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第1章
1-G-2 『七神創生』 その2
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そしてエルフの離脱が早いか、『ヨトゥンヘイム』地方の原初の王『シャツィ』に率いられた『霜の巨人』達は、『ミズガルズ』中原へ侵攻を始める。シャツィの野心はたいそうなもので、『ミズガルズ』や『アースガルズ』の領有を、そして『不滅の林檎』の管理者である女神『イズン』を欲していた。ちなみに彼女は人妻であった。
彼ら『霜の巨人』達の持つ力は、古来は『アースガルズ』に住む神々に比肩するほど圧倒的で、人間やノームやドワーフなど為す術がない。それというのも『霜の巨人』達は、他の種族と生まれを異にしていたからである。
人間達は『神の長』や『紡ぎの神々』によって創造されたものがほとんどであったが、『霜の巨人』のみは神々によって創造されたのではなく、『神の長』をも創り出した『大いなる真理』から自然発生的に、『神々』の口から言わせれば副産物として生まれ出たとされるためだ。
言わば『神々』とは兄弟的な間柄なのである。故に、『神々』に取っては、人間達のように管理する事もままならない、また出生からして不用意には手出しできない、非常に歯がゆい存在なのであった。
世界創世時には、自らが導いた世界に干渉はしないと決めた『アースガルズ』の神々ではあったが、『神の長』は自らの弟格で新興勢力でもあった『霜の巨人』達に危機感を抱き、また自らが特に創造した人間達を非常にひいきにしていた。
そして神々と『霜の巨人』達との血で血を洗う激闘が始まるのである。
初め『霜の巨人』達の力は圧倒的に見えた、『神々』と同じ上背と膂力、そして強大なルーンの力もまったく互角で、滅多な事では子を作らない『神々』と違い、繁殖欲は旺盛で、数の力もあった。小さき種族達を庇護する『神々』達が劣勢に陥り、『ミズガルズ』を明け渡す手前まで迫った時に、ついに『神々』達は使用する事敵わなかったいくつかの神器『真理の顕現』を戦いに投入する事にした。
強大なルーン力を持つ神々がこの世界のルーンの結晶であり、またその増幅器とも言える『真理の顕現』を操る事は、世界を崩壊させる事と同義に等しく、これは彼らの父なる存在『大いなる真理』に背く事に他ならなかった。それ故に彼ら『神々』は最後まで『真理の顕現』の使用を躊躇していたのであった。
この戦いに投入された『真理の顕現』は彼ら『神々』が当時所持していた3種、水の顕現『麦酒醸造鍋』、風の顕現『ミョルニルの槌』、闇の顕現、死者の船『ナグルファル』である。
雷神トールが『ミョルニルの槌』の風のルーンを操り幾百にものぼる荒れ狂う竜巻で『霜の巨人』達を戦場から一掃した後、『霜の巨人』が二度と侵攻してこないよう境界線にその槌を下ろす。大地はめきめきと響きをあげて裂け、何kmも底にある死者の世界『ニヴルヘイム』へ通ずるすさまじく巨大な亀裂を発生させた。今では『世界の裂け目』と呼ばれる奈落となっている。
そして、海神『エーギル』が水の顕現『麦酒醸造鍋』を使い、亀裂を起点として大海原を発生させる。それは、未熟な航海技術しか持たない神話時代においては、エルフ達のように風のルーンを使って空でも飛べない限りは、一部の神器を持っている神々にしか渡る事の出来ない、世界を隔てるような巨大な大洋であった。
最後に闇神『ヘル』が、闇の顕現『死者の船ナグルファル』に乗ってそれを渡り、一帯に毒の川『エーリヴァーガル』を出現させる。その幅は1kmはあり『ミズガルズ』への方角を遮るかのように悠然と流れている。そして、触れた部分は一瞬で腐れ落ちる腐敗性の猛毒だ。『霜の巨人』といえどもこの川を渡る術を持つ者はいないのであった。
こうして隔絶された端地に残された『霜の巨人』達は、為す術も無くそこで自存自営するしかないのであった。そして、いつしかその世界は『ヨトゥンヘイム』と呼ばれ、『ミズガルズ』の人間達からは忘れ去られる事になる。
『大いなる真理』との誓いを破ってまで『真理の顕現』を使用し、兄弟でもある『霜の巨人』達を闇に葬った『神の長』達。この一件で世界のルーンの調和は大きく乱され、調和のバロメータである『世界樹』は衰退を初め、『ムスペッルスヘイム』を支えていた幹は枯れ果て、その大陸は奈落『ニヴルヘル』周辺までずり落ち、地下世界に変わる事になる。
そしてそれはただの端緒に過ぎず、これまで均衡を保っていたルーンの極端な乱れから、神殺しの魔銀狼『フェンリル』や同じく世界蛇『ヨルムンガンド』達の出現と跋扈を引き起こす。このようにして世界は荒廃と崩壊へと舵を切ったのであった。
『大いなる真理』に対して大きな負い目を負った『神の長』達は、静かに『アースガルズ』へ引き返し、今後二度と世界への干渉をしないと決めた。
そして、神々と『霜の巨人』達の対立は、見つければ互いを殺さずにはおかぬほど、決定的なものとなるのである。
現在各地にその存在を認められている『賢者』たちは、このようにして現世界への干渉をやめた『紡ぎの神々』達が、現世でのルーンの正常な巡りの復活を託した者たちの末裔とされている。
