理由

longshu

文字の大きさ
30 / 41

30 再び

しおりを挟む
2回目

1日目
小夜たちの社から離れてほどなくして敏蔵はふとした違和感に気づく。丹田のあたりが妙に熱くジンジンと痛い。不思議に思い直垂の裾をめくった。臍のあたりの皮膚が少し裂けていた。裂け目から血がぽたぽたと流れている。

「けっ、あの社の中で引っ掛けたか。おい、垂、さらしあるか?」

「へいっ、敏兄ぃ。」

血がぽたぽた流れている腹の裂け目を止血も兼ねてさらしで巻くと、次の巣窟に目を付けておいた庄屋の屋敷へ向かった。

7日目
長者の家で敏蔵、永吉、宮助、植太、垂一、祭、他悪党の群れは皆一様に腹部に地平線のように長い亀裂を抱えながらさらしを巻いて横たわっている。傷口はほとんど張り裂けんばかりに大きくなり歴戦の悪雄たちといえどもあまりの痛みに弱音を吐きだしていた。

「おとうちゃん、痛い。。。」

もはや叫ぶ力もなく、敏蔵の愛娘祭りがかすれた声でつぶやく。

「く、くそっ!!!」

悪態はつくものの、今度ばかりは敏蔵も腹いせに垂一を殴り飛ばす気力もない。

漢方医もなすすべがなく、悪党どもの報復が怖くすでに住処を引き払って村からは逃げ去ってしまっている。

絶対に助からない疫病に見舞われたかのような、1週間に及ぶ猟奇の中で敏蔵は気付くのであった。ひょっとしてこれはあの小娘の祟りではないかと。

――――――――――――――
夜になると、悪辣な四天王を除いてはほとんど気絶するか、あまりの痛みとどう処置しても広がっていく傷の恐怖に気が触れてしまうかしていた。

ほぼ皆死に絶えたかのような静寂の中、ひたひたひたひた、、、、這いずり回るような音が屋敷の外から聞こえる。

「なんでぇ、あの音は!!!?」

非常に耳障りな、おぞましい音だ。腹部を裂かれそれでも負け惜しみで強がっていた敏蔵は、腰を踏ん張って立ち上がり音のする方向へずるずると歩いていった。

そこには、、、、。

小夜が、這いずりながら敏蔵の方へ向かってきていた。

首と内臓だけになった小夜が。

口から血を吹き出し、血の涙を流し、生前はきれいに整っていた髪を振り乱し、この世のすべての者を呪い殺すような形相をして、地獄車のように転ってくる小夜が。

首から下すべてを呪いの贄にして、敏蔵達への復讐を遂行している、小夜が。

小夜は、時に転がりながら、時に内臓を引きずりながら、その憎しみに満ちた血の瞳だけは片時も敏蔵から外さず、徐々に彼の足もとへ近づいて来た。それは敏蔵に、やがて彼に訪れるであろう苦しみに満ちた確実な死を想像させるに十分であった。

「ひ、ひぃ~~~~!!!!!」

これまで、どんな者にも暴力と屈辱を与えることしか知らなかった敏蔵の発した、初めてのそして最期の悲鳴。

みりっ、みりみりっ、みりみりみりみりっ、、、肉が、石臼にすりおろされ何かの餌になるような音を立てて、敏蔵の腹部の中心、へそのあたりから放射線状に裂けて広がってゆく。潰れた内臓をぶら下げながら。その様は肉でできた蜘蛛の巣のように見えた。

「ぎ、ぎぎ、ぎゃーーーーーー!!!!!」

凄まじい絶叫。気の遠くなるような恐怖と痛み。敏蔵は、同じように腹が裂けていく祭や子分たちを見ながら、小夜と同じように首から下の体を爆裂させ、その生命を終えたのであった。永遠の後悔をその身に背負いながら。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。 最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。 会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

女子切腹同好会

しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。 はたして、彼女の行き着く先は・・・。 この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。 また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。 マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。 世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

処理中です...