超絶! 悶絶! 料理バトル!

相田 彩太

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第五章 準決勝

その3 調理はほどほどに

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 なんでこった! 卑怯な手を使ってくるとは思ったが、そこを突かれるとは!

 「うふふ、知っていますの? ★超絶! 悶絶! 料理バトル!★ルール、第一条! 法律違反行為は即失格! ねぇ司会者さん、未成年の飲酒は法律違反ですわよね?」

 うざ子うぜぇ。

 「は、はい! 未成年の飲酒は法律違反です。当社は未成年の飲酒を助長するような番組作りは致しません!」
 「なら、あの蘭子選手が飲酒したらどうなりますの?」
 「それは……法律違反は失格ですから、失格になりますね」

 さすがに引いているのだろうか、司会者の人も心苦しそうだ。

 「あら、撫子さん、失格ですって! これじゃぁ、お酒との相性を知らない、あの子には荷が重いのじゃなくって。まぁ、今から選手交代は出来ませんけど、しても無駄ですけど、おほほほほ!」

 うざ子、超うぜぇ!

 「部、部長……」

 部長は下を向いている。

 「ごめん、陸。ちょっと余裕がないの……」

 部長が下を向いている理由が分かった。
 スマホで調べものしているんだ。

 「あんたも、メニューの組み立てを考え直した方がいいわよ」

 そう、同じお題が俺にも降りかかる可能性があるのだ。
 俺は頭の中で今日のメニューを再考する。
 くそっ、悪い蘭子! 応援に力が入らない!

 「オ題ヲ、受領シマシタ。調理時間ハ2時間デス。審査員ハ……」
 「ん~、あちしは1時間でいいけど、蘭子ちゃんはどうかな?」
 「いいわよ~、1時間で作りましょ~」
 「にゃはにゃは! じゃあ、調理を開始するにゃー! 手作り豆腐をつくるにゃよ!」

 ステージでは調理が始まっている。

 「んー今日は時間が無いので、市販の豆乳でつくるよ~」
 「お姉さんもにゃ~、持参した豆乳があるにゃー」

 そう言ってふたりは豆乳を取り出した。

 「おおーっと、手作り豆腐に対し、ふたりとも豆乳を取り出したー!」
 「手作り豆腐は簡単だよ~! この豆乳を温めて、にがりを入れたら固まってくるので、それを型に入れて、水を切れば出来上がりだよ~」

 そう、手作り豆腐は比較的簡単に出来る。
 だが、それだけでは勝負には勝てない。
 これをどう調理するかが問題だ。

 「さて、ここに3日前に同じように作った手作り豆腐がありま~す」

 そう言って蘭子は持参したBOXから大型タッパーを取り出す。
 あれは……竜の舌の冷蔵庫に常備されている物!
 
 「蘭子選手、そのタッパーに入っている物は何でしょうか?」

 司会の人がマイクを蘭子に向ける。

 「これはね~、手作り豆腐の味噌漬けと梅酢漬けだよ~」

 タッパーの中から出て来た物は薄茶色の豆腐と薄紅色の豆腐だった。

 「ほう! 豆腐の味噌漬けと梅酢漬けですか! これはおいしそうですね! お酒にも合いそうです!」
 「これからもっとおいしくなるんだよ~!」

 そう言って蘭子が準備した物は、揚げ鍋と出汁醤油だった。

 「へぇ、あの蘭子さんは腕は確かなようですね。わたしにはわかります」

 今まで、口を閉じていた真紅さんが言う。

 「この段階で蘭子のメニューが分かると申すか!?」

 俺は分からない。
 俺は竜の舌のメニューを全て把握していないのだ、特に夜のメニューは。

 「あれは黄檗豆腐おうばくとうふの亜種ですね。わたしにはわかります」

 黄檗豆腐おうばくとうふ……どこかで見たような。
 
 「なるほど、豆腐百珍であったか」
 「師匠! 知っているのですか!?」
 「うむ、豆腐百珍には『一種の黄檗豆腐おうばくとうふ』という品がある。豆腐を揚げて出汁醤油に浸けた物だ。少女のはそれとは少し違うようだが……」

 ああ! 豆腐百珍の料理だったのか!
 ステージの上では豆腐がパチパチと音を立てて揚げられていく。
 一方の茶華さんはどんな調理をしているのだろう。
 俺は視線を茶華さんに移す。
 あれ……!? 椅子に座ったまま何もしていないぞ!
 酒を飲みながら、何かを上下に動かしている。
 
 「あ、あの~、茶華選手、調理を進めなくていいのですか?」
 「やってるにゃよ~、こうしておいしくなーれおいしくなーれてにゃ、にゃはは!」

 豆乳が入った容器に何かしているようだが……わからん!

