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第1章
1-117 草原の戦い その11 親蜘蛛の最後の手
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《ジェンコンジーレン!》(鎌鼬!)
ヒュードの詠唱と共に、金属製の魔物に向けて目に見えない突風が吹き出し、数匹の子蜘蛛はちょうど複眼の位置に埋まっている青い水晶もろとも頭部を切り裂かれミスリル銀の残骸となる。
風の魔道士長の広範囲真空斬撃魔法であった。打撃や簡単な剣撃ではびくともしない青水晶も、強力な真空の刃にその永遠に続くはずの効力を失っていく。そしてその刃は正確に複眼を狙っていた。
(し、しかし、、、)
ヒュードが攻撃を加えながら横目に見る山賊達は、何の知恵も技倆もないのか、あまりに脆く子蜘蛛達の餌食となっている。そして驚いたことに、子蜘蛛達は山賊を倒し終えると、青い霧を吸い出して吸収しているようであった。
(あれが、レーネの開発した時空のルーンによる魔法生物のカラクリか。人間の持っている時空のルーンを奪い取るらしい、それをやられた人間は、、、。しかし、オレばかりが気を吐いていても切りがないな、いつか全滅しちまうぜ、この軍は。。。)
ヒュードが心配するのも是非もない。山賊達はオウカイ・オウラ兄弟を除いては全くと言っていいほど為す術なく魔法生物に打ち倒されていく。一方、兄弟だけは親蜘蛛を相手に互角以上の戦いを繰り広げていた。
「オラッ!」
威勢やかけ声は他の山賊達と同じながら、オウラが彼らと圧倒的に異なる点は、その腕力とスピード、そして天性の炎の力であった。その両の拳は燃えさかっている、ように見えた。彼が腕を振るう度に拳の周りの景色が陽炎のように揺らめく。あたかも初秋の大森林の冷えわたる大気の中に、燃えさかる石炭のような灼熱の物質がぽんと投げ込まれたかのように。
そして、その抜群の身体能力によって親蜘蛛の8本の脚による圧撃を難なく躱し、複眼にあたる部分に埋め込まれている青水晶にその炎の拳による連打を見舞うと、ミスリル銀は融解し青水晶は粉々に砕け散るのであった。
肉体的に全く瓜二つの双子の兄の方は、その天性の才能を度重なる修練でさらに練り上げていた。右の拳から強力な炎の筋を重火器のように放出させる。それに触れた瞬間、親蜘蛛の肉太で醜悪な脚は瞬く間に溶け散るのであった。
「どうだ、見たかっ!タランチュラめっ!」
「タランチュラかどうかは知らんが、まぁ、他愛ないな。」
(す、すげ~!こんな人間見たことね~!炎の巨人の末裔と呼ばれる由縁がこれか!!)
ヒュードは子蜘蛛達に連続で致命的なダメージを負わせながら、横目で『無法者の国』の首領達の体術と攻撃を見て度肝を抜かれていた。
オウカイ・オウラにかかって数分後、その急所への乱暴に見えて的確な攻撃と、攻撃手段である脚を次々に落とされた親蜘蛛は為す術なく倒されるかに見えた。が、次の瞬間、親蜘蛛は爆裂して全身バラバラに飛び散る!
ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!!!
「うわっ~!!!」
降り注ぐミスリルの散弾がヒュードの全身を直撃する。オウカイやオウラのように強固な筋肉の鎧を纏わないヒュードは、身に纏った風のバリアも超速のミスリル弾には役に立たず、大きなダメージを負った。
「お、大丈夫か優男?」
目にも停まらぬミスリルの銃撃をなんと素手で全てはじき飛ばしたオウラが心配そうに聞く。どうやらこの兄弟にはまともな攻撃ではダメージが与えられないようだった。
応急の簡単な治癒魔法で治療しながらヒュードは答える。
「う、ううう。。。こ、これしきの傷は、大丈夫です、、、しかしあの化け物、自爆したのでしょうか、、、?」
強がりは言いものの、ヒュードの受けた傷は相当のもので、専門の光魔法使いでもない彼はとりあえずの止血がやっとのようだった。
そうこうしている間に、ヒュード達の周りに青い霧がどこからともなく立ちこめ、それと時を同じくして全方位に飛び散ったと思われたミスリルの破片が、巧妙に悪巧みをする盗人のようなスピードで、見る見るうちにするすると元の形状を形作りだした。
「ふむぅ、爆発する前より一回り大きくなりそうだな、そして、破壊したはずの青水晶も元の複眼の位置に戻っている、元通り8個だ。もしかすると同時に8個破壊しないと、すぐに再生してしまうのかもな。」
冷静にオウカイが分析する。親蜘蛛は壊された子蜘蛛を吸収するつもりなのか大きくなっているようであった。
「おい、美男子、どうやったらアイツを破壊できるんだ?おれは青水晶全て壊した気でいたんだがな。。。兄者の言うようにタイミングがいるのか?」
「う、ううむ、私の知識では、検討も付きません。。。本部に助言を仰ぎます。」
