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休章 休息 - Quiet days -
おまけ:次の休日★
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カーテンを引いた薄暗い室内にカラムと私の息遣いだけが響いてる。
カラムの舌が私の舌に絡まる度に身体の奥に先日と同じ欲望の波がざわめきだす。
『ピンクの子馬亭』のベッドは私たちが転げまわっても大して軋みもしない。それをいいことにカラムがさっきっから私の身体を好き勝手に転がしてる。
あれからしばらくの間、カラムも私も大忙しだった。カラムは無論新しい職場と王前試合の名声によるものだったし、私は私で副団長の職務が増えていた。
それにもかかわらず、今日は朝から団長に休みを言い渡された。
「とある人物から緊急要件としてお前に休みをやってくれと要請された」
なんとも複雑そうな顔の団長が言いづらそうに続けた。
「あー、どうも近衛隊の1中隊が地獄のしごきにあってるらしい。某中隊長がストレス溜め込んで鬼になってるって話だ。このままじゃ潰されちまうから何とかしてくれと泣きつかれた」
言われた私も複雑な心境だ。その某中隊長がカラムの事なのは間違いないだろう。だけど『とある人物』って誰だ? 団長がそんな言い方するって一体。
「いいから俺の気が変わらないうちにとっとと行け」
追い立てられるように団長室を後にすれば、部屋の前でカラムが当たり前の顔をして待っていた。
流石に服を着替える間は待ってもらったがそのままここに引っ張って来られた。
今回は飲み物も飲まずにリリスたちに手だけ振って部屋に来てしまった。
なんか明け透けに頑張ってと言われてるようでやけに恥ずかしかった。
ベッドの上で私を組み伏せ、まるで会えなかった時間を取り戻そうとするようにキスを降らせ続けていたカラムが、突然スッと真面目な顔で間近に私を見つめ、私と自分の唇を親指で拭いながら口を開く。
「やっぱりもっと頻繁に会いたい」
「だったらもっと私の部屋に来ればいい」
あれっきりカラムは私の部屋を訪れていなかった。正直、カラムのことだからもう少しちょくちょく来てくれるのではないかと期待し、夜部屋に戻るたびについカラムの姿を部屋の中に求めていた。
「……もしかして待っててくれた?」
キラキラと悪戯に目を輝かせるカラムが少しばかり憎たらしい。
「別に。カラムが私に会いたいなら来ればいいっていう意味だ」
そう言う自分の口調がやけに子供っぽくて自分で言ってて情けなくなる。だけどカラムはそれを咎めることもなく、優しく私の短い髪を指で梳かしながらうっとりと見つめてくる。
「ああ、すごく会いたかった。毎晩夢に見てた。ラスは俺に会いたくなかったのか?」
そんなふうに問われては、これ以上意地も張れない。
「……会いたかった」
私がぶっきらぼうに呟くとカラムが顔を綻ばせ、両手で私の頬を包んでキスをくれる。
カラムがくれるキスはどれも甘い。軽いキスも深いキスも何度も唇を食むだけのキスも。どのキスもカラムに想われているのだと実感できる。
「もう少しどこかで一緒にいられる方法を考えようね」
「……なんで私の部屋じゃないんだ?」
別に自分の部屋がとりたてて居心地がいいと言うわけじゃないが、今までそこで一緒に過ごしてきたので自然とそう尋ねたのだが。
「だってラス、声我慢できないでしょ」
「え?」
「この前だってすっごく可愛く鳴きまくってたし。あれじゃ、宿舎の他の連中が気の毒すぎて……うわっ!」
カラムは意地悪だ。こんな言わなくていいこと指摘しやがって!
