超絶! 悶絶! 料理バトル!

相田 彩太

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第四章 準々決勝

その13 彼女たちは元気な欲望の女王

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 「ん、慈道殿、それは食べぬのか?」
 
 俺は慈道さんに語り掛ける。

 「ふむ、理由は説明できぬが、拙僧はこれを食べていけない気配がする。だが、大地からの恵みを無駄にするのも心苦しい。ニンジャコック殿、これを代わりに食してくれぬか?」
 「良いのか?」
 「良い。それが供養にもなるじゃろうて」

 やったー! 俺の狙い通り! さっきから腹が減っていたんだー!
 なんせ朝からかまぼこ数切れと野菜少々しか食べてなかったからな。

 「では、ありがたく頂こう」

 俺は覆面をずらし、ミンナトさんの料理を口に運ぶ。
 美味い!
 肉は柔らかく、繊維に合わせて口の中でホロホロと崩れる。
 肉の味わいはしっかりしている中で、ブルーチーズの刺激が食欲をさらにそそる。
 俺がガツガツと肉を口に運びゴクリとそれを飲み込んだ。

 「美味いな! この闇に生きる身にとっては、怨念のこもった味わいが実に良い!」
 「は!? 怨念!? 何を言っているのこの変態!」

 うむ、罵られるのも実に良い。
 いや、違うだろ、俺の桃闇ピンクダーク

 「先ほどは飯町先生の判断が優れていたが、今度は慈道殿が徳の高さで特別審査員の格を保ってくれておるな。それよりも他の特別審査員の情けなさよ。とーちゃん情けなくって涙がでてくらぁ!」

 そう言って俺は涙をぬぐうポーズを取る。

 「ええい! またかね、いいから説明したらどうだ!」
 「ふん、それは俺よりも、うちの月の素敵な悪の魔女から解説してもらった方がよかろう」
 
 そう言って俺は部長にアイコンタクトを送る。

 「そうじゃのぉ、この愚かな女の最大の問題はソースの中に使われていたチーズよぉ! あれが邪悪な怨念を発しているのじゃ!」
 「は? だってあのお坊さんは乳製品は大丈夫だって言ったじゃない!? それともブルーチーズの青カビがダメだっていうの!?」
 
 言った、確かに言った、乳製品は大丈夫だと。

 「ただの牛乳や生クリームだったら大丈夫だっただろうて。青カビもよかろう。じゃが、チーズがのう……」
 「チーズのどこが悪いって言うのよ」
 「くっくっくっ、まだ気づかぬのか。そのチーズとやらはどうやって作る?」
 「それは牛乳にレンネットを入れて……」

 そう言うとミンナトさんは何かに気付き、そして下を向いた。

 「レンネット? それは牛乳を凝固させる物の事じゃな。で、それは微生物由来の物かの? 大量生産のチーズに使われるような。それだったらよかったのじゃろうて。おぬしの料理に使われているチーズは本格的な高級品と見えたが、そのレンネットとやらは何から作られているのかなぁ!?」

 身体を左右に揺すりながら挑発するように部長が問いかける。

 「……の……よ」

 か細い声でミンナトさんが呟く。

 「聞こえんのぉ!! さっきおぬしはご高説を垂れおったのう『ご存知ないかもしれませんが、精進には不道徳を禁じていますのよ。生き物を苦しめるような形で手に入れた肉はダメですのよ』とな。再び尋ねるぞよ。レンネットは何から作られるのかなぁ!? それとも、おぬしの口はくわええこむしか能がないのとでも言うのかなぁ!?」

 部長、下品すぎ。
 さすがに俺の桃闇ピンクダークもまじひくわー。

 「子牛の第四胃からよ!」

 意を決してミンナトさんが叫ぶ。

 「そうか、この気配は子牛のものじゃったか。さもありなん」

 慈道さん、本当に気配だけで気づいていたのか!
 ひょっとして、この大会の特別審査員ってレベル相当高い!?

 「あれー!? 未来ある子牛を殺して、その胃を使って作るチーズは、たいそう不殺生で不道徳でない代物しろものなんじゃろうなぁー!!」

 部長が煽る煽る。
 ミンナトさんは『くっ殺せ』というような表情で下唇を噛んでいるじゃないか。
 そろそろ、何とかしないといけないかな。
 
 ツン

 俺の脇が何者からか小突かれる。
 師匠だ。
 相変わらず忍びのレベルが高いな。
 本当に料理人なのかと思ってしまう。
 そして、俺と師匠の絶妙なアイコンタクトが成立した。