彼らが呆然と眺めている間にも、親蜘蛛は今にも元通りに戻りそうな勢いで、集結されていくのであった。
ヒュードの詠唱と共に、金属製の魔物に向けて目に見えない突風が吹き出し、数匹の子蜘蛛はちょうど複眼の位置に埋まっている青い水晶もろとも頭部を切り裂かれミスリル銀の残骸となる。
風の魔道士長の広範囲真空斬撃魔法であった。打撃や簡単な剣撃ではびくともしない青水晶も、強力な真空の刃にその永遠に続くはずの効力を失っていく。そしてその刃は正確に複眼を狙っていた。
(し、しかし、、、)
ヒュードが攻撃を加えながら横目に見る山賊達は、何の知恵も技倆もないのか、あまりに脆く子蜘蛛達の餌食となっている。そして驚いたことに、子蜘蛛達は山賊を倒し終えると、青い霧を吸い出して吸収しているようであった。
(あれが、レーネの開発した時空のルーンによる魔法生物のカラクリか。人間の持っている時空のルーンを奪い取るらしい、それをやられた人間は、、、。しかし、オレばかりが気を吐いていても切りがないな、いつか全滅しちまうぜ、この軍は。。。)
ヒュードが心配するのも是非もない。山賊達はオウカイ・オウラ兄弟を除いては全くと言っていいほど為す術なく魔法生物に打ち倒されていく。一方、兄弟だけは親蜘蛛を相手に互角以上の戦いを繰り広げていた。
「オラッ!」
威勢やかけ声は他の山賊達と同じながら、オウラが彼らと圧倒的に異なる点は、その腕力とスピード、そして天性の炎の力であった。その両の拳は燃えさかっている、ように見えた。彼が腕を振るう度に拳の周りの景色が陽炎のように揺らめく。あたかも初秋の大森林の冷えわたる大気の中に、燃えさかる石炭のような灼熱の物質がぽんと投げ込まれたかのように。
そして、その抜群の身体能力によって親蜘蛛の8本の脚による圧撃を難なく躱し、複眼にあたる部分に埋め込まれている青水晶にその炎の拳による連打を見舞うと、ミスリル銀は融解し青水晶は粉々に砕け散るのであった。
肉体的に全く瓜二つの双子の兄の方は、その天性の才能を度重なる修練でさらに練り上げていた。右の拳から強力な炎の筋を重火器のように放出させる。それに触れた瞬間、親蜘蛛の肉太で醜悪な脚は瞬く間に溶け散るのであった。
「どうだ、見たかっ!タランチュラめっ!」
「タランチュラかどうかは知らんが、まぁ、他愛ないな。」
(す、すげ~!こんな人間見たことね~!炎の巨人の末裔と呼ばれる由縁がこれか!!)
ヒュードは子蜘蛛達に連続で致命的なダメージを負わせながら、横目で『無法者の国』の首領達の体術と攻撃を見て度肝を抜かれていた。
オウカイ・オウラにかかって数分後、その急所への乱暴に見えて的確な攻撃と、攻撃手段である脚を次々に落とされた親蜘蛛は為す術なく倒されるかに見えた。が、次の瞬間、親蜘蛛は爆裂して全身バラバラに飛び散る!
ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!!!
「うわっ~!!!」
降り注ぐミスリルの散弾がヒュードの全身を直撃する。オウカイやオウラのように強固な筋肉の鎧を纏わないヒュードは、身に纏った風のバリアも超速のミスリル弾には役に立たず、大きなダメージを負った。
「お、大丈夫か優男?」
目にも停まらぬミスリルの銃撃をなんと素手で全てはじき飛ばしたオウラが心配そうに聞く。どうやらこの兄弟にはまともな攻撃ではダメージが与えられないようだった。
応急の簡単な治癒魔法で治療しながらヒュードは答える。
「う、ううう。。。こ、これしきの傷は、大丈夫です、、、しかしあの化け物、自爆したのでしょうか、、、?」
強がりは言いものの、ヒュードの受けた傷は相当のもので、専門の光魔法使いでもない彼はとりあえずの止血がやっとのようだった。
そうこうしている間に、ヒュード達の周りに青い霧がどこからともなく立ちこめ、それと時を同じくして全方位に飛び散ったと思われたミスリルの破片が、巧妙に悪巧みをする盗人のようなスピードで、見る見るうちにするすると元の形状を形作りだした。
「ふむぅ、爆発する前より一回り大きくなりそうだな、そして、破壊したはずの青水晶も元の複眼の位置に戻っている、元通り8個だ。もしかすると同時に8個破壊しないと、すぐに再生してしまうのかもな。」
冷静にオウカイが分析する。親蜘蛛は壊された子蜘蛛を吸収するつもりなのか大きくなっているようであった。
「おい、美男子、どうやったらアイツを破壊できるんだ?おれは青水晶全て壊した気でいたんだがな。。。兄者の言うようにタイミングがいるのか?」
「う、ううむ、私の知識では、検討も付きません。。。本部に助言を仰ぎます。」
彼らが呆然と眺めている間にも、親蜘蛛は今にも元通りに戻りそうな勢いで、集結されていくのであった。
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