「分かった、分かったラス、お前が照れてるのは良くわかったから何気に正拳腹に突きこもうとするのは止めろ。お前の綺麗に入っちまったらしばらく役に立たなくなっちまうから」
そう言いつつもカラムは余裕で私をねじ伏せる。体術では剣技以上に敵わない。特に途中で首筋に噛みつかれると力が抜けてしまう。
「ラスを大人しくさせる方法段々分かってきた」
ニヤリと笑ってそう言いながらカラムの手が私の身体を弄りだす。
シャツのボタンはすでに外されてた。穿いていた男物のズボンもいつの間にか前を緩められてる。カラムも私服だが、シャツはとうの昔に脱ぎ捨てられていた。
私のシャツの内側に手を差し込んだカラムが、私の身体の線を辿るように丁寧に撫でまわす。
あの後約束通りカラムから贈られた女性向けの下着はかなり色気のある物で、ほんの薄い生地が必要な部分だけを隠してるだけだった。着脱も細い紐だけなのが本当に心もとない。胸を覆っていた下着はカラムに簡単に取り外されてしまった。
隠されていた乳房が外気に触れて軽く鳥肌が立つ。
鎖骨の上を指が這うと首の付け根に寒気のような快感が走る。
肩の線を指でなぞられるのがこんなにドキドキするものだとは思わなかった。
背筋を撫で下げられると背が勝手に弓なりになり、突き出した胸にカラムがキスを落とすと快感で身体が戦慄く。
そこでカラムが私の両腕を後ろに回し、その腕ごと私の上半身を片腕で強く抱きとめた。
「おい、待て一体なにを……」
「いいから。ラスはちょっと力抜け」
拘束を受けるといくら相手がカラムでも自然と身体が強張ってしまう。それを宥めるようにカラムが私の頬をもう一方の手で優しく撫でおろしながら、愛おしそうに目を細めて唇を奪う。
身動きの取れない私の頭をカラムの大きな手が固定して、喉の奥を掘り返すように何度もカラムの舌が差し込まれる。息がつまるほど奥まで侵入してきたカラムの舌が私の口内いっぱいに広がって、一瞬カラムのを抜いてやった日のことを思い出してしまった。
カラムに深いキスを繰り返されると嘘のように身体から力が抜けていく……
そこでカラムがフッと目を笑ませて唇を離し、私の顔を見ながら囁いた。
「ラス、こんな顔、俺以外には絶対見せるなよ」
喉の奥までカラムの舌に犯されて惚けたところでそう言われ、恥ずかしいはずなのにそれ以上に私を見降ろすカラムの色気にドキリとさせられる。
それを見てとったカラムがニヤリと笑い、頭を支えていた手を放してスルリと私の身体の表面を撫でおろしていく。私の薄い乳房の間を通り過ぎたカラムの手はそこで止まらずに私の腹を撫で下げ、前を開かれたズボンの中に差し込まれていく。
私の秘部をかろうじて隠している薄い生地の上を数回確かめるように指が行き来して、そのまま片手で器用にズボンを引き下ろし、紐をほどく。
呆気ないほどに簡単に取り去られる下着を見て、女性物の下着の意味が分からなくなった。
これじゃあまるっきり防御力がないじゃないか。
そんなことを考えてる間にも、カラムが迷うことなく私の足の間に手を差し込んで内側を蹂躙し始めた。
「この前は俺も余裕なくてあまりゆっくり楽しませてやれなかったからな」
「え? あ! アアッ、ア……」
うっそりと目の前で微笑んだカラムがすでに開かれた私のシャツからはみ出す乳房に唇を寄せて私の乳房を嬲り始める。同時に容赦なく私の秘所を広げカラムの指がある一か所を撫であげると、痺れるような快感が身体を突き抜ける。何をされてるのかよく分からないがカラムの指に合わせて身体が跳ねだす。
「ラス、ここがそんなにいいのか?」
カラムのテノールが劣情を乗せて私の耳に響くとそれだけでも身体に震えが来る。そんな私の様子をみたカラムが嬉しそうに乳房と私の顔に交互にキスを落とす。
「ああ、可愛いラス。もっと踊って」
快感に身体を捩りたいのにカラムの腕がそれを許さない。指がリズミカルに揺らされると腰がガクガクと震えだす。
ああ、前にカラムの男性器を咥えてやったときのカラムの腰みたいだ。そうか、こんな感じなのか。
頭のどこか隅の方で、ほんの少しの理性がそんなことを考えてる。
カラムの指でその酷く敏感な部分を何度も左右に弾かれると、その度に勝手に腰が踊りあがり眦に涙が溢れ出す。それをすぐ目の前で見ていたカラムが舌を伸ばして私の目尻に溜まった雫を美味しそうに舐めあげる。
「まだ敏感すぎるんだね。苦しいほど気持いいんだろ。いいよ、いっぱいイかせてやるから」
「イク……?」
「ああ、ラスの身体が快感に高まりきったときがイクときだ。ちゃんと分かるようになろうな」
