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第1章
1-100 レティシアの陣 その4 レティシアの演説
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続いて 『風の馬』ブローズグホーヴィの馬上に主人のジャムカの代わりに、ムカリ大将軍を据えたジャムカ帝国騎兵団。ブローズグホーヴィの堂々たる威容とムカリの大将軍に似ない嫋やかな麗姿が相まった、一片の絵画のような入場行進で、居合わせた女性達の嬌声を引き起こす。その後も『ハマツ』の高度機械化工兵隊、杭天華国などなど、続々と役者が揃い、催場は個性溢れる蒼々たる顔ぶれで鋭気に満ちていた。
各国の師団の代表が閲兵式に顔を揃えると、本営のある天幕の奥の間に仮に設けられた王座で静かに座していた麗しい女性が、帳を開け厳かに本営の踊り場の中心、師団の面々から顔が見える位置に顔を現した。『ウェールズ』に代々伝わる『帝冠』、『輝きの錫杖』、そして『宝剣デュランダル』を身につけ、上品な白銀色のチェインメイルに白いマントを羽織っている。その美しい戦いの女神のような姿に、しばらく皆の思考が止まった。
「皆様、我が国参謀ジルブレヒトの働きかけに応じてこうして御参集下さってありがとうございます。『ウェールズ』家当主、エーベルゴード・F・レティシアです。この度この戦を決意したのは他でもありません。あの忌まわしき戦いより7年、『ルーアン』にて平和な世界を創り上げていた私たち『ウェールズ』に、『レボルテ』はまたもや狂気に満ちた攻撃を仕掛けてきました。」
その美しい熟練した弾き手によるハープの演奏ような、生き生きとした艶やかな高い声色に、その一言で語るにはあまりに重い話の内容にも忘れて聴き入る師団の兵士達。演説一つで他を確実に魅了する、レティシア天性の能力であった。
「、、、正義は我々と、この『ウェールズ』の『帝冠』にあります。ここにお集まり頂いた『ミズガルズ』の皆様、どうか手を取り合い暴虐の徒『レボルテ』を中原から駆逐し、そして祖国の白亜の巨城『イスティファルド』を私達の手に取り戻させてください!!」
「おおっ!!」
魅力的かつ理路整然としたその物言いに、あたりに集まった師兵達の士気が一気に高揚する。
「は~、なんて初々しいんだ、レティシアちゃ~ん!」
「オウラ、王女の演説だ、そこらの小娘を見る様な欲にまみれた目で見ているんじゃない!」
「す、すまん、つい。。。」
兄オウカイにたしなめられ、シュンとなるオウラ。しかし、『無法者の国』などにはまったくいない知的で清純な王女レティシアにメロメロになるのも無理はない、それほどにカリスマに溢れた演説であった。
「彼女がエアハルト公の息女レティシア殿ですな!まだ若いのに、エアハルト公に勝るとも劣らない威光が見られる!そしてそれに加えてあの美しい気品、一時は王家の血統が途絶えたと伝えられていた貴国も、これで安泰なのでは?」
エアハルトは少し興奮して宰相ファビウスに語りかける。
「ええ、先の戦で血を絶やさぬよううまく匿った参謀ジルの手柄です。そして、この乾坤一擲の戦を上首尾で進められれば、かつての栄光も取り戻せましょう。アルティス殿、協力して頂けますな。」
「もちろん、盤石の備えを持って!」
(あの堅いアルティス殿を協力に導いてしまう威光。まさにダイヤの原石!ジルのやつ、知っていたのか知らぬのか、どうやら大変な傑物を掘り出してしまったようじゃわい!)
一方、レティシアの演説を本営の後方の席から見ていたショウキは、彼ら『テューレン』一族の手で命を絶ったレイシア王女と全く同じ容姿の女性が成長した姿に、胸中穏やかではなく、複雑な瞳で彼女の演説を眺めていた。
(うむ~、まったくの瓜二つだな、、、発狂して黒いオーラを纏っていた彼女の姉とは、正しく光と影だが。仮に彼女が『ロキの瞳』保持者だったとして、殺めるのは何とも気が引けるな。。。)
「どうかしましたか?ショウキ殿?いつになくふさぎ込んでいるように見えますが?」
隠密部隊とは言っても、徹頭徹尾正直なショウキである。その余りある能力で役目をこなしてはいたものの、本来が裏仕事が出来るような性質では無かった。こう言った仕事はリョウジンやマサムネの方が適任なのである。
「いや、ファビウス殿、何でも無い。これから繰り広げる戦いの事を思って、少し暗い気持ちになっているだけです。」
「ショウキ殿は平和主義者でしたからな。それに、先の戦では『可睡の杜』は『レボルテ』についておりましたな。。。」
ファビウスは責めるように言う。事実、現『可睡の杜』の総帥リョウジンが『レボルテ』についてからと言うもの、何度煮え湯を飲まされた事か、数えるのも嫌になるほどであった。
「いえ、『可睡の杜』は『ハマツ』を防衛する以外は、基本はどの勢力にも与しません。あくまでリョウジン和尚個人の考えですから。それに私の務めていた希望の園『シャイニング・ムーン魔法遊園地』を焼き討ちにするなど、一度制裁を加えねばならぬと感じていた所です。」
「あ、確かショウキ殿はあそこの園長でしたな、これは申し訳ない事を致しました。」
「いえ、やはり『レボルテ』のレーネとか言う輩は捨て置けません。」
