祝福ゲーム ──最初で最後のただひとつの願い──

相田 彩太

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第3章 夢よもういちど

3-1.確信の喜び 鈴成 凛悟

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 日本時間 4月1日午後3時過ぎ
 ダイダロスとティターニアの兄妹がタイムリープの起点に指定した時刻。
 その時、凛悟と蜜子は新幹線のホームへと続く階段を登っている途中だった。

「……!?」
「センパイ、いきなり立ち止まってどうしたんですか?」

 階段の途中で立ち止まり“本”を取り出して読み始めた凛悟に蜜子は問いかける。

「ここじゃダメだ! 蜜子、ホテルに行くぞ!」
「え!? そんな!? まだ日が高いのに!?」

 妙な勘違いをする蜜子の手を取り、凛悟は駅前のビジネスホテルへと入る。

「なーんだ、ただのビジネスホテルじゃないですか。ま、こういうのもたまには……」

 ビシッ

「おうち!」
「色ボケはハッピーエンドロールの後にしておけ。俺は少し考える事がある」

 凛悟はそう言うと本を、”祝福”で手に入れた”祝福ゲーム”の情報が載った”本”をじっくりと読む。
 時に悩み、時に考え、時に迷いながら凛悟はそこに書かれた情報を読み取っていった。

「センパイ、何かあったんですか? さっき”祝福”が一気に3つ減って10になったことがそんなに問題なんですか?」

 このホテルに入る前、いや駅を出るころには祝福は13から10へと減っていたことを思い出し蜜子は問いかける。

「よし、わかった! 俺たちは勝利する!」
「な! なんですとー!?」

 蜜子は”本”を横からチラチラと眺めていたが、その詳細までは見えなかった。
 かろうじてわかったのは凛悟が同じページを繰り返し読んでいるということ。

「今から説明する。まずこの3つのページを読んでくれ」

 凛悟が蜜子に示したのは第12,13,14の願いのページ。
 ダイダロスとラーヴァ、そしてティターニアのページだった。
 
「ええと、第12の願い……、これってタイムリープの能力!? しかもこのダイダロスって人に都合がよくって、安全装置付けまくりじゃないですか!? こんな能力どうすればいんですか!?」
「一見そう思うだろ。しかし、残り2つのページを読んでみろ。感想が変わるはずだ」
「そうですか……、ま、読んでみますけど」

 ”本”のページをめくり蜜子は続きを読む。

「え、この第13の願いって4月2日の朝方!? そして第14の願いは4月2日の22時42分!? 時間が巻き戻ってる!? しかも第14の願いって第12の願いとクリソツじゃないですか!? しかもこのふたりって兄妹!? そして内心愛し合っている!?」
「いや、そこは違うのだが……」

 凛悟が手に入れた”本”には祝福者のプロフィールも載っている。
 本人の信条や恋愛関係まで。
 ダイダロスのページには『口は悪いが、妹のことを誰よりも大切に想っている』とあり、ティターニアのページには『口うるさくはあるが、兄の将来のことを誰よりも案じている』とあるが、『愛し合っている』とは書いてない。

「似たようなもんじゃないですか!」
「まあそうかもしれないが、本質はそこじゃない。重要なのは願いの順番とその日付だ。おそらくだがダイダロスはタイムリープの能力を使って、他の”祝福”を無駄撃ちさせる作戦だったのだろう。”祝福”を使わせた上でタイムリープすれば無かったことに出来るからな」
「そして、この13番目のラーヴァさんはその策略に引っかかったと。でも、それじゃ14番目のティターニアさんはどうしてこんな願いを? 最後のひとりになるつもりだったんじゃないんですか」
「どうしてかと聞かれれば理由はひとつ。ダイダロスはタイムリープを使った自分の作戦を妹に伝えてなかった」
「伝えなかったらどうなるんですか?」
「ダイダロスの手には偽装の聖痕スティグマがある。どうしようもないピンチになった時、ティターニアはまだ兄が”祝福”を残していると勘違いをして”祝福”を使ってしまう。いや、使

 凛悟の説明に蜜子はポンと手を叩く。

「なるほど! ダイダロスの目的を達成させなくしたんですね!」
「その通り! 勝利の目がなくなったふたりは仲良くリタイアってわけさ!」
「スゴイですね。いったい誰がそんな事をやってのけたのでしょうか。あたし尊敬します!」

 手を組み、視線を上げる蜜子の前で凛悟はエッヘンと胸を張って見せた。

「え、センパイ、ひょっとして……」
「そうさ! 俺さ! というか、この”本”の情報が無ければダイダロスの目的も能力もわからない! たとえどこかで気付いたとしてもリープされればオジャンだ! タイムリープの起点前に”本”を手に入れた俺じゃなければ作戦も立てられないし実行も出来ない!」
「さっすがぁ! センパイってば時空を超えた天才です!」
「はっはっはっ、もっと褒めてもいいぞ、イェーイ」
「イェーイ」

 ハイタッチをしたままクルクルと回り出すふたり。
 そんな時、凛悟のスマホからメールの通知音が響く。
 
「あ、センパイ、スマホに着信が来てますよ。藤堂さんかしら」
「いや、違う。差出人は……、ダイダロス!?」

 予期せぬ差出人からのメールを凛悟と蜜子は警戒しながら読む。
 内容は『逸果いつか みのりに気を付けろ。あれはヤバイ女だ』という文面。

「これって……、藤堂さんがピンチってことでしょうか。早く合流しないと」

 ふたりと夢の中で同盟を結んだ”祝福者”みなと 藤堂とうどうは今、福岡に居る。
 夢になったことでふたりの連絡先がスマホから消えてしまったためだ。
 だがそれも”本”を手に入れるところまで。
 今のふたりは藤堂の電話番号からメアド、住所に至るまであらゆる連絡先を”本”で知ることが出来る。

「そうかもしれない。連絡しておこう。だが、あせる必要はないさ。最大の難関を突破したことで見えて来た」
「見えたって、あたしたちが勝利する道ですか?」
「ああ、この作戦ならほぼ確実に俺たちは当初の目的を達成できる。『俺たち3人に幸福に満ち溢れた人生を』という目的をな」

 凛悟は忘れてなかった。
 蜜子と藤堂との3人で決めた願いのことを。

「教えて下さい! 超時空天才のセンパイの作戦を!」
「ああ、いいぜ」

 そして、凛悟は蜜子に作戦を伝える。
 その作戦はシンプルでかつ、善性に満ちたものだった。
 
「それです、それ! それでこそセンパイです! イヤッフー、もう勝ったも同然ですね」
「いやいや、油断は出来ないぞ。しかし、ま、十中八九間違いないだろう」

 そう言ってふたりは再び笑い出した。
 もし、ここに藤堂がいたなら、『そいつは負けフラグやで』と言われてしまうほど高く。
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