カラムは私の耳に沢山のことを呟いてるけど、こっちは強烈な刺激に感覚を持っていかれてて半分くらいしか頭に入ってこない。すぐに身体がガタガタと震えだし、何か激しい衝動が身体を突き抜けて感覚が快感の頂点を打つ。息が詰まって頭が痺れ私の全身が戦慄くと、そこでやっとカラムが指を止めて私を力強く抱きしめた。
「上手にイケたねラス。良かった?」
今、はっきりとイクという感覚を教え込まれた私はカラムの腕の中で脱力しきっていてそんな問いかけに答える余裕はなかった。しばらくしてやっと息が整い、私がかろうじて頷くと、「じゃあもっと続けよう」とカラムが耳元で囁く。
待て、まだ無理だっと私が言う前に、カラムの指がさっきと同じ敏感な部分を今度はすり潰しだす。やっと整った息がすぐに詰まり白い火花が目の前で飛び散って否も応もなく身体が踊りだす。
「ラスは強い子だからいっぱいしようね。何回続けてイケるかな?」
カラムの甘い声が私の耳元で残酷なことを告げると、それさえも快感の餌にして私の身体が揺れ続ける。終わりのない快感に苛まれ、カラムの与え続ける痛いほどの絶頂のせいで心がすっかり丸裸にされていく。
「またイク?」
「んぁぁあああ!」
「いい声だ。ラスの声、凄く可愛い。もっと聞かせて……」
私が頂点を極めるたびに、カラムは優しく私を抱きしめて甘く労い、でもまたすぐに次の甘い拷問を開始する。
そのまま何回も絶頂を見させられた私は、すっかりグダグダになってだらしなくカラムに身体を預けてしまう。もう自分で足を動かすのも辛い。顔は自分の汗と涙とカラムの唾液でグチョグチョだ。
すっかり逆らえなくなった私に安心したのか、やっとカラムが拘束を緩め、身体を解放してくれた。
ところが私が息を突く間もなく、カラムがそのまま私の身体をうつ伏せにして、今度は私の腰を持ち上げ足を開かせ始める。
「な、何する気だ……?」
「もっと気持ちい事だよ」
カラムに腰を抱え込まれ、一瞬の不安の後に何か生暖かい感触が私の秘部を這い回り始めた。
「うあぁぁ……やぁァァ……やめ……だっ……アアッ」
私の繰り返す制止の声を無視しながらカラムの舌が私の敏感な部分をすりあげる。するといやが上にも快感が身体を支配して私の腰が勝手に暴れようとするのをカラムの手ががっしりと抑えつけ容赦なく舌を這わせる。
カラムの舌は丁寧に私の襞を舐めあげ、時に啜り、そして中を穿る。艶めかしく動くその舌が敏感な部分に絡まりつき、柔らかく潰しながらまた中に侵入してくる。
さっき指に繰り返し与えられた絶頂のせいで、私の身体はその全てを敏感に感じ取り、カラムの思いのままに悶えさせられる。
また勝手に頭が真っ白になって感じることしかできなくなった私は、縋るようにベッドのシーツを力いっぱい掴んでブルブルと尻を振りながら絶頂へと押し上げられていった。
だけど今度は私が達してもやめてくれない。代わりにカラムの指が中に侵入して来て奥近い部分を押し上げる。舌で敏感な部分を嬲りつつ指が中を探られる感触に背中が反りあがっていく。一際身体が震える部分を見つけたカラムの指が、喜んでそこを繰り返し撫で上げ始めた。そのままそこを振動させられるとまたもガタガタと身体が震えだす。
のぼりつめるのは気持ちいいのとともに苦しすぎた。だから私はカラムが再開するたびなんとかその快感の波から逃れようともがくのだが、カラムの肉体による拘束はきつく厳しく決して私を逃してはくれない。
「カラム、お願いだ、もう、許して、カラム……」
とうとう耐えきれず懇願をはじめた私の腰をきつく抱き寄せて、カラムが愛おしそうに私の腰にキスを落とし、そして中に入れた指を震わせて私をまた絶頂させた。
「ラス、伸びるなよ。今度は俺と一緒にいこう」
最後の絶頂のあと、身動きもできずぐったりとしていた私の上半身を起こし上げたカラムは、耳元でそう告げながら座ったまま私の身体を軽々と自分の膝の上に抱えこんだ。
カラムに抱え込まれると裸の肌と肌がピッタリとくっついて不思議な安心感を覚える。力の入らない身体が縋るようにカラムの身体にすりついていく。
「俺に抱きついてラス、あの日みたいに」
そう言われ、力の入らない腕をなんとかあげてカラムの身体に縋りつく。するとあの日同様カラムの肩に頭が収まった。
でもあの日とは違い、カラムは自由なその両手で私の裸の腰をガッチリと掴む。そのまま抱き合った身体の下で、カラムの楔が私の秘部を下からすり上げてくる。
「ラスのここ、もうトロトロだ……ああ、これだけでマズいほどキツイ……」
カラムのため息混じりの言葉が私の耳を犯し、そして寄りかかる私の頭を自分の肩と頭で挟みこんでくる。
