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第1章
1-80 辺境の文学士
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--- イルトトの魔導具工房 ---
「はぁ~、見れば見るほどすばらしい佇まいね~、この世界にしかもはるか地底の世界にこんな建築物があったなんて。中にはどんな老紳士がいらっしゃるのかしら(笑)?」
薄く七色に黒光りする完璧な四角柱の御影石の集合体で作られた建築物に惚れ惚れするようにメルがのたまう。
「やめてよ! 私はそういうのホントに苦手なんだから。。。」
「まぁまぁ、ちょっと『ブリージンガ・メン』をもらうだけじゃないのよ、減るもんじゃなし(笑)。」
「訳の分からん事を言ってないで、早く入るぞ!」
ひときわ立派ではあるが、門衛も扉も呼び鈴も何もない、薄く水をひいたように輝いている黒い正六面体の建物の入り口を見てロックが言った。建物はどう形容したら良いのか、1m程のやはり正六面体に加工された極めて質の良い御影石が、1ミクロンの狂いもなく全体に敷き詰められており、それぞれの巨石が微妙な角度をもって組み合わされ、地下世界の天井にある光の苔根の光量や向きの変化に合わせて、無数の色の組み合わせを見る者に披露する。
御影石は銀河の星をモチーフにしているかのようにほどよく金属質や石英質の白や赤や蒼がその綺麗に加工された表面に顔を出している。しばらく眺めていると、まるで永遠に広大に広がる宇宙へ誘われるような錯覚に陥るほど完璧な黒色であった。そういった造形品に目がないのかガラハドはいつまでもいつまでも壁を見つめているのであった。
「ちょっと、ガラハド、入るわよ。」
リーンに、頭をコツンッと小突かれ我に返るガラハド。レーネを取り返すために今ここに居る事さえも忘れさせてしまう、見る者によってはそれほどに忘我の境地に陥らせるような、伝説にもなっている建造物である。そしてリーン達5人が入った玄関兼広間は壁から壁まで駆け抜けられるくらい広く、そして、中央に永久機関を思わせるオブジェが飾られている。
壁同様黒い御影石で出来た直径30cm程の正六面体と、それを覆っている大きさの異なる3つの純銀のリングが、縦に長い長方体の台の上で宙に浮き、それぞれが上下前後左右不規則に、ゆっくりと回転をしているのである。見ているとその不思議な正六面体と純銀のリングの内部に引き込まれてしまうかのような神秘的な動きである。
(ちょっと落ち着いたら、またここに来てドワーフの工芸技法を思う存分鑑賞したいな。)
と思う、ガラハドであった。
「おお~い!イルトト殿~!!わしじゃ、金鉱夫のロック・ダンじゃ!久しぶりに顔を見に来たぞ~!!!」
入り口から入って数m、玄関か広間か分からぬ空間から、ロックはいつもの銅鑼声でがなり立てる。数十年ぶりというのに、なにか昨日会った友に問いかけるような口調である。これが長寿の種族ノームやドワーフの時間感覚なのであろうか。
「阿吽の呼吸のように、は~い!」
ロックの友人と言うには少し、いや全然高い、明らかに女性の柔らかな声が返答を返す。どんな人物が出てくるのやら、構えていたリーン達は拍子抜けしてしまった。それに、この声と訳の分からない受け答えはどこかで聞いた事あるような???