「それならば良いのですが。。。では、お互い手を携え打倒『レボルテ』打倒レーネと行きましょう!」
「ええ、そうしましょう。」
ショウキは、レティシアに不測の事態があれば有無を言わさずそれを食い止める、言わばスパイであり微妙な役回りを演じる必要があったのだったが、黒は黒、白は白の彼にはやはり性に合わないのであった。
各国の師団の代表が閲兵式に顔を揃えると、本営のある天幕の奥の間に仮に設けられた王座で静かに座していた麗しい女性が、帳を開け厳かに本営の踊り場の中心、師団の面々から顔が見える位置に顔を現した。『ウェールズ』に代々伝わる『帝冠』、『輝きの錫杖』、そして『宝剣デュランダル』を身につけ、上品な白銀色のチェインメイルに白いマントを羽織っている。その美しい戦いの女神のような姿に、しばらく皆の思考が止まった。
「皆様、我が国参謀ジルブレヒトの働きかけに応じてこうして御参集下さってありがとうございます。『ウェールズ』家当主、エーベルゴード・F・レティシアです。この度この戦を決意したのは他でもありません。あの忌まわしき戦いより7年、『ルーアン』にて平和な世界を創り上げていた私たち『ウェールズ』に、『レボルテ』はまたもや狂気に満ちた攻撃を仕掛けてきました。」
その美しい熟練した弾き手によるハープの演奏ような、生き生きとした艶やかな高い声色に、その一言で語るにはあまりに重い話の内容にも忘れて聴き入る師団の兵士達。演説一つで他を確実に魅了する、レティシア天性の能力であった。
「、、、正義は我々と、この『ウェールズ』の『帝冠』にあります。ここにお集まり頂いた『ミズガルズ』の皆様、どうか手を取り合い暴虐の徒『レボルテ』を中原から駆逐し、そして祖国の白亜の巨城『イスティファルド』を私達の手に取り戻させてください!!」
「おおっ!!」
魅力的かつ理路整然としたその物言いに、あたりに集まった師兵達の士気が一気に高揚する。
「は~、なんて初々しいんだ、レティシアちゃ~ん!」
「オウラ、王女の演説だ、そこらの小娘を見る様な欲にまみれた目で見ているんじゃない!」
「す、すまん、つい。。。」
兄オウカイにたしなめられ、シュンとなるオウラ。しかし、『無法者の国』などにはまったくいない知的で清純な王女レティシアにメロメロになるのも無理はない、それほどにカリスマに溢れた演説であった。
「彼女がエアハルト公の息女レティシア殿ですな!まだ若いのに、エアハルト公に勝るとも劣らない威光が見られる!そしてそれに加えてあの美しい気品、一時は王家の血統が途絶えたと伝えられていた貴国も、これで安泰なのでは?」
エアハルトは少し興奮して宰相ファビウスに語りかける。
「ええ、先の戦で血を絶やさぬよううまく匿った参謀ジルの手柄です。そして、この乾坤一擲の戦を上首尾で進められれば、かつての栄光も取り戻せましょう。アルティス殿、協力して頂けますな。」
「もちろん、盤石の備えを持って!」
(あの堅いアルティス殿を協力に導いてしまう威光。まさにダイヤの原石!ジルのやつ、知っていたのか知らぬのか、どうやら大変な傑物を掘り出してしまったようじゃわい!)
一方、レティシアの演説を本営の後方の席から見ていたショウキは、彼ら『テューレン』一族の手で命を絶ったレイシア王女と全く同じ容姿の女性が成長した姿に、胸中穏やかではなく、複雑な瞳で彼女の演説を眺めていた。
(うむ~、まったくの瓜二つだな、、、発狂して黒いオーラを纏っていた彼女の姉とは、正しく光と影だが。仮に彼女が『ロキの瞳』保持者だったとして、殺めるのは何とも気が引けるな。。。)
「どうかしましたか?ショウキ殿?いつになくふさぎ込んでいるように見えますが?」
隠密部隊とは言っても、徹頭徹尾正直なショウキである。その余りある能力で役目をこなしてはいたものの、本来が裏仕事が出来るような性質では無かった。こう言った仕事はリョウジンやマサムネの方が適任なのである。
「いや、ファビウス殿、何でも無い。これから繰り広げる戦いの事を思って、少し暗い気持ちになっているだけです。」
「ショウキ殿は平和主義者でしたからな。それに、先の戦では『可睡の杜』は『レボルテ』についておりましたな。。。」
ファビウスは責めるように言う。事実、現『可睡の杜』の総帥リョウジンが『レボルテ』についてからと言うもの、何度煮え湯を飲まされた事か、数えるのも嫌になるほどであった。
「いえ、『可睡の杜』は『ハマツ』を防衛する以外は、基本はどの勢力にも与しません。あくまでリョウジン和尚個人の考えですから。それに私の務めていた希望の園『シャイニング・ムーン魔法遊園地』を焼き討ちにするなど、一度制裁を加えねばならぬと感じていた所です。」
「あ、確かショウキ殿はあそこの園長でしたな、これは申し訳ない事を致しました。」
「いえ、やはり『レボルテ』のレーネとか言う輩は捨て置けません。」
「それならば良いのですが。。。では、お互い手を携え打倒『レボルテ』打倒レーネと行きましょう!」
「ええ、そうしましょう。」
ショウキは、レティシアに不測の事態があれば有無を言わさずそれを食い止める、言わばスパイであり微妙な役回りを演じる必要があったのだったが、黒は黒、白は白の彼にはやはり性に合わないのであった。
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