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屋敷の中
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梁の別荘は高い塀に囲まれ、建物の様子は伺い知れない。出入口は木製の大きな門一つだけで、裏口は無さそうだった。
タクシーから降りたイリナは中腰気味にグレネードランチャーを構え、二回引き金を引いた。
くもぐった音が続き、何かがランチャーから飛び出してきたかと思えば。固く閉ざされていた木製の門は木っ端みじんになった。
「派手なチャイムね」
「開幕のゴングさ」
そんなことを言い合いながら、門だった場所を歩く。緑豊かな芝生敷きの庭の先、二階建ての洋館から銃を手にした男達が、わらわらと出てくる。
「下手な小細工なんぞいらん。立ち塞がる奴は全員殺す。異議は?」
「なし!」
馴染みの友人に手を振るみたいな気軽さで、イリナはまたランチャーを撃った。男達が臨戦態勢を取るより先に、屋敷の玄関が吹き飛ぶ。
舞い上がった埃が落ち着くまで少し待って、様子を見る。
何人かは逃れたようだったが、二人ほど巻き込まれたらしい。
脚が生えた下半身らしき肉塊と、銃のグリップを握ったまま千切れた腕と半分欠けた頭が爆発の跡に転がっていた。脚の持ち主は分からないが、欠けた頭には見覚えがあった。アラモアナセンターで襲いかかってきた連中の一人だ。
「ほぉ……」
俄然やる気が湧いてきた。そのやる気に応えてくれるように、MP5サブマシンガンを持った敵が現れた。
俺はイリナを下がらせ、ショットガンを構える。
引き金を引き、目の前に散弾に入った鉛玉をばら撒く。数メートル先にいた男の肩が血煙と化し、真っ白い外壁に赤く幾何学的な模様を付ける。
更に、引き金を引いたままポンプを前後させ、薬室に散弾を送り込む。
次の瞬間、肩が無くなった男の隣にいた奴の頭が轟音と共に消えた。
本来、ポンプアクションでは一発目を撃ってから二発目を放つまで、少しのタイムラグがある。
しかし、俺が持つウィンチェスターM1897は古い散弾銃で、現代の物にはある機関部と散弾が収まるチューブを区切る機構が無いのだ。なので、俺がしたように、引き金を引きっぱなしにしたままポンプを前後させると、連発が出来るのだ。これをスラムファイアという。
威力はお墨付き。
第一次世界大戦の塹壕戦において、その撃ち方が猛威を振るい、トレンチガンという異名が付けられ、自軍の犠牲を重く見たドイツが散弾銃の使用を「条約違反だ」と抗議したなんてエピソードがあるくらいだ。
俺は肩を無くして、もがいている男へ近づき、胸に一発撃ってトドメを刺した。
こうしてグレネードとスラムファイアで敵の第一陣を粉砕し、俺達は屋敷内へ侵入した。
イリナは得物を背中のビソンに変え、近接戦に備える。俺もショットガンを構えたまま、周囲をザッと見渡した。
屋敷内は静かで、妙に殺風景だった。生活感がまるで無い。モデルルームにいるみたいだ。
「……エレナはどこだ?」
「セオリー通りなら、寝室は上よね」
「じゃあ上だ」
俺が階段に足を掛けようとすると、肩を引っ張られた。次の瞬間、目の前に弾丸が降り注いでくる。待ち伏せされていたのだ。
こういうときに、ツーマンセルだと便利だ。
「あぶねぇあぶねぇ」
後ろを見ると、俺の肩を握ったままイリナがドヤ顔をしていた。
「お礼は?」
「どうもありがとう」
「どういたしまして」
軽口を叩きつつ、イリナはランチャーを俺へと渡してきた。
「適当に撃って。私が突っ込むから」
「分かった」
彼女からランチャーを受け取り、タイミングを合わせる。
「今!」
三発ほどグレネード弾を発射して、それらが炸裂したのを確認してからエレナの背中を叩く。叩くというか、触れると同時に彼女はすっ飛んでいく。
それから数秒開いて、けたたましい銃声と叫び声が聞こえてきた。
それが十秒ほど続いて、急に何も聞こえなくなった。
更に数秒待ってから、階上に向かって叫ぶ。
「生きてるか?」
すぐに返事がきた。
「生きてる!」
イリナの声だった。俺はホッと息を吐き出し、弾痕が多数残る階段を上がっていく。彼女がむざむざとやられる訳がないとは思っているが、やはり緊張するものだ。
二階に近づいていくにつれ、焦げ臭いにおいが強くなっていった。階段を上がった先は、死屍累々の光景が広がっていた。
廊下の窓ガラスは全て割れ、グレネード弾が着弾したであろう場所は焦げている。高そうな絨毯もまくれあがり、一部は千切れていた。
その上には、死体が転がっている。
死体とも呼べないような肉塊から、頭を一発撃たれただけの比較的綺麗な物もある。実にバラエティー豊かだ。
そして、死体の山の中心にはイリナが立っていた。
彼女は何処も怪我をしておらず、元気そうだったが、返り血を顔に浴びていた。
俺が指で血が付いているのを示すと、彼女は顔を拭い、手に付いた血を舐めた。
「……ヴァンプの活躍どころってか?」
