野菜士リーン

longshu

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第1章

1-17 ワカ・タツキ登場

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さて閑話休題、『風の馬』に乗って『土の賢者』の元へ向かっているリーンとガラハドの物語はしばらくお休みする事として、ここで物語の舞台をもう一組の主人公、ワカとタツキの姉弟へ移すことにする。

、、、

タツキは友達たちとタツキの住んでいる家の隣の空き地で昆虫採集をやっていた。タツキの住んでいる家は市街地なのだが、市街地と言っても周りを林や荒れ地や草地に囲まれている一区画である。他の子供達が怖がって掴めないカマキリも平均で掴んでしまう野生児であるが、決してガキ大将ではなく周りの子供達と一緒に仲良く虫取りに興じている。数人で林に囲まれた草地の庭を飛び回り、珍しい昆虫を草原中駆けまわって探しまわり、その機敏、無秩序、喧噪はどちらが昆虫なのか分からないようである。

「やった!ニジイロクワガタ捕まえたに!これに”魔法”をかけると色んな色に光るって図鑑に書いてあったに!」

「嘘だ~。」

「ホントだに、ハマタ図書館で借りてきたのに載ってるんだから!」

先ほどの章まで至る所で嫌というほど魔法が駆使されていたが、ここ『ハマツ』は他国からの文献や図鑑などで魔法の知識自体は簡単に伝えられているものの、魔法が出来る人など皆無だし、彼らの住んでいる都市化された区域では草原の国に多数住んでいたような幻獣たちもほとんど見られない。幻獣達は、見つかったらいたずらされそうな子供達からは隠れて、人間達とは別次元で生活しているのであった。

「いいな~、タッちゃん、これから『ルーアン』の『シャイニング・ムーン遊園地』行くんでしょ。僕、魔法遊園地行ったことない。パンプキンホラーハウスの感想きかせてよ。」

「イイだら~、おみやげにキーホルダー買ってきてやるで!」

しかし、実はビビリーなタツキはホラーハウスなどまったく入る気は無く、メリーゴーランドやコーヒーカップといった、メルヘンチックな乗り物が目当てなのである。

------

外で虫取りに興じているタツキ達男の子とは対蹠的に、ワカは家の中で一人、ずーっとだまってマンガばかり読んでいる。部屋はジャイアント羽虫の巣窟かと見まごうばかりのゴミやマンガ本が散乱したカオスだがまったく意に介す様子はないようだ。

「あんた、来月から中学校でしょ!!宿題は!!!」

「うるさい、言われなくても分かる!!!!(”し〇げきの巨人”から目は決して離さない)」

「何、その態度は~(キー)!!!!!」

ここは、『世界樹』ユグドラシルや王宮『イスティファルド』のある大陸からは海を隔てて遠く離れた城塞都市であり島嶼都市であり、また発明都市でもある『ハマツ』のとある一家である。『ハマツ』は大陸とは海流の激しいベグ海で隔てられ、大型帆船や飛空艇といった交通手段が発明されるまでは、長年大陸と交流は全く無く独自の発展を遂げていた。

また島嶼国家としての統治も完璧なほどに隙がなかった事から、『ミズガルズ』の住人から見れば最後の秘境にも感じられるこの都市が発見された後も、城壁の守備と監視を良くし中原での長年に及ぶ『ウェールズ』王国の弾圧や、レジスタンス達の起こした『英雄戦争』にも全くと言っていいほど影響される事なくその独自の繁栄を謳歌していた。

そこに住むワカ・B・ゴーン とその弟のタツキ・B・ゴーンの姉弟は、『ハマツ』から最新の魔法強化船で数時間離れた所にある魔法都市『ルーアン』への定期便に乗って、子供たちにとっては『ミズガルズ』随一の観光名所『シャイニング・ムーン魔法遊園地』へ向かおうとしていた。