「な、なんじゃ(ガクッ)。イルトト殿はおらんのか~い!?」
「はい、疾風迅雷で伺います~。」
相変わらず、ヒバリの鳴くような高く麗しい声が響き返し、やがて部屋の奥から一人の女性が姿を現した。青い瞳と黒い髪、丸眼鏡を掛けた見るからに文学士のような風貌をもった知的な女だった。ただ、身体の線をみせないダブダブのエプロン着の上からでも一目で分かるほど、たわわに胸が実っている。
「えっ!?サフラ!? な、何こんな所に居るのよ!?」
「驚天動地!!こんな所でまたお会いできるとは、袖触れ合うも多生の縁ですね~!!!」
本当に驚いているかどうかは全く以て分からない受け答えと態度である。彼女の名はサフラ・エクダル、四芒星(火、水、風、土)魔道士でリーンより3歳年下の22歳だ。メルとは同い年である。四芒星とは言っても魔法の方はほんの初歩的な事しか出来ない。
『英雄戦争』では工兵隊に所属し、しかし戦争に直接参加するというよりは、もっぱら戦術研究や魔道研究などに明け暮れていた。それも、大根兵士達の生態とか、『英雄』達の一騎打ちが起こす剣気が周辺動物の発情期擾乱に与える影響とか、リーンの栽培魔法と通常の土魔法の違いとその意義についてとか、実戦とはほど遠い全く役に立たない部類のである。当時年齢も15歳と若く言動も言動であったため、本人の気の向くままにさせておくのが妥当であると、マキシム達が思ったからであった。
『英雄戦争』当時の『革命軍』は最盛時、『ウェールズ』王家』の軍勢よりも数が多く、マサムネやシフと言ったリーンの仲間も数多くいたのであったが、今現在、レーネの件がなければ足を踏み入れる事など永久になかったであろう『神話世界』の『ムスペッルスヘイム』で、何故ばったりサフラに出くわすのか、リーン達は不思議の世界にでも足を踏み入れたかのような浮き足だった感触であった。
「あ、相変わらずだな。というか、なんでこんな所にいるんだ?イルトトさんは?」
「探淵索珠、私の希有壮大な情熱はその比翼をここ『ムスペッルスヘイム』にまで広げ、『伝説の神工』イルトトさんにご厄介になりながら師匠の紡ぐ工芸の全てを吸収しているのです。学如登山ですね~。」
(よく意味分からんけど、先、超されたな。。。)
少し残念なガラハドである。
「ちょっとちょっと、久しぶりじゃないの!?あなた『英雄戦争』が終わってから、どこかにふらっと居なくなったと思ってたら、一体何やってたのよ!?いきさつ教えなさいよ!私はあれから苦労して七芒星魔道士になったのよ、あなたを超えたわね!」
「あなた、また胸が大きくなったんじゃないの!?牛みたい(笑)。」
「何ですと、牛高馬大とはまたずいぶんな文学的表現ですね~(笑)!!」
重大な使命の事も忘れ?久々の再会に和気藹々としだす皆であった。
「はぁ~、見れば見るほどすばらしい佇まいね~、この世界にしかもはるか地底の世界にこんな建築物があったなんて。中にはどんな老紳士がいらっしゃるのかしら(笑)?」
薄く七色に黒光りする完璧な四角柱の御影石の集合体で作られた建築物に惚れ惚れするようにメルがのたまう。
「やめてよ! 私はそういうのホントに苦手なんだから。。。」
「まぁまぁ、ちょっと『ブリージンガ・メン』をもらうだけじゃないのよ、減るもんじゃなし(笑)。」
「訳の分からん事を言ってないで、早く入るぞ!」
ひときわ立派ではあるが、門衛も扉も呼び鈴も何もない、薄く水をひいたように輝いている黒い正六面体の建物の入り口を見てロックが言った。建物はどう形容したら良いのか、1m程のやはり正六面体に加工された極めて質の良い御影石が、1ミクロンの狂いもなく全体に敷き詰められており、それぞれの巨石が微妙な角度をもって組み合わされ、地下世界の天井にある光の苔根の光量や向きの変化に合わせて、無数の色の組み合わせを見る者に披露する。
御影石は銀河の星をモチーフにしているかのようにほどよく金属質や石英質の白や赤や蒼がその綺麗に加工された表面に顔を出している。しばらく眺めていると、まるで永遠に広大に広がる宇宙へ誘われるような錯覚に陥るほど完璧な黒色であった。そういった造形品に目がないのかガラハドはいつまでもいつまでも壁を見つめているのであった。
「ちょっと、ガラハド、入るわよ。」
リーンに、頭をコツンッと小突かれ我に返るガラハド。レーネを取り返すために今ここに居る事さえも忘れさせてしまう、見る者によってはそれほどに忘我の境地に陥らせるような、伝説にもなっている建造物である。そしてリーン達5人が入った玄関兼広間は壁から壁まで駆け抜けられるくらい広く、そして、中央に永久機関を思わせるオブジェが飾られている。
壁同様黒い御影石で出来た直径30cm程の正六面体と、それを覆っている大きさの異なる3つの純銀のリングが、縦に長い長方体の台の上で宙に浮き、それぞれが上下前後左右不規則に、ゆっくりと回転をしているのである。見ているとその不思議な正六面体と純銀のリングの内部に引き込まれてしまうかのような神秘的な動きである。
(ちょっと落ち着いたら、またここに来てドワーフの工芸技法を思う存分鑑賞したいな。)
と思う、ガラハドであった。
「おお~い!イルトト殿~!!わしじゃ、金鉱夫のロック・ダンじゃ!久しぶりに顔を見に来たぞ~!!!」
入り口から入って数m、玄関か広間か分からぬ空間から、ロックはいつもの銅鑼声でがなり立てる。数十年ぶりというのに、なにか昨日会った友に問いかけるような口調である。これが長寿の種族ノームやドワーフの時間感覚なのであろうか。
「阿吽の呼吸のように、は~い!」
ロックの友人と言うには少し、いや全然高い、明らかに女性の柔らかな声が返答を返す。どんな人物が出てくるのやら、構えていたリーン達は拍子抜けしてしまった。それに、この声と訳の分からない受け答えはどこかで聞いた事あるような???