「ゴメンな、ラス。でもこうでもしてお前弱らせてからでないと、俺のほうがすぐに持ってかれちまうから」
優しい声で酷いことを言われてる自覚はあるが、それさえもいつの間にか私の身体に火を付ける燃料となっていた。
「こっからはゆっくりしような」
そう言って、掴んだ私の腰を前後に揺らしながらカラムが嬉しそうに自分の楔を私の濡れた部分ですり上げる。
「アッ……、ンッ……」
「クッ……アッ……」
カラムに掴まれた腰を動かされると、それまでの激しい快感とはまた違う緩やかな快感の波が押し寄せてくる。今度は私だけではなく、カラムも同時にため息のような喘ぎを繰り返す。
カラムの喘ぎ声が耳に入ると、自分まで一緒に高められ同じように喘ぎ声がこぼれてしまう。
私の身体をカラムが少し引きはなすと、向かい合わせになった眼の前のカラムの視線が私の視線に絡みつき、それが私を欲しいと訴えてくる。
欲しがり欲しがられ、乞われるままにキスをし舌を絡めると、徐々にカラムの楔が私の中心を抉りだす。ゆっくりと、でも確実にカラムが私の中に入ってくる。そこからは一揺れごとに私の中が伸縮を繰り返し、飲み込むようにカラムの楔を受け入れていく。
「痛くないか……?」
私がその感触に顔を歪めると途端カラムが心配そうに私を覗き込む。
「痛いんじゃない、きつい……中が……カラムで……いっぱいだ……」
息を吐きながら何とかそこまで言うと、ビクンと中でカラムの分身が跳ねた。
「ああ……バカ……煽るな……クッ」
くぅと顔を歪ませながらカラムが自分の腰を少し引く。それにあわせてカラムの楔が入り口のところまで引き抜かれると、物足りなさに自分の中がヒクヒクと蠢いた。
「だめだ、カラム……抜かないで……」
「ああ、クソッ、お前は!」
悪態を付いたカラムがグッと歯を食いしばって腰を思いっきり突き上げて私を串刺しにすると、私の下腹部があまりの衝撃にビクビクと震えた。それでもカラムは息を荒げ、容赦なく私の最奥を狙ってガツガツと腰を振りつけてくる。私もその快感を少しでも強めたくて迎え入れるように自分から腰を振りつけた。
そこからはお互いに狂ったように腰を振り、粘膜をすり付け、キスをねだり唇を食んで、そのまま二人でギュウギュウと抱き合いながら同時に頂点へと達していった。
--- ・ ---
「なあ、これからもここに私を連れ出すつもりか?」
ベッドの上に二人で寝そべり、お互いの肌を撫で回しながら抱き合っていると、カラムが外に目をやる。そろそろ出るべきなのか。そう思ってつい聞いてしまった。
「ここに来るのは嫌か?」
「嫌なわけじゃないんだが……」
私はなんと言ったものか迷い言葉を探す。
「そう毎回じゃここの払いも大変だろう」
「中隊長の給料はそんな悪くないんだぞ」
ムスッとしてそう答えるが、私だって副団長になったが思っていたほど給料は上がらなかった。
「そんな金があるのなら貯蓄しろ。子供は金がかかる」
私がそう言うとカラムが少し緩んだ顔でうっとりと私の顔を覗き込む。
「ラス、俺の子を生んでくれるのか?」
「将来の話だ、将来の!」
私が慌ててそう付け足すとカラムはニヤニヤしながら「将来ならいいんだな」とか抜かしてる。
「私が言ってるのは金の無駄遣いは止めろってことだ」
私がそれを睨みながら言い直すと、カラムが苦笑いしながら私の髪を梳く。
「ラス、お前俺があそこの当主になる予定だって覚えてるか? 養育費なんか侯爵家が出すに決まってるだろう」
「お前が本当に侯爵家を継ぐという確証はどこにもないだろう」
私の言葉にカラムが「俺、本当にラスの信用ねえよな」などとぼやいてるが、これはしごく当然のことだと思う。私にはあずかり知らぬ世界の話だが、今回の件のように第一王子だって王になれるのか最後まで分からないんだ。きっとカラムだって同じだろう。
そう思いつつも、やはり自分とは全く違う世界の話に戸惑う。今更受けた結婚を後悔なんてむろんしないが、侯爵家だの爵位だのは私とは一生縁のない世界の話だと思っていたからまだ今すぐには受け入れ切れない。カラムの事は好きだし、多分愛している。だけど今の仕事をこのまま手放す気も毛頭ない。
そんな事を考えていると、何を勘違いしたのかカラムが「心配するな、俺しかいないから」と言って私の頭を撫でてくる。
私は一つため息をついて、不本意ながら本音を漏らした。
「……ここだとカラムと朝まで一緒にいられないのかな、と思ったんだ」
私の言葉にカラムの顔がパァッと明るくなった。
「じゃあ泊ってくか? いや、いっそ今度休みを合わせてもう少し遠出しよう」
「私に休みなんて当分ないぞ?」
