そう、それじゃ”すてき!”は集まらないわ。その点、あなたは最高だったわ! あんなに”すてき!”が集まったのだから」
俺の前にアイスティーがやってきた。
俺は無言でそれを飲む。
「怒ってる?」
「少しな。俺はテコ入れのピエロって分かったからな」
「ごめんなさい。あなたにお詫びかお礼をしたいのだけど、今はこれくらいしか出来ないの」
そう言って、彼女は俺の両手握った。
そして、それを自身の胸に押し付けた。
むにょん、むにょん。
おお! これはこれは!?
柔らかい! 夢にまで見たおっぱいが、今、俺の手の中にある!
その時だった。
窓の外からアクセルとブレーキを踏み間違えたと思われる老人の軽自動車が突っ込んで来たのは。
女神のおっぱいを揉んでいる時に、空気の読めない軽自動車が突っ込んできたなら、おっぱいを愛する者の取るべき行動は、いかようにあるか!?
考えるまでもない、彼女をかばいつつ、車にドロップキックだ!
俺は彼女の胸からベルトに手を移すと、上半身で彼女を車の反対方向に動かしながら、下半身で車にドロップキックを放つ。
ベキッ!
足が折れた。
今度は意識は暗転しなかった。
激しい痛みと、混乱する店員の声、そして救急車のサイレンが聞こえた。
ワゴン車の天板と、俺とアラサーOLとの間にはわずかな隙間しかなかった。
俺のバッグも手元にある。
俺は戻ってきたのだ。
◇◇◇◇
その後、おまわりさんの制止を振り切って、俺は約束の場所へと急ぐ。
駅前のファミレスが約束の場所だ。
「はぁはぁ、ごめん! 遅くなった!」
約束の時間からは30分遅れていた。
「いいのよ。それに謝るのはこっちの方だから」
彼女は、芽ヶ野 瞳は、すっかり冷めてしまったコーヒーを口に含んだ。
「やっぱりな。全て瞳さんの掌の上だったって事か」
俺は理解した。
彼女が俺を異世界に送り込んだ張本人だ。
いや、留守中のあの世界の女神だ。
「いつごろから、気づいたの?」
「2回目の転移の時にシリーが『これ、めがみ! しりーしってる! めがみ!』と言った時から薄々とな」
「ああ、あの子」
「俺が遺した女神のイメージはルーの時代からシリーの時代の間の拙い芸術、いや技術では満足に伝わっていないはずだ。なのに、シリーは一発で女神の像と分かった。とすれば、別の方法で女神の姿を見たと考えるのが妥当だからな」
「正解よ、あたしは代々の巫女に神託を伝えていたわ。あなたが会っていない巫女たちにもね」
それで知っていたのか。
「君には聞きたい事がいっぱいある」
「うん、わかってる」
「だが、その前に……」
俺はバッグの中から彼女の像を取り出す。
注文を取りに来た店員さんの表情が固まったが気にしない。
「これは、君をイメージして作った俺の気持ちだ! どうか受け取ってくれ!」
「あ、ありがとう……嬉しいわ」
よかった! この時点で逃げ出されてもおかしくなかったからな。
「ふぅ、とりあえず今日の一番の目的は果たせたかな」
それでは、次の目的だ。
「ずっと、君のおっぱいが好きだった! 俺と付き合ってくれ!」
言えた! 俺にとっては、4年と1日ぶりだったが、俺の気持ちは変わっていない!
店員さんが、天地返しでもくらったようにずっこけてたが、気にしない。
彼女のCカップこそ、俺の理想の中の極上おっぱい!
そして、その気持ちを素直に伝えた時、彼女がそれを受け入れてくれれば、俺の人生は幸せになる!
母さんが言っていた『大切な気持ちを素直に伝えて、それを受け入れてくれる人こそが運命の人よ!』と。
「ごめんなさい、それはできないわ」
ですよねー、ですよね~、ですよね……。
「そうか、それは残念だ」
本当に残念だ。
しばらくは芸術に生きよう。
くすん。
「その代わり、聞きたい事には何でも誠実に答えるわ」
「うん、まあ……」
聞きたい事はいっぱい、おっぱいあるが、いや、思考回路がまとまらないな。
あの世界では、自分でも『俺ってこんなに冴えてたっけ』てくらい頭も体も調子が良かったのに。
そうだ!
「手から人類光線!」
ビームは出なかった。
隣の席の人が俺を可哀想な人を見るような目をして会計に進んだ。
言っておくが、ホモの意味はホモサピエンスのホモだからな!
声にして言わないけど。
「ビームでないな」
「そりゃそうよ、ここは地球人類がいっぱいだもの」
事情を知ってそうな口調で彼女が言う。
いや、知っているのだろう。
「そこだ、その理由が知りたい。どうして、あの時、俺はチート能力を発動できたんだ?」
「理由は簡単よ、あなたが、あなたたちがチートだからよ」
「へ? 俺だけじゃない」
「そう、あなたたちの創造主が”偉大なる父”なのは知っているわね」
「あれって、神話の話だろ?」
「いいえ、真実よ。地球人類はこの世界、広さすら観測できない大宇宙を創った偉大なる父の創造物よ」
「うーん、スケールが大きすぎて理解出来ないな」
これは、宗教の話か? SFなのか? それともファンタジーの話なのか?
