超絶! 悶絶! 料理バトル!

相田 彩太

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第一章 大会前

その6 アイエエエ! コーチ!? コーチナンデ!?

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 「さて、指揮権も私が取った事だし、まずは大会の方針を指示するわ!」

 勝った部長はご機嫌に言った。

 「方針ってなんだ? 得意料理を習得して、それを狙い目にするのか?」

 得意料理があれば、それは強い。
 実力なら勝率は1~2割でも、得意料理だったら勝てるとすれば、勝率は単純にコイントスで先攻が取れる5割に上昇する。

 「あたし、小鉢が得意だよ~」

 蘭子の旬の野菜や魚、筍、豆腐で作った小鉢は絶品だ。
 味付けが濃いめなので、小鉢以上に食うともたれるが。
 確かに、蘭子は小鉢だったら高確度で勝てそうだ。

 「違うわ! 必要なのはキャラクター付けよ!」

 え、語尾にプリを付けろと言い出すのか!?
 それはごめんだ。

 「キャラ付け? それってどうすればいいの~」
 「蘭子ちゃんはそのままでいいわ。ホンワカぼ……牧歌的ぼっかてきなキャラでいいわよ」

 うん、ボケキャラって言いそうになったな。

 「私は高慢ちきな悪女キャラでいくわ!」

 うん、似合っているというか、素のままだな。

 「そして陸、あなたは中二病キャラでいくのよ!」
 「断固として拒否する!」

 ふざけんな! この悪女!

 「はぁ!? あんた全力で大会に臨む上に、指揮権まで私に預けた上で逆らうって言うの!」
 「中二キャラって何だよ! それで勝てるなら苦労せんわ!」

 キャラ付けは重要だし、エンターテイメント料理ショーなら少しは評点に繋がると思う。
 だが、俺の恥かしい姿を全国に広げるのはごめんだ。

 「難しく考える事はないのよ。あんたが脳内で私や蘭子にをしている時のキャラを顕現けんげんすればいいのよ!」
 「そんなキャラはいません!」

 ごめんなさい、います。

 「そーだよ、りっくんの脳内妄想は純愛派なんだから!」

 くっ、心が痛い。

 「あくまでも反対って事ね……」
 「勝利に必要ならばやりますが、そう思えなければ反対します」

 独裁、ダメ絶対!

 「わかったわ……じゃあ料理勝負で決着としましょう!」

 自然な流れでデュエルに入るように部長は言った。

 「いいですよ、俺と部長で勝負しましょう」
 「ちっちっちっ、あんた、私が何も策も無しに来たと思う」

 指を目の前で指を振りながら部長が穏やかじゃない発言をする。

 「私は大会に向け秘密コーチを雇ってきたわ! 先生! お願いします!」

 ガラッ!

 準備中の札を揺らし、ひとりの人物が入ってくる。
 アイエエエ! ニンジャ!?ニンジャナンデ!?
 ここが新埼玉ネオサイタマだったら俺はそう叫んでいたに違いない。

 「安心しろ、怪しいものではない」

 目の所だけを開いた覆面を被り、頭にナイフとフォークで出来たV字アンテナを付けた男はそう言った。
 ゲルマン忍者の親戚だろうか!?
 そんな訳ねえよ!!

 「善子さん、テロリストです。警察に連絡してください」

 俺は冷静にそう言った。

 「えっ、そ、そうね」

 善子さんがスマホを取り出す。

 「ちがうの! ちがうの! 彼は私が雇ったコーチです」

 慌てて部長が善子さんを制止する。

 「そ、そうなの!?」
 「そうだ、訳あって素顔はさらせぬが、拙者はそこなる女子おなごに雇われた一介の料理人だ」
 「わけってなーに?」

 いいぞ蘭子! ナイスツッコミ!

 「いくつかあるが、今言えるのは髪の毛と唾液が料理に入らないようにだな」
 「そっか~、料理人だからね~」

 もっと突っ込んで下さい蘭子さん!
 いや、突っ込まれるのが蘭子さんはお好きなのかもしれませんが、ぐへへ。

 「それよ陸! 今の心のおすさらけ出すのよ」

 ちょ、部長! なぜ分かるんです!?

 「ふっ、噂にたがわぬ心の桃闇ピンクダークを抱えているようだな」

 おい、覆面忍者! そんな殺人鬼がひそんでいる町の漫画家の作品のようなセリフを言うんじゃない!

 「あー、陸ちゃんは昔から変わってないねー」

 善子さん! 俺の桃闇ピンクダークに気付いていたのですか!?

