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第五章 準決勝
その1 負担はほどほどに
しおりを挟む準々決勝が終わった。
予想通り三好・クイーンズの3勝で決着した。
2勝した時点で決着は着いたが、エキシビションマッチとなった3本目でもその手は緩まなかった。
「あれ~、あの人達、ちょっと卑怯じゃない?」
蘭子の感想も無理はない、俺もちょっとどうかと思った。
「卑怯ではなないわ。相手の嫌がる事をしているだけよ」
部長、それを卑怯と言うのです。
「うむ、ルールに則っている以上、彼女たちの行動に問題はない。むしろ悪役としてのファンも出ておるな。ちなみに、我らも愉快な悪の組織として評価されているぞ」
えっ!? 師匠、俺たちもそんな評価なんですか!?
「む~、なでちゃんとりっくんが悪いんだからね! あんな素っ頓狂な服をしているから」
「ちなみに、ボスは悪の女優の英霊が宿った頭の残念な娘で、少年は変態紳士忍者、少女はお色気やられ役という設定らしい」
ぐぬぬ……反論できない。
「りっくんが変態なのはいいけど~、あたしはお色気なんかじゃないよ~、一回戦を除けば露出だって少ないし!」
ふっ、着衣エロが理解できないとは、蘭子はまだまだ初級よ。
しかし、変態でもいいのか……変態プレイでも……
「陸が危脳丸なのは、こいつは100%伝説の変態だから良いとして、私の頭が残念なのはいただけないわね。私はかしこいのです。このチームの長ですから」
部長、そういう所が残念なのです。
「世間では、悪 VS 悪 のレアな対決として期待が高まっておるぞ。知性チーム VS 剛力チームのように」
師匠、それは俺たちが知性チームって事ですよね!?
「頼んだわよ、次鋒レオパルドン」
そう言って、部長が俺の肩をポンと叩く。
「だから2番手は中堅ですって、もう次鋒は嫌ですよ!」
「忍者師匠さんも大変やな。保護者さんは心配性ってか」
ハハハとツクルトさんが笑う。
「でも、あの嫌がらせみたいなお題の選び方には注意が必要ですね」とミンナトさん。
「うちらも対策を考えとったけど、それが効くかはわからんっちゃね」とタベルトさん。
やはりタベルト・ツクルト・ミンナトさん達も対策を考えていたのですね。
「差し支えなければ、その対策とやらを教えてくれない?」
「よかよ、具体的には昆虫やね。『料理:昆虫料理』や『食材:タガメ』とか『テーマ:こんなの食えるかぁ!』とかよ」
「あたいらの第四の武器として昆虫食を隠し持っていたとよ」
「『こんなの食えるかぁ!』ではカメムシを使う予定でした。リンゴ風味で美味しいのです」
タベルト・ツクルト・ミンナトさん達の秘密兵器が露わになった。
カメムシは兵器です。
「そう、私たちとの試合でそれを出されていたら負けていわたね。対策していたお題がパーになってたから」
「そうだね~、決勝戦で戦わなくって良かったぁ~」
「でもこれは次の試合にも同じ事が言えます。三好・クイーンズは決勝用の必殺料理は出さないでしょう。今までと同じ作戦でお題を決めてくると思います。俺たちの有利な点は相手が油断している所と、決勝用に温存している料理が出てこない点です」
「坊たちは決勝用の必殺料理は持っておらんと?」
「私たちは相手に応じて出す料理を変えるの。店舗を経営していないから、店の事は考えなくていいからね」
そう、それが俺たちの強み。
「そうですね。昨年はわたしたちの店に大会のスペシャリテを出して欲しいという客が大勢来ました。一日限定10皿という対策をして凌ぎましたが」とミンナトさん。
「店は大繁盛やから、大会様様やけど、ちょっとクタクタになったやな。しばらく足腰が立たなくなったで」とツクルトさん。
「足腰が立たない時に無理やりってのも、ええもんやよ」とタベルトさん。
うん、君らも十分残念だよ。
「我らも対策をせぬと勝機はないぞ。さっきの試合は一見卑怯に見えるが、それを成り立たせる腕前は確かであった」
