超絶! 悶絶! 料理バトル!

相田 彩太

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第七章 決勝

その5 マズイぞ……これは

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 「さあ! 第二セットの始まりぃ! 『料理愛好倶楽部』はリーダーの撫子選手だぁー! 対する『魚鱗鮨』はリーダーの寿師翁の愛娘ぇ、安寿選手だぁー!」

 第一セットを俺が取ったおかげで、魚鱗鮨は本大会初めて王手を掛けられた事になる。
 昨年の決勝では互いに王手の状態だったが、リードを許されたのは初だ。

 「ふふふっ、これで決めるわよぉ」

 部長は不適な魔女のわらいを浮かべる。
 そう言えば、部長の笑い顔ってあんまり見た事ないな。

 「わたしの愛の料理で、必ず父さんに愛を繋いでみせます!」

 安寿さんは純白の着物風のコックコートを着て、愛を語った。
 年齢は23歳という話だが、愛嬌のある仕草と表情で数歳若く見える。

 「あんたみたいな年増にピチピチJKのアタシが負けるわけないでしょ」

 いいえ、部長、あなたの化粧は30代後半のそれです。

 「料理は愛情と腕で決まります。あなたのような未熟な腕に、わたしは負けません」
 「あらー、言ってくれるわね。でもねアナタ、アタシは命がけで試合に臨んでるの。覚悟や意気込みで勝てる勝負もあるって事を見せてア・ゲ・ル」

 安寿さんは真剣な目で、部長は真剣ながらもおちゃらけた雰囲気で言う。
 部長の言う通り、ステータスでは圧敗している。
 中央のビジョンもそれを示している。

--------------------------------------------------------------------------------
★料理愛好倶楽部 所属
 大和盛 撫子(やまとのもり なでしこ)選手
 料理:C
 体力:S
 発想:S
 財力:S
 特殊:C 

★魚鱗鮨 所属
 安寿(あんじゅ) 選手
 料理:A
 体力:A
 発想:A
 財力:A
 特殊:S

 ※特殊は得意料理を示す
--------------------------------------------------------------------------------

 あ、あれ? 思ったより示されていない?
 発想がSなのは準々決勝と準決勝の勝負が評価された結果だ。
 初期値Bから上昇している。
 部長の財力が高いのは当然だ。
 そして体力が高いのは水泳のバタフライ中学生記録を持っているからだ。
 どんな化け物だよ、部長は。
 部長は、パラメータへのポイントの振り分け方がゲームのそれだよ。

 「それでは、イニシアチブを決めて頂きましょぉー!」
 「わたしの愛で、先攻と後攻の好きな方をお譲りしますわ」

 1セット目を取られても、相変わらず魚鱗鮨の戦略は対戦相手に先攻か後攻かを選ばせる方法で変わりない。
 だが、それは俺たちの予想の通りだ。

 「ひっひっひっ、それでは、アタシはね、先攻で『テーマ』を選ぼうかのぉ」
 「それは、わたしに『料理』を選べと言っているのですか?」
 「そうさ! アタシが目指すのは完全勝利さ! あんたらのね、得意とする『寿司』で打ち負かして、ぐぅ~の音もでないぜぇ! と言わせるほどに、完全に勝ってみせるのさ!」

 意地悪そうな表情で部長が挑発する。
 
 「いいでしょう! わたしの愛で、それを受け止めて見せましょう! わたしは後攻で『料理:寿司』を選ぶわ! 兄弟子たる土御門さんの弔い合戦です!」

 兄弟子は死んだ! もういない!

 「勝手に殺すな!」

 土御門のツッコミが入る。

 「それでは、先攻でテーマを選んだ撫子選手のお題は、何でしょうかぁ!?」
 「ひっひっひっ、ちゃーんと、ここに書いてあるわよ」

 手袋と一体化しているマントを広げた部長の手の先に、一枚の紙がひらひらと揺れる。
 中央のビジョンにそれが大きく映し出される。

 そこには『テーマ:料理』と書かれていた。

 「なんとぉー! 撫子選手がお題に決めたのは、美食を求める大会のテーマに反するテーマ! 料理だぁー! 『テーマ:料理』と『料理:寿司』このお題で、ふたりはどんな試合を見せてくれるのかぁ」

 会場からも、どよどよという声が聞こえてくる。
 もちろん、普通に味の悪い料理が出て来るとは誰も思っていない。
 このというテーマをどう料理するかが期待されているのだ。

 「お題ヲ受領シマシタ。調理時間は2時間デス」

 唯一、フードコンピューターだけが平常運転していた。

 ◇◇◇ 

 「ヒャーハッハッハ、これでどんな料理を作ろうかねぇ」

 部長が魔女のわらいを上げながら、食材をエリアを見て回る。
 演技だ。
 部長の食材はそこにはない。

 「あらー、ここにはないようだから、しょうがないかっ、アタシが取り寄せちゃおっ。アイナメタラソイ クエクエマダイン、そぉれぇ~」

 部長が呪文を唱え、クルリと杖を振ると、黒子に扮した師匠が黒い発砲スチロールの箱をテーブルに置いた。

 「さて、お楽しみのお魚ちゃんたちは、このままにしておくとして、まずはお米を炊くわよ~」

 愉快におどりながら部長は米を研ぎ始める。
 酢飯の仕込み方は師匠仕込みだ。
 安寿さんもお米の準備を始めている。
 どっちも、食材は調理の後半のお楽しみに隠しているのだろう。
 先に動いたのは安寿さんだった。

 「安寿選手ぅ! ついに食材を取り出したー! あれは!? 何やら大きいニシンのような平べったい魚とシャコとヒトデ!? そして、なにやら長細い貝でしょうか!? さらにはイソギンチャクでしょうか!? 安寿選手はゲテモノ系で行く気かー!?」
 「うぉうぉうぉ! あれは穴蝦蛄アナジャコとヒトデはゴホンガゼですねぇ! そして長細い貝は筒牡蠣ツツガキ、とても珍しいですよぉ! 魚はヒラです、美味しいですよぉ! そして、イソギ……」
 「待って! 待って! 待って! アタシに言わせてぇ! なんでもするからぁ!」

 こっ、この声は!?
 
 警備員の制止を振り切って、会場に闖入ちんにゅうして来たのは……やっぱりフリージア様だった。
 相変わらずオッパイがデカい!

 「フリージア様、これが最後のチャンスですよ。また、変な事を口走ったら、二度と解説の機会は無いと思ってくださいねぇ!」

 強い口調でラウンダが言う。
 愚かな男だ。
 フリージア様がエロい台詞を吐かないはずがなかろう。

 「ええ、天地神明に誓って、真面目に話しマス! だから、お願いデース!」
 「わかりました。では、解説のフリージア様に聞いてみましょう!」

 そして、マイクを向けられたフリージア様は……

 「あのイソギンチャクは、若いケツ穴よ! ヤングアスYoung Ass! ヤングアスYoung Ass!」
 「……連れていけ、窓の無い部屋に」
 「いや、あれは『わけのしんのす』って呼び名で、九州の方言で”わけ若い” ”しんのす尻の穴”って意味で……ひぎぃ!」

 さらばフリージア様……

 「ほほう、あのボインちゃんとやら、少々、物を知っておるの」

 隣で寿師翁が呟く。
 えっ、合っていたの!?

 真実を語る口は、いつもつぐまれるものである。

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