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第1章
1-D-3 アーデルヘイト封印の一夜 その3
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アーデルヘイト封印戦において、『テューレン』一族が果たした役割は、フィリが誠意を込めてお礼を言い、また深く心を痛めるのもうなずけるほどの、極めて大きいものであった。
義により『英雄戦争』に参戦していたリョウジンが、『七賢』によるアーデルヘイト封印作戦に加わるのは、戦も終盤『ウェールズ』王国が敗戦を繰り返し王都『ヴァルヴァンティア』を死守すべく籠城戦を行っている時であった。
最後の決戦での殺伐とした雰囲気の中にあっても、一族の古くからの鉄血の掟である『時空の賢者』の探索と堕天の阻止を忘れてはいないリョウジンではあったが、現行の『時空の賢者』アーデルヘイトについては、自身の何代も前に一度『ミズガルズ』に大きな災厄をもたらし、『光の賢者』ファーシオンによって退けられてから後、痕跡一つ示さない伝説の悪しき存在であり、実在するかどうかも彼らには分からないのであった。
『テューレン』一族の言い伝えによれば、『七賢』はこの世界を構成する諸要素の一つであり、『賢者』が死ねばすぐに必ず次の『賢者』が現れその役割を続ける。また数百年前、アーデルヘイトの進軍を阻止したファーシオンの言によれば、魔界『ニヴルヘイム』へ半死半生で落とされたアーデルヘイトもいずれは力を取り戻し、またこの世界へ災厄を運ぶ担い手となろう、との『時空の賢者』復活にまつわる様々な予言もあるのであった。
アーデルヘイトの暗躍、しかも数十年にも渡り他の『七賢』に見つからぬよう徐々に『ミズガルズ』を蝕んでいるのを発見したのはやはり『七賢』の首領『光の賢者』ファーシオンであった。
『真理の顕現』の具有する世界を一変させる能力に勝るとも劣らない、『アースガルズ』にあるこの世界の全てをも見通せる玉座『フリズスキャールヴ』に座って、アーデルヘイトが『ウェールズ』国王エアハルトをマインドコントロールして『英雄戦争』を引き起こしている確証を掴んだのである。
アーデルヘイトは当然、ファーシオンが使うであろう宝具の事など承知しており、『時空のルーン』で縦横無尽に監視を抜けるための網目を張り、その『フリズスキャールヴ』の千里眼に引っかからぬよう精妙な仕掛けを完成させていたのであったが、『英雄戦争』が起こした莫大な魔力消費によりその網目がほころびたのか、はたまた他の何らかの外部的要因か、一瞬の間『フリズスキャールヴ』に座っているファーシオンの眼に、エアハルトの書斎の傍らに居て彼にしな垂れかかるアーデルヘイトのその銀髪で美しい魔女そのものの映像が飛び込んできたのである。
その後の【永久に成長する封印】によってアーデルヘイトをルーン界へ束縛した詳しいいきさつは別に譲るとして、フィリ、ラルフ、ドンフレイム達の操る自然魔法とは極めて相性の悪い『時空魔法』を使いまた『ロキの瞳』まで出現させてしまったアーデルヘイトをどうしても捕縛することが出来ずにいたのを、リョウジン、ショウキ達『可睡の杜』の『テューレン』一族は、ルーンを極限まで精巧に具象化して扱うことのできる一子相伝の体術を駆使し、そして大きな犠牲を払って捕縛を成し遂げたのであった。
「でも、私達が至らないばっかりに、あなたがた一族に大きな損害をもたらしてしまったわ。」
「うむ、ワシ等の主に自然のルーンを起因とする魔法では、なかなか彼奴の空間や時間や重力を操る時空魔法とは相性が悪いからの。いつしかまた封印が解かれた時のために対策を練らんといかんわい。まぁ、ワシが生きている間は封印が解かれるようなことは無いと思うが、、、。リョウジン、ショウキよ、また『テューレン』の衆らよ。この度はホントに助かった。ワシからもお礼を言うぞ。」
