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第1章
1-40 『死者の海』 と 『イス』の遺構
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《さ、着いたぞ、ここが『世界の墓場』ファニステールじゃ。》
リーン達は、世界の終焉『ファニステール』にある『死者の海』に面した絶壁に降ろされた。『ウェールズ』歴史書『ハルバート』によると、『世界の墓場』ファニステールは、(ガラハドが危惧したように)世界の果てに位置し魑魅魍魎が跋扈する、全ての魔法法則が通用せず突如として死のルーンにより命を奪われることがある、溶岩と火山の噴火に日常的に晒されている、現世に現出した地獄のようである、といったおどろおどろしい記述ばかりが目につく。しかしそれは多分に『ウェールズ』を打ち立てた中原しか知らない人間の空想の産物なのであろう。
リーン達が目にした実際の『ファニステール』は、彼女の立っている地点から東一帯に広がる荒涼とした岩石砂漠と、西に真っ直ぐな水平線の遙か彼方まで続く鏡面のような静かな海を、世界の果てと呼ぶに相応しい切り立った巨大な崖が数百kmに渡って南北に分断する大自然の産物のモニュメントであった。(実際には、この景観は『世界蛇』ヨルムンガンドと『水の賢者』フィリの死闘がもたらしたものであったが、それは300年も過去に遡る話である。)
リーン達の降ろされた切り立った崖からは『死者の海』を一望できる。名前は『死者の海』と呼ばれていながら、外見上は波が完璧に止んだ清涼な海である。時刻は朝だ、輝かしい朝日が鏡面のような海辺に登り美しく清涼な事この上ない。ゾンビがうようよしていたり魔物達が獲物を狙って彷徨っている、というわけでは決してなかった。
本来なら、海などめったに見ることの出来ない浮かれたがり屋の森の民リーンなどは大はしゃぎしている所であったが、皆、昨晩から始まった急な大滑空による疲労やら寒さやら吐き気やらで(急激な移動により起こる飛行酔いといったものはメルの得意な回復魔法でもどうにもならないらしい)ぐったりしていた。
「ううううう、、、、れ"、れ"ーねを早く助けないど、、、あ"、あ"りがとう『精霊王』さん、、、グボ。」
ちっぽけな弱い人間の経験する吐き気や寒さなどの不調など見た事も無い『精霊王』はまったく意に介する事なく、
《おお、お前たち頑張るんじゃぞ!おや、どうかしたのか?》
「い"、い"え、急かしたのは私だちで、ですか、から、、、、ゲボ。」
「ぞ、ぞうよ、れーね"を、は、はやく助けたいわ、、、ありがどう、お"ーじゃん、、、、ガボ。」
皆、散々の様子である。
――― リーンたちの回復を待って ―――
《はて、お前たちの所望の『水の賢者』はどこかのう、、、彼女の持つ巨大な水のルーンの輝きからしてすぐ分かるはずじゃが、、、どうやら、ここらにはおらんようじゃわい。さては地下世界のノームパレスかのう?そうするとワシには行けぬな。なにせこの眼前に広がる『死者の海』を潜って地下世界へ出ねばならぬからな。。。》
「えええ!? じゃ、どう行ったら良いんですか?」
《うむ、水没したかつてのノーム達の首都『イス』の住人であるセイレーン達に頼めばよかろう。そこからも海底を覗けば見えるじゃろう、未だ、かつての美しい面影を保つ『イス』の遺構が。》
『オーグレイド』が岩石で出来た顎で示した先には、鍛えられた刀のように静謐で凹凸のない水面のその遙か下に巨大な都市群が広がる。その壮大な景観は、魚や藻やサンゴ礁などにひどく覆われた現在でも、一目でかつての栄華を感じるさせる事が出来た。ノームの旧首都『イス』である。
「あ、ホントだ!ちょっと遠くだけど見えるわ!!海底に沈んだ失われた古代都市!!ロマンチックね~~~。」
「それはさておき、まずはセイレーンね、水魔道士が召喚しているのを見たことがある。呼んでみるわ。ありがとう、『精霊王』さん!」
《お役に立てたかな?ラルフに、これに免じて今度の碁では多少は手加減してくれ、と伝えておいてくれ。》
「え、ラルフさん、『精霊王』に碁で勝てるんですか!?」
《うむ、おそらくあの腕前は『ミズガルズ』一じゃろうて、あれほど攻撃的で情熱的で理論的でそして手強い打ち手をワシは他に知らぬ。》
「う~ん、よく分からないわね、ラルっちは。至って無欲で隠居を決め込んでいるかと思えば、魔法でも幻術でも剣術でも囲碁まで?何でもできるし、、、、。」
《ははは、仮にも『七賢』の一人じゃからの、あれくらいじゃなければ務まらんて。さ、ではワシは早速エルフたちの様子でも見に『アールヴヘイム』へ行くとするかの。ワシは精霊界の存在じゃからこちらの世界には手出し出来ぬが『風の賢者』を始め旧知の間柄や碁仲間もいろいろおるからの。さらばじゃ。》
土塊や砂塵を地面へ落としながら、土と岩で出来た巨大な首を豪快にフリフリすると、橋渡し100mはあろうかという翼を大きく羽ばたかせて『元精霊王』は『アールヴヘイム』へ去って行くのであった。
リーン達は、世界の終焉『ファニステール』にある『死者の海』に面した絶壁に降ろされた。『ウェールズ』歴史書『ハルバート』によると、『世界の墓場』ファニステールは、(ガラハドが危惧したように)世界の果てに位置し魑魅魍魎が跋扈する、全ての魔法法則が通用せず突如として死のルーンにより命を奪われることがある、溶岩と火山の噴火に日常的に晒されている、現世に現出した地獄のようである、といったおどろおどろしい記述ばかりが目につく。しかしそれは多分に『ウェールズ』を打ち立てた中原しか知らない人間の空想の産物なのであろう。
リーン達が目にした実際の『ファニステール』は、彼女の立っている地点から東一帯に広がる荒涼とした岩石砂漠と、西に真っ直ぐな水平線の遙か彼方まで続く鏡面のような静かな海を、世界の果てと呼ぶに相応しい切り立った巨大な崖が数百kmに渡って南北に分断する大自然の産物のモニュメントであった。(実際には、この景観は『世界蛇』ヨルムンガンドと『水の賢者』フィリの死闘がもたらしたものであったが、それは300年も過去に遡る話である。)
リーン達の降ろされた切り立った崖からは『死者の海』を一望できる。名前は『死者の海』と呼ばれていながら、外見上は波が完璧に止んだ清涼な海である。時刻は朝だ、輝かしい朝日が鏡面のような海辺に登り美しく清涼な事この上ない。ゾンビがうようよしていたり魔物達が獲物を狙って彷徨っている、というわけでは決してなかった。
本来なら、海などめったに見ることの出来ない浮かれたがり屋の森の民リーンなどは大はしゃぎしている所であったが、皆、昨晩から始まった急な大滑空による疲労やら寒さやら吐き気やらで(急激な移動により起こる飛行酔いといったものはメルの得意な回復魔法でもどうにもならないらしい)ぐったりしていた。
「ううううう、、、、れ"、れ"ーねを早く助けないど、、、あ"、あ"りがとう『精霊王』さん、、、グボ。」
ちっぽけな弱い人間の経験する吐き気や寒さなどの不調など見た事も無い『精霊王』はまったく意に介する事なく、
《おお、お前たち頑張るんじゃぞ!おや、どうかしたのか?》
「い"、い"え、急かしたのは私だちで、ですか、から、、、、ゲボ。」
「ぞ、ぞうよ、れーね"を、は、はやく助けたいわ、、、ありがどう、お"ーじゃん、、、、ガボ。」
皆、散々の様子である。
――― リーンたちの回復を待って ―――
《はて、お前たちの所望の『水の賢者』はどこかのう、、、彼女の持つ巨大な水のルーンの輝きからしてすぐ分かるはずじゃが、、、どうやら、ここらにはおらんようじゃわい。さては地下世界のノームパレスかのう?そうするとワシには行けぬな。なにせこの眼前に広がる『死者の海』を潜って地下世界へ出ねばならぬからな。。。》
「えええ!? じゃ、どう行ったら良いんですか?」
《うむ、水没したかつてのノーム達の首都『イス』の住人であるセイレーン達に頼めばよかろう。そこからも海底を覗けば見えるじゃろう、未だ、かつての美しい面影を保つ『イス』の遺構が。》
『オーグレイド』が岩石で出来た顎で示した先には、鍛えられた刀のように静謐で凹凸のない水面のその遙か下に巨大な都市群が広がる。その壮大な景観は、魚や藻やサンゴ礁などにひどく覆われた現在でも、一目でかつての栄華を感じるさせる事が出来た。ノームの旧首都『イス』である。
「あ、ホントだ!ちょっと遠くだけど見えるわ!!海底に沈んだ失われた古代都市!!ロマンチックね~~~。」
「それはさておき、まずはセイレーンね、水魔道士が召喚しているのを見たことがある。呼んでみるわ。ありがとう、『精霊王』さん!」
《お役に立てたかな?ラルフに、これに免じて今度の碁では多少は手加減してくれ、と伝えておいてくれ。》
「え、ラルフさん、『精霊王』に碁で勝てるんですか!?」
《うむ、おそらくあの腕前は『ミズガルズ』一じゃろうて、あれほど攻撃的で情熱的で理論的でそして手強い打ち手をワシは他に知らぬ。》
「う~ん、よく分からないわね、ラルっちは。至って無欲で隠居を決め込んでいるかと思えば、魔法でも幻術でも剣術でも囲碁まで?何でもできるし、、、、。」
《ははは、仮にも『七賢』の一人じゃからの、あれくらいじゃなければ務まらんて。さ、ではワシは早速エルフたちの様子でも見に『アールヴヘイム』へ行くとするかの。ワシは精霊界の存在じゃからこちらの世界には手出し出来ぬが『風の賢者』を始め旧知の間柄や碁仲間もいろいろおるからの。さらばじゃ。》
土塊や砂塵を地面へ落としながら、土と岩で出来た巨大な首を豪快にフリフリすると、橋渡し100mはあろうかという翼を大きく羽ばたかせて『元精霊王』は『アールヴヘイム』へ去って行くのであった。
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