野菜士リーン

longshu

文字の大きさ
111 / 160
第1章

1-95 激戦 カーン 対 ガラハド

しおりを挟む
そしてすぐに決闘は始まる。まず、カーンが『大地の斧』で勢いよく床面を穿つと、黒曜石へと姿を変えた床面が周辺を破壊しながらまっすぐにガラハドへと激進してゆく。カーン唯一の魔法攻撃【石化衝】だ、触れれば黒曜石で出来た立派な戦士の彫刻と化してしまうのは免れない。

ガラハドは間一髪、【石化衝】の威力の及ばない側壁へ飛び逃れると、反転カーンへ飛びかかった。

「ふ、やはり発狂した魔法使い風情には効いたが、熟練の剣士に効くほど甘くは無かったようだな。やはりワシにはこれが似合うわい。」

というと、両手にしっかと伝説の斧を握り直す、ガラハドの剣戟を一網打尽にするつもりだ。一方のガラハドはカーンの視界の端から端へ超速ステップで徐々に近づく、ノームの近衛兵長ザイラートの神速にも似た、通常の剣闘士であればとても目に終えない相手の意を突く軽快なステップであった。『古の英雄』とは言え、正式な剣術を学んだ訳ではないカーンも、動きに付いていくのがやっとの様子である。態度と言い、身のこなしと言い、酔っ払ってるときみたいのガラハドみたいだわ、リーン達は思った。

数十回の目にも停まらぬステップの後にガラハドが仕掛ける。カーンの背面から迫り袈裟切りにする鋭く深い一撃。辛うじて背に斧を振りその刃で受け流すカーン。驚くべき事に、一つだけ通常の戦闘と違っている点があった。ガラハドはこのぎりぎりの決戦においても白銀の剣を刃を逆さにして、あくまで峰打ちを狙っている。

「ふん、洒落臭い、そんな覚悟で臨むとは、ワシも舐められたものよ。」

「この剣は、あなたを乗り越えて、レーネをこの手に取り戻すためにのみ振るいます。殺傷してしまっては、」

決意をにじませ、ガラハドはゆっくりと静かにカーンに向けて言い放つ。

「取り返しが付かない。」

「言ったな!もう勝ったつもりか!!」

振り向きざま、世界樹も切り倒さんかのような威力で、ガラハドの胴めがけて横払いに『大地の斧』でなぎ払う。カーンは徹頭徹尾戦士である、『レボルテ』危急の時と考えている今回の戦いに躊躇や手加減は出来ないのであった。

しかし、威力はあるとは言え不意打ちでもフェイントでも何でも無いそんな無造作な一撃を食らうガラハドではない、即座に飛び退き、今度はカーンの周辺を多角形を描いて回り出す。やはり正式な剣術を学んでいる者の一分の隙も無い簡単には捉えられないフェイントを交えた機敏で無軌道な動きだ。そして、普段静かな構えのガラハドからは想像できない”動”の動きであった。

ガラハドは、明らかな強敵とまみえる時は、相手の動きを完全に読み切るまで”静”に徹している。30合ほど剣を交えて、剣術の分類をその人の持っている癖を完璧に把握してから反撃に移るのであったが、今回は互いに十二分に戦術や癖を知り尽くしているカーンである。そのような必要もなく、また一度でも攻撃を回避し損なえばその膂力で致命的なダメージを負いかねない、”静”に徹して受けきれると思えるほど容易な相手でもないのであった。

機を捉えたガラハドは回転する多角形の内径を狭め始める、カーンの隙を見て攻撃に移るつもりだ。

「小うるさいのぉ!」

ゴウッ!と多角形の軌道めがけて、『大地の斧』を一閃する。並の戦士なら5人くらいまとめて吹き飛ばされそうな一撃だ。跳び回っていたガラハドは刃先をするりと躱すと、カウンターを当てて逆さにした白銀の剣による払いをカーンの鳩尾へ入れる。が、硬いゴムに跳ね返されたような感覚。カーン相手では、少し合わせただけのような打撃や剣撃ではかすり傷一つ負わせられそうも無い。

「ふん!そんな細っちょろいなまくら刀が効くものか!切る気で来ないと、ワシは倒せんぞ!!」

カーンの攻撃を回避してまた多角形に目くらましを狙おうと引くガラハドに、すかさずカーンが追い打ちでタックルをぶちかます。優に100kgは超える筋肉質な大男の犀の突撃にも似た肩からのタックルである。ガラハドはたまらず壁まで吹き飛ばされた。

「まだまだあまちゃんよの、隙だらけじゃわい!!」

「さすがに一筋縄ではいきませんね。では、参ります。」

壁にしこたま打ち付けられたかに見えたガラハドは、すぐさま体勢を整えると再びカーンに迫る、どうやらやはり教科書通りに綺麗に受け身を取り、衝撃を逃がしたようである。今度は変幻自在、二刀流の構えだ。スピードでカーンを圧倒するガラハドは更に手数を増やし不意に食らいそうな致命的な一撃を防ぐ戦略だ。

「ふん、武器が二つに増えたところで変わらんわい!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~

Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。 それでも、組織の理不尽には勝てなかった。 ——そして、使い潰されて死んだ。 目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。 強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、 因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。 武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。 だが、邪魔する上司も腐った組織もない。 今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。 石炭と化学による国力強化。 情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。 準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。 これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、 「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、 滅びの未来を書き換えようとする建国譚。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

私が……王太子……のはずだったのに??

#Daki-Makura
ファンタジー
最愛と朝を迎えたら……城下が騒がしい……?? 一体……何が起きているのか……??

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

好感度0になるまで終われません。

チョコパイ
恋愛
土屋千鶴子(享年98歳) 子供や孫、ひ孫に囲まれての大往生。 愛され続けて4度目の転生。 そろそろ……愛されるのに疲れたのですが… 登場人物の好感度0にならない限り終わらない溺愛の日々。 5度目の転生先は娘が遊んでいた乙女ゲームの世界。 いつもと違う展開に今度こそ永久の眠りにつける。 そう信じ、好きなことを、好きなようにやりたい放題… 自覚なし愛され公女と執着一途皇太子のすれ違いラブロマンス。

番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...