「はあ? 騎士団だって年に10日は休みがあるだろ」
「年末に家族の元に行くことになっている」
私がそう答えるとカラムがジッとこちらを見て考える。
「分かった。じゃあ俺も一緒に行く」
「は?」
「当り前だろ、俺たちは結婚するんだからな」
「ああ、確かにそうだったな」
そう言って自分の手元を見る。カラムにもらった指輪は今も私の指に輝いている。
「結婚式も考えなくちゃな」
「ああ、騎士団と近衛隊、どっちでやる?」
「……俺んち」
「はあ?」
「侯爵家が俺の結婚を隊に任せる分けないだろ」
「……こっそり騎士団で終わらせられないのか?」
「そんなのまたやり直しさせられるだけだから一緒だ」
そこでニヤリとカラムが笑って続けた。
「だが、結婚しちまえば王都に一緒に家を借りられるぞ。妻帯者は通いが許されるからな」
「それもそうだな」
一緒に住めるのはいいな。それならばここを使う必要もないだろうし周りを気にしなくて済む。
そう思って私が即答すると、カラムがうっとりと私を見つめながら顔を近づけてまたキスをくれる。
「じゃあ、心おきなくラスを鳴かせられるよう、とっとと結婚しちまおう」
そう言うカラムの瞳の中に欲情の炎が揺らめきだし、その手が物欲しそうに私の身体を撫でまわしはじめ、私は今夜は帰宿時間がかなり遅くなりそうだ、と覚悟した。
おまけ:次の休日(完)
カラムの舌が私の舌に絡まる度に身体の奥に先日と同じ欲望の波がざわめきだす。
『ピンクの子馬亭』のベッドは私たちが転げまわっても大して軋みもしない。それをいいことにカラムがさっきっから私の身体を好き勝手に転がしてる。
あれからしばらくの間、カラムも私も大忙しだった。カラムは無論新しい職場と王前試合の名声によるものだったし、私は私で副団長の職務が増えていた。
それにもかかわらず、今日は朝から団長に休みを言い渡された。
「とある人物から緊急要件としてお前に休みをやってくれと要請された」
なんとも複雑そうな顔の団長が言いづらそうに続けた。
「あー、どうも近衛隊の1中隊が地獄のしごきにあってるらしい。某中隊長がストレス溜め込んで鬼になってるって話だ。このままじゃ潰されちまうから何とかしてくれと泣きつかれた」
言われた私も複雑な心境だ。その某中隊長がカラムの事なのは間違いないだろう。だけど『とある人物』って誰だ? 団長がそんな言い方するって一体。
「いいから俺の気が変わらないうちにとっとと行け」
追い立てられるように団長室を後にすれば、部屋の前でカラムが当たり前の顔をして待っていた。
流石に服を着替える間は待ってもらったがそのままここに引っ張って来られた。
今回は飲み物も飲まずにリリスたちに手だけ振って部屋に来てしまった。
なんか明け透けに頑張ってと言われてるようでやけに恥ずかしかった。
ベッドの上で私を組み伏せ、まるで会えなかった時間を取り戻そうとするようにキスを降らせ続けていたカラムが、突然スッと真面目な顔で間近に私を見つめ、私と自分の唇を親指で拭いながら口を開く。
「やっぱりもっと頻繁に会いたい」
「だったらもっと私の部屋に来ればいい」
あれっきりカラムは私の部屋を訪れていなかった。正直、カラムのことだからもう少しちょくちょく来てくれるのではないかと期待し、夜部屋に戻るたびについカラムの姿を部屋の中に求めていた。
「……もしかして待っててくれた?」
キラキラと悪戯に目を輝かせるカラムが少しばかり憎たらしい。
「別に。カラムが私に会いたいなら来ればいいっていう意味だ」
そう言う自分の口調がやけに子供っぽくて自分で言ってて情けなくなる。だけどカラムはそれを咎めることもなく、優しく私の短い髪を指で梳かしながらうっとりと見つめてくる。
「ああ、すごく会いたかった。毎晩夢に見てた。ラスは俺に会いたくなかったのか?」
そんなふうに問われては、これ以上意地も張れない。
「……会いたかった」
私がぶっきらぼうに呟くとカラムが顔を綻ばせ、両手で私の頬を包んでキスをくれる。
カラムがくれるキスはどれも甘い。軽いキスも深いキスも何度も唇を食むだけのキスも。どのキスもカラムに想われているのだと実感できる。
「もう少しどこかで一緒にいられる方法を考えようね」
「……なんで私の部屋じゃないんだ?」
別に自分の部屋がとりたてて居心地がいいと言うわけじゃないが、今までそこで一緒に過ごしてきたので自然とそう尋ねたのだが。
「だってラス、声我慢できないでしょ」
「え?」
「この前だってすっごく可愛く鳴きまくってたし。あれじゃ、宿舎の他の連中が気の毒すぎて……うわっ!」
カラムは意地悪だ。こんな言わなくていいこと指摘しやがって!
