超絶! 悶絶! 料理バトル!

相田 彩太

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最終章 最終戦

エピローグ 俺たちの戦いは……

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 こうして、俺のひと夏の戦いは終わりを……告げなかった。

 俺は、今、料理している。
 いつもの家庭科室兼部室で。
 食材はMVPの賞品『余った会場の食材を持って帰れる権利』を行使した。
 優勝賞金1000万円に比べショボイ。

 「そして、なんで、こいつらが部室に居るんじゃ―!?」

 部室には60名近い人物がひしめき合っている。
 延長戦で俺たちを助けてくれたみんな、ビッグバストブービーズ激辛辣火ファイヤーヒート、タベルト・ツクルト・ミンナト、三好・クイーンズ、ものぐさ三銃士、江戸川と愉快な仲間たち。
 彼らが、彼女らが、部室に集結しているのだ。

 「そ、それは、あ、あたしたちが体験部員だからですよ」
 
 ダメージドセーラ―さんが部屋に比較的溶け込んだように言う。
 その他の女性陣は……ああ、ここはいったいどこのイメクラだよ。

 「あたしたちは、貴重な体験部員なんだからね! ちゃんと、もてなしなさいよ! 具体的には、ちやほやされたい!」
 
 椅子にふんぞり返りながら、うざ子が言う。

 「せやせや、ぼん、お楽しみはこれからやで! 負けた残念会や!」
 
 とんだ残念回だよ。

 「せめて、俺のMVP祝勝会とかにするべきだろ! 具体的には、ねぎらわれたい!」
 「ごめんな、花屋敷、このおっぱいは俺たちのものなんや」
 「いやーん、若いってスゴイ!」
 「でも、18歳未満は、ココまでよっ」

 60名近い人数が入ると、家庭科室はぎゅうぎゅう詰めになると思いきや、部屋の人口密度には偏りが生まれていた。
 ほとんどの男性陣が、ビッグバストブービーズの近くに集まっているからだ。

 「へい! 残り物野菜味噌の出来上がり! 湯豆腐でも飯でも好きな物に乗せて食いな!」

 俺の背後では連続稼働している電子レンジが次々と湯豆腐を作り上げている。
 開封済の豆腐は足が早いからな。

 「にゃは! クーラーの効いた部屋で食べる湯豆腐はさいこうにゃ! やっぱ”ばけねこ”がいいにゃよ!」
 「日本酒ならば”14歳”であろう。ワシのお奨めの一品である。若さの残る良い酒だ」
 「ヒャッハー! 男なら”ブラックドラゴン”だぜ!」
 「わたしは”女たらし”が好きです。女性向きの甘みが活きたお酒です。わたしにはわかります」

 年長組は、まだ料理には手を付けず、日本酒談義に花を咲かせている。
 い、いちおう、ここは学びのそのなのですが……。

 「おまたせ~、刺身山盛のとうじょうだよ~」
 「いやー、ウチがお造りの速さで負けるとは、思わんかったよ。さすが寿師翁と引き分けただけはあるやね」

 外で魚をお造りにしていたのは蘭子とタベルトさんだ。

 「兄さん、おつかれさまでした」
 「おにいさん、そろそろパーティの準備が出来上がる頃ですかね」
 「かいたいしたよ!」

 皿を次々と持ってくるのは、海美、空楽、宙弥、俺の愛しのガキどもだ。

 「兄さん、揚げ物を手伝います」
 「あ、い、いいですよ。ゲストは休んでいて下さい」

 俺はビニール袋の中で下味と衣を付けている。
 中身は鶏だけじゃない、肉っぽいもの全部だ。
 羊やワニを揚げるのは初めてだが、まあ、火を通せば食べれるだろう。
 俺の隣では油が熱せられている。
 唯一、俺を手伝ってくれているのは、ダメージドセーラ―さんだ。

 じゅわー

 香ばしい音を立てて、次々と肉と魚が上がっていく。

 「あつっ! ほ、ほら、油が跳ねて危ないですから、み、みなさん、は、はなれて下さいね」

 熱いのはダメージドセーラ―のせいじゃないかな。
 ダメージドセーラ―エプロン……これは新しいジャンル!

 「お待たせ! 生徒会長から『料理愛好倶楽部』存続の念書をを取ってきたわ!」
 「だから、議事録にもちゃんと残っていますから、大丈夫ですよ」
 「だって『口約束は約束じゃない』なんて言われちゃたまんないものね!」
 「そんな、文部科学省の役人のような事は言いません」

 ガラッと扉を開けて入って来たのは部長と生徒会長だ。

 「遅くなってすまぬ! 魚鱗鮨の祝勝会が長引いてな、そして、こいつが中々離してくれなくてな」
 「えへへ~、わたし、おんぶおばけ~、兄さんのおんぶおばけ~」

 続けてやってきたのは師匠だ。
 師匠の背に乗っているのは安寿さんだ。

 「おっ! MVPの副賞オプションである食材を打ち上げ料理にしておるのか。これは美味そうだな」
 「うふふ~、わたし、オプションなの~、兄さんにずっとついていくの~」

 あー、もうラブラブだよ。

 「オプション……、ビッグバイパー……、ハイパー兵器……エロいわね!」
 「さあ! ますよ! ザーボンさん! ドドリアさん!」
 「座本ざもとです」
 「百々目鬼どどめきだ」
 
 誰か、このしゃべる公然猥褻を黙らせてくれませんか。
 もうやめてください!! わらっている子もいるんですよ!!
 教育上よくありません!
 そういうのは! 俺と俺の桃闇ピンクダークに教育的指導をしてからにして下さい!!
 
