超絶! 悶絶! 料理バトル!

相田 彩太

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第五章 準決勝

その12 俺の料理を越えていけ

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 師匠! いや、ブリオイリー! いや、ブリーマーめぐみん!
 彼女が一本の糸を解くと、衣装がずり落ち、その下から新しい衣装が出てくる。
 あれは! ふたりはブリギョダ、シーズン2! 
 ブリの恵みのマーメイド! ブリマーめぐみんの姿だ!
 はっきり言えば余談である!

 「これは!? 海鮮の良い匂いだね」
 「ええ、食欲がそそられるわ」

 会場に広がったのは磯を思わせる香りだった。

 「これは、何てスープだね?」
 「まずは、めしあがれ! さすれば、いや、そうすればわかりますわ」
 「ほほう、では、いただきましょうか」

 審査員たちがスープに口に運ぶ。

 「おいしい! 強めの海鮮の味と、ハーブの香りがいいわ!」
 「これは……牡蠣とムール貝かな? おそらく、乾燥した貝の出汁がベースになっているのだね」
 「あとは、ボルチーニ茸と、マッシュルーム。これは貝とキノコのスープだね」
 「いい味だね。でも、B級なのかな?」

 審査員の視線が俺たち、いや、あたしたちに注がれる。

 「それ以前にこれは、フランス料理じゃないにゃね!」
 「そうね。食材がフランスなだけで、これは中華です。わたしにはわかります」
 「わかったぞ! これは仏跳牆 フォーティァチャンだ! 大甕おおがめを蒸してたから間違いない!」
 「こ、これはマズイぞー! ニンジャコック選手! フランスコース料理対決で中華料理を出してしまったー!」

 あーあ、という雰囲気が会場に広がる。
 仏跳牆 フォーティァチャンは様々な乾物を大甕おおがめに入れて、蒸して作るスープだ。
 乾物は乾貨とも呼ばれ、非常に高価なのだ。
 明らかに中華料理である。
 だが、それは俺の想像通り!

 「あーら、撫子さん。これは残念な結果になりそうですわね。くふふ」
 「いや、それは彼を甘く見過ぎじゃぞ」
 「そうかしら、では、何か申し開きしてみなさい。ニンジャコックさん!」
 「今の彼女はブリウィータ! そこは間違えないで! ですわ!」
 「そうよ! あたしはウザイーメたちなんかには、絶対負けないんだから!」
 
 腕を大きく曲げ、腰と首を直角に曲げながら、俺は言う。

 「ウザイーメじゃありませんわ! うざ子ですわ!」

 うーん、自分でうざ子と認めたぞ。

 「では、説明するわ! そもそも仏跳牆 フォーティァチャンは、どうして、そう呼ばれるのかしら?」
 「それは、あまりにも良い香りで仏の道を歩む僧であっても、垣根を越えて食べにくるというスープだな」
 「最近はぶっとびスープという名でも呼ばれているわ」
 「まあ、中華の高級スープである事には間違いないね」

 彼らの言う事は正しい。
 
 「あら、みなさん。とても重要な事を忘れているのではなくって?」
 「大切な事……」
 「仏跳牆 フォーティァチャンは漢字でどう書きますの?」
 「それは、仏もかきねを跳びこえて、って書くのさ。それが何か」
 「じゃあ、フランスは漢字でどう書くのかしら?」
 「それは……まさか!?」
 「おい! あんた……ばかな事を言うつもりじゃ」
 「これは、B級対決でもありますわ!」
 「そう! これは仏蘭西フランスの垣根を跳びこえるスープなのよ!」
 
 ぷ……
  
 「あははっ! そういう意味か!」
 「ぷははっ! そうか! 仏蘭西フランスを越えるときたか」
 「ダジャレじゃねーか!」
 「いや、これは上手い、いや美味いスープだ!」
 「『B級』と『フランスコース料理』の限定のみに許される料理なね!」

 そう、ダジャレだ。
 普段なら一笑にされるけれど、このお題でのみ許されるのだ!