 「これが、私たちの秘密兵器よ! 彼の指導で私たちの料理レベルを上げるの!」
 「部長……」
 「なあに陸?」
 「百歩譲って、コーチを雇うのは良しとしましょう。でも、俺が中二キャラになるのはないでしょう。というか、もう全部あいつ一人でいいんじゃないか、ですよ!」

 俺は必死に話を修正しようとした。
 こいつはキャラが立ちすぎている。

 「少年、残念だが、★超絶! 悶絶! 料理バトル!★は3人参加が条件だ。拙者一人ではダメなのだ」
 「彼はあくまでコーチよ! それに彼が勝っても、それは私たちの、料理愛好倶楽部の勝利ではないわ! それでは廃部は免れないわ!」

 あー、あまりにもこいつのインパクトがあって忘れてた。
 そう言われりゃそうだな。

 「さあ、話を戻すわよ。陸、コーチと勝負しなさい! 勝てば中二キャラの話は無しにしてあげるわ」

 こいつ、さらりと逃げやがった。
 だが、それに乗ってやろう。

 「いいでしょう。俺が負けたら中二キャラで大会に参加します。だけど俺が勝ったら……」
 「何でもいいぞ少年、なんなら拙者のでも」

 ふざけた事を言うな!
 善子さん、期待に満ちた目で見ないで下さい!

 「興味ないね! だが、俺が勝ったら、その覆面を取って帰ってもらう。さらにコーチはクビだ!」

 うん、こんな不穏な人物は不要だ。
 とっととお引き取り願おう。

 「かまわんよ少年。さらにハンデとしてお題はふたつとも君が決めて良い。さらに、制限時間等も君が設定してくれたまえ、さらに……」
 「さらに審査員は、魚吉さんたちに加え、この子たちよ!」

 話をさえぎって部長が叫んだ。

 ガラッ!

 「兄さん、今夜の晩御飯はここでってメールが……」
 「おにいさん、そろそろご飯の準備をしないと……」
 「にーちゃん、腹へった!」

 現れたのは俺の愛しのガキども、海美うみ空楽そら宙弥ちゅうやだ。

 「どうしてここに!?」
 「私がメールしたの」

 俺の問いに部長が答えた。
 こいつ、ポッケの中でメールを出したのか。
 スマホでのブラインドタッチ能力、相変わらず恐ろしい技だ。

 「どうだ、少年。嫌なら尻尾を巻いて逃げても良いのだぞ?」

 覆面の男が俺を挑発する。

 「いいでしょう、勝負に乗りますよ」
 「そうこなくっちゃ! で、お題や条件はなあに?」

 部長がウキウキしながら言う。
 こいつ、このシチュエーションを想定していたな。
 だが、こいつがどんなに腕の立つ料理人だとしても、俺に勝機はある。
 いや、このお膳立てとも言える条件で勝てなければ、俺だけの能力ちからでは勝てない事を認めなければならない。
 誰かの師事を、悔しいがこの男に学ばねばならないだろう。
 だが、条件は俺の方がずっと有利だ。
 お題や条件だけでなく、俺には地の利がある、それを活かす!
 具体的には、竜の舌の冷蔵庫の中身だ。

 「いいでしょう、制限時間は30分、食材はここのキッチンにある物のみを使用、審査員は俺とコーチを除いた、ここに居る9人」
 「へーえ、私も審査に入っていいのね。楽しませてもらうわ」

 ええ、たのしんでもらいますよ、ぐふふ。

 「りっくんの愛情だけで、お腹いっぱいになるよ~」

 愛情だけでなく、別の物でもお腹いっぱいにしたいです、ぐへへ。
 いかん! 静まれ! 俺の桃闇ピンクダーク

 「で、ふたつのお題は?」

 部長が問う。

 「ひとつは『料理:酢豚』です」
 「へえ、良さそうじゃないか」と魚吉さんたち。
 「うちの旦那の酢豚とどっちが上かね」と善子さん。
 「うん、豚バラが冷蔵庫にあるな」と旦那の良道よしみちさん。
 「カロリーが……」「ひさしぶり」「やったあ!」と愛しのガキども。
 「すぶた~、おいしよね~」と蘭子。
 「へぇ、陸の酢豚は初めてね。で、もう一つのお題は?」と部長。

 部長の問いに俺は答える。

 「『食材:フルーツ』です!」

 「陸、絶対に許さない!」
 「りっくん、愛があってもダメな事はあるのよ!」

 ふええ……
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