野菜士リーン

longshu

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第1章

1-71 ザイラートの体術

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城門の周辺まで足を運ぶと、巨人は明らかに警戒の眼を彼ら5人に向けた。敵対的な雰囲気を察知すると、ザイラートとロックはリーン達3人を少し遠くにおいて、巨大な壁にへばりつくように番をしている巨人の門番の所へ向う。

「巨人殿、『ライラックガーデン』の近衛兵長、ザイラートと申します。この度は、『ミズガルズ』のお客人を地上へ送り届ける任務のため『ユグドラシル』の枝窟まで案内するために参りました。壁門の番も退屈なものでしょう?無聊を慰める地獄ウサギや闇鹿でも見つかりましたかな?はっはっは。」

いつもの礼儀正しさと彼には珍しい陽気を装って、ザイラートが門番と思われる炎の巨人へ話しかける。リーン達に見せていたこれまでの冷静機械のような物言いとはひと味違い、この巨人の門番が一筋縄ではいかないと考えているように、リーンには感じられた。

「ぶんっ、おだ(おら)、おまえ達なんかじらね~な~。。。」

巨人の門番は、じろりとねめ付けるようにザイラートを見ると、ぷいとそっぽを向き、ぼそりとその一言だけ言った。吐く息は少し離れて待機していたリーン達にまで漂うほど生臭く腐臭がする。辺りを一瞬で険悪なムードにするいかにも思慮の足りない粗暴な物言いである。巨人は垢に汚れた明らかに不潔でぼろぼろの粗末な服を身に纏い、巨大な帯だか布だか分からぬ物でぐるぐる巻きにその服を縛って、でっぷりと太ったお腹をなんとか服の中に収めていた。

他にこれと言った装備は持っていないが、たった一振りだけ、3mはあろうかというこれもやはり所々欠けてひび割れている、ぼろぼろのしかし硬くて巨大な棍棒を手に携えていた。顔や髪はもう何日も洗っていないのか、やはり垢まみれで、焦げ茶色の髪は垢で縮れていた。

「何じゃ! この無礼な木偶のぼ、、、」

とさかに来るロックの口を細長い手指で塞いでザイラートは言った。珍しくロックの行動を押さえつけている。

「先ほど言ったように、我々はこの先の『ユグドラシル』の根まで行かないといけないのだ。巨人君、そこの扉を開けてここを通してくれないかな?」

「う、うるへ~!!」

巨大は、突然、雄叫びと共に手にした棍棒をザイラートに打ち下ろす、ここを通ろうとする者は問答無用で叩き潰すように命令されているらしい。

「おっと。」

軽やかな身のこなしで巨人の棍棒を避けると、ロックと目配せをしてリーン達のすぐ傍まで迅速に10m程スッと後退した。棍棒が空振りに終わった炎の巨人はいきり立っている。

「げげっ、だ、大丈夫なの~!?」
「魔法の援護いる!?」
リーンとメルは異様な怪物の異様な行動にゾッとしたが、しかしザイラートは慣れているのか平然としたものだ。

「心配ご無用、外交問題にはしたくないが、あのような様子ではやむを得ん。」

ザイラートは、そう言うと稲妻のような身のこなしででっぷりと太った不潔な巨人に駆け寄っていった。

「どがぁ~!」

何か分からないわめき声を上げて、巨人の門番は長さ3mはあろうかという不格好な棍棒を無茶苦茶に振り回す。こんな巨大なものに当たったら小柄なノームなどひとたまりもなさそうだったが、ザイラートは全て皮一枚の距離で見切り、造作なく躱していた。

「すげ~、す、すごい身のこなし、人間にはできない体術だな。『リヒテナウアー剣術』にももちろんあんな身の躱し方は伝えられてないよ。危なっかしいし。」

「ふんっ!あいつ、体術だけは天性のもんじゃて!!奥歯に歯の挟まったような物言いといい、何もかも気に入らんやつじゃが、あれだけは認めてやるわい。」

言葉とは裏腹にロックは久々に見る近衛兵長の軽やかな舞踏に目を奪われている。

と、ザイラートは身を躱しつつもいつの間にか手に丈夫そうな一条の細い鎖を手に持って、巨人の門番の周りを回り出した。みるみるうちに自由を奪われていく巨人。持ち前の怪力で鎖を千切ろうにも力の入らない関節部に狙いをすまして縛っていくために為す術もないのであった。

ドスンッ。

最後に両の膝裏をまとめるように縛り上げられると、たまらず尻餅をつく巨人。

「さて、、、これからどうしたものか。」

その時、岩壁の上から大声が聞こえた。
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