野菜士リーン

longshu

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第1章

1-115 草原の戦い その9 『無法者の国』の兄弟

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『ウェールズ』軍とは進路を別に、緑水青山の森の北東の入り口から『ヴァルヴァンティア』を目指すオウカイ、オウラ兄弟を筆頭とした『無法者の国』の山賊達。荒野や密林は彼ら集団にはお手の物である。そして彼らには『風の魔道士長』ヒュードが付いていた。

「アニキ、レーネってのは何者なんだい?どうやらこの戦争の張本人みたいだが。」

この国の他の男共と同様、政治といった物に髪の毛一本興味を持たない、三度の飯より喧嘩が好きなオウラが双子の兄オウカイに尋ねる。そんな性分であるから『ならず者の集団』と呼ばれている国の国政は兄に任せっきりで、もっぱら遠征と討伐と喧嘩の手出しに明け暮れているオウラである。

「うむ、オレもよくは分からないのだが、周辺国の幹部の言からすればあまり良い印象はないな。ヒュード、何か知っているか?」

オウラと全く同じような、武神の象徴トールの立像のような体つきながら、彼とは真逆に理知的な雰囲気を奥底に秘めたオウカイは答える。その醸し出す無意識に他を押し潰すような威圧感に、緑の輝く髪を戦闘用に後ろ手に縛った『風の魔道士長』ヒュードはちょっと狼狽えてレーネのここ数年の行動を説明した。

「貴国の方々はあまり『英雄戦争』に関与しておりませんでしたのでご存じないかも知れませんが、その『ウェールズ』内戦の折り、我々に反旗を翻した『革命軍』の中の魔法使いの中で、レーネの使う時空魔法は、対極にあるリーンめのだまし絵のような土魔法と同じく、非常に神がかり的なものがありました。」

「我々の兵士をどこか遠くへ消し飛ばしてしまったり、無作為に敵味方含め戦場の全ての戦士達の動きをまったく突然に遅くしてしまったり、城壁を丸ごと上空へ浮き上がらせたり、、、これまでの我々の使っていた火・水・風・土を基本とした魔法とは、体系が全く事なり、どんな攻撃がくるのやら全く予測する事もできず、それらが発動される度こちらは対応に大わらわで、敗北を重ねたものです。」

歯がみしてヒュードは言う。国を思うのもさることながら、当時若干20歳くらいのレーネの魔法に歯が立たなかった己の無力さ、魔道士としての完全な敗北に、今でも思い出すと激しく腹立ちを覚えるヒュードである。

「もっとも彼女自身がその時空魔法をコントロールできていないのか、いつも仕掛けてくる事は違っていたのですが。もし、安定して城壁などを無くされていた日には、更に抵抗の余地などなかったでしょう。」

「ふ~ん、実力派の魔法使いじゃね~か、それがどうして今あんたらに牙を剥いてるんだい?」

(『英雄戦争』とその後の顛末をまったくもって知らぬとは、このオウラと言う男、政情などと言うものにはまるで興味がないみたいだな、仕方ない、説明するか。)

「ええ、彼女が豹変したと思われるのは、『英雄戦争』が終わって数年後、『革命軍』の当時の首領マキシムが病でこの世を去り、やつがその地位を継いだ頃からです。マキシムが統治していた頃は、我々『ウェールズ』に対して、旧『ウェールズ』中央の統治者に対する一片の情というか、『ルーアン』一都市とその周辺を安堵され、戦勝国と戦敗国とは言えゆるやかな連帯感が感じられる国家間の関係でした、、、

その後もヒュードの話は自国の惨状を嘆くように延々と続く。ヴァンにはクールに振る舞っている、魔道士は国家の栄枯盛衰には関与しないと自認しているヒュードではあったが、やはり自身の母国を大きく損なわれたショックは大きいようであった。

そんな話を聞きつつ、オウラは半ば眠りに落ちそうに、オウカイは結論を急ぎたく焦れだした。

「、、、なるほど、それで結局の所、彼女の統治はどうなったのだ?」

「あ、そうでしたちょっと曲折しすぎましたか、1年ほど前からは、我々からの外交使節もまったく受け入れず、まったくお構いなしに魔装兵達を国境に配備し他国へ派遣するようになり、最終的には先日の炎の雨の騒ぎです。事前にまったく何の通告もなく、諸外国へ一斉に攻撃を仕掛けるとは、何を考えているのか、我々『ウェールズ』の首脳陣も考えあぐねている所なのです。」

勝ち目のない喧嘩はしない『無法者の国』の男達にとっても、ヒュードの説明するレーネ率いる『レボルテ』の振る舞いは奇異に感じた。『ミズガルズ』中央に位置する『緑水青山の森』に構える『レボルテ』である。天然の要害足り得る巨大な樹海を勢力下に収めているとは言え、総合的な戦力から言って『レボルテ』のほとんど全周囲に渡る諸外国を敵に回してしまっては、とても勝るとは思えないのであった。

「確かに、正気の沙汰ではないような気がするな。そのレーネとやらと通ずる国がいくらかあれば分からなくもないが、『レボルテ』周辺の主要国ほぼ全てに戦争をふっかけてしまって、どうやって立ち回る気なのか。。。」

ヒュードとオウカイが、彼にとっては退屈きわまりない話を興味深そうにしている間、オウラは半分まぶたを閉じつつ歩いていた。そして、彼の野生の勘が、ある異質を『緑水青山の森』の奥深くに見つけたのであった。
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