超絶! 悶絶! 料理バトル!

相田 彩太

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第四章 準々決勝

その9 残酷で愛情に満ちた素晴らしき世界

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 司会の人に促され、審査員の人が投票を入れていく、一般審査員の愛しのガキどもも親御さんに説明を受けボダンを押していく。

 「結果が出ました! ニンジャコック選手71点!」

 その点数に会場から少し失笑の声が上がる。
 タベルトさんとミンナトさんも小さくガッツポーズを取っている。
 蘭子は……エロい事でも考えてそうな顔だな。
 だが、部長の目は爛々らんらんと俺を見ている。
 あれは、希望と期待と、次の自分の試合の覚悟を決めた目だ

 「ツクルト選手……68点! ニンジャコック選手の勝利です!」

 勝った! 少しギリギリだったかな。

 「はぁ!? なんでや! なんであたいの点数あんなに低いんや!?」

 ツクルトさんが司会の人に食って掛かった。
 
 「は、はい、内訳を説明しますと、ニンジャコック選手が特別審査員点23点、一般審査員点48点の71点、ツクルト選手が特別審査員点45点、一般審査員点23点の68点です」

 司会の人の声に合わせ、採点が公開される。
 俺の予想通り、俺の料理は特別審査員からの評価が低い。
 逆にツクルトさんは一般審査員、つまり愛しのガキどもからの評価が低かったのだ。
 あれ? キッズランドの人は俺に5点入れてくれている、逆にツクルトさんへは3点だ。

 「なんでや! うちの料理はそんなにマズかったんか!?」

 ツクルトさんが、今度は一般審査員席に突撃する。

 「それは、ねぇ……」
 「あんなの見ちゃうと……」

 一般審査員席の親御さんたちが言葉を濁す。

 「それは私から説明しましょう!」

 助け舟を出したのはキッズランドの人だ。

 「これは特別審査員の飯町いいまち先生! それでは説明をお願いします!」
 「口で言う前に証拠を見せた方が良いでしょう。カメラさん、一般審査員席のテーブルを映して頂けますか」

 飯町先生の声に合わせ、カメラさんがテーブルに近づく。
 そして、そこには、ポテサラだけが食べられ、土台となった人参や大根やセロリが残された皿が映っていた。
 俺の予想通り! そして部長や飯町先生はそれをちゃんと見ていたんだな。

 「なんでそこだけたべるん!? いっしょに食べればいいやん!」

 いやー、それは無理ですよ。
 嫌いな野菜が入っていれば、たとえチャーハンにみじん切りで入れていても一個一個避けて食べるような存在ですよ、愛しのガキどもは。

 「だって、ポテトはおいしいかったけど、そのおやさいはおいしくないんだもん」
 「みんなあまいあまいっていうけど、うそだよ! ぜんぜんあまくないじゃない!」
 「ニンジャさんのは、ちゃんとあまかったよ!」

 そうだよなー、俺もたまにテレビのグルメ番組で言う所の野菜本来の甘さが分からない時があるんだ。
 愛しのガキどもが分からないのも無理ないよ。
 まあ、俺の『サクサクサラダアイスキャンディ』の強烈な甘さで、舌を少々バカにしておいたせいもあるんだけどな!

 「おわかりいただけましたか? そこの親御さんたちは、それを見たのです。子供たちが残しているのを見れば、あなたへの評点が低いのも理解できるでしょう」
 「いっしょにたべれば美味いんや、今からでも食べてみてーな!」
 「ふえぇ……」

 ツクルトさんが、皿を持ち出し子供の前に突きつける!
 いかん! 
 俺は飛び出す、そして、もうひとつの影も。
 はやい! さすが師匠だ!
 師匠は俺を追い越し、ツクルトさんの前に立ち塞がる。

 「無理強いは禁物だ! 子供たちは拙者が守る!」
 「師匠の言う通りだ! 愛しのガキどもの心を傷つける罪は特に重い!」
 
 俺たちそう言うと回転を始め、その手で皿に残った野菜を掴み、そして口に放りこんだ。
 ボリボリパキンと小気味よい音を立ててそれは俺たちの胃に収まる。 
 うめぇ! 前言撤回、野菜本来の甘さが今わかった!

 「甘やかしてどうするんねん。ちゃんとしつけんと!」
 「子供の時に甘やかさんで、いつ甘やかすんだ! 愛情は決して尽きない泉のようにいつもそこにあると実感させるべきだ!」
 「少年の言う通りだ! 子供の笑顔こそ何よりの宝よ!」

 俺たちとツクルトさんとの間で火花が散る。

 「そこまでです! ツクルトさん、あなたにお尋ねします」
 「なんや!」
 「あんたの料理は、そんないかついつい顔で、涙を浮かべた子供に向けて出すようなものなのですか?」

 その言葉にツクルトさんが一瞬我に返った。

 「せやな、あたいの料理は食べた人に食事の素晴らしさを伝えるものや、それをぼんに教えられるとは思わんかったな」

 そう言ってツクルトさんはしゃがみ込むと、優しい顔を浮かべて愛しのガキどもの頭を撫で始めた。

 「かんにんな、こわい思いさせて」

 撫でツクルトさんのその袖が引っ張られる。
 ツクルトさんが振り向くと、そこには空になった皿を持った少年少女たちが立っていた。

 「あのね、おねぇちゃんのサラダ、とてもおいしかったよ。あたし、おやさいぜんぶたべれたよ」
 「そうか! そらなによりや!」

 ツクルトさんは破顔の笑みを浮かべ、目の端に少し涙を浮かべながら言った。

 そうだよな、一般審査員からも23点が入っているんだよな、半分近い愛しのガキどもは美味しいと思ったんだよな。
 イイハナシダナー!

 「この勝負、あたしの負けや! ぼん、いや、あんたは一人前のええ男や、ニンジャコック!」

 そう言ってツクルトさんは俺に握手を求める。
 俺はそれに応え、その手をがっちりと握りしめた。

 「決まったー! 2セット目は『料理愛好倶楽部』の勝利! 勝負の行方は3セット目に持ち越されたー」

 ふぃー、どうなる事かと思ったが、何とか勝てて良かった。
 後は部長に託そう。
 きっと部長も俺の勝利を喜んでくれているに違いない。
 俺は控えの方を見る。

 あれ? 部長が何かジェスチャーをしているぞ?
 部長はその親指で特別審査員席を指して、そして下を向けた。
 えっ!? さらに特別審査員をディスれって事ですか!?
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