「そのあだ名、久し振りに聞いた」
「そうか? 俺、船で呼んだぞ」
「そうだっけ?」
ケタケタと笑うイリナ。その様子は、昔の彼女を彷彿とさせた。
タクシーから降りたイリナは中腰気味にグレネードランチャーを構え、二回引き金を引いた。
くもぐった音が続き、何かがランチャーから飛び出してきたかと思えば。固く閉ざされていた木製の門は木っ端みじんになった。
「派手なチャイムね」
「開幕のゴングさ」
そんなことを言い合いながら、門だった場所を歩く。緑豊かな芝生敷きの庭の先、二階建ての洋館から銃を手にした男達が、わらわらと出てくる。
「下手な小細工なんぞいらん。立ち塞がる奴は全員殺す。異議は?」
「なし!」
馴染みの友人に手を振るみたいな気軽さで、イリナはまたランチャーを撃った。男達が臨戦態勢を取るより先に、屋敷の玄関が吹き飛ぶ。
舞い上がった埃が落ち着くまで少し待って、様子を見る。
何人かは逃れたようだったが、二人ほど巻き込まれたらしい。
脚が生えた下半身らしき肉塊と、銃のグリップを握ったまま千切れた腕と半分欠けた頭が爆発の跡に転がっていた。脚の持ち主は分からないが、欠けた頭には見覚えがあった。アラモアナセンターで襲いかかってきた連中の一人だ。
「ほぉ……」
俄然やる気が湧いてきた。そのやる気に応えてくれるように、MP5サブマシンガンを持った敵が現れた。
俺はイリナを下がらせ、ショットガンを構える。
引き金を引き、目の前に散弾に入った鉛玉をばら撒く。数メートル先にいた男の肩が血煙と化し、真っ白い外壁に赤く幾何学的な模様を付ける。
更に、引き金を引いたままポンプを前後させ、薬室に散弾を送り込む。
次の瞬間、肩が無くなった男の隣にいた奴の頭が轟音と共に消えた。
本来、ポンプアクションでは一発目を撃ってから二発目を放つまで、少しのタイムラグがある。
しかし、俺が持つウィンチェスターM1897は古い散弾銃で、現代の物にはある機関部と散弾が収まるチューブを区切る機構が無いのだ。なので、俺がしたように、引き金を引きっぱなしにしたままポンプを前後させると、連発が出来るのだ。これをスラムファイアという。
威力はお墨付き。
第一次世界大戦の塹壕戦において、その撃ち方が猛威を振るい、トレンチガンという異名が付けられ、自軍の犠牲を重く見たドイツが散弾銃の使用を「条約違反だ」と抗議したなんてエピソードがあるくらいだ。
俺は肩を無くして、もがいている男へ近づき、胸に一発撃ってトドメを刺した。
こうしてグレネードとスラムファイアで敵の第一陣を粉砕し、俺達は屋敷内へ侵入した。
イリナは得物を背中のビソンに変え、近接戦に備える。俺もショットガンを構えたまま、周囲をザッと見渡した。
屋敷内は静かで、妙に殺風景だった。生活感がまるで無い。モデルルームにいるみたいだ。
「……エレナはどこだ?」
「セオリー通りなら、寝室は上よね」
「じゃあ上だ」
俺が階段に足を掛けようとすると、肩を引っ張られた。次の瞬間、目の前に弾丸が降り注いでくる。待ち伏せされていたのだ。
こういうときに、ツーマンセルだと便利だ。
「あぶねぇあぶねぇ」
後ろを見ると、俺の肩を握ったままイリナがドヤ顔をしていた。
「お礼は?」
「どうもありがとう」
「どういたしまして」
軽口を叩きつつ、イリナはランチャーを俺へと渡してきた。
「適当に撃って。私が突っ込むから」
「分かった」
彼女からランチャーを受け取り、タイミングを合わせる。
「今!」
三発ほどグレネード弾を発射して、それらが炸裂したのを確認してからエレナの背中を叩く。叩くというか、触れると同時に彼女はすっ飛んでいく。
それから数秒開いて、けたたましい銃声と叫び声が聞こえてきた。
それが十秒ほど続いて、急に何も聞こえなくなった。
更に数秒待ってから、階上に向かって叫ぶ。
「生きてるか?」
すぐに返事がきた。
「生きてる!」
イリナの声だった。俺はホッと息を吐き出し、弾痕が多数残る階段を上がっていく。彼女がむざむざとやられる訳がないとは思っているが、やはり緊張するものだ。
二階に近づいていくにつれ、焦げ臭いにおいが強くなっていった。階段を上がった先は、死屍累々の光景が広がっていた。
廊下の窓ガラスは全て割れ、グレネード弾が着弾したであろう場所は焦げている。高そうな絨毯もまくれあがり、一部は千切れていた。
その上には、死体が転がっている。
死体とも呼べないような肉塊から、頭を一発撃たれただけの比較的綺麗な物もある。実にバラエティー豊かだ。
そして、死体の山の中心にはイリナが立っていた。
彼女は何処も怪我をしておらず、元気そうだったが、返り血を顔に浴びていた。
俺が指で血が付いているのを示すと、彼女は顔を拭い、手に付いた血を舐めた。
「……ヴァンプの活躍どころってか?」
「そのあだ名、久し振りに聞いた」
「そうか? 俺、船で呼んだぞ」
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