野菜士リーン

longshu

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第1章

1-26 魔法遊園地に火の雨の降る その3

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「あ、ロイネちゃん!今度は、ウンディーネ達が、いろんな色の噴水を出してきたよ。すごい~!」

「ワカちゃん、ご飯も食べ終わったし、近くまで行って見てみよーよ!」

「うん!ミーナおばさん、行っていいでしょ!?」

「そうね~、人混み苦手だけど、この際行こっか!」

「わ~い!!」

「では、私も参加しましょうかな?」

妖怪猫の着ぐるみはすっかり着替えて、タキシードで決めているショウキは、効率のよいユーザーアンケートのつもりで同席を申し出た。

「あ、あれ、何?雪の女王の次は火山?」

妖精や魔道士たちの夢のような饗宴を食い入るように見つめていたタツキが、ふと声を上げる。

「え、なになに?」

「ほら、上の方に火の玉が、だんだん大きくなってくるよ!」

と、子供達が見ている間に、火の玉はみるみる内に分裂し広角度に広がり轟音を立てて魔法遊園地全域に降り注ぐのだった!

「ぎゃー!!!」

「タツキ、うるさい!!でもオジサン、何これ?雪の女王たちも蒸発しちゃったし!?」

ワカは半分涙目である。

(まさか、炎の魔法が暴走した!?)

ショウキも青い顔をして、ミーナ達に即刻状況確認する旨を伝えると、4階の魔法制御室へ駆け込んだ。

――― 4階 魔法制御室 ―――

「な、何があった?魔法の暴走???」

「いえ、炎担当のファティマは至って真面目で優秀ですし、そもそもこんな大掛かりな魔法は使えません。いったいなにが起こったのか???」

ショウキの問いにここの魔道士の長スノーがうろたえて答える。魔法制御室の面々も、困惑と混乱の極みのようだ。

「そ、そうか、では至急、魔法で消火に取り組んでくれ。わたしは、すぐに救急隊へ指示を出す。」

「はい、園内の水魔道士達を組織して、消火に当たります。」

と、言ったか言わぬかの内に、今度はインフォメーション・センターを揺るがすような地響きと轟音が轟いた。隣のフロアから救急消防長サランが駆け寄る。

「ショウキ殿、原因は分かりませんが、園内至る所炎上しているようです。観客は散り散りに避難しています。」

「そうか、君は救急隊の陣頭指揮を取り、観客の救援へ向かってくれ。炎は魔道士達に消火を依頼した。これから半時、私は迷子の子供達を離脱させる任務に入る。」

「はい、分かりました!」

2階へ一目散に戻るショウキ、子供達はあまりの非常事態と恐怖に泣き叫んでいる。

「坊や達、原因不明だが魔法遊園地全域が炎に包まれているらしい。これから避難するからちょっとこちらへ来てくれ。」

轟音からしてインフォーメーション・センターも炎上して崩れつつあるのだろう、皆は恐慌をきたしつつショウキの元へ近寄ってきた。

「はっ!」

ショウキが、軽く気合を入れると彼の両の手に黄白色で暖かみのあるオーラが出現した。それをどんどん膨らますとワカ、タツキ、ミーナ、ロイネ全員を取り囲む大きなシャボン玉のように覆った。ショウキによる気功防護壁だ。

