13 / 120
第一章 大会前
その3 女の戦い
しおりを挟む「こんなのにどうやって勝つのぉ~?」
蘭子が俺たちの心の声を音にした。
「まずは冷静に分析してからね。映像をもう一度見ながら解説するわ」
部長がチャプターを戻しながら言う。
「俺も意見を所々で挟まさせてもらうぜ」
「いいわよ。陸と私の認識の違いも確認しておきたいわ」
画面に3人の男性が映し出される。
「彼らは寿司屋割烹『魚鱗鮨』の料理人よ。『ギョギョギョ』の愛称で親しまれているわ。星もひとつ持っている世界的な評価の高い店ね」
「寿司屋って事は寿司の腕前が高いって事だな」
「りっくん、当たり前だよ~、お寿司屋さんなんだもの」
「そうね、高いと思われるわ。いえ、店の評価を見ると、確実に高いわ」
「そこが、彼らの恐ろしい所だな。誰にも負けない『料理』を持っている。これは強い」
「そうね。じゃあ、蘭子ちゃん、あなたが戦うとして、先攻を取ったら『料理』『食材』『テーマ』のどれを選ぶ?」
「もっちろん『料理』だよ! 相手に『料理』を取られて、寿司を指定されたら、敵わないもん」
蘭子よ、それではきっとお前は負ける。
俺だったら、選ぶとしたなら……
「陸は?」
「『食材』だな」
俺は答える。
「さっきのビデオを見れば明らかでしょ、ああなったら俺は勝てません。ちなみに部長は?」
「私は『テーマ』よ」
そうきたか! 確かにそれもありだな。
「みんなバラバラだね~、でもホントにお寿司であの人たちに勝てるの? 特になでちゃんは満足に魚を捌けもしないのに」
「くっ……」
部長が痛い所を突かれている。
「それでも『食材』を指定されるよりましよ。蘭子ちゃんこそ、あんな魚を捌く事ができるって言うの?」
「鮟鱇なら捌けるよ~、吊るし切り出来るよ~」
「そうそう、俺っちが冬に1,2回は鮟鱇を持ってくるで。お嬢ちゃんは七つ道具もばっちりさね」
ブビュ!
俺と部長が吹いた。
「そ、そ、そう。女子高生の割には経験値高いわね」
「えへへ~、あたし経験は多いんだ~」
うん、そこだけ聞くと仄かにエロくて良いぞ。
「それでも、私は蘭子ちゃんが勝てるとは思わないわ」
俺も部長と同意見だ。
あいつらはきっと寿司には必殺料理と言える料理を用意している。
確証はないが、俺の勘がひしひしとそれを告げている。
「えー、じゃあ勝負しましょ! あたしとなでちゃんで!」
話が意外な展開に跳んだ。
「わかったわ。三日後の定休日に勝負しましょう。あたしから少しハンデをあげるわ」
「またハンデ~、今度はあたしに~、なでちゃん、それはちょっと調子に乗りすぎじゃない」
「その代わり、蘭子が負けたら……」
「いいよ~、何でも言う事聞くよ~」
男どもの目がカッと見開かれる。
もちろん俺も。
今、何でもって言ったよね、という心の声も同じだ。
「そんな事はしないわ。ただ、私が勝ったら大会期間中の指示や方針はあたしに従ってもらうわ。陸にもね」
「いいよ~」
蘭さん、俺を巻き込むんじゃない。
「よろしい、陸は本気で取り組む事だし、私に逆らう事はできないわ。いいわよね!」
部長が俺に顔を近づけて言う。
「えっ、えーと」
「いいわね!」
「……はい」
蘭子がんばれ、超がんがれ。
「で、ハンデって何~?」
「お題は今決めましょ、考える時間をあげるわ。ご家族と相談してもいいわよ」
蘭子の頭は悪くない。
だが、部長に比べると劣るのは確かだ。
時間を与えられるのはありがたいだろう。
「それに、審査員はそこの魚吉さんとお友達に頼みたいわ。よろしい?」
「まかせとけ!」
魚吉さんとその仲間が力強く胸を叩いた。
「よし、じゃあお題を決めるわよ。蘭子さん『先攻か後攻か好きな方を選びたまえ』」
やっぱそうくるか。
ロールプレイってやつだな。
「じゃあ『料理』を選ぶよ~」
「それでは、私は『テーマ』を選びますわ」
そして二人は紙にお題を書き始める。
「はい、りっくん」
「ん、陸」
二人に差し出された紙を開き俺は読み上げる。
「決まったー! 二つのお題は『料理:和菓子』『テーマ:アメリカン』だー! 和と米! 二律背反するようで同盟をも結びそうなこの二つのお題に、大和撫子とカントリーガールはどのような戦いを見せるのだろうか! チャンネルは三日間そのままにしておいてくれ!」
俺も俺でノリノリだな。
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
【完結】元Sランク受付嬢の、路地裏ひとり酒とまかない飯
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ギルド受付嬢の佐倉レナ、外見はちょっと美人。仕事ぶりは真面目でテキパキ。そんなどこにでもいる女性。
でも実はその正体、数年前まで“災厄クラス”とまで噂された元Sランク冒険者。
今は戦わない。名乗らない。ひっそり事務仕事に徹してる。
なぜって、もう十分なんです。命がけで世界を救った報酬は、“おひとりさま晩酌”の幸福。
今日も定時で仕事を終え、路地裏の飯処〈モンス飯亭〉へ直行。
絶品まかないメシとよく冷えた一杯で、心と体をリセットする時間。
それが、いまのレナの“最強スタイル”。
誰にも気を使わない、誰も邪魔しない。
そんなおひとりさまグルメライフ、ここに開幕。
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる