野菜士リーン

longshu

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第1章

1-66 イスティファルド潜入 作戦会議

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--- 戦略会議室にて ---

「ふむ、そうすると『イスティファルド』地下迷宮まではこのミルスラン枝窟を通って行くのが良いでしょう。」
近衛兵長ザイラートは地下世界を熟知している者の落ち着きでこう答えた。

「この枝窟ならば、仮に追っ手が待ち構えていようと、十分対処して王宮へたどり着く事が出来ますか?」
心配性のガラハドは念押しして尋ねる。

「ええ、でもよほどの事が無い限り漏れるような事は無いでしょうけどね。『時の真理の顕現』はあなたが破壊してしまったのでしょう?リーン?」
ノームの魔道士長ノーレルンはそれとなく意をただすようにリーンに問いかける。

「え、ええ。『時空水晶』は私が粉々にしてしまいました、、、。」

「はっはっは、この世界の至高の宝を!これは面白いわい。お前、見所あるぞ(笑)。」
そう豪快に笑い飛ばしているのは、ザイラートの部下のロックだ。

「はい。。。(小さくなる)」

ここは、地底のノームパレス『ルルロロノラムスル』の戦略会議室。『水の賢者』フィリが鎮座していた謁見の間からこの会議室へ通されたリーン達は、目の前にある5m角はあろうかというこの地底世界の大地図を見ながら、『イスティファルド』地下迷宮』へ乗り込む戦略を練っている。

打ち合わせのメンバーは 人間は、リーン、ガラハド、メル、ノームの国『ライラックガーデン』の側は近衛兵長 ザイラートと、彼の部下の、元金鉱夫であり『ムスペッルスヘイム』の地下世界とりわけユグドラシルの根の織りなす枝窟の地理は掌の物としている近衛兵のロック、そして戦術相談役として魔道士長ノーレルンまで付けてくれている。地底火山噴火の緊急対応政策決定のため官僚達は外しているとは言え、武の長と、魔法の長をメンバーに加えている首脳会議のような布陣であった。

(おじいちゃんの手紙を読んで何か思うところあったのかしら?)

と、リーンが感ぜずにはいられないほど至れり尽くせりの会議体である。

「だとしたら、『時空水晶』特有の魔能、『遙かなる千里眼』や、『無限なる遷移』は使えないはず、あなたたち『イスティファルド』から逃げ出す時に追っ手から待ち伏せされた事があって?」

「あ、確かに『イスティファルド』から出るときはずっと追撃されてましたけど、それから逃れてからは一度として追っ手が迫ってきた事ないですね。」

「そうでしょう?その魔能は今しばらく、『時空水晶』がどこからか復元されて、彼女の元に舞い戻りでもしなければ使えないはずよ。」

「でも、私達ここへ来る途中、エルフの世界『アールヴヘイム』が同じ様に攻撃されているところ見ちゃったんだけど、それってあなたの言う『無限なる遷移』とか?あれはどういうことかしら?」

(それにしてもこの魔道士、いやに『時空水晶』について詳しいわね、ちょっと怪しいわ。。。)
メルは相変わらずねじ曲がった物の見方をしている。

「ふふふ、そんな事は無いわよ(笑)。この世界を織り成す『真理の顕現』の魔能について疎んじてしまっているのは、『ミズガルズ』の人間達くらいなもので、他の種族は皆、古文書や言い伝えで大体の事は知っているのよ。第一、ここ『ルルロロノラムスル』の王立図書館の百科事典にも載っている位よ(笑)。」

「はっ、な、なんで、私の考えている事がバレたの!?」

「私達、水や土や光のルーンを組み合わせて行使するノームの魔法使いにとっては読心術などお手の物なの、あまりに開けっぴろげな人だと、勝手にこちらの頭に思考が入ってきてしまうのが玉に瑕だけどね。聞きたくも無いのに悪趣味な音楽が耳に入ってきちゃう感じ(笑)。」

「ふ、おいお前、また邪な事考えてたんだろ(笑)。」

「う、うるさい!!ノ、ノーム達と話す時は、坐禅でも組んで無我の境地に入るしかないわね。。。」

「ふふふ、お好きに(笑)。」

「ちょっと!いつもの事だけど横道に逸れている暇は無いのよ!!」

「はっはっは、おもしろい奴らじゃのう、人間というのはみんなこんな騒がしい者達なのか?」

「いえ、彼女たちがとりわけ変なだけです。」

ガコッ、ドガッ。いてて。。。

ノーレルンは、ノームの王国『ライラックガーデン』の魔道士長をしており、魔術顧問としてフィリの片腕をしていた。ノームであるため単純に人間の年齢と比べることは出来ないが、人間にすれば20代後半と言ったところか。フィリの絵画のような完成された美とは異なり、水魔法使いに共通の静かさは感じられるが、しかし今を生きている躍動的な美を示していた。

身につけている水で出来た羽衣は、ノーレルンの周りを小川のように常に流れ、美しく静かに輝いている。ノームの都の持つ魔法技術の高みと洗練を物語るに十分な代物だった。そして、細く薄くしかし光を反射させて印象的にやわらかに輝くアメジストのブレスレットや、野原にそれとなく咲く可憐なかすみ草を思わせる銀の彫刻の施された首飾りなど、身だしなみのセンスの良さも感じさせる。

また、彼女は印象的な透き通った青色の瞳をしていた。ノームの魔法使いの瞳は皆こんな貴重な鉱石みたいに綺麗なのかしら?リーンはふと思った。

一方のロックは、頑丈なプレートメイルを身につけた初老の近衛兵で、ザイラートと比べると少しずんぐりむっくりであったが、元金鉱夫の頑健な体つきは、巨大な巌を目にしているかのようであった。そして100年も剃った事が無いかのような、樹海を思わせる壮大な無精髭、手入れされてないばかりか長い髭同士が絡み合いゴワゴワとしている。身だしなみには全く気を遣っていないようだ。

そして、これはリーン達が出会ったどのノームにも言える事であったが、皆に誠実さと心根の清らかさを感じさせた。

「(話を元に戻して)え、『アールヴヘイム』までも攻撃の対象にされたの?『時空水晶』も無いのに、どうやってあんな大がかりな『空間遷移』を行使したのかしら、、、?ちょっと見当も付かないわね。。。」

「『時空水晶』なしで、そんな攻撃が出来たって事は、私達の居場所も突き止められているんじゃ無いかしら?」

「う~ん、追っ手が来ない以上、そんな心配も無いとは思うんだけど、心配なら出発する前に解呪魔法を掛けておいてあげるわ。あなたたち周辺は時空魔法を使っては探知されなくなるはずよ。そのかわりこちらも時空魔法を使えなくなるけれど。」

(そんなんで、ホントにレーネの探知をやり過ごす事ができるのかしら?)

メルがまた心の中で疑念を呈する。

「私の魔法を信用できないというのなら、呪文は一緒だから『水の賢者』にお願いしてもいいんだけど、ふふふ(笑)。」

「はっ、しまった!!」

「メルが変な事考えてたならごめんなさい。お願いします。」

「道中、不案内なあなた達だけでは心細いでしょう。フィリ様の指示もあり、私がミルスラン枝窟の先まで守護しますよ。」

紳士のザイラートがごく紳士的に申し出る。

「おい、お前、仮にも近衛兵長だろうが!そんな役はワシに任せて、フィリ様の守護につかんか!」

ロックは自身の上司にもおかまいなしにがなり立てる。元金鉱夫なだけあって大いに気が荒い。

「む、しかしミルスラン枝窟ルートですと、『炎の巨人』領を抜ける事になるのですよ、何かあってからでは、、、。」

「何!お前、ワシでは力不足とぬかすか!?」

「ふふふ、ロック、、、相変わらずね(笑)。」

ザイラートとロックが言い争っているところに、謁見の間での会議が終わったのか、静かに『水の賢者』フィリが現れた。
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