超絶! 悶絶! 料理バトル!

相田 彩太

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第一章 大会前

その4 和菓子 & アメリカン

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 「で、なんで会長がここにいるのです?」

 3日後、部長と蘭子の対決が行われる場に、その闖入者ちんにゅうしゃはいた。

 「私は忙しいのよ。夏休みの体験入学の準備で」
 「じゃあ、生徒会室で執務をればいいじゃないですか」
 「生徒会長たるもの、部活の現状把握も立派な仕事のうちです。来年の新入生へのアピールになります」

 その部活を潰そうとしているのは、どこのどいつだよ。

 「じゃあ、料理審査もされますか?」
 「ぜ! ぜんぜん暇じゃないけど、お願いされたらしょうがないわね」

 是非! と言おうとしていた事は聞かなかった事にしよう。

 「よう坊主、審査しにきてやったぞ」

 魚吉さんとその仲間達もやって来た。
 魚吉さんと、2人の友人、会長の4名が審査員だ。
 偶数だけど気にしない。
 引き分けの余地は残した方がいいからな。
 今後の禍根が残らないためにも。
 俺と蘭子の親御さんは中立だ。

 「それじゃあ始めますか。部長も蘭子も準備はいいか?」
 「ええ」
 「いいよ~」
 「それでは! ただいまより★超絶! 悶絶! 料理バトル!★の模擬戦を開始するぜ!」

 わーパチパチ
 片手で数えられるギャラリーから歓声と拍手が上がる。

 「お題は『和菓子』と『アメリカン』! この矛盾する題材に2人はどのような戦いを見せるのでしょうか!? それでは、料理スタート!」

 俺の合図で2人が調理に取りかかる。

 「さあ、始まりました。この勝者が本番での指揮権を取る事になります!」

 俺の解説を横に蘭子は材料を準備する。
 そこには白い粉があった。
 砂糖とは輝きが違う。
 それに砂糖は未だ袋の中だ。

 「あれは! まさか!」

 会長が声を上げた。

 「会長、あれを知っているので!?」
 「俺はマイクに見立てたすり棒を突き出す」
 「あれは……アガーでは!?」

 アガー? 聞いた事がないな。

 「姉ちゃん、アガーってなんや?」

 ありがとう魚吉さん、俺の気持ちを代弁してくれて。

 「ゲル化剤よ。寒天やゼラチンのようなものね。海藻やマメからの抽出物だわ」
 「へー、それで寒天やゼラチンとどう違うんや」
 「簡単に言うと透明度よ。濁りのない透明に固められるの」
 「へー、それでどんな和菓子を作るんじゃろ?」
 「おそらく、水信玄餅ね。透明な水ようかんみたいな菓子よ」

 水信玄餅? 俺は食った事ないな。

 「あー、渓流釣りに甲府に行った時に食ったことある。夏にはぴったりだよな」

 魚吉さんは川釣りもするのか。

 「そうだよ~、あたしが作るのは水信玄餅だよ」
 「おおっと、蘭子選手が作ろうとしているのは水信玄餅だー。これは比較的新しい和菓子! その水信玄餅でアメリカンをどう表現しようとしているのかー! 対する撫子選手は何を作ろうとするのかー!」

 部長も机の上に材料を並べ始めていた。
 白あんとドライフルーツ、色あいからしてグランベリーと干しぶどう、干しあんず。
 それに白玉粉と薄力粉、それと……素麺!?

 「おおっと撫子選手、素麺を取り出したー! 見た限り、材料は和菓子っぽいが、これでどんなアメリカンになろうとするのかー!」
 「ふふふ、これはただの素麺じゃないわ!」

 部長が素麺の束を握り締めて不敵に笑う。
 その手に握られているのは、桃、青、黄、色とりどりの素麺だ。

 「アメリカンといえば原色! 私はこれでアメリカンを表現するわ!」
 「あー、なでちゃんとかぶった~、あたしだって、これでアメリカンにするんだから! ハワイよ! ハワイ!」

 蘭子の手にはかき氷シロップ、ブルーハワイ味が握られている。
 青い。

 「アメリカンをふたりは色で表現する模様だ! そして、肝心の和菓子はどうなるのかー! 蘭子選手はすでにアガーを溶かし始めている!」

 部長の方に目をやると、部長は白あんにドライフルーツを混ぜ始めていた。

 「ここで白あんの登場だ! これは和菓子っぽい! 撫子選手、それを四角いかたに入れ、成形を始めている。一体、何が出来るのだろうか!?」

 そう言って俺はマイクを会長に向ける。

 「私の予想だと、あれは、きんつばね。その証左に溶いた白玉粉を塗り始めたわ」

 あー、きんつばか。
 言われて見ればそれっぽいな。
 部長は真剣な目をして作業している。
 蘭子もだ。
 一同も雰囲気に飲まれたのか言葉が少なくなっていた。
 グギュルルルルル
 俺の腹が鳴った。

 「さあ、時間の経過と共に、腹の虫のボルテージも高まって来た! 制限時間は残りわずか! 料理の行方やいかに!?」

 俺は叫んだ。

 「ごまかしたわね」

 会長のつぶやきは無視しよう。
 蘭子は半球の型から水信玄餅を取り出し、デコレートしている。
 部長はオーブンにきんつばを入れている。
 フライパンで焼くんじゃないのか。
 ちょっと変則気味だな。
 オーブンがチーンと音を立て、会長も盛り付けを始める。

 「さあ、時間は残り数分! どんなアメリカンスイーツ和菓子が登場するのでしょうか!?」
 「できたよ~」
 「完成したわ」

 ふたりの料理が並べられ、魚吉さんとその友人、それと会長の前に出される。

 「ペンタゴン水信玄餅だよ」

 かわいいウインク付きで蘭子が言う。

 「七色きんつばよ!」

 威嚇のポーズで部長が言った。
 見た目は……、うん、アメリカンだな。
 その料理、いや和菓子は原色であった。
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