 「くっそ、こんなんで」
 「にゃは! これは一本取られたかもにゃね!」
 「こ……これはわかりませんでした」

 真紅さんも口元を押さえて震えている。
 
 「真紅さん、あなたは、わらった方が可愛いですわよ」
 「ええ、今の方が、ずっと素敵ですわ」
 「失礼、少々面喰いました。だけど、勝負は続きますよ」
 「次はメインディッシュ、その1、魚料理にゃよ!」

 いよいよここからが本番ね。
 俺たちの料理が本当に通じるかわからない。
 だけど、やるしかない。

 「大丈夫よ! ブリウィータ! あたしたちの友情は永遠なんだから!」
 「ええ、ブリマーめぐみん! 新しい衣装も似合っているわ!」
 「明日は我が身よ! ブリウィータ!」

 うん、次は俺が衣装を早着替えする番だよ……
 俺は、部長に『ブリギョダにして下さい』と言った事を後悔した。

 ◇◇◇◇

 「さて! ぷふふ、失礼、次の料理に参りましょう! 次は魚のメインディッシュです!」

 アルミホイルに巻かれた円筒の何かがテーブルに運ばれてくる。
 
 「最後の盛り付けは、わたしがいたします」

 特別審査員の席には真紅さんと茶華さんが付く。

 「3品目『鮭のガランティーヌ風』です」

 アルミホイルの封が解かれ、そこから和風の鮭の香りと、香辛料の刺激的な香りが放たれた。
 
 「これは、鮭の皮で巻かれているのね!」
 「はい、鮭の皮は最も美味という説もあります。ただ、それを残す方も多いのも事実です。だったら、それを残すことなく、美味しく食べられるようにするのが料理人としてのつとめです」

 会話しながら、胡椒とソースを振って、その料理は完成した。

 「おいし~!」
 「これは美味しいわ! 皮がパリッとしていて、中は鮭の香りでいっぱいで!」
 「うふふ、そうでしょう、そうでしょう。やっぱりマゼンダさんは素敵ですわ」

 部長たちのテーブルも大盛り上がりだ。
 くそっ、俺も食べたい。
 今日は少し豆腐をつまんだだけで、あとは水分補給しかしていないのだ。

 「サーモンとバターの味わい、そして香辛料の刺激、皮に包まれた中身はハーブが効いていて、口の中で滑らかに崩れる。良い味です」
 「このソースも素晴らしい」
 「オリーブオイルとフュメ・ド・ポワソンだね。上品な味が濃いサーモンの味を引き立てている」
 「その通りです。ソースは、口の中をさっぱりした味わいを初めにもたらし、続いてガランティーヌの味を引き立てます。それは何度食べても飽きを来させません。わたしにはわかります」
 「夏鮭が来たのに、飽きがこないとは、こはいかに!? にゃ!」
 「夏の鮭は時鮭ときしらずとも呼ばれていて、これからの産卵に向けたエネルギーが身に残っており、脂もコクも十分なのです。わたしにはわかります」
 
 時鮭ときしらずは俺も知っている。
 高い。

 「これはスゴイ! 高級で味わいの良い時鮭ときしらずを、その脂を活かした上に、皮まで美味しく食べられる逸品に仕上げた! これに対抗する魚料理をニンジャコックたちは出せるのかー!?」

 見ただけで分かる、あれはきっと美味い。
 今度、家で作ってみよう、普通の鮭で。
 だが、俺たちだって負けてはいない!
 
 「ブリギョダ! オープンマイクロース!」
 
 俺が衣装の一部のピンを外すと、スカートがミニスカートになり、肩の袖が取れ、肩だしトップスになる。

 「これは! ふたりはブリギョダ、シーズン3! ブリマリーネの姿だー!」

 司会者さん! その解説は要らない!

 「これが、あたしたちの料理『お残しは許さないガレット』よ!」

 審査員の席にガレットが並べられていく。

 「ほほう、お残しを許さないとは強気の姿勢だね」
 「ええ、食べればその意味がわかりましてよ」
 「そうか、では頂くとしよう」

 ガレットが口に運ばれていく。

 「これは……どっかで味わったような……」
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