「我々一族の任務だと言っているのに、ラルフ殿もしつこいな(笑)。」
「そうか?さて、地上の王国たちの戦の方も決着しておるかの?わしら『七賢』はその成り立ち故、世俗に関わる事はできぬからな。リーンが無事だといいがの~。まぁ、いざとなれば、緊急戦線離脱するような魔法は掛けておいたが、、、。」
「あなたのところのあのかわいらしいタンポポのような娘さんね?それ、厳密には世俗に関わっている事になるわね(笑)?でも、あなたにあんな素直な娘を育てられる甲斐性があったなんて驚きだったわ(笑)。」
フィリが茶目っ気たっぷりにラルフをからかうと、『七賢』達はどっと笑い出した。
「う、うるさいわい。それでリョウジン、お主だけは『革命軍』の主力メンバーだろう、戦線に戻らなくて良いのか?」
「えぇ正しく。しかし人間の力では『イスティファルド』の地下555階からは戻れませんので地上に戻して頂けますかな?」
自身の任務を思い出したリョウジンは、あわてずそうラルフに返した。
「そうですな、地下555階へ瞬間移動するなど、あなたがたの力はとても人界のものとも思えぬ。まぁ、我々は一族の任務もこうして終えたことだし、自らの意思で参戦したリョウジン殿はここ『イスティファルド』へ残して、『ハマツ』へ戻って早速悲願達成を祝います。」
英雄戦争に関わっていないショウキは、一族を引き連れて『ハマツ』へ戻るつもりだ。
「ふふふ、まぁ、化物みたいに言うなて。そうじゃな、皆、久々にこうして顔を揃えて、ゆっくりお茶でもしたいところじゃが、お客人も忙しいようじゃし解散とするか。では、ルーンの導きに従ってまた会おうぞ。」
『七賢』の長ファーシオンが帰還の合図を送ると、他の皆は思い思いに承諾の返事をした。
《ティアオウーグアン》(光の導き手)
ファーシオンが言ったか言わないか、『七賢』とリョウジン達『テューレン』一族は、白く輝く粒子の固まりとなり、アーデルヘイトを封印したこの半ば異次元のルーン空間『猖獗』から地上まで戻っていった。
義により『英雄戦争』に参戦していたリョウジンが、『七賢』によるアーデルヘイト封印作戦に加わるのは、戦も終盤『ウェールズ』王国が敗戦を繰り返し王都『ヴァルヴァンティア』を死守すべく籠城戦を行っている時であった。
最後の決戦での殺伐とした雰囲気の中にあっても、一族の古くからの鉄血の掟である『時空の賢者』の探索と堕天の阻止を忘れてはいないリョウジンではあったが、現行の『時空の賢者』アーデルヘイトについては、自身の何代も前に一度『ミズガルズ』に大きな災厄をもたらし、『光の賢者』ファーシオンによって退けられてから後、痕跡一つ示さない伝説の悪しき存在であり、実在するかどうかも彼らには分からないのであった。
『テューレン』一族の言い伝えによれば、『七賢』はこの世界を構成する諸要素の一つであり、『賢者』が死ねばすぐに必ず次の『賢者』が現れその役割を続ける。また数百年前、アーデルヘイトの進軍を阻止したファーシオンの言によれば、魔界『ニヴルヘイム』へ半死半生で落とされたアーデルヘイトもいずれは力を取り戻し、またこの世界へ災厄を運ぶ担い手となろう、との『時空の賢者』復活にまつわる様々な予言もあるのであった。
アーデルヘイトの暗躍、しかも数十年にも渡り他の『七賢』に見つからぬよう徐々に『ミズガルズ』を蝕んでいるのを発見したのはやはり『七賢』の首領『光の賢者』ファーシオンであった。
『真理の顕現』の具有する世界を一変させる能力に勝るとも劣らない、『アースガルズ』にあるこの世界の全てをも見通せる玉座『フリズスキャールヴ』に座って、アーデルヘイトが『ウェールズ』国王エアハルトをマインドコントロールして『英雄戦争』を引き起こしている確証を掴んだのである。