「分かった、分かったラス、お前が照れてるのは良くわかったから何気に正拳腹に突きこもうとするのは止めろ。お前の綺麗に入っちまったらしばらく役に立たなくなっちまうから」
そう言いつつもカラムは余裕で私をねじ伏せる。体術では剣技以上に敵わない。特に途中で首筋に噛みつかれると力が抜けてしまう。
「ラスを大人しくさせる方法段々分かってきた」
ニヤリと笑ってそう言いながらカラムの手が私の身体を弄りだす。
シャツのボタンはすでに外されてた。穿いていた男物のズボンもいつの間にか前を緩められてる。カラムも私服だが、シャツはとうの昔に脱ぎ捨てられていた。
私のシャツの内側に手を差し込んだカラムが、私の身体の線を辿るように丁寧に撫でまわす。
あの後約束通りカラムから贈られた女性向けの下着はかなり色気のある物で、ほんの薄い生地が必要な部分だけを隠してるだけだった。着脱も細い紐だけなのが本当に心もとない。胸を覆っていた下着はカラムに簡単に取り外されてしまった。
隠されていた乳房が外気に触れて軽く鳥肌が立つ。
鎖骨の上を指が這うと首の付け根に寒気のような快感が走る。
肩の線を指でなぞられるのがこんなにドキドキするものだとは思わなかった。
背筋を撫で下げられると背が勝手に弓なりになり、突き出した胸にカラムがキスを落とすと快感で身体が戦慄く。
そこでカラムが私の両腕を後ろに回し、その腕ごと私の上半身を片腕で強く抱きとめた。
「おい、待て一体なにを……」
「いいから。ラスはちょっと力抜け」
拘束を受けるといくら相手がカラムでも自然と身体が強張ってしまう。それを宥めるようにカラムが私の頬をもう一方の手で優しく撫でおろしながら、愛おしそうに目を細めて唇を奪う。
身動きの取れない私の頭をカラムの大きな手が固定して、喉の奥を掘り返すように何度もカラムの舌が差し込まれる。息がつまるほど奥まで侵入してきたカラムの舌が私の口内いっぱいに広がって、一瞬カラムのを抜いてやった日のことを思い出してしまった。
カラムに深いキスを繰り返されると嘘のように身体から力が抜けていく……
そこでカラムがフッと目を笑ませて唇を離し、私の顔を見ながら囁いた。
「ラス、こんな顔、俺以外には絶対見せるなよ」
喉の奥までカラムの舌に犯されて惚けたところでそう言われ、恥ずかしいはずなのにそれ以上に私を見降ろすカラムの色気にドキリとさせられる。
それを見てとったカラムがニヤリと笑い、頭を支えていた手を放してスルリと私の身体の表面を撫でおろしていく。私の薄い乳房の間を通り過ぎたカラムの手はそこで止まらずに私の腹を撫で下げ、前を開かれたズボンの中に差し込まれていく。
私の秘部をかろうじて隠している薄い生地の上を数回確かめるように指が行き来して、そのまま片手で器用にズボンを引き下ろし、紐をほどく。
呆気ないほどに簡単に取り去られる下着を見て、女性物の下着の意味が分からなくなった。
これじゃあまるっきり防御力がないじゃないか。
そんなことを考えてる間にも、カラムが迷うことなく私の足の間に手を差し込んで内側を蹂躙し始めた。
「この前は俺も余裕なくてあまりゆっくり楽しませてやれなかったからな」
「え? あ! アアッ、ア……」
うっそりと目の前で微笑んだカラムがすでに開かれた私のシャツからはみ出す乳房に唇を寄せて私の乳房を嬲り始める。同時に容赦なく私の秘所を広げカラムの指がある一か所を撫であげると、痺れるような快感が身体を突き抜ける。何をされてるのかよく分からないがカラムの指に合わせて身体が跳ねだす。
「ラス、ここがそんなにいいのか?」
カラムのテノールが劣情を乗せて私の耳に響くとそれだけでも身体に震えが来る。そんな私の様子をみたカラムが嬉しそうに乳房と私の顔に交互にキスを落とす。
「ああ、可愛いラス。もっと踊って」
快感に身体を捩りたいのにカラムの腕がそれを許さない。指がリズミカルに揺らされると腰がガクガクと震えだす。
ああ、前にカラムの男性器を咥えてやったときのカラムの腰みたいだ。そうか、こんな感じなのか。
頭のどこか隅の方で、ほんの少しの理性がそんなことを考えてる。
カラムの指でその酷く敏感な部分を何度も左右に弾かれると、その度に勝手に腰が踊りあがり眦に涙が溢れ出す。それをすぐ目の前で見ていたカラムが舌を伸ばして私の目尻に溜まった雫を美味しそうに舐めあげる。
「まだ敏感すぎるんだね。苦しいほど気持いいんだろ。いいよ、いっぱいイかせてやるから」
「イク……?」
「ああ、ラスの身体が快感に高まりきったときがイクときだ。ちゃんと分かるようになろうな」
カラムは私の耳に沢山のことを呟いてるけど、こっちは強烈な刺激に感覚を持っていかれてて半分くらいしか頭に入ってこない。すぐに身体がガタガタと震えだし、何か激しい衝動が身体を突き抜けて感覚が快感の頂点を打つ。息が詰まって頭が痺れ私の全身が戦慄くと、そこでやっとカラムが指を止めて私を力強く抱きしめた。
「上手にイケたねラス。良かった?」
今、はっきりとイクという感覚を教え込まれた私はカラムの腕の中で脱力しきっていてそんな問いかけに答える余裕はなかった。しばらくしてやっと息が整い、私がかろうじて頷くと、「じゃあもっと続けよう」とカラムが耳元で囁く。
