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第1章
1-82 イルトトの魔導具
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「ねぇ、サフラ、この綺麗な水晶みたいのは何?」
「リーン、よくぞ聞いてくれました~。人呼んで『生命水晶』、魂の動きを止めた老人を~一路平安輪廻転生こちらの世界へ呼び戻す~、感応道交、久遠実成、諸法実相ですよ~。」
「ふ~ん(相も変わらずよく分からないわね)、でもこれ中で炎みたいなのがお淑やかにちろちろ燃えてて綺麗ね~。」
道具倉庫は、工房入り口の広間の神がかり的な調度品と比べると、幾分雑然としていた。丸太で作った大雑把な棚に、楽器や薬品の入った瓶や武器や防具や衣装等々、イルトトの作った子供のおもちゃ箱の中身のようなラインナップのアイテム達が雑然と置かれている。名工イルトトの作る作品はどれもこれも1万クローネ(1億円)は堅いのだから、不用心きわまりないと言えなくもなかった。もっとも、水銀のネコのようなトラップが当然のようにどこかに配置されているやもしれないが。
「サフラさん、この羽衣はひょっとして、『フレイヤ』や『ロキ』が羽織ったとされる、神話に名高い『鷹の羽衣』ですか?」
「風駆飛雲、一旦羽織れば、瞬間躍雀三千里。そうです、そのとおりです~ご明察~~。」
「あら、地表の入り口でみた黄金のカエルがこんなにたくさん!?」
ふと見ると、メルが言うとおり、地表にいた小さい黄金のカエルの彫像が、粗末な木の箱の中に大量にゴロゴロ転がっている。逆さになっている物もあれば、その金色でのっぺりとした腹を天井に向けて仰向けになっている物もある。どれもこれも、地表の蛙のように生きている素振りは見せていない。どうも生命の火を灯すスイッチが入っていないようである。
「雨蛙の新機軸~、ネットワーク黄金ガエルですね~。幾多の光年隔てていても、どんなにあなたと離れていても、以心伝心、万物斉同、全ての蛙にその意思は共有されているのですよ~。」
「おじいちゃんのコガネムシ観測網より凄いわね。。。あの蛙さんにそんな分身がいて、おまけに超高機能だったなんて。。。」
「クラ〇ドコンピューティングも顔負けだわ(笑)。」
一足部屋に踏み入れると、宝石、マント、武器、彫刻、果ては武神から異次元空間まで、見た事もないような破天荒な品々が、イルトトの着想の閃くままに何でも作って置いてある。そして知的好奇心を食事代わりにしているサフラには、まるで天国のような部屋なのであった。不用意にその機能を開放し、何度か生命を危険に晒した事もあったのだが。
そして、これらの未知の突拍子もないアイテムを物色する事一時間、リーン達は実用的に見えるものを選び出した。
「オレはこれがいいな。」
飾りのない簡素な、しかし精巧な作りの小さな丸い盾を持ってガラハドが言った。手で持つのではなく、前腕部にはめて使う動作に支障のない旧時代の籠手のようなタイプだ。恐らくミスリル銀かそれに類する魔法金属で作られ、外見は極端な鏡面で、薄く軽く、中央には何かの不確かな獣の紋章が付いている。
「これからレーネを正気に戻すのに障害もすごそうだってのに、それだけなの?もっと、伝説の剣みたいなのも隣に転がってるじゃないの?」
実際、いかにも質実剛健な英雄が持ちそうな硬派でシックな光り輝くロングソードや、実力のある悪魔がその書斎で棚に入れて飾ってでもありそうな、妄執が紛々と漂ってくるような巨大な戦斧なども、あるにはあったのだがガラハドが選んだのは見た目にもちっぽけな盾一つっきりだった。
「”一度手に取った剣は壊れるまで使いこなせ”だからな。それに『エーギル』さんにもらった白銀の剣と、この白檀の木刀、使っている内に段々なじんできたし。武器はいいよ。」