「え~ん、、、。え、暖かい!これってド○ゴンボールに出てくるやつだね!?」

ごつっ、ミーナに”ぐー”で頭を叩かれるタツキ。

「ミーナさん、これより、炎に包まれ倒壊する魔法遊園地からの離脱に入ります。しばらく子供達の事よろしく頼みましたぞ。」

「えぇ、それはもちろん。でも離脱って、どうやって、、、?」

と、言うか言わぬか、レストランの壁が大きくが大きく崩れ、炎の舌が意気も盛んに中に取り残されている子供達に向かってくる。事態は一刻を争う。

「少々、手荒ですが、ごめん!ドリャッ!!」

ショウキが、子供たち皆が入った気功防護壁を大きく蹴り上げると、ワカ達を載せた暖かなボールはものすごいスピードで炎の手が手薄に見える南の方角へ飛んでいった。

「ひぇ~、これってバー○ロミュー・く○の集団バージョン!?」

ゴツッ。

気功防護壁が障害物を吹き飛ばしならが、ずんずん先へ飛んで行く。障害物に当たる度に前後左右に揺れるものだから、もとより支えるような物の無い防護壁の中ではたまらない。皆、揉みくちゃになりながら、魔法遊園地から離脱していった。

、、、2時間後、、、

「ちょっと見てみたけど、見渡す限り岩山だし何もないよ。でも街の方はまだ真っ赤だね、、、。」

ワカの言うとおり、周辺は見渡す限りの岩山だ。所々丈の低い雑木が生えている他は植物といった物はみられない。夜だからはっきりとは分からないが、気配的にトカゲや虫以外に生物はあまりいないようだ。

「あぁ~、きっと『ルーアン』の市街地にある家も全焼だわ。まだ買ったばかりでローン2,000パタカ(2,000万円)もあるのに~。逆玉も夢のまた夢だわ~(涙)。」

「まぁ、命あっただけでもいいじゃないの?」

ミーナの現実的な嘆きを、娘のロイネが確信を付いた言動で慰めた。

「これからピッ○ロ大魔王の修行があるだに!!!」

ゴツッ。

「タツキはともかく、ホントにこんな荒れ果てた土地で、恐竜でも出てこなければいいけど、、、。きょ○んならいいんだけど、、、。」

ゴツッ。

あまりの事態に、ワカもつい脱線してしまうようだ。

「でも、ショウキおじさんの技、すごかったね。オレも大きくなったらあんな技使えるようになるぜ~。」

「うん、ワカ、大きくなったらショウキさんのお嫁さんになる。」

と、4人で訳の分からない会話をしていると、北から一筋の光弾が一瞬間の内に飛んできた。ショウキだ。気功を帯び、通常の人間の肉体とは思えない圧倒的なスピードで駆け抜けてきたらしい。ビュンッ、突風が吹くと同時に目の前にショウキが現れた。

「お、見つけた、タツキくん達、みんな大丈夫だったか?」

「あ、ショウキさん。えぇ、ショウキさんのおかげで難を逃れたみたいですね。ありがとうございます。あのショウキさんの技は、どんな魔法とも違うみたいですけど、どういった極意なんですか?」

「ははは、気功と言いまして『可睡の杜』に先祖代々伝わる、真言と古武術の一種です。」

「あぁ、確かショウキさんは『可睡の杜』ご出身でしたね。修行僧様かしら?」

「『可睡』にも裏の一面がありましてね、あの技を見せてしまっては隠しようもないので言いますが、とある命を受けて日夜鍛錬を重ねている一族がいるのです。」

「まぁ、ご立派なんですね。」

ミーナは尊敬しきっている様子である。

「魔法遊園地の火事の方はどうだったんですの?」

「組織の整備と日頃の訓練の成果もあり、混乱は収束して死傷者は極力少なく住んでいるようです。火の雨の直撃を受けたパレードの精霊達とその周辺の観客たちには、とても申し訳ないことをしてしまいましたが、、、。」

「そうですか、、、。わざわざこちらまで様子を見に来てくれてありがとうございます。」

「いえ、迷子の子には最善のもてなしをするのが当遊園地のモットーですからな。それでは『ルーアン』の救援馬車を差し向けておりますから。私は遊園地の陣頭指揮に戻ります。ではっ。」
と、ショウキはまた気功の光弾に戻ると、秒速50mで遊園地まで駆け抜けていった。

「ショウキおじさん、ありがと~!!」

おそらく手を振り返しているのでは?心なしか、光弾が揺れ動いたような気がワカ達にはした。
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