「難しく考えなくていいわ。地球人類は、偉大なる父がその姿を模して創った。それも、たっぷりの愛情を注いで、数多の潜在能力を込めて」
「その潜在能力ってのは?」
「何かのきっかけで『覚醒』する様々な超常能力よ」
「それって『即死耐性』とか『神への叛逆』とか『神殺し』とか?」
俺はさっきの戦いで九官鳥が叫んだスキルを声にする。
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「でも、そんな超常能力は俺も、地球人類も使えないぜ。ほら」
俺は手を銃の形にして、バンと打つポーズを取る。
無論、何も起こらない。
彼女のハートを撃ち抜こうと思ったのだが。
「そうね。ここでは何も起こらない。でも、それには理由があるの」
「理由って?」
「もし、あなたが様々なスキルに覚醒出来るとして、同じように覚醒出来る地球人類と戦ったらどうなると思う?」
「そりゃ、『絶対死ぬビーム!』、『絶対死なないバリアー!』、『絶対バリア破壊光線!』、『無敵回避ダーッシュ!』 となって、平和になるな。そこの公園で子供がきっとやってるよ」
そうだ、もし、そんな何でも出来るスキルに覚醒出来るとしたら、後だしジャンケンになり、決着が着かない。
「だから、あなたたちには『覚醒封じ』の潜在能力も持ってるの。その他にも『スキル抑制』とかね」
「ああ、弱体化か」
「そう、潜在能力は覚醒してなくても、その百分の一くらいは無意識に発動しているの。『怪力』の潜在能力を持つ人が細身の割に力持ちなくらいにはね」
そういう事か。
「わかったよ。この地球には約60億人の人類が居る。その60億の『覚醒封じ』と『スキル抑制』が俺の、この世界みんなの超常に弱体化を掛けているんだな」
「理解が早くて助かるわ。だから、地球人類の人口が少なかった神話や太古の時代には、今の常識で考えられない英雄が出現した。もし、地球人類が居ない世界に行ったら、抑制されない潜在能力は覚醒し放題ってわけ。やっぱりチートだわ」
「あれ? それじゃあ、バス―達のような、あっちの人類は、俺たちと違うのか?」
「ええ、こんな全部載せチート地球人類は販売されていないわ。わたしたちのような未熟な神は、世界を創る時に、その素材を買ってくるの、植物とか動物とか知的生物とか。マイルド人類は人気素材よ」
「ふーん、ジオラマみたいな物なんだな」
「ええ、わたしは簡単初心者キット『地球古代モデル』を買って、それをベースにマイルド人類とか獣人とか魚人とかドラゴンとかも買って、わたしの世界に配置したの」
「なるほど、だから植生や動物環境、微生物までもが地球に酷似していたのか」
「しかし、マイルド人類って、どれくらいマイルドなの?」
あっちの世界の人類は、少し閃きに欠ける所はあったが、それは歴史が足りないだけで、同じように思える。
「あなたたちとは雲泥の差よ。ステータスで言うと2億倍くらい違うわ。わたしも貴方を4年レンタルするだけで、この世界で何十年ものバイト代がすっかりオケラよ」
空っぽになった財布を振る仕草で彼女は答えた。
うむ、彼女の言動が少し昭和な気がしていたが、それは彼女が女神で、この世界で長年、芽ヶ野 瞳としてバイトしていたからなのか。
「そんなに!?」
「ええ、それに扱い難いわ。気を抜くと『神殺し』とか『神格化』とかで、世界を乗っ取られちゃう可能性も高いわね」
うーんチートだ。
「えっ!? じゃあ、俺が望めば、あんな手間の掛かる真似をしなくても良かったんじゃ……」
俺は苦労して、文明と文化を授けて、おっぱい! を素晴らしく育てた。
だけど、それって、超常の力で難なくできたんじゃね?
「ええ、あなたが望めば、一気に世界の支配者になったり、おっぱいを好きなように改造ったり出来たと思うわ。でも、それを貴方はしなかった。どうして?」
「どうしてって、努力で叶う物を超常の力で何とかしようと思わなかったからな」
「そうね、そこがあなたたちの良い所ね。困難に直面した時、『神様! お助け下さい!』じゃなく、『この程度の試練、神様の手を煩わせるまでもありません』と立ち向かうのが、地球人類よね」
「そうだなぁ『神がやらねば俺がやる!』とか、『神が居るのなら俺を止めてみせろ!』とか、『物理の数式には神が宿っているとしか思えない!』とか、けっこう前向きで、好戦的で、挑戦的だよね」
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◇◇◇
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「君を信仰する生物を増やす事か?」
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「ああ!」
俺は手をポンと叩いた。
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うーん、そうだったとは。
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「悪趣味だな」
「そうね。でも、あなたたち地球人類の芸術祭やペットのコンテストみたいな物よ」
そう言われると、ぐうの音も出ない。
扱っているのが違うだけで、本質は同じだからだ。
「自分の創造物から信仰を集めるのは簡単よ。そういう風に創ればいいのだから」
「あたし理科ちゃん! あなたがだいすき! とおもちゃの人形に言わせるようなものか」
「そう、それじゃ”すてき!”は集まらないわ。その点、あなたは最高だったわ! あんなに”すてき!”が集まったのだから」
俺の前にアイスティーがやってきた。
俺は無言でそれを飲む。
「怒ってる?」
「少しな。俺はテコ入れのピエロって分かったからな」
「ごめんなさい。あなたにお詫びかお礼をしたいのだけど、今はこれくらいしか出来ないの」
そう言って、彼女は俺の両手握った。
そして、それを自身の胸に押し付けた。
むにょん、むにょん。
おお! これはこれは!?
柔らかい! 夢にまで見たおっぱいが、今、俺の手の中にある!
その時だった。
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女神のおっぱいを揉んでいる時に、空気の読めない軽自動車が突っ込んできたなら、おっぱいを愛する者の取るべき行動は、いかようにあるか!?
考えるまでもない、彼女をかばいつつ、車にドロップキックだ!
俺は彼女の胸からベルトに手を移すと、上半身で彼女を車の反対方向に動かしながら、下半身で車にドロップキックを放つ。
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