「リーンさん、彼は、ここに来る途上での地下世界の怪物『ベヒーモス』との死闘でも、その剣達を非常に使いこなしていましたからね。剣裁きもよほどのものをお持ちのようですし、その類いの小さな盾で事足りるのでしょう。大きくて立派な防具などは却って無用の長物ですよ。」
ザイラートが言う。そう、体術に自信のない実力のない者ほど、大きな防具を持ちたくなるものだが、『リヒテナウアー剣術』を極めたガラハドにとっては、剣戟や圧戟を受け流すだけの、コンパクトで丈夫な防具で事足りるのであった。ザイラートのように、防具を全く必要としない優れた伝統芸能でも見ているかのような見事な体術には遠く及ばないのではあったが。
(小さな丸い盾)「おい、大事に扱えよ。」
「わっ、しゃべった!?」
突然、小さな丸い盾は、スピーカーのごとく身体を振動させて金属のように甲高い声を出した。
「お~い、盾、い、生きてんのか?」
「、、、、(沈黙)。」
一瞬、明らかに喋ったかに見えた盾はその後、うんともすんとも言わない。
「な、何?また、魔法生物?」
「ははは、魔法生物とは、ちと違うな。遊びで幻獣を仕込んであるのよ(笑)。冒険者の退屈除けと加護じゃ。」
つい今し方、倉庫へ入ってきたイルトトがメルへ答える。
「どんな幻獣なの?」
「獏じゃよ、獏。悪夢なんかにうなされて眠れない気の弱い冒険者には、うってつけの籠手と思ってな。こんな所に万一そんな軟弱な輩がいればじゃが、これを装備すれば安心して冒険できるはずじゃ(笑)。」
「ガラハドさんには連理の枝のようにうってつけですね~。」
「そうね(笑)。サフラ、ガラハドの性格は7年前と全く変わってないのよ、レーネに振られて却って悪化したくらい(笑)。」
「うるさいお前ら!久々に会ったってのに失礼な!!」
「ホントにこんな所に悪夢で眠れなくなるような線の細い冒険者がおったのか、シャレのつもりで作ったんじゃが、これは失礼した(笑)。」
実は、後にこの冗談のような盾がガラハドの大きな危難を救う事になるのだが、憤慨するガラハドには今は知るよしもなかった。
「リーン、よくぞ聞いてくれました~。人呼んで『生命水晶』、魂の動きを止めた老人を~一路平安輪廻転生こちらの世界へ呼び戻す~、感応道交、久遠実成、諸法実相ですよ~。」
「ふ~ん(相も変わらずよく分からないわね)、でもこれ中で炎みたいなのがお淑やかにちろちろ燃えてて綺麗ね~。」
道具倉庫は、工房入り口の広間の神がかり的な調度品と比べると、幾分雑然としていた。丸太で作った大雑把な棚に、楽器や薬品の入った瓶や武器や防具や衣装等々、イルトトの作った子供のおもちゃ箱の中身のようなラインナップのアイテム達が雑然と置かれている。名工イルトトの作る作品はどれもこれも1万クローネ(1億円)は堅いのだから、不用心きわまりないと言えなくもなかった。もっとも、水銀のネコのようなトラップが当然のようにどこかに配置されているやもしれないが。
「サフラさん、この羽衣はひょっとして、『フレイヤ』や『ロキ』が羽織ったとされる、神話に名高い『鷹の羽衣』ですか?」
「風駆飛雲、一旦羽織れば、瞬間躍雀三千里。そうです、そのとおりです~ご明察~~。」
「あら、地表の入り口でみた黄金のカエルがこんなにたくさん!?」
ふと見ると、メルが言うとおり、地表にいた小さい黄金のカエルの彫像が、粗末な木の箱の中に大量にゴロゴロ転がっている。逆さになっている物もあれば、その金色でのっぺりとした腹を天井に向けて仰向けになっている物もある。どれもこれも、地表の蛙のように生きている素振りは見せていない。どうも生命の火を灯すスイッチが入っていないようである。
「雨蛙の新機軸~、ネットワーク黄金ガエルですね~。幾多の光年隔てていても、どんなにあなたと離れていても、以心伝心、万物斉同、全ての蛙にその意思は共有されているのですよ~。」
