野菜士リーン

longshu

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第1章

1-18 僧侶リョウジンとルーンの秘密

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「さて、みなの衆、ここに言う”ルーン”という代物は我々の眼前の世界にも実は当たり前のように存在しておる。ただ我々『ハマツ』の民はその事に気づいていないだけなのじゃ。大陸の『ウェールズ』王国や『レボルテ』の魔道士達はこのルーンを魂にて感じ取り、うまく処して扱う事により大きな力を発揮しているのじゃ。」

ここは『可睡の杜』という樹齢数百年の紅葉やくすの樹、霊前竹に囲まれた霊森の奥深くにある寺院『可睡斎』である。『ハマツ』で多く信仰されているゼン宗の内、最大派閥の宗派の総本山的役割を担っている。(『ハマツ』に古くから伝わる古文書『トウトウミ』によれば、はるか昔には『キョト』という太古の宗教都市に総本山があったようだが、その都市が今どこにどのような形で存在しているのかは、魔法のまったく介在しない『ハマツ』で却って発展を遂げた考古学、歴史学の専門家を以てしても誰にも分からないのであった。)

そして、ユーイ達家族は『可睡の杜』にいつものように遊びに来て、斎主リョウジンの法話を聞いている。

「ふ~ん、ド○ゴンボールの”気”みたいな感じだね?」

タツキが率直に、ストーリー崩しを言う。

「う、うむ、そうとも言うか、、、(調子狂うなぁ、、、)。」

ここ『可睡斎』の斎主リョウジンはタツキ達が来るたびに、いつもの説得力と機知にとんだ法話からペースを崩されっぱなしであった。

「そしてルーンはその属性によって大きく、火、水、風、土、光、闇、時空に別れておる。ここ数年友好的になり『ハマツ』とも交流のある『ウェールズ』王国は火、水、風、土魔法で形成されておる四精魔法というカテゴリーの専門家集団じゃ。一方新興国家『レボルテ』は女王レーネが時空魔法を一手に束ねておる、彼女の発明による『飛空艇』は見たことあるじゃろう。」

「え、あの船、飛○石で飛んでるんじゃないの?」

「う、この物語は、ラ○ュタとはちょっと違うの、、、(誰か止めないと物語が崩壊してしまうぞ、、、)。あれは時空魔法の一つ重力制御魔法を石に埋め込んで、それを空を飛ぶための船に装着し、魔力を持たぬ兵士でも操縦できるように工夫したものじゃ。」

「じゃぁ、やっぱり飛○石じゃん。」

「ま、まぁ平たく言えばそうなんじゃが、なんか釈然とせんのぉ、、、。」

弱冠8歳で、当然の事ながら空気の読めないタツキに閉口しながらリョウジンは話を続ける。

「そして例えば、ルーンの属性を正確に理解して使役すれば、、、、」

と、言って右手のひらを上にかざし、一言小さな声でルーンを唱える

《ジャオフオ》(着火)

手のひらの上 1cmほどのところから直径5cmほどの丸い火の玉が燃え上がる。そして、リョウジンはまた一言、今度は少し勢いを込めて唱える。

《チゥレイ》(球雷)

丸い火の玉は、同じく直径5cmほどで時折周囲に小さく鋭い稲妻を閃かせる球形の雷の固まりに変化する。

「わぁ~、初期の頃の”チ○リ”だね!」

「ま、まぁ似たようなもんじゃの、、、」

ゴーン家の一行は、母トーモのお墓詣りがてら森深い『可睡の杜』の中にある寺院『可睡斎』のリョウジン和尚の法話を楽しみに聞いている。法話での実技を交えたルーンの教えが面白いのと、特に子供達にとってはリョウジン和尚が子供達に掛け値なく優しく、その人生経験からくる無上の慈しみを肌で感じることが出来るからだ。また法話の最後に出される山で採れた新鮮な素材を使っての精進料理や、典座(お寺での料理を担当する僧侶)が作ってくれるボタ餅も楽しみの一つになっている。

「そして、このようにルーンの仕組みを理解して魔道として大きな力をもたらすのとまったく同じように、ルーンは世界の循環の仕組みそのものでもある。私やあなたもルーンの存在そのものであり、現在は仮に肉体という衣を着ているだけで、その中身はルーンそのものなのじゃ。だから、私達が定命でやがて死んでいく儚い存在だからと言って嘆くには及びないし、種明かしをするならばこの世界にあまねく顕現しているルーンの元に還るだけなのじゃ。」

「ふ~ん、僕達ってア○ラと一緒なんだね。」

「ま、まぁ、そうじゃな。(要点のみよく捉えていると言っていいものかの?)」

理解しているのかしていないのか、タツキはリョウジン和尚の話を聞くのがとても好きで、そして始終トンチンカンな質問や感想を繰り広げているが、それにも決して邪険にせず丁寧にわかりやすく答えようとする和尚の真摯な人柄が垣間見られる。リョウジンは小ぢんまりとして屈託ない、笑顔の似合う老僧で、和尚の特徴であるツルツルの剃髪、袈裟懸け黒法衣である。

(え~と、紅蓮の〇矢の指使いは、あーやって、こーやって、、、)

一方のワカは、法話の途中でもいつまで経っても妄想の中だ。一応、聞くとは無しに和尚の話を聞いてはいるようだが。

「和尚、今度ワカとタツキは近頃国交が樹立した『ウェールズ』王国の『ルーアン』に遊びに行くんですよ。」

ユーイが彼らの日々の営みを言うとはなしにリョウジンに告げる。

「ほぉ、『ルーアン』とな、知己もいくらか住んでおるがどこへ行くのじゃ?」

「はい、子供達には定番の『ルーアン魔法遊園地』です。」

「だよ!」

「ワカ、ジェットコースター乗るの!」

「おぉ、それならば丁度良い。あそこの園長とは旧知の仲なのじゃが、これからしたためる手紙を預かってくれんかの?」

「それは構いませんが、大丈夫なんですか、子供達に預けて。」

「ワカはよほどしっかりしておるから大丈夫じゃろ、それに季節の便りみたいな手紙じゃしの。」

「うん、分かった!」

そして法話も終わり、書斎へ戻って手紙をしたためたリョウジンが説法の間へ戻ってきた。

「では、ワカ、魔法遊園地の園長に頼んだぞ、リョウジンからの季節の手紙じゃと言えば分かるはずじゃ。」

「は~い。」

ワカは父であるユーイや、特に親代わりの叔母ミーマには一貫して反抗的な態度をとるものの、リョウジン和尚の言うことは素直に従うのであった。これも人徳のなせる業であろうか?

実はこの手紙は表向きは知己の間の挨拶状ながら、複雑なルーンによるを暗号を解くとこの世界を揺るがした『英雄戦争』にもまつわる非常に重大な事実が書かれているのである。国家主席魔道士程の者でもなければこの手紙にルーンによる暗号が張り巡らされていることすら見抜けないであろうし、見抜いた所で解読は不可能で何らかの不可抗力でルーンの残香が出る程度にしか証拠が残らないようになっている。また情報漏洩の危険が迫れば、瞬間に灰になると言った幾重にも渡る機密防護策がとられていた。また、毎度情報を渡す手段も異なり、もしいたとして密偵に気取られないだけの細心の注意を払って情報のやり取りが行われていた。

「では、和尚、うちに帰って初めての遠足の準備に取り掛りますので(笑)。」

「うむ、ワカ、タツキ遊園地楽しんでくるんじゃぞ。」

「は~い。」
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