超絶! 悶絶! 料理バトル!

相田 彩太

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第七章 決勝

その13 決着……そして……

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 「さあ! それでは、採点に移りましょう!」

 ラウンダが声を上げる。
 だが、点数を示す電光掲示板は動かない。

 「ちょ、ちょっと待ってくれ! もうちょっと!」

 特別審査員と一般審査員の中から声が上がる。
 原因は分かっている。
 まだ、『炎の7香貫なのかかん』が残っているのだ。

 「おいおい、食べないのなら、俺にくれよ」
 「そうそう! くれとは言わないわ! 一個1万円でどう?」

 観客から声が上がる。

 「いやよ! 絶対渡すもんですか!!」

 審査員席と観客席の間で皿を巡った綱引きが行われてる。

 「だったら食っちゃえよ! そいつを見ているだけで、腹が減って来るんだ! もう、だ……ダメだ……俺の理性が少しでも残っているうちに……」
 「あたしだって食べたいわよ! でも、もうちょっと、もうちょっとで幽門が開くから!」

 幽門とは胃と十二指腸との間の弁だ。

 「全部食べ切れない、でも審査をしなくてはいけない、これは困った。いや、寿師翁の方が美味いのは間違いないのだが、残したのに勝ちとするのは……だから、もうちょっと! 1時間、いや30分でいいから!」
 「30分経てば、寿司の表面が乾いちゃうだろうが! そんな寿司への冒涜は許せない、俺が食うからよこせ!」
 「だめだー!!」

 そんなやり取りが、そこかしこで行われている。
 俺は部長と目を合わせる。
 原因は分かっている。
 二十分にじゅうぶんに用意した蘭子の寿司で、審査員たちは審査前にほぼ満腹になっていたのだ。
 ここだ! このタイミングだ!

 「フハハハハ! そんなお前たちに朗報だ! お前たちは、今、採点しなくてはならない! だが、残してしまった方を勝ちとするのは心苦しいのであろう! そこで耳よりな情報を教えよう! ラウンダ! ★超絶! 悶絶! 料理バトル!★ 第42条補足!」
 「はいっ! 勝負が同点引き分けの場合は、決勝戦を除き、その試合の最高審査員が勝敗を決めます! ですが! 決勝のみ、引き分けで勝数が同じとなった場合、1回戦や2回戦のようにチーム戦の延長戦をもって優勝を決めるものとする!」

 延長戦! その単語に審査員の顔が喜びに満ちる。

 「フハハハハ! この場合、賢明な審査員の皆様なら、どうすべきかは自明であろう!」

 希望の火は消さない! 消えていない! そんな顔が観客席からも見て取れる。
 
 「えんちょーせん」

 観客席から、そんな声が上がる。
 
 「えんちょーせん」「えんちょーせん」「延長戦!」「延長戦!」「延長戦!」「延長戦!」「延長戦!」
 「おれにも食わせろ!」「フードコンピュータさんおねがい!」「審査員になれる権利を100万円で買おう!」
 「えーんちょ!」「えーんちょ!」「えーんちょ!」

 観客席から大合唱が聞こえて来る。
 
 そうだ……最強の寿師翁には勝てない。
 お題で策を巡らせようが、正面から真っ向勝負しようが、審査員を買収しようが、あの圧倒的な美味の前では金での買収など意味を成さないだろう。
 それを味わってしまったら、その審査員を味方に付ける方法は”ひとつ”だ。
 さらに、その美味を味あわせる機会を与えるしかない。
 食べれなかった観客に、消えていた食べる機会チャンスを与えるしかない。
 
 が出来る条件を与えて!!

 特別審査員と一般審査員は、そのプロフィールとお題から選ばれる。
 つまり、似たお題だったら、次も審査員になれる可能性がある!
 俺たちの最後の策は審査員と観客をに味方につける事だ!

 ブル……ブル……ブルルルルルッルン!

 中央の電光掲示板が音を立てて、点数をカウントしていく。
 確実に引き分けにする方法は、たったひとつだ。

 「出たー!! 蘭子選手100点! 寿師翁選手100点! 規定により延長戦突入です! 無敗の寿師翁に一矢報いたのは、圧倒的な物量で攻めたJK! 蘭子選手だー!」

 計画通り!!
 
