祝福ゲーム ──最初で最後のただひとつの願い──

相田 彩太

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エピローグ 夢のつづき

エピローグ⑥ 最後の勝利者

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 それは、静かな──、本当に静かな昼下がりだった。
 日差しは温かく、風は優しく、世界が生きることを祝福しているような心地良さだった。
 静寂せいじゃくの中に響くのは計器の音とか細い呼吸音のみ。
 そんな静寂しじまの中、彼は目を覚ます。

 いけない、少しの間だが意識を失っていたらしい。
 1秒たりとも目を離すわけはいかないのに。

 彼は計器を見て、その弱い数値がことに安堵あんどする。
 それはこの一瞬でフラットになってもおかしくないのだ。

「……パパ、おきた?」
「ごめんな、ちょっとだけ寝てた。夢をみていたんだ」

 彼は、グッドマンは愛しい娘の手をそっと握る。
 その冷たい体温は彼の心まで震え上がらせるようだった。

「どんな夢?」
「キャロルが元気になって一緒にアイスを食べたり、恐竜と戦ったり、悪いヤツのアジトに乗り込む夢さ」

 記憶はおぼろげ、だが妙に現実的に感じる夢の話をグッドマンは語る。
 夢の中でキャロルが死んだことは胸に伏せていた。
 そんなことは夢であっても娘に聞かせるべきではないと。

「そう、あたしも夢をみたの」
「どんな夢だい?」
「大冒険の夢。ケビンって男の子といっしょに、その子のパパとママを探しに行くの。ドラゴンファイヤーをバブルボールのなかにしまっちゃったり、クレヨンロケットで山を飛びこえちゃうの。楽しかったわ」
「いい夢だ」

 自分のとは違う、子供らしい夢だとグッドマンは思う。

「それでね、ついにその子のパパとママに会えたの。とってもよろこんでたわ。あとね、なんとね、そこにはママもいたの、あたしのママ」
「それはよかった。ママも喜んだだろう」
「うん、とっても。それでね、さいごに光るものがあたしたちの中に入ってきて、みんなで帰ることにしたの。でもママだけはここにのこるって。ちょっとさみしかったけど、パパがなきそうだから帰ってあげてってママがいってた」

 か細くなっていくキャロルの声、それを聞くたびにグッドマンの心は締め付けられた。

「そうか、ママは優しいな。さ、もうおやすみ。目が覚めたらきっと良くなっているから」
「うん、パパ。でもねさいごに──」

 振り絞るような息でキャロルは告げる。

「──ママからの伝言、『左手を見て』だって」

 左手? そこには妻との思い出の結婚指輪がはめられているだけのはずだが。

 娘からの伝言のままグッドマンは左手を見る。
 その目に映ったのは”1”の文字。
 そして彼は思い出した。
 あの夢が夢ではなかったことを。

 ◇◇◇◇

 明るい闇の中、最後の勝利者は足を進める。
 手に”祝福”を宿し、目に涙を浮かべ、心に愛を抱いて。
 その前に光の人型が、”神”が現れる。

「よくぞここまで来た。最後の”祝福”を持つものよ」

 ”神”は手を広げ笑顔で”祝福ゲーム”の最後の勝利者を迎え入れる。

「25の祝福に選ばれし者よ、最後の勝利者よ、その手に全てを持つ者よ。願いを言うがいい。願いでも叶えよう。汝は永遠の命を得ることも、時を遡ることも、我と賭けゲームに興じることも可能だ」
 
 最後の”祝福者”は神の誘いを跳ねのけるように右手を振り払う。
 ”祝福”の宿った左手を胸に彼は叫ぶ、”最初で最後の願い”を。

「そんなものはいらない! そんなものは望まない! 私が望むのは──」

 そして彼は、グッドマンは願った。
 強く、強く、誰よりも愛しく。

「最初から最後まで! ただひとつだ!!」

 ── 了 ──


 
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