野菜士リーン

longshu

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第1章

1-98 レティシアの陣 その2 同盟軍達

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行進を終え催場に揃った『ウェールズ』の代表師団を見送るように『サンダーバード』が『風のルーン界』へ戻っていくのをしばし眺めた後、次に催場に入ってきたのは『スペニア』の獅子王騎士団であった。

皆一様に同じ鋼鉄で出来たプレートメールとフルフェイスヘルムを装備し、大きめのブロードソードを佩いている。所々槍の先端近くに『スペニア』の流旗『鷹に両手剣』がたなびいている。その容姿は威厳に満ち、落ち目の『ウェールズ』騎士団からするとうらやましいほどの貫禄があった。

「スペニア大公アルティス殿。ジルブレヒトの要請にお応え頂ありがとうございます。さすがに『スペニア』の誇る獅子王騎士団、眩しいばかりに輝いていますな、そして当然のことながら盤石で力強い。『ルーアン』を仮りの住まいとしている我々『ウェールズ』には眩しいばかりです。」

ファビウスは、スペニアの現国王に慇懃に挨拶を行う。

「なに、隣国が困っている時に助けるのは当然のこと。今は亡きエアハルト殿とは、一緒に狩りに出たりしていた仲ですからな、それにしてもあの農民軍、布告もなしに貴国を無差別に攻撃するなど、騎士道にあるまじき愚行!共に手を携え報復と参りましょう!!」

「そう言って頂けると有り難い。此度の戦、御国のあの力強い獅子王騎士団の参戦で、他力本願ながら負けた気がしませぬわ。」

「いやいや、貴国の『緑の騎士団』や『霧の魔法師団』にも存分に活躍して頂かなくては!」

「そうでしたな、もちろん我が国も総力を挙げて先回の大戦の雪辱を果たすつもりです。」

「はっはっは、ちと茶々を入れたまでです、お互い死力を尽くしましょうぞ!!」

『ウェールズ』宰相ファビウスと『スペニア』大公アルティスは、上機嫌で言葉を交わしている。戦力的には連合軍は『レボルテ』を大幅に上回り、特にアルティスは国が誇る聖騎士団を投入する以上、農民軍などに負けはせぬ、と慢心し既に勝った気でいるらしかった。

『スペニア』は『英雄戦争』までは、『ミズガルズ』の中原を大きく二分する勢力の一つであった。『ウェールズ』と同じく、国王が統治し、騎士でもある領主が土地を束ねる封建制国家ながら、国王の治世が良く『革命軍』のような反乱も招かず平和な繁栄を誇っていた。『ウェールズ』との関係はあくまで中立で、そのため『ウェールズ』国内で起こった言わば内乱である『英雄戦争』には余計な干渉はせず、封建制の瓦解を目の当たりにしてしまったのであった。

しかし、主に農民や労働者が起こした『レボルテ』に対しては持ち前の貴族根性から快く思っていないようで、『ルーアン』への無差別攻撃であぶり出された今の『レボルテ』の混沌ぶりと被侵略の危難を背景に、ジルブレヒトの働きかけに応じる事となったのであった。もちろん、そこに領土的野心が無いと言えば嘘になるが、積極的拡張政策は採らないのが、この王制国家の伝統である。

続いて『無法者の国』の山賊達が特に隊列を組むでも無く、ぞろぞろと催場へ入場してきた。手に手に原始的な棍棒や槌といった獲物を持ち、ほとんど上半身裸で凶暴な面構えをして、揃いも揃って紅蓮の炎を模した紅の入れ墨を身体の至る所へ彫り込んでいた。雄叫びをあげている者や、催場に何かめぼしいものは無いか物色しながら入場してくる者もいる。何しろ、きちんとした国の軍隊には見えず、『無法者の国』と『ミズガルズ』中から呼ばれるのもうなずける光景であった。

『スペニア』大公アルティスは一瞥して、苦々しげに舌打ちをしている。

『無法者の国』は『ミズガルズ』の東方『スペニア』の南に位置している。一帯は灼熱地帯であり不毛の岩石砂漠で覆われ、これといった産業や作物も無く、その通り名のように無法地帯そのものなのであった。その暗黒地帯で、腕力のみでのし上がり、国家のような体の集団を作りだしたのが、主賓席で鼻息荒く入場行進を見ているオウカイ、オウラ兄弟である。

兄弟とは言っても双子なのか、ほぼ同じような体躯と顔をして、360°どこから見ても剛の者以外の何物でも無かった。身長も周りの人間から頭二つほど高く、人間とは思えない鋼鉄のような体幹を持ち、一説には、この世界のどこかに今も生息している『炎の巨人』の子孫なのではないか?と噂されているのであった。

彼らの統治方法は、単純明快、力のみである。一度、彼らの国の中に入れば、手癖や愚行や蛮性などまったくお咎めなく、もめ事は全て喧嘩や決闘で決める。その潔さとある種の徳義に惹かれて、『ミズガルズ』中の犯罪者や荒くれ者達が流入しているのであった。

首領たるオウカイとオウラは、当然『無法者の国』の中でも一番の腕っ節で、その上天与のものなのか腕を振るえば業火を呼び、辺り一帯を火の海にしてしまうため、誰にも手が付けられないのであった。『炎の巨人』の子孫と噂される一因である。

「ちっ!蛮族風情が、我々と同列に足を運びおって!忌々しい!!」

「おっと、耳に入ったぜ!『スペニア』の王様じゃね~か!?ちょっと、今の言葉聞きずてならね~な~!!」

喧嘩っ早いオウラが、早速アルティスに食いつく。一触即発の雰囲気である。

「お前達ならず者のおかげで、我が『スペニア』の南の国境は人っ子一人住もうとはせぬ、何度でも言ってやる!山賊と同列で戦うなど我慢ならん!!!」

「何を~!!!」

アルティスは自国の正義に盲目であるし、オウラはオウラで喧嘩っ早い。オウカイが諫めねば一体何人人を殺したのか分からぬほどである。そんな隣国の最高指導者同士が顔を合わせれば当然一悶着では済まないのであった。

「まぁまぁ、お二人とも、ここは矛を収めて。所構わず無差別攻撃を仕掛けてくる狼藉国家『レボルテ』にお灸を据えるのが、今回の戦の本文でしょう。不義の国の輩と我々の違うところは自重ですぞ、お互い協力し合いましょう。」

すると突然、背後からオウカイ、オウラと同じような背丈で超合金で出来た筋肉の塊のような初老の男が、ぬっと現れ仲裁に入った。
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