 「へえ~、ぼんは、頭がハッピーレッスンがお好みなんやね!」

 えっ!? 相変わらず、ツクルトさんはエスパー!
 
 「少年、料理中にエロい妄想は止めた方がいい、怪我をするぞ」
 「はい、師匠、こうみえても俺は二代目”超絶・オブ・ザ・悶絶”ですから!」

 しかし、字面じづらだけを見ると、エロの称号だよな。

 「でも~、りっくんが、がんばったのに、ちょっとごほうびが少ないのが、ざんねんだね~」

 そうだな、保存のきく食材もいくつかはあるが、成果と苦労の割に得る物は少ないな。
 廃部を回避できたのは嬉しいが、それはメリットは無く、現状維持の結果だ。
 だけど『ごほうびはあたし~』みたいな目で見るのは止めてくれ。

 「そんな兄さんに朗報があります!」

 海美がスマホをかざして大声を上げる。
 えっ、何か嬉しい事あるの!?

 「花屋敷一家の大勝利です!」
 「ボクのおとしだまがふえたよー!」
 「グルメコインか!!」

 そういえば、どのチームが優勝するかを賭けるシェフ券が発行されていると聞いた覚えがある!
 そして、愛しのガキどもがお年玉貯金を使っていたとも!

 「で、でも、優勝は魚鱗鮨だぞ? お前たちは俺たちのチームに賭けたって言ってたじゃないか!?」
 「ちっちっちっ、兄さん。兄さんはあたしたちを甘く見過ぎです」
 
 自信ありげに海美が言う。

 「連勝複式で賭けたに決まっているじゃないですかー!」
 「本命と大穴でね! 万馬券! いや、万シェフ券よ!」
 「おうまさんパカパカ~!」

 連勝複式とは1着と2着を当てる賭けで、どっちが1着になるかは関係ない。
 くっそ! 誰だよ、こいつらに賭け狂いな事をを教えたのは!?
 でも、今だけはよくやった!

 「ふっふっふっ、私のアドバイスが活きたようね」

 お前か部長!

 「グルメコインは『竜の舌』でも使えるから、たべにきてね~」

 如才じょさいないな、蘭子は。

 「もちろん! 魚鱗鮨でもネオ魚鱗鮨でもグルメコインは使えるぞ!」
 「アタシたちの、縦四方固め会イベントの抽選券付きCDも買えるわよ!」
 「今度は、陸さんは、室内向けコース料理を食べたくなるはずです。わたしにはわかります」
 「特選食材の通販もやってるで!」
 「ヒャッハー! 激辛料理はダイエットに最高だぜ!」

 ああ、なんて現金なやつらなんだ。
 でも、素敵な部員なかまたちだな。

 「にゃは! それじゃあ、おいしい料理とお酒を頂きながら考えるにゃ! どのお店が一番かを!」
 「そうね、流石に私も疲れたわ」
 「おなかぺこぺこ~」
 「そうだな、では、俺が主役って事で」

 俺は輪の中心に入る。

 「それでは! 『料理愛好倶楽部』! 部員と体験部員とゲストを交えて! 残念会を始めます! 残念の主役は当然、陸よ!」 
 「ざんねんかい~、はっじまるよ~」
 「拙者も少年のおかげで、”超絶・オブ・ザ・悶絶”の呪縛から解き放たれたぞ!」
 「だから、MVPおめでとう会ですって!」
 「いいじゃないの陸、残念フォーでも」

 ああ、部長が微妙にヒロインを主張している。
 まあ、いいか、俺は無敵で素敵で完璧な主人公ヒーローには向いてない。
 これくらいが、こんな他愛ない日常の方が、俺にあっている。

 「さあ! みんな! グラスはもったな!」
 
 生きるのは戦いだと、誰かが言った。
 台所は戦場だと、誰かが言った。
 腹が減っては戦ができぬと、みんなが言った。

 俺のひと夏の戦いは、これで終わりを告げるが、生きている限り、俺の料理たたかいはこれからも続くだろう。
 明日も、明後日も、未来も、きっとこの命が尽きるまで。

 だから、俺は、俺たちは、生きている限り、毎日、毎日こう言うんだ。

 「それでは! いただきます!」と

 「「「「「「「それでは! いただきまーす!」」」」」」」

 --了--
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