アーデルヘイトは当然、ファーシオンが使うであろう宝具の事など承知しており、『時空のルーン』で縦横無尽に監視を抜けるための網目を張り、その『フリズスキャールヴ』の千里眼に引っかからぬよう精妙な仕掛けを完成させていたのであったが、『英雄戦争』が起こした莫大な魔力消費によりその網目がほころびたのか、はたまた他の何らかの外部的要因か、一瞬の間『フリズスキャールヴ』に座っているファーシオンの眼に、エアハルトの書斎の傍らに居て彼にしな垂れかかるアーデルヘイトのその銀髪で美しい魔女そのものの映像が飛び込んできたのである。
その後の【永久に成長する封印】によってアーデルヘイトをルーン界へ束縛した詳しいいきさつは別に譲るとして、フィリ、ラルフ、ドンフレイム達の操る自然魔法とは極めて相性の悪い『時空魔法』を使いまた『ロキの瞳』まで出現させてしまったアーデルヘイトをどうしても捕縛することが出来ずにいたのを、リョウジン、ショウキ達『可睡の杜』の『テューレン』一族は、ルーンを極限まで精巧に具象化して扱うことのできる一子相伝の体術を駆使し、そして大きな犠牲を払って捕縛を成し遂げたのであった。
「でも、私達が至らないばっかりに、あなたがた一族に大きな損害をもたらしてしまったわ。」
「うむ、ワシ等の主に自然のルーンを起因とする魔法では、なかなか彼奴の空間や時間や重力を操る時空魔法とは相性が悪いからの。いつしかまた封印が解かれた時のために対策を練らんといかんわい。まぁ、ワシが生きている間は封印が解かれるようなことは無いと思うが、、、。リョウジン、ショウキよ、また『テューレン』の衆らよ。この度はホントに助かった。ワシからもお礼を言うぞ。」
「我々一族の任務だと言っているのに、ラルフ殿もしつこいな(笑)。」
「そうか?さて、地上の王国たちの戦の方も決着しておるかの?わしら『七賢』はその成り立ち故、世俗に関わる事はできぬからな。リーンが無事だといいがの~。まぁ、いざとなれば、緊急戦線離脱するような魔法は掛けておいたが、、、。」
「あなたのところのあのかわいらしいタンポポのような娘さんね?それ、厳密には世俗に関わっている事になるわね(笑)?でも、あなたにあんな素直な娘を育てられる甲斐性があったなんて驚きだったわ(笑)。」
フィリが茶目っ気たっぷりにラルフをからかうと、『七賢』達はどっと笑い出した。
「う、うるさいわい。それでリョウジン、お主だけは『革命軍』の主力メンバーだろう、戦線に戻らなくて良いのか?」
「えぇ正しく。しかし人間の力では『イスティファルド』の地下555階からは戻れませんので地上に戻して頂けますかな?」
自身の任務を思い出したリョウジンは、あわてずそうラルフに返した。
「そうですな、地下555階へ瞬間移動するなど、あなたがたの力はとても人界のものとも思えぬ。まぁ、我々は一族の任務もこうして終えたことだし、自らの意思で参戦したリョウジン殿はここ『イスティファルド』へ残して、『ハマツ』へ戻って早速悲願達成を祝います。」
英雄戦争に関わっていないショウキは、一族を引き連れて『ハマツ』へ戻るつもりだ。
「ふふふ、まぁ、化物みたいに言うなて。そうじゃな、皆、久々にこうして顔を揃えて、ゆっくりお茶でもしたいところじゃが、お客人も忙しいようじゃし解散とするか。では、ルーンの導きに従ってまた会おうぞ。」
『七賢』の長ファーシオンが帰還の合図を送ると、他の皆は思い思いに承諾の返事をした。
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ファーシオンが言ったか言わないか、『七賢』とリョウジン達『テューレン』一族は、白く輝く粒子の固まりとなり、アーデルヘイトを封印したこの半ば異次元のルーン空間『猖獗』から地上まで戻っていった。
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