 「じゃあ、そろそろお姉さんも作業を進めますか。これににがりを入れて、電子レンジでチーンにゃ!」

 茶華さんは豆乳を器に小分けにして、電子レンジに入れる。
 あれなら普通に豆腐になるだろう。
 だが、普通の手作り豆腐だ。

 ん、蘭子がスタッフに何やらメモを渡しているぞ。
 それを受け取ったスタッフが日本酒のコーナーに入っていくのが見える。
 おそらく、料理に合わせる銘柄を指定したのだろう。
 
 「はーい、揚げあがったら出汁醤油で軽く煮ます~!」

 一方の蘭子の調理は次の工程に入っている。
 残り時間を考えると、あとは盛り付けだろう。

 「はい! できました~! 『二種の黄檗豆腐おうばくとうふ』で~す!」

 小鉢に賽の目に切られた豆腐が並ぶ。
 白、茶、紅の三色だ。
 その隣には日本酒が置かれている。
 銘柄は……『はいぱぁもーど』。
 竜の舌のキープボトルの中にあった銘柄だ。
 確か、魚吉さんのキープボトルだ。

 「フレー、フレー嬢ちゃん!」

 「にゃはは! こっちも出来たにゃ! 『変哲の無いようであるような手作り豆腐』にゃ!」

 茶華さんの料理は茶わん蒸しの器に満たされた豆腐だ。
 隣の酒の銘柄は……『ばけねこ』。
 茶華さんらしいチョイスだが、『はいぱぁもーど』も『ばけねこ』も味の方はわからん! 

 「さあ! 双方の料理が出そろいました! それでは審査に移りましょう!」
 「フレー! フレー!」
 観客席から魚吉さんたちの声が聞こえた。

 ◇◇◇

 「これがあたしの『二種の黄檗豆腐おうばくとうふ』だよ~!」
 「二種? 一種ではないのかね?」

 特別審査員の一人が疑問を口にする。

 「えへへ~、黄檗豆腐おうばくとうふは出汁醤油に浸けた豆腐を揚げた物で~、豆腐百珍の一種の黄檗豆腐は揚げた豆腐を出汁醤油に浸けて煮るんだけど、あたしのは、味噌漬けと梅酢漬けの豆腐を揚げた物を出汁醤油で煮たんだよ~! 普通のと味噌と梅酢の三種の味を楽しんでね!」
 「へえ、手間をさらにかけたから二種なんだ。さてお味はっと」

 審査員が蘭子の豆腐を口に運ぶ

 「美味い! 一種の黄檗豆腐が美味いのは知っていたが、味噌漬けと梅酢漬け豆腐もいける!」
 「そしてこれに日本酒を合わせると……くふぁー!」

 審査員はお猪口を上にあげ、感情をため込むような体勢で声を出した。
 
 「この酒は辛口だねぇ! すっきりした味わいがイイ!」
 「口の中をさっぱりとしてくれて料理が進むわ!」

 会場からも賞賛の声が上がる。

 「これは好評だー! お酒を飲んだ事のないJKなのに、見事な組み合わせて審査員たちを喜ばせているー! 蘭子選手! この組み合わせはどうやって見つけたのですか!?」
 「えへへ~、お酒を飲んだ事はないけど、お店の常連さんが、この組み合わせは最っ高だね! って言っているのを覚えていたんだよ~」
 「フレー! フレー! 嬢ちゃんー!」
 「フレ! フレ! 蘭子!」

 観客席からは魚吉さんの他に善子さんの声も聞こえて来た。
 善子さんのあんな大声は初めて聞いたな。

 「いかん! 少女よ! フレー! フレー!」
 「し、師匠どうしたんです!?」
 
 急に師匠も蘭子の応援を始めた。

 「そうですか~! 良い常連さんをお持ちなんですね。その常連さんは、観客席のあそこから応援してくれている方々ですか?」

 司会の人が観客席の一角を指す。
 そこでは善子さんと魚吉さんたちが必死に声を張り上げていた。

 「うん、そうだよ~! 魚吉さん~! いつもありがと~!」

 そう言って蘭子は観客席の魚吉さんたちに向かって手を振った。

 「振れー! 振るんだ! 嬢ちゃん!」 

 観客席からは必死な魚吉さんの叫びが聞こえていた。
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