そして往時『紡ぎの神々』の名代として『精霊王』達とルーン界にて精神レベルで契約を取り交わし、その強大な力を以てこの世界の統治を行っていた『七賢』たちも、現在ではその秘法の多くは忘れさられ、国王や軍師として運営していた国も滅び去り、その存在と栄光は過去のものとなったのであった。
彼ら『霜の巨人』達の持つ力は、古来は『アースガルズ』に住む神々に比肩するほど圧倒的で、人間やノームやドワーフなど為す術がない。それというのも『霜の巨人』達は、他の種族と生まれを異にしていたからである。
人間達は『神の長』や『紡ぎの神々』によって創造されたものがほとんどであったが、『霜の巨人』のみは神々によって創造されたのではなく、『神の長』をも創り出した『大いなる真理』から自然発生的に、『神々』の口から言わせれば副産物として生まれ出たとされるためだ。
言わば『神々』とは兄弟的な間柄なのである。故に、『神々』に取っては、人間達のように管理する事もままならない、また出生からして不用意には手出しできない、非常に歯がゆい存在なのであった。
世界創世時には、自らが導いた世界に干渉はしないと決めた『アースガルズ』の神々ではあったが、『神の長』は自らの弟格で新興勢力でもあった『霜の巨人』達に危機感を抱き、また自らが特に創造した人間達を非常にひいきにしていた。
そして神々と『霜の巨人』達との血で血を洗う激闘が始まるのである。
初め『霜の巨人』達の力は圧倒的に見えた、『神々』と同じ上背と膂力、そして強大なルーンの力もまったく互角で、滅多な事では子を作らない『神々』と違い、繁殖欲は旺盛で、数の力もあった。小さき種族達を庇護する『神々』達が劣勢に陥り、『ミズガルズ』を明け渡す手前まで迫った時に、ついに『神々』達は使用する事敵わなかったいくつかの神器『真理の顕現』を戦いに投入する事にした。
強大なルーン力を持つ神々がこの世界のルーンの結晶であり、またその増幅器とも言える『真理の顕現』を操る事は、世界を崩壊させる事と同義に等しく、これは彼らの父なる存在『大いなる真理』に背く事に他ならなかった。それ故に彼ら『神々』は最後まで『真理の顕現』の使用を躊躇していたのであった。
この戦いに投入された『真理の顕現』は彼ら『神々』が当時所持していた3種、水の顕現『麦酒醸造鍋』、風の顕現『ミョルニルの槌』、闇の顕現、死者の船『ナグルファル』である。
雷神トールが『ミョルニルの槌』の風のルーンを操り幾百にものぼる荒れ狂う竜巻で『霜の巨人』達を戦場から一掃した後、『霜の巨人』が二度と侵攻してこないよう境界線にその槌を下ろす。大地はめきめきと響きをあげて裂け、何kmも底にある死者の世界『ニヴルヘイム』へ通ずるすさまじく巨大な亀裂を発生させた。今では『世界の裂け目』と呼ばれる奈落となっている。
そして、海神『エーギル』が水の顕現『麦酒醸造鍋』を使い、亀裂を起点として大海原を発生させる。それは、未熟な航海技術しか持たない神話時代においては、エルフ達のように風のルーンを使って空でも飛べない限りは、一部の神器を持っている神々にしか渡る事の出来ない、世界を隔てるような巨大な大洋であった。
最後に闇神『ヘル』が、闇の顕現『死者の船ナグルファル』に乗ってそれを渡り、一帯に毒の川『エーリヴァーガル』を出現させる。その幅は1kmはあり『ミズガルズ』への方角を遮るかのように悠然と流れている。そして、触れた部分は一瞬で腐れ落ちる腐敗性の猛毒だ。『霜の巨人』といえどもこの川を渡る術を持つ者はいないのであった。
こうして隔絶された端地に残された『霜の巨人』達は、為す術も無くそこで自存自営するしかないのであった。そして、いつしかその世界は『ヨトゥンヘイム』と呼ばれ、『ミズガルズ』の人間達からは忘れ去られる事になる。
『大いなる真理』との誓いを破ってまで『真理の顕現』を使用し、兄弟でもある『霜の巨人』達を闇に葬った『神の長』達。この一件で世界のルーンの調和は大きく乱され、調和のバロメータである『世界樹』は衰退を初め、『ムスペッルスヘイム』を支えていた幹は枯れ果て、その大陸は奈落『ニヴルヘル』周辺までずり落ち、地下世界に変わる事になる。
そしてそれはただの端緒に過ぎず、これまで均衡を保っていたルーンの極端な乱れから、神殺しの魔銀狼『フェンリル』や同じく世界蛇『ヨルムンガンド』達の出現と跋扈を引き起こす。このようにして世界は荒廃と崩壊へと舵を切ったのであった。
『大いなる真理』に対して大きな負い目を負った『神の長』達は、静かに『アースガルズ』へ引き返し、今後二度と世界への干渉をしないと決めた。
そして、神々と『霜の巨人』達の対立は、見つければ互いを殺さずにはおかぬほど、決定的なものとなるのである。
現在各地にその存在を認められている『賢者』たちは、このようにして現世界への干渉をやめた『紡ぎの神々』達が、現世でのルーンの正常な巡りの復活を託した者たちの末裔とされている。
そして往時『紡ぎの神々』の名代として『精霊王』達とルーン界にて精神レベルで契約を取り交わし、その強大な力を以てこの世界の統治を行っていた『七賢』たちも、現在ではその秘法の多くは忘れさられ、国王や軍師として運営していた国も滅び去り、その存在と栄光は過去のものとなったのであった。
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