野菜士リーン

longshu

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第1章

1-は-2 一人の大学生が終末的思考を持つに至るまで その2

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「おおお、こ、こんなひどい事を、人間が出来るものなの!!!?」

彼女がそこで見た数々のものは、平和な国に生まれた若干21歳の少女の精神構造ではとても耐えることの出来ないむごたらしいものであった。

熱線と爆風圧により人相のないザラザラとした炭の人形となった少女か少年の死体、真っ黒な死の斑点が全身、特に顔に多く浮かんでいる死相を帯びた少女、爆風によって瓦礫の山となった歴史建造物、山積みになったおびただしい数の黒焦げの死体と小学校の校庭を利用したその火葬場、溶けてくっついた陶器製の花差し、熱により黒く醜く変色したバラバラの人骨、熱線によって溶かされた貨幣やガラス瓶の塊、溶けてくっついてしまった少年と三輪車の残骸、、、、

それらの写真を見た瞬間、あまりの衝撃に一旦は昏倒してしまった。しかし、これまで一度として真っ正面から捉える事の無かった、彼女の日常空間から壁一枚隔てた所にある事実を決して見逃してはならない、その一心で博物館からすぐに退出することはせずに踏みとどまったのであった。

そして、彼女は繰り返し起こる吐き気と重い倦怠感に必死に堪えながらも、一心不乱にそれらの巨大な爆弾が生み出した副産物を一つ残らず頭の片隅にたたき込む。まるで、幼子が母親の言う一言一言をイントネーションから口の形まで正確に覚え切るかのように。

数時間後、事務員に助けられふらふらと博物館を出る頃には、静かで素直だった彼女の心には既にもう一つ別の人格が形成されているのであった。暗く容赦のない冷たい何かである、元々真っ直ぐで理解が早い幾分独り善がりな彼女の心には、その反動はとても大きなものであった。

どこをどう通って下宿についたかは分からないが、その後ベッドに倒れ込むと、すぐにぐっすりと眠り込む。そして、次に起きた瞬間から、ありとあらゆる手段・媒体を使って、その非道極まりない行為の源泉がどこにあるのか、食事もほとんどとらず寝る間も惜しまず探し続けた。元々少なかった彼女の友達も、彼女がみるみる痩せて、会ってもろくに口も聞かず、美しかった長い黒髪が枯れ枝のようになっていくのを見て、徐々に離れていくのであった。

そしてありとあらゆる事を調べ尽くして、極限にまで思い詰めた一晩、ある夢を見た。

、、、

黄色い人間達の大地上空に、突如として炸裂する巨大な火球。温度は数万度にも達しようか。その上を爆速で宇宙まで展開する巨大なキノコ雲。その自然とは似ても似つかない異形の様相の下、地表ではレーネ達と同じ人間達が地獄よりも更にひどい状況に置かれていた。全身真っ黒に炭化した女の子、もちろん死んでいる。剥がれて垂れ下がった皮膚を激痛と共に引き摺るお年寄り、しばらく見ている内に倒れピクピクと痙攣し、こうなるに至った原因も知らぬまま命を終える。強い爆発の衝撃に目や内臓が飛び出してしまった人間達、全身に突き刺さる建物の破片やガラスでハリネズミのようになった学童達。どれもこれも表現の域を超えて無残で、直視できないような惨状であった。

その後数年にわたって蔓延する広がり続ける不治の病、生きながら腐り死んでいく多くの者達、爆弾に見舞われたものが更に受ける差別。そしてそれを最後に目撃してしまった。

戦闘機に乗り攻撃をした兵士達がその日に大宴会で将軍に祝されている光景や、ネズミでも葬るかのようにその爆弾の致死量を計算する科学者達、攻撃を決めた選民的な政治家。阿鼻叫喚の地獄図とすこし場所を隔てたところでは、こんな情景がやらわかに降り注ぐ五月雨のように淡々と繰り広げられているのである。

「わ、私達とおなじ顔かたち感情を持った人間達が、こんなむごい惨劇を繰り広げられるというの!!!」

激情に身を震わせ絶望するレーネ。そして徐々にある考え方が和紙が水を吸うように急速に脳裏に浸透していった。その水は深黒でしかし透き通った真空を思わせる黒さだ。半年の後、彼女は、彼女の思い描いたある世界を体現するために、静かにその計画を実行に移すのであった。獲物を定めた執拗な雀蜂のように。
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