「おじいちゃんのコガネムシ観測網より凄いわね。。。あの蛙さんにそんな分身がいて、おまけに超高機能だったなんて。。。」
「クラ〇ドコンピューティングも顔負けだわ(笑)。」
一足部屋に踏み入れると、宝石、マント、武器、彫刻、果ては武神から異次元空間まで、見た事もないような破天荒な品々が、イルトトの着想の閃くままに何でも作って置いてある。そして知的好奇心を食事代わりにしているサフラには、まるで天国のような部屋なのであった。不用意にその機能を開放し、何度か生命を危険に晒した事もあったのだが。
そして、これらの未知の突拍子もないアイテムを物色する事一時間、リーン達は実用的に見えるものを選び出した。
「オレはこれがいいな。」
飾りのない簡素な、しかし精巧な作りの小さな丸い盾を持ってガラハドが言った。手で持つのではなく、前腕部にはめて使う動作に支障のない旧時代の籠手のようなタイプだ。恐らくミスリル銀かそれに類する魔法金属で作られ、外見は極端な鏡面で、薄く軽く、中央には何かの不確かな獣の紋章が付いている。
「これからレーネを正気に戻すのに障害もすごそうだってのに、それだけなの?もっと、伝説の剣みたいなのも隣に転がってるじゃないの?」
実際、いかにも質実剛健な英雄が持ちそうな硬派でシックな光り輝くロングソードや、実力のある悪魔がその書斎で棚に入れて飾ってでもありそうな、妄執が紛々と漂ってくるような巨大な戦斧なども、あるにはあったのだがガラハドが選んだのは見た目にもちっぽけな盾一つっきりだった。
「”一度手に取った剣は壊れるまで使いこなせ”だからな。それに『エーギル』さんにもらった白銀の剣と、この白檀の木刀、使っている内に段々なじんできたし。武器はいいよ。」
「リーンさん、彼は、ここに来る途上での地下世界の怪物『ベヒーモス』との死闘でも、その剣達を非常に使いこなしていましたからね。剣裁きもよほどのものをお持ちのようですし、その類いの小さな盾で事足りるのでしょう。大きくて立派な防具などは却って無用の長物ですよ。」
ザイラートが言う。そう、体術に自信のない実力のない者ほど、大きな防具を持ちたくなるものだが、『リヒテナウアー剣術』を極めたガラハドにとっては、剣戟や圧戟を受け流すだけの、コンパクトで丈夫な防具で事足りるのであった。ザイラートのように、防具を全く必要としない優れた伝統芸能でも見ているかのような見事な体術には遠く及ばないのではあったが。
(小さな丸い盾)「おい、大事に扱えよ。」
「わっ、しゃべった!?」
突然、小さな丸い盾は、スピーカーのごとく身体を振動させて金属のように甲高い声を出した。
「お~い、盾、い、生きてんのか?」
「、、、、(沈黙)。」
一瞬、明らかに喋ったかに見えた盾はその後、うんともすんとも言わない。
「な、何?また、魔法生物?」
「ははは、魔法生物とは、ちと違うな。遊びで幻獣を仕込んであるのよ(笑)。冒険者の退屈除けと加護じゃ。」
つい今し方、倉庫へ入ってきたイルトトがメルへ答える。
「どんな幻獣なの?」
「獏じゃよ、獏。悪夢なんかにうなされて眠れない気の弱い冒険者には、うってつけの籠手と思ってな。こんな所に万一そんな軟弱な輩がいればじゃが、これを装備すれば安心して冒険できるはずじゃ(笑)。」
「ガラハドさんには連理の枝のようにうってつけですね~。」
「そうね(笑)。サフラ、ガラハドの性格は7年前と全く変わってないのよ、レーネに振られて却って悪化したくらい(笑)。」
「うるさいお前ら!久々に会ったってのに失礼な!!」
「ホントにこんな所に悪夢で眠れなくなるような線の細い冒険者がおったのか、シャレのつもりで作ったんじゃが、これは失礼した(笑)。」
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