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第七話 後編
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妙円寺の境内を抜けると小坊主さんが私を連れて裏に回る。
庭園を抜けて奥にあるひっそりとした離れへ案内してくれる。
庭の草木は青く茂り、今が盛りの紫陽花が池に映って水面を染めている。
私の後ろには羽織袴姿の慎さんが付いてきてくれている。
慎さんを連れて行きたいという申し出は、慎さんが部屋に入らずに待つという条件で認めてもらえた。
離れに私が入る前に厳しい顔をした慎さんが私を見つめて頷いた。
自分がいるから安心しろ、という事だろう。
私は小さく微笑んで中に入った。
外からは目隠しで見えなかったのだが、離れの一室は庭に面していて紫陽花が水面を一面に染める姿がとてもよく見える作りになっていた。
その部屋で文机に紙を乗せて静かに写経をされていたのは、上等な墨染の着物に紫の袈裟を掛け、浅葱色の尼頭巾を被った一人の老女だった。
御年の割にはふっくらとしたお顔立ちに優しい目を上げて私を手招きする。
「良くいらっしゃいました。どうぞこちらへ」
そう言って文机を横に動かして私に向かい合う。
「こ、この度はお誘いを頂きありがとうございます」
そう言って部屋の外で一度三つ指を付いて挨拶してから勧められるままに部屋に入った。
勧められて二人で庭を横に対面するように座る。
小坊主さんが直ぐにお茶を出してくれたが私は緊張で手も出せない。
黙って座っている私にそんなに緊張する事は何もありませんよ、と優しく声をかけてくださる。
私は緊張を押し殺して言葉を紡いだ。
「この度はお誘いを頂き、ありがとうございます。それで、あの、本日はどの様な御用でお呼び頂いたのでしょうか?」
私の緊張を解すようにお茶を茶碗の中で揺らしながら自昌院様はゆっくりと話し始められた。
「私はお鈴さんとお話をしたいと思っていたのですけれどお鈴さんは突然の事に驚かれたでしょう……私、お鈴さんに謝らなければならない事がございます」
「な、何でしょうか」
私はごくりと唾を飲み込む。
自昌院様は目を伏せて先を続けた。
「貴方のご両親が亡くなったのは私に責がございます」
全くもって思ってもいなかった話に声もなく自昌院様を見つめる。
「お鈴さんも耳にされているこの度の騒動で見通しが欲しかった私は、仙石氏に嫁いだ亀の伝手で貴方のお父上を紹介して頂きました」
自昌院様のお話は私の知らない人の名前がいくつも並んで私には訳が分からない。
戸惑う私を見てそれでも自昌院様は続けられる。
「本当ならばもっと早くお会いしたかったのですがご両親の弔いもそこそこにお鈴さんの行方が分からなくなっておりました」
「は、はい、伯母を頼って浜町に移っておりました」
「私も余り自由の利かぬ身です。ずっと気に病んでおりましたがそのまま無為に時間が過ぎてしまいました。それが最近になって、寺社方からのお取り調べに際する書状の中にお鈴さんのお名前を見つけ、驚いて取り次ぎをお願いしたのです」
途中私には理解出来ない話もあるが肝心な事をまず尋ねてみる。
「私の父は自昌院様とどの様な関りがあったのでしょうか?」
「……お鈴さん。お鈴さんは貴方のお父様が上田藩のお抱え藩士だったのをご存知ですか」
「い、いえ……初耳です」
私は驚いて目を見張った。
「貴方のお父様は天正の乱で信州に渡った伊賀衆の出でらっしゃいます。その後、江戸の御代になって上様に召し抱えられた者も多く、その殆は江戸に移りましたが、貴方のお父様はそのまま上田藩に召し抱えられました。その後、上田藩の密偵として伊賀衆の集まるあの場所に道場を開き、長らく上田藩の江戸諜報活動の要となってらっしゃいました」
全て初耳だった。私の知っている父とはどうやっても結び付かない。
「今回の件では下屋敷にてある物を探して貰っていたのですが、敏いお父様は事の次第をご存知になってしまわれたのでしょう。お鈴さんのお母様を連れ立って当時上屋敷におりました私の元へ直接お知らせに来て下さる途中、浅野の手の者に襲撃されたのだそうです。私の手の者と落ち合った時には既に手遅れだったとの事でした」
「そ、それでは自昌院様に関わる方々が私の両親を江戸まで連れ帰って下さったのですか?」
「私の影響力のあるお寺に直接運び込みご供養の手筈を整えさせました。お鈴さんにはお寺から違うお話が行っていたでしょう」
「私は箱根に旅に出た両親が宿で盗賊に襲われて亡くなり、奇特な方がわざわざ荼毘にしてお寺に届けてくださったと」
「……一度はそのままにしようとも思いましたが、下屋敷内で人が亡くなり、事情も変わってやはりお鈴さんにだけはこのままでは申し訳なくて。しかもお鈴さん自身も今回の件で被害に遭われたと伺い、もうこれは放って置く訳には行くまいと文を出してこのような席を設けました」