「そうですね、さっきの1本目は『料理:カレー』と『テーマ:スパイス使用禁止』ではハーブを使用した亜種カレーを作っていました」
その試合では、カレー粉を使ったカルカッタ・カモミールのメンバーはカレー粉はスパイスという批判を受け、スパイスとハーブの定義の差を説明し、ハーブでカレー味を出した三好・クイーンズのカレーが評価された。
「2本目は完全に嫌がらせね。インドの人相手に瘤牛を食材を選ぶなんて、うざ子らしいわ」
2本目は『料理:シーク・カバーブ』『食材:瘤牛』だった。
インド人の多数が信仰しているヒンドゥー教では瘤牛を神聖視していて食用にはしない。
だからシーク・カバーブは羊肉で作られる事が多いが、それを瘤牛で作れと言うのだ。
カルカッタ・カモミールのメンバーは結局、ヒンドゥー教で食用が許されている水牛の肉でシーク・カバーブを作った。
負けるのを覚悟で、そして負けた。
「一回戦では、教会のキング・マウンテン相手に『食材:ビーバー』にしてましたね。信仰を利用するのは全く卑怯ですね」
うわー、嫌味ったらしい。
「ビーバーの何が卑怯なの~?」
蘭子が疑問を口にする。
「ビーバーには尻尾が魚に似ているので、魚として扱われ、肉食が禁止されている修道士が魚として食べるために乱獲されたという説があるんだ。『お前らの無知と詭弁の象徴として料理しろよ、調理法は知ってんだろ!?』という感じだな」
あれには審査員も苦笑いだったな。
「そして3本目の『料理:おかゆライス』『食材:カレー粉』は見事であった」
「ええ、トマト水を作るのと同じ技法で無色透明だがカレー味のお粥を作り、おかゆライスとして成り立たせていました。対戦相手の料理は『これはカレーじゃないか!』と言われる始末でしたね」
「ある意味、★超絶! 悶絶! 料理バトル!★が普通の料理対決と違う事を見せつけるチームよ」
「対策はどうしよ~? あたしたちの弱点を突いてくるんだよね~?」
蘭子の言う通り、相手は俺たちの弱点を突いてくるに違いない。
俺たちの弱点と言えば、俺は高級料理で、部長は手間の掛かる料理だ。
蘭子は弱点が無いとも言えるが、素直過ぎて駆け引きに向かない。
これは困った、相手の手が読み辛い。
場の空気も少し暗くなって来た。
「この中で弱点が相手に一番ばれているのは陸よね」
「そうですね。俺の得意料理としてプロフィールに書いている『貧乏料理』の反対を突いてくるでしょう」
部長も俺と同じ感想だ。
そして、部長はしばし考えて、笑顔で言った。
「陸、喜びなさい、あなたの望みの通りに次鋒は外すわ」
ああ、これは嫌な予感がする。
「オーダーよ! 先鋒は蘭子ちゃんよ! 正攻法であのニャガニャガ女を倒しなさい!」
「わかった~、あたし今度こそ頑張るね」
部長、にゃはにゃはだと思います。
あの、へらへら巨乳眼鏡美人は、そんなサイコな笑いはしません。
「次鋒は私よ! うざ子は私が倒すわ! そして……!」
あー、やっぱり。
一番難易度の高い所を俺に押し付ける気だ。
「大将は陸、あなたよ! あの鉄面皮女の氷の精神を溶かしなさい!」
「りっくん! あの、いつも真面目そうな心の仮面を被っている女なんて、やっつけちゃえ~!」
「少年、『オモイヤリ+ヤサシサ+アイジョウ』で氷の精神は『友情』に書き換わるぞ!」
「師匠、それは彼女が元々持っていた心を取り戻すだけですよ」
そう言って俺たちはハハハと笑う。
いつものペースが戻って来た。
笑顔と笑いは重要だよな、特に俺たちのような勢いだけのチームには。
ん? 笑顔と笑い……これだ!!
「師匠! 俺のメニューが出来ました! 仕込みを手伝って下さい!」
「うむ! 共に力を合わせようぞ!」
俺の言葉に師匠は覆面の上からでも分かる極上の笑顔で応えた。
「そして部長! お願いがあります!」
「なあに?」
「俺をブリギョダにして下さい!」
俺の言葉に師匠は『お前は何を言っているんだ』というような目で応えた。
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