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第1章
1-85 とこしえのダンジョン
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どうしようもない好色なおじいちゃん『神工』イルトトの芸術品のような工房を後にして、『ミズガルズ』へ急ぐリーン達であったが、イルトトが現在古代魔導具の発掘と冒険を行っている『とこしえのダンジョン』に『ミルスラン枝窟』へ抜ける近道がある、というアドバイスを受けて、そのダンジョンを突き進んでいた。
「おい、段々寒くなってきたな。 何だか不気味な雰囲気だぞ。ホントにこっちのルートで正解なのか?(心配)」
「イルちゃんの言う事には、この先ずっと行くと、ルーン界まで続いてるって事よね。凶悪な闇の幻獣とか出てきたりしてね~(笑)。」
早速臆病なガラハドをからかうメル。
「お、おい、やめろよ!」
いつものガラハド節は健在であった。『獏の盾』はあれから、うんともすんとも言わずガラハドの右前腕に収まっている。神工イルトトの作だけあってあくまで軽く、美しく、どんな景色にもよく映える。しかし、悪夢の元になる弱気の虫をも食べてくれるという幻獣『獏』は力を発揮しないのであろうか?
「うるさいのぉ!ここのすぐ傍にも金鉱があって掘りがてら何度も通った事があるわい。『ミルスラン枝窟』まで続いている事は知らんかったがの。毒蛇とか毒蜘蛛くらいならいるかもしれんが、普段はコウモリや小動物くらいしか見かけん安穏な所のはずじゃぞ!」
松明を掲げたロックはガラハドを怒鳴りつける。ロックはロックで、背中にずいぶんと大きい戦槌『爆炎槌』を携えていた。見る者が見れば、活火山の火口にも似たその爆発的な炎のルーンを感じ取る事が出来る逸品である。そしてもちろん、イルトトの作る他の他のアイテム同様、装飾やデザインは非常に凝っていて美しい。ずんぐりむっくりでどちらかと言えば女性に不自由しそうなロックを二段ほど男前に見せるほど、その槌と岩石のような彼は調和しているのであった。
『とこしえのダンジョン』はメルの言うように、元精霊王『アースドラゴン』オーグレイドや、『風の馬』ブローズグホーヴィ達が生まれ育った所、ルーン界まで続いているダンジョンである。どういった経緯でこのダンジョンが出来たかは神話世界までさかのぼる話になるが、世界創世の時より存在していた事は分かっている。現在、彼らが通っている場所は、ダンジョンの入り口も入り口、『ルーン界』へ到達するのにはあと数十日を要すると思われ、今のところ通常の洞窟のようなまったく健全な雰囲気で危険はないように思われた。
『とこしえのダンジョン』の作りはあくまで頑健であった。通路幅や天井までの高さは20m四方あり、これまでリーン達が見たどのような洞窟やダンジョンよりも大きく出来ていた。神話時代かつて巨人達がここを往来したのかもしれない。イルトトの宇宙の神秘を感じさせるような寸分の狂いもなく設計された工房ほど手の込んだ洗練された作りはされていないのであったが、通行するリーン達を驚嘆させるに十分なほど神話性を持っていた。
そして『ムスペッルスヘイム』の灼熱の暑さからは少し離れて奥に行くほどヒンヤリとした空気が感じられた。さらに地下深くにある冥界『ニヴルヘル』から出てくる冷気なのであろうか?これら幻想的な雰囲気の一つ一つは心配性のガラハドを萎縮させるに十分である。
しかし、リーンはいつになく浮き浮きとしていた。厳しい自然環境で森や林の少ない地下世界『ムスペッルスヘイム』へ来てから久しく『森のルーン』を感じ取る事が出来ず、なんとなく元気が出ないのであったが、今はこのイルトトの作った『森のチュニック』が彼女全身をその生命のオーラがあふれ出る『森のルーン』で包んでいる。
このルーンさえあれば、これから待ち構えている試練も何ともなく攻略できる、レーネを正気に戻す事が出来る。昔みたいに、レーネやガラハドや仲の良いみんな達と笑いながら過ごす事が出来る。そんな楽観的な気分にリーンはなっていた。
歩くこと一刻(2時間)あまり、リーン達はどこか異質な物音を耳にした。低く図太い音から、甲高い音、どれもこれもうめき声のような聞こえる何千もの音が、この少し先の空間から聞こえてくる。
「お、おい!?」
「む、不特定多数の人間達の声が聞こえるようですね?怨嗟に満ちているような、ちょっと危険な雰囲気です。」
「言わんでも分かるわい。おかしいのぉ、『とこしえのダンジョン』はどこまでも静謐で、それこそルーン界の神獣達が羽を休めるのに相応しいような所だったはずなんじゃが。。。」
と、のんきに構えている最前列のノーム二人に向かって、前方の暗がりから、突然、ゴウッ!っと巨大な岩が飛んできた。
「おい、段々寒くなってきたな。 何だか不気味な雰囲気だぞ。ホントにこっちのルートで正解なのか?(心配)」
「イルちゃんの言う事には、この先ずっと行くと、ルーン界まで続いてるって事よね。凶悪な闇の幻獣とか出てきたりしてね~(笑)。」
早速臆病なガラハドをからかうメル。
「お、おい、やめろよ!」
いつものガラハド節は健在であった。『獏の盾』はあれから、うんともすんとも言わずガラハドの右前腕に収まっている。神工イルトトの作だけあってあくまで軽く、美しく、どんな景色にもよく映える。しかし、悪夢の元になる弱気の虫をも食べてくれるという幻獣『獏』は力を発揮しないのであろうか?