私は今まで知らなかった父の過去と両親の死の真実を前に暫く茫然としていて、もう少しで自昌院様の次の呟きを聴き逃してしまう所だった。
「お鈴さんのご両親と私の手の届く所で無為に亡くなられた町方の方には申し訳ない事をしてしまいました。せめてもの償いに寺社方にお知らせしましたが……もう事は私の手を離れてしまいました」
独り言のように自昌院様が漏らした言葉は私の頭にこびりついた。
見つからなかった書状……
父が探していた物……
自昌院様の手の者が父母を埋葬……
下屋敷内で見つかった死体……
掘り返していた何か……
参内に合わせて……
思案の海が広がりそうになっているところに、突然自昌院様の静かな声が響いた。
「お父様にそっくりでらっしゃる」
ふと目を上げると自昌院様の真っ直ぐな瞳とぶつかった。
「お鈴さん。お鈴さんはもうすぐ興入れと聞きました」
自昌院様の目の光が強くなる。
「せめてもの償いにもしお鈴さんが望むのでしたら上田藩に取り次ぐ心積もりでいましたが……もうそれは望まれませんね」
問われて一瞬、私の知らぬ父の過去に想いを馳せたが、やはりもうそれは今更どうなるものでもない。
慎さんに嫁ぐと心を決めた今、それは無用の心遣いだと思えた。
「……はい」
短く、だがはっきりと答えた私をジッと見ていた自昌院様は、一瞬寂しそうに目を伏せられてから、改めて私を見据える。
「罪の意識から、貴方にだけはとこんなことをお話ししてしまいましたが、これは全て私の自己満足、我がままでした。貴方のこれからの道にはもう必要のない話です。こんな些事、通り雨に合ったと思って忘れてしまいなさいまし」
自昌院様の歳に似合わない鋭い瞳に射竦められながらも、その意図するところを悟った私はしっかりと見返しながら頷いた。
「さあ、貴方を待ってらっしゃる方がそろそろ心配で飛び込んできてしまいますよ」
私の頷きを認めると、からりと声を明るくして自昌院様が退席を暗に示唆された。
「お鈴さん。どうぞお身体に気を付けて」
そう言った自昌院様の目はもう私を見ていなかった。
私は深く頭を下げて部屋を後にした。
「終わったかい?」
母屋の外に置かれた腰掛けにも座らず、出された茶に手も付けずに心配そうに私を待っていてくれた慎さんを見て、私は過去を振り払って前を見た。
「慎さん、帰りましょう」
私は憂いなく微笑んで慎さんを見る。
「女将さんが今日は平三郎様も来るから寄って行って欲しいそうですよ。きっといいお話があるんじゃありませんか」
妙円寺を出た私はもう後ろを振り向かなかった。
庭園を抜けて奥にあるひっそりとした離れへ案内してくれる。
庭の草木は青く茂り、今が盛りの紫陽花が池に映って水面を染めている。
私の後ろには羽織袴姿の慎さんが付いてきてくれている。
慎さんを連れて行きたいという申し出は、慎さんが部屋に入らずに待つという条件で認めてもらえた。
離れに私が入る前に厳しい顔をした慎さんが私を見つめて頷いた。
自分がいるから安心しろ、という事だろう。
私は小さく微笑んで中に入った。
外からは目隠しで見えなかったのだが、離れの一室は庭に面していて紫陽花が水面を一面に染める姿がとてもよく見える作りになっていた。
その部屋で文机に紙を乗せて静かに写経をされていたのは、上等な墨染の着物に紫の袈裟を掛け、浅葱色の尼頭巾を被った一人の老女だった。
御年の割にはふっくらとしたお顔立ちに優しい目を上げて私を手招きする。
「良くいらっしゃいました。どうぞこちらへ」
そう言って文机を横に動かして私に向かい合う。
「こ、この度はお誘いを頂きありがとうございます」
そう言って部屋の外で一度三つ指を付いて挨拶してから勧められるままに部屋に入った。
勧められて二人で庭を横に対面するように座る。
小坊主さんが直ぐにお茶を出してくれたが私は緊張で手も出せない。
黙って座っている私にそんなに緊張する事は何もありませんよ、と優しく声をかけてくださる。
私は緊張を押し殺して言葉を紡いだ。
「この度はお誘いを頂き、ありがとうございます。それで、あの、本日はどの様な御用でお呼び頂いたのでしょうか?」
私の緊張を解すようにお茶を茶碗の中で揺らしながら自昌院様はゆっくりと話し始められた。
「私はお鈴さんとお話をしたいと思っていたのですけれどお鈴さんは突然の事に驚かれたでしょう……私、お鈴さんに謝らなければならない事がございます」
「な、何でしょうか」
私はごくりと唾を飲み込む。
自昌院様は目を伏せて先を続けた。
「貴方のご両親が亡くなったのは私に責がございます」
全くもって思ってもいなかった話に声もなく自昌院様を見つめる。
「お鈴さんも耳にされているこの度の騒動で見通しが欲しかった私は、仙石氏に嫁いだ亀の伝手で貴方のお父上を紹介して頂きました」