------

林と草地に囲まれた自然に今にも飲み込まれそうなゴーン家で、自由気ままに遊び呆けている子供の唯一の親であるユーイが言った。

「ほら、ワカ、タツキ、遊んでいるのももう終わりだぞ、そろそろ準備を始めないと『ルーアン』への船に乗り遅れるぞ。」

大広間にいたユーイから、子供達に向けて叱咤が飛ぶ。

「え~、しょうがないな~。じゃ、パパがそう言うから、またね~、魔法遊園地のお土産楽しみにね~。」

「うるさい!宿題なんかこうしてやる!!!」

びりびりに破ける課題のプリントとノート、一時の修羅場である。そうは言いながらも、のたのたと準備を始める子供達であった。

、、、

「ほら、急げよ、ワカ、タツキ、切符はちゃんと持ったか?財布は?着替えは?ワカ!タツキの面倒しっかり見るんだぞ?港についたら親戚のミーナおばさんが待っていてくれるからちゃんと落ち合うんだぞ、それから、、、、」

姉弟だけでの初めての遠出に心配でならない子煩悩な父親は、100箇条にも及ぶかのような注意事項を延々と述べ立てている。

「、、、分かったか?」

「はいはい。」

「はいは一回でいい!」

「は~い。」

『シャイニング・ムーン魔法遊園地』は彼女ら『ハマツ』の子供達にとって(『ミズガルズ』のお子様たち全てにとっても)定番の観光スポットで、子供の内に一度は行ってみたい有名すぎる名所である。二人は共に平和で退屈な都市『ハマツ』で生まれ育ち、今回が初の子供たちだけでの遠出であった。

ワカ・B・ゴーンは11歳、引っ込み思案で、ごく一部の気のあった友達とマニアックなやり取りをする事だけが楽しみで、さもなければいつもぼーっとしている。身長は154cmほど、茶色のショートカットに茶色の瞳、学校の成績はいつも一番であるが大きくて鈍いことからウドの大木とよく呼ばれる。優等生気質たっぷりで可愛いんだから、もっと活発になればよいのにと、よく周りから思われている女の子だ。

タツキ・B・ゴーンは8歳、短気で神経質で猪突猛進、活発を絵に描いたような男の子だ。127cmほどで軽くカールした茶色の髪に、黒い瞳、ヒョウキンな顔立ちをしておりみんなの人気者である。ビビリーである事はワカと父親のユーイ以外には知られていない。家族以外には強気な彼で見られたい様子である。そして時に非常に達観した物の見方もする、それが後ほどこの物語に大きな影響をあたえるのだが、それはずっとあとの話。

[Bって、、、、モ○キー・D・ル○ィ みたいに英語の頭文字を入れるのが、最近の創作で流行りなのよね~。Bに何かの秘密があるのかしら(笑)。]

「そうだに、オレたち、天△人の天敵なんだに!」

[(う、登場人物を狼狽えさせようと思って、こうして天の声をやってるのに、この何もわかっていない天真爛漫ぶり、侮れないわ、、、しばらく口を慎もうかしら、、、)]

[天の声]の揺さぶりにも全く意に介する事無く、タツキ達は大人の目には丸一日かかるように見えるようなノロノロとした動作で徐々にお出かけの準備を整えていた。ワカのリュックには、ある手紙が収まっている。『ハマツ』での名門寺院『可睡斎』の斎主であるリョウジンから、『ルーアン魔法遊園地』の園長ショウキへの手紙である。

この手紙は、ゴーン家に馴染みの寺院『可睡斎』にて斎主より預かったものだった。

遠足気分で出かけるワカとタツキを見送る父ユーイとその義妹ミーマ、往路の安全は保証されているとは言っても遠方の親戚へ初めて子供達だけで送り出す父ユーイと、彼の妻の妹であり現在ではワカとタツキの育ての親代わりとなっているミーマとしては心配で一杯である。そんな親心をまったく察知しない二人の子供達は言い争ったり笑い合ったりしながら、目まぐるしくその表情を変え、あれよあれよという間に父親達の視線から外れていくのであった。
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