「うるさいのぉ!ここのすぐ傍にも金鉱があって掘りがてら何度も通った事があるわい。『ミルスラン枝窟』まで続いている事は知らんかったがの。毒蛇とか毒蜘蛛くらいならいるかもしれんが、普段はコウモリや小動物くらいしか見かけん安穏な所のはずじゃぞ!」
松明を掲げたロックはガラハドを怒鳴りつける。ロックはロックで、背中にずいぶんと大きい戦槌『爆炎槌』を携えていた。見る者が見れば、活火山の火口にも似たその爆発的な炎のルーンを感じ取る事が出来る逸品である。そしてもちろん、イルトトの作る他の他のアイテム同様、装飾やデザインは非常に凝っていて美しい。ずんぐりむっくりでどちらかと言えば女性に不自由しそうなロックを二段ほど男前に見せるほど、その槌と岩石のような彼は調和しているのであった。
『とこしえのダンジョン』はメルの言うように、元精霊王『アースドラゴン』オーグレイドや、『風の馬』ブローズグホーヴィ達が生まれ育った所、ルーン界まで続いているダンジョンである。どういった経緯でこのダンジョンが出来たかは神話世界までさかのぼる話になるが、世界創世の時より存在していた事は分かっている。現在、彼らが通っている場所は、ダンジョンの入り口も入り口、『ルーン界』へ到達するのにはあと数十日を要すると思われ、今のところ通常の洞窟のようなまったく健全な雰囲気で危険はないように思われた。
『とこしえのダンジョン』の作りはあくまで頑健であった。通路幅や天井までの高さは20m四方あり、これまでリーン達が見たどのような洞窟やダンジョンよりも大きく出来ていた。神話時代かつて巨人達がここを往来したのかもしれない。イルトトの宇宙の神秘を感じさせるような寸分の狂いもなく設計された工房ほど手の込んだ洗練された作りはされていないのであったが、通行するリーン達を驚嘆させるに十分なほど神話性を持っていた。
そして『ムスペッルスヘイム』の灼熱の暑さからは少し離れて奥に行くほどヒンヤリとした空気が感じられた。さらに地下深くにある冥界『ニヴルヘル』から出てくる冷気なのであろうか?これら幻想的な雰囲気の一つ一つは心配性のガラハドを萎縮させるに十分である。
しかし、リーンはいつになく浮き浮きとしていた。厳しい自然環境で森や林の少ない地下世界『ムスペッルスヘイム』へ来てから久しく『森のルーン』を感じ取る事が出来ず、なんとなく元気が出ないのであったが、今はこのイルトトの作った『森のチュニック』が彼女全身をその生命のオーラがあふれ出る『森のルーン』で包んでいる。
このルーンさえあれば、これから待ち構えている試練も何ともなく攻略できる、レーネを正気に戻す事が出来る。昔みたいに、レーネやガラハドや仲の良いみんな達と笑いながら過ごす事が出来る。そんな楽観的な気分にリーンはなっていた。
歩くこと一刻(2時間)あまり、リーン達はどこか異質な物音を耳にした。低く図太い音から、甲高い音、どれもこれもうめき声のような聞こえる何千もの音が、この少し先の空間から聞こえてくる。
「お、おい!?」
「む、不特定多数の人間達の声が聞こえるようですね?怨嗟に満ちているような、ちょっと危険な雰囲気です。」
「言わんでも分かるわい。おかしいのぉ、『とこしえのダンジョン』はどこまでも静謐で、それこそルーン界の神獣達が羽を休めるのに相応しいような所だったはずなんじゃが。。。」
と、のんきに構えている最前列のノーム二人に向かって、前方の暗がりから、突然、ゴウッ!っと巨大な岩が飛んできた。
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