待て、まだ無理だっと私が言う前に、カラムの指がさっきと同じ敏感な部分を今度はすり潰しだす。やっと整った息がすぐに詰まり白い火花が目の前で飛び散って否も応もなく身体が踊りだす。
「ラスは強い子だからいっぱいしようね。何回続けてイケるかな?」
カラムの甘い声が私の耳元で残酷なことを告げると、それさえも快感の餌にして私の身体が揺れ続ける。終わりのない快感に苛まれ、カラムの与え続ける痛いほどの絶頂のせいで心がすっかり丸裸にされていく。
「またイク?」
「んぁぁあああ!」
「いい声だ。ラスの声、凄く可愛い。もっと聞かせて……」
私が頂点を極めるたびに、カラムは優しく私を抱きしめて甘く労い、でもまたすぐに次の甘い拷問を開始する。
そのまま何回も絶頂を見させられた私は、すっかりグダグダになってだらしなくカラムに身体を預けてしまう。もう自分で足を動かすのも辛い。顔は自分の汗と涙とカラムの唾液でグチョグチョだ。
すっかり逆らえなくなった私に安心したのか、やっとカラムが拘束を緩め、身体を解放してくれた。
ところが私が息を突く間もなく、カラムがそのまま私の身体をうつ伏せにして、今度は私の腰を持ち上げ足を開かせ始める。
「な、何する気だ……?」
「もっと気持ちい事だよ」
カラムに腰を抱え込まれ、一瞬の不安の後に何か生暖かい感触が私の秘部を這い回り始めた。
「うあぁぁ……やぁァァ……やめ……だっ……アアッ」
私の繰り返す制止の声を無視しながらカラムの舌が私の敏感な部分をすりあげる。するといやが上にも快感が身体を支配して私の腰が勝手に暴れようとするのをカラムの手ががっしりと抑えつけ容赦なく舌を這わせる。
カラムの舌は丁寧に私の襞を舐めあげ、時に啜り、そして中を穿る。艶めかしく動くその舌が敏感な部分に絡まりつき、柔らかく潰しながらまた中に侵入してくる。
さっき指に繰り返し与えられた絶頂のせいで、私の身体はその全てを敏感に感じ取り、カラムの思いのままに悶えさせられる。
また勝手に頭が真っ白になって感じることしかできなくなった私は、縋るようにベッドのシーツを力いっぱい掴んでブルブルと尻を振りながら絶頂へと押し上げられていった。
だけど今度は私が達してもやめてくれない。代わりにカラムの指が中に侵入して来て奥近い部分を押し上げる。舌で敏感な部分を嬲りつつ指が中を探られる感触に背中が反りあがっていく。一際身体が震える部分を見つけたカラムの指が、喜んでそこを繰り返し撫で上げ始めた。そのままそこを振動させられるとまたもガタガタと身体が震えだす。
のぼりつめるのは気持ちいいのとともに苦しすぎた。だから私はカラムが再開するたびなんとかその快感の波から逃れようともがくのだが、カラムの肉体による拘束はきつく厳しく決して私を逃してはくれない。
「カラム、お願いだ、もう、許して、カラム……」
とうとう耐えきれず懇願をはじめた私の腰をきつく抱き寄せて、カラムが愛おしそうに私の腰にキスを落とし、そして中に入れた指を震わせて私をまた絶頂させた。
「ラス、伸びるなよ。今度は俺と一緒にいこう」
最後の絶頂のあと、身動きもできずぐったりとしていた私の上半身を起こし上げたカラムは、耳元でそう告げながら座ったまま私の身体を軽々と自分の膝の上に抱えこんだ。
カラムに抱え込まれると裸の肌と肌がピッタリとくっついて不思議な安心感を覚える。力の入らない身体が縋るようにカラムの身体にすりついていく。
「俺に抱きついてラス、あの日みたいに」
そう言われ、力の入らない腕をなんとかあげてカラムの身体に縋りつく。するとあの日同様カラムの肩に頭が収まった。
でもあの日とは違い、カラムは自由なその両手で私の裸の腰をガッチリと掴む。そのまま抱き合った身体の下で、カラムの楔が私の秘部を下からすり上げてくる。
「ラスのここ、もうトロトロだ……ああ、これだけでマズいほどキツイ……」
カラムのため息混じりの言葉が私の耳を犯し、そして寄りかかる私の頭を自分の肩と頭で挟みこんでくる。
「ゴメンな、ラス。でもこうでもしてお前弱らせてからでないと、俺のほうがすぐに持ってかれちまうから」
優しい声で酷いことを言われてる自覚はあるが、それさえもいつの間にか私の身体に火を付ける燃料となっていた。
「こっからはゆっくりしような」
そう言って、掴んだ私の腰を前後に揺らしながらカラムが嬉しそうに自分の楔を私の濡れた部分ですり上げる。
「アッ……、ンッ……」
「クッ……アッ……」
カラムに掴まれた腰を動かされると、それまでの激しい快感とはまた違う緩やかな快感の波が押し寄せてくる。今度は私だけではなく、カラムも同時にため息のような喘ぎを繰り返す。
カラムの喘ぎ声が耳に入ると、自分まで一緒に高められ同じように喘ぎ声がこぼれてしまう。
私の身体をカラムが少し引きはなすと、向かい合わせになった眼の前のカラムの視線が私の視線に絡みつき、それが私を欲しいと訴えてくる。