「な、なんじゃ(ガクッ)。イルトト殿はおらんのか~い!?」
「はい、疾風迅雷で伺います~。」
相変わらず、ヒバリの鳴くような高く麗しい声が響き返し、やがて部屋の奥から一人の女性が姿を現した。青い瞳と黒い髪、丸眼鏡を掛けた見るからに文学士のような風貌をもった知的な女だった。ただ、身体の線をみせないダブダブのエプロン着の上からでも一目で分かるほど、たわわに胸が実っている。
「えっ!?サフラ!? な、何こんな所に居るのよ!?」
「驚天動地!!こんな所でまたお会いできるとは、袖触れ合うも多生の縁ですね~!!!」
本当に驚いているかどうかは全く以て分からない受け答えと態度である。彼女の名はサフラ・エクダル、四芒星(火、水、風、土)魔道士でリーンより3歳年下の22歳だ。メルとは同い年である。四芒星とは言っても魔法の方はほんの初歩的な事しか出来ない。
『英雄戦争』では工兵隊に所属し、しかし戦争に直接参加するというよりは、もっぱら戦術研究や魔道研究などに明け暮れていた。それも、大根兵士達の生態とか、『英雄』達の一騎打ちが起こす剣気が周辺動物の発情期擾乱に与える影響とか、リーンの栽培魔法と通常の土魔法の違いとその意義についてとか、実戦とはほど遠い全く役に立たない部類のである。当時年齢も15歳と若く言動も言動であったため、本人の気の向くままにさせておくのが妥当であると、マキシム達が思ったからであった。
『英雄戦争』当時の『革命軍』は最盛時、『ウェールズ』王家』の軍勢よりも数が多く、マサムネやシフと言ったリーンの仲間も数多くいたのであったが、今現在、レーネの件がなければ足を踏み入れる事など永久になかったであろう『神話世界』の『ムスペッルスヘイム』で、何故ばったりサフラに出くわすのか、リーン達は不思議の世界にでも足を踏み入れたかのような浮き足だった感触であった。
「あ、相変わらずだな。というか、なんでこんな所にいるんだ?イルトトさんは?」
「探淵索珠、私の希有壮大な情熱はその比翼をここ『ムスペッルスヘイム』にまで広げ、『伝説の神工』イルトトさんにご厄介になりながら師匠の紡ぐ工芸の全てを吸収しているのです。学如登山ですね~。」
(よく意味分からんけど、先、超されたな。。。)
少し残念なガラハドである。
「ちょっとちょっと、久しぶりじゃないの!?あなた『英雄戦争』が終わってから、どこかにふらっと居なくなったと思ってたら、一体何やってたのよ!?いきさつ教えなさいよ!私はあれから苦労して七芒星魔道士になったのよ、あなたを超えたわね!」
「あなた、また胸が大きくなったんじゃないの!?牛みたい(笑)。」
「何ですと、牛高馬大とはまたずいぶんな文学的表現ですね~(笑)!!」
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