 俺と師匠は特別審査員席から駆け下り、部長を左右から拘束する。

 「ていっ」

 師匠の手刀が部長の首筋に炸裂し、部長の体から力が抜けた。

 「ゴメンネ、チョットイイスギチャッタ。アナタノ、リョウリ、スバラシイトオモウワ」
 
 そして師匠の腹話術も炸裂する。
 ホント師匠は底が知れんな。
 イルダーナフ何でもできる男なのか!?
 俺は卵だが王子じゃないけどね。

 「こっ、これは波乱が起きましたー! 何と! ミンナト選手の料理が本職の方が拒否した精進料理になってしまったー! それでは、採点に参りましょう!」

 司会の人が進行を進めているが、結果は見えている。
 
 「出ました! 撫子選手80点! ミンナト選手52点! 撫子選手の勝利! そして料理愛好倶楽部の勝利だ―!!!」

 「ウワーイ、ウレシイナ。ツギノシアイモ、ガンバルカラ、オウエンシテテネ」

 ◇◇◇

 控室で部長が目を覚ました。

 「知らないおっぱいだ」  

 部長を覗き込む女の子達を見て部長は言った。
 うん、平常運転だな。

 「ちょっ、先生! 陸! 何してくれんのよ! それとも私が寝ている間に何をしたの!?」

 シーツと体に巻き付けながら部長が叫ぶ。
 うん、超平常運転だな。
 
 「安心しろ、あの月の素敵な悪の魔女の衣装を脱がしただけだから」
 「でしょうね。陸にそんな度胸はないでしょうから」

 くそっ! ふたりっきりだったら俺の桃闇ピンクダークが暴走モードに入ったかもしれんのに。

 「で、何でこの3人が私たちの控室に居るの?」

 3人とはタベルト・ツクルト・ミンナトの3人だ。

 「たまには食べられる側になるのもおつな物です」とタベルトさん。
 「あー、あたいはどうなっちゃうんやろか? 肉奴隷? 穴奴隷?」とツクルトさん。
 「賭けに負けた私たちは勝者の沙汰を待つしかないのです。ああ、わたしが言ったのと逆のように3人の絡みをまじまじと観察されてしまうのでしょうか。どきどき、わくわく」とミンナトさん

 こいつら性欲魔人じゃないかー!? いやー!? 俺の清純派のイメージを返せー!?

 「それは、それでいいけど。私の望みはちょっとちがうの」
 
 部長が、よっこいしょとベッドから起き上がって言った。

 「うん、分かっているわ。賭けの代償は、私たちの特選素材でしょ」とミンナトさん。
 「負けたあたいらには必要ないしな」とツクルトさん。
 「そうじゃなければうちらで食べちゃう所ですよ」とタベルトさん。

 そうか、準決勝から先の試合にこの3人が持つ特選素材の提供を受けられれば相当な強みになる。
 さすが部長! その慧眼けいがんには恐れいるぜ。

 「うーん、それもいいけど、そうじゃないの」

 えっ、じゃあ酒池肉林コースですか!?

 「今は保留させといて」

 ん、部長には何か考えがあるのか?
 
 「なるほど、焦らしプレイというわけですね」
 「くっ、どうなるか分からない恐怖と期待感でどうにかなっちまいそうだぜ」
 「あーん、うちらは夜の非常食なのね」

 こいつら、ひょっとして、ビッグバストブービーズより下ネタ系?
 
 「なんやぼん、あたいらの痴態でも想像しとんのか!? ええでええで、心は何よりも自由や!」

 良い事を言っているようで、桃闇ピンクダークに溢れたセリフ!
 いや、オープンなので光桃シャインニングピンクなのか!?

 「違うでぼん蜜桃ハニーピンクや」

 えっ!? エスパー!?

 「ほら、当たっとったやろ。顔が真っ赤になったで、ぼんはエロい事を考えとるって」
 「当たって当然よ、陸はいつもエロい事を考えているからね」
 
 ぶ、部長、俺の事をそんな風に思っていたんですか!?
 いつもじゃないですよ! 半分、いや七割五分くらいですよ!

 「そうだよ~、りっくんは、いっつもあたしのエロい事を考えているんだから!」

 ごめん蘭子、七割五分、いや半分くらいですよ。

 「うむ、ガールズトークはそこまでにして、中継を見よう。そろそろ次の試合が始まる頃だぞ」

 ありがとう師匠! もう、師匠がこのチームの唯一の良心です!

 「次の試合は知っての通り、カレーの雄『カルカッタ・カモミール』と前回準優勝のリーダー、三好みよし 真紅しんくが所属する『三好・クイーンズ』だ」
 「うざ子が引き抜いた女ね」

 そう、あの説明会の時に会った凛としているが、少し冷たさを感じる女性だ。
 おそらく、準決勝の相手は『三好・クイーンズ』になるだろう。

 そして俺たちは中継に見入る。

 「結構時間が掛かりますから、何かつまめる物を作りましょう。さっきの対決の残りもありますし」

 ありがとう、ミンナトさん、正直、腹がぺコペコなんだ。
 きっと部長や蘭子もそうだろう。

 「せやな、ライスサラダ用の特選米を炊いたやつがあったはずや。おにぎりライスボールでも作るか。手で摘まめる物がええやろ」

 素敵、ツクルトさん! 今回の対決でどんなに米が食べたかった事か!

 「いやーん、うちのつまみ食いはよ・る・に」

 おい……見てるかフリージア様……お前を超える逸材がここにいるのだ……
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