欲しがり欲しがられ、乞われるままにキスをし舌を絡めると、徐々にカラムの楔が私の中心を抉りだす。ゆっくりと、でも確実にカラムが私の中に入ってくる。そこからは一揺れごとに私の中が伸縮を繰り返し、飲み込むようにカラムの楔を受け入れていく。
「痛くないか……?」
私がその感触に顔を歪めると途端カラムが心配そうに私を覗き込む。
「痛いんじゃない、きつい……中が……カラムで……いっぱいだ……」
息を吐きながら何とかそこまで言うと、ビクンと中でカラムの分身が跳ねた。
「ああ……バカ……煽るな……クッ」
くぅと顔を歪ませながらカラムが自分の腰を少し引く。それにあわせてカラムの楔が入り口のところまで引き抜かれると、物足りなさに自分の中がヒクヒクと蠢いた。
「だめだ、カラム……抜かないで……」
「ああ、クソッ、お前は!」
悪態を付いたカラムがグッと歯を食いしばって腰を思いっきり突き上げて私を串刺しにすると、私の下腹部があまりの衝撃にビクビクと震えた。それでもカラムは息を荒げ、容赦なく私の最奥を狙ってガツガツと腰を振りつけてくる。私もその快感を少しでも強めたくて迎え入れるように自分から腰を振りつけた。
そこからはお互いに狂ったように腰を振り、粘膜をすり付け、キスをねだり唇を食んで、そのまま二人でギュウギュウと抱き合いながら同時に頂点へと達していった。
--- ・ ---
「なあ、これからもここに私を連れ出すつもりか?」
ベッドの上に二人で寝そべり、お互いの肌を撫で回しながら抱き合っていると、カラムが外に目をやる。そろそろ出るべきなのか。そう思ってつい聞いてしまった。
「ここに来るのは嫌か?」
「嫌なわけじゃないんだが……」
私はなんと言ったものか迷い言葉を探す。
「そう毎回じゃここの払いも大変だろう」
「中隊長の給料はそんな悪くないんだぞ」
ムスッとしてそう答えるが、私だって副団長になったが思っていたほど給料は上がらなかった。
「そんな金があるのなら貯蓄しろ。子供は金がかかる」
私がそう言うとカラムが少し緩んだ顔でうっとりと私の顔を覗き込む。
「ラス、俺の子を生んでくれるのか?」
「将来の話だ、将来の!」
私が慌ててそう付け足すとカラムはニヤニヤしながら「将来ならいいんだな」とか抜かしてる。
「私が言ってるのは金の無駄遣いは止めろってことだ」
私がそれを睨みながら言い直すと、カラムが苦笑いしながら私の髪を梳く。
「ラス、お前俺があそこの当主になる予定だって覚えてるか? 養育費なんか侯爵家が出すに決まってるだろう」
「お前が本当に侯爵家を継ぐという確証はどこにもないだろう」
私の言葉にカラムが「俺、本当にラスの信用ねえよな」などとぼやいてるが、これはしごく当然のことだと思う。私にはあずかり知らぬ世界の話だが、今回の件のように第一王子だって王になれるのか最後まで分からないんだ。きっとカラムだって同じだろう。
そう思いつつも、やはり自分とは全く違う世界の話に戸惑う。今更受けた結婚を後悔なんてむろんしないが、侯爵家だの爵位だのは私とは一生縁のない世界の話だと思っていたからまだ今すぐには受け入れ切れない。カラムの事は好きだし、多分愛している。だけど今の仕事をこのまま手放す気も毛頭ない。
そんな事を考えていると、何を勘違いしたのかカラムが「心配するな、俺しかいないから」と言って私の頭を撫でてくる。
私は一つため息をついて、不本意ながら本音を漏らした。
「……ここだとカラムと朝まで一緒にいられないのかな、と思ったんだ」
私の言葉にカラムの顔がパァッと明るくなった。
「じゃあ泊ってくか? いや、いっそ今度休みを合わせてもう少し遠出しよう」
「私に休みなんて当分ないぞ?」
「はあ? 騎士団だって年に10日は休みがあるだろ」
「年末に家族の元に行くことになっている」
私がそう答えるとカラムがジッとこちらを見て考える。
「分かった。じゃあ俺も一緒に行く」
「は?」
「当り前だろ、俺たちは結婚するんだからな」
「ああ、確かにそうだったな」
そう言って自分の手元を見る。カラムにもらった指輪は今も私の指に輝いている。
「結婚式も考えなくちゃな」
「ああ、騎士団と近衛隊、どっちでやる?」
「……俺んち」
「はあ?」
「侯爵家が俺の結婚を隊に任せる分けないだろ」
「……こっそり騎士団で終わらせられないのか?」
「そんなのまたやり直しさせられるだけだから一緒だ」
そこでニヤリとカラムが笑って続けた。
「だが、結婚しちまえば王都に一緒に家を借りられるぞ。妻帯者は通いが許されるからな」
「それもそうだな」
一緒に住めるのはいいな。それならばここを使う必要もないだろうし周りを気にしなくて済む。
そう思って私が即答すると、カラムがうっとりと私を見つめながら顔を近づけてまたキスをくれる。
「じゃあ、心おきなくラスを鳴かせられるよう、とっとと結婚しちまおう」
そう言うカラムの瞳の中に欲情の炎が揺らめきだし、その手が物欲しそうに私の身体を撫でまわしはじめ、私は今夜は帰宿時間がかなり遅くなりそうだ、と覚悟した。
おまけ:次の休日(完)
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