 「いやー、本当は寿師翁選手の方が美味しかったかもしれないけど、完食できなければねぇ」
 「ええ、後攻の審査を忘れさせる程の寿司を出してくれた蘭子選手も、ちゃんと評価しないといけませんからねぇ」
 「一瞬でも、サレンダーの台詞を寿師翁に言わせたのですもの。そこもポイントが高いですね」

 審査員たちがインタビューに答えている。

 「なぜだ! どう考えても、師匠の寿司の方が美味かったではないか!」

 土御門が気勢を吐くが、決まった結果は覆らない。

 「こ、これは想像してなんだわ。まさか、こんな方法があるとは……やるようになったな……山田ぁ!」
 「ふっ、拙者ではない、この策はボスと少年の計略よ! 正直、拙者でも考えつかんわ!!」

 そう、これは俺と部長が考えて、考えて、勝てないと分かって、それでも考えて、そして練り上げた策だ。

 「寿師翁……、お前は完璧で無敵よ。だが、付け入る隙が無い訳ではないわ、お前の唯一の隙は、料理が美味すぎる事よ! 正直想像以上だったわ!」
 「フハハハハ! 俺たち個人では勝てぬ! ならば! 先送りにするしかなかろう!」
 「え~、あたしの立場は~」

 蘭子が頬を膨らませて抗議する。

 「いや、蘭子じゃなければ、ここまで出来なかった。蘭子さまさまですよ」
 「うん、あたしじゃ無理だったわ! 蘭子ちゃんの実力よ! 実力!」
 「そうだ、少女の包丁技あってこその引き分けだ! 自信を持っていいぞ!」
 「うむ、この儂もこの結果に異を唱える気はない」

 寿師翁も加わって蘭子を持ち上げる。

 「えへへ~、あたしがんばったからね~」

 ちょっと機嫌が直ったようだ、良かった。
 
 「じゃが、延長戦で負ける気はないぞ!」
 「そうだな、そこの雑煮にリベンジする機会が来たのだ。僥倖ぎょうこうと言えよう!」
 「愛に延長時間はあるという事を教えてあげましょう!」

 そうだ、これからが正念場だ。

 「さて! みなさんお待ちかねぇ! 延長戦の特別ルールを説明します!」

 特別ルール!?
 1回戦や2回戦と同じじゃないのか!?

 「ぶ、部長?」
 「私もわからないわ。小冊子には載っていなかったもの」
 「どんなのかな~?」

 俺たちはラウンダの声に耳を傾ける。

 「延長戦では、各チームで『料理』『食材』『テーマ』の3つを選び、両チームで合計6つのお題を満たす料理で勝負して頂きます!」

 カオスってレベルじゃねーぞ!!
 くっ、こうなれば談合するしかない!!

 「あー談合は禁止ですよー、もちろん相談も禁止です。さあ! ここにクジを用意しましたぁ!」

 ラウンダがスタッフからクジを受け取る。
 それは2つの箱で、その中に3枚ずつ、折りたたまれた紙が入っていた。

 「さあ、両チームの方々! ここから紙を一枚取って下さい。そこに『料理』『食材』『テーマ』と書かれてありますので、それを受け取ったらお題を書いて見えないように返して下さいね」

 ラウンダがそう言うと、魚鱗鮨のメンバーと部長と蘭子が紙を取り、俺も取る。

 「いいか! みんな! わかっているな! 6つのお題が集まれば、そこにはカオスしか生まれない! だから、勝負を成り立たせるようにするんだぞ!」
 「ふん、雑煮に言われるまでもない!」
 「だいじょうぶだよ~」
 
 土御門と蘭子が頼もしい返事をする。

 「儂はこう見えても、常識と空気を読める男よ!」

 頼むぜ! 年の甲!

 「愛こそすべて! Love is ALL !」
 「まかせて、陸! 私が今まで、真面目じゃないお題を選んだ事があって!?」

 お前らが一番危ないんじゃぁー!

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