自昌院様のお話は私の知らない人の名前がいくつも並んで私には訳が分からない。
戸惑う私を見てそれでも自昌院様は続けられる。
「本当ならばもっと早くお会いしたかったのですがご両親の弔いもそこそこにお鈴さんの行方が分からなくなっておりました」
「は、はい、伯母を頼って浜町に移っておりました」
「私も余り自由の利かぬ身です。ずっと気に病んでおりましたがそのまま無為に時間が過ぎてしまいました。それが最近になって、寺社方からのお取り調べに際する書状の中にお鈴さんのお名前を見つけ、驚いて取り次ぎをお願いしたのです」
途中私には理解出来ない話もあるが肝心な事をまず尋ねてみる。
「私の父は自昌院様とどの様な関りがあったのでしょうか?」
「……お鈴さん。お鈴さんは貴方のお父様が上田藩のお抱え藩士だったのをご存知ですか」
「い、いえ……初耳です」
私は驚いて目を見張った。
「貴方のお父様は天正の乱で信州に渡った伊賀衆の出でらっしゃいます。その後、江戸の御代になって上様に召し抱えられた者も多く、その殆は江戸に移りましたが、貴方のお父様はそのまま上田藩に召し抱えられました。その後、上田藩の密偵として伊賀衆の集まるあの場所に道場を開き、長らく上田藩の江戸諜報活動の要となってらっしゃいました」
全て初耳だった。私の知っている父とはどうやっても結び付かない。
「今回の件では下屋敷にてある物を探して貰っていたのですが、敏いお父様は事の次第をご存知になってしまわれたのでしょう。お鈴さんのお母様を連れ立って当時上屋敷におりました私の元へ直接お知らせに来て下さる途中、浅野の手の者に襲撃されたのだそうです。私の手の者と落ち合った時には既に手遅れだったとの事でした」
「そ、それでは自昌院様に関わる方々が私の両親を江戸まで連れ帰って下さったのですか?」
「私の影響力のあるお寺に直接運び込みご供養の手筈を整えさせました。お鈴さんにはお寺から違うお話が行っていたでしょう」
「私は箱根に旅に出た両親が宿で盗賊に襲われて亡くなり、奇特な方がわざわざ荼毘にしてお寺に届けてくださったと」
「……一度はそのままにしようとも思いましたが、下屋敷内で人が亡くなり、事情も変わってやはりお鈴さんにだけはこのままでは申し訳なくて。しかもお鈴さん自身も今回の件で被害に遭われたと伺い、もうこれは放って置く訳には行くまいと文を出してこのような席を設けました」
私は今まで知らなかった父の過去と両親の死の真実を前に暫く茫然としていて、もう少しで自昌院様の次の呟きを聴き逃してしまう所だった。
「お鈴さんのご両親と私の手の届く所で無為に亡くなられた町方の方には申し訳ない事をしてしまいました。せめてもの償いに寺社方にお知らせしましたが……もう事は私の手を離れてしまいました」
独り言のように自昌院様が漏らした言葉は私の頭にこびりついた。
見つからなかった書状……
父が探していた物……
自昌院様の手の者が父母を埋葬……
下屋敷内で見つかった死体……
掘り返していた何か……
参内に合わせて……
思案の海が広がりそうになっているところに、突然自昌院様の静かな声が響いた。
「お父様にそっくりでらっしゃる」
ふと目を上げると自昌院様の真っ直ぐな瞳とぶつかった。
「お鈴さん。お鈴さんはもうすぐ興入れと聞きました」
自昌院様の目の光が強くなる。
「せめてもの償いにもしお鈴さんが望むのでしたら上田藩に取り次ぐ心積もりでいましたが……もうそれは望まれませんね」
問われて一瞬、私の知らぬ父の過去に想いを馳せたが、やはりもうそれは今更どうなるものでもない。
慎さんに嫁ぐと心を決めた今、それは無用の心遣いだと思えた。
「……はい」
短く、だがはっきりと答えた私をジッと見ていた自昌院様は、一瞬寂しそうに目を伏せられてから、改めて私を見据える。
「罪の意識から、貴方にだけはとこんなことをお話ししてしまいましたが、これは全て私の自己満足、我がままでした。貴方のこれからの道にはもう必要のない話です。こんな些事、通り雨に合ったと思って忘れてしまいなさいまし」
自昌院様の歳に似合わない鋭い瞳に射竦められながらも、その意図するところを悟った私はしっかりと見返しながら頷いた。
「さあ、貴方を待ってらっしゃる方がそろそろ心配で飛び込んできてしまいますよ」
私の頷きを認めると、からりと声を明るくして自昌院様が退席を暗に示唆された。
「お鈴さん。どうぞお身体に気を付けて」
そう言った自昌院様の目はもう私を見ていなかった。
私は深く頭を下げて部屋を後にした。
「終わったかい?」
母屋の外に置かれた腰掛けにも座らず、出された茶に手も付けずに心配そうに私を待っていてくれた慎さんを見て、私は過去を振り払って前を見た。
「慎さん、帰りましょう」
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