異世界で黒猫君とマッタリ行きたい

こみあ

文字の大きさ
364 / 406
第12章 北の砦

21 ドラゴンさんのお話2

しおりを挟む
「確かに先ほど言ったのは、人の国で初代王と呼ばれていた者のことです」

 黒猫君の問いにルディンさんのお母さんがはっきりそう答えた。
 これって、ルディンさんのお母さんもシアンさんと同じく八百年以上生きてるってことだよね。うーん、人間じゃないんだからそれも普通なのかな。
 そんなこと考えつつ、私は手元でさっき思いついた作業を始めてる。こっちをチラッと見た黒猫君、何も言わずに一瞬の間を置いてまたルディンさんのお母さんに尋ねた。

「あんたは俺たちがどこから来たか知ってるのか?」
「いいえ」

 今度はほんの少し間を置いてからルディンさんのお母さんが答えてくれる。
 その短い返答に黒猫君が唸って、またちょっと考えてから問い直した。

「あんたは俺たちが『ここじゃない場所』から来たのを知ってたのか?」

 すると川の向こう側で、少し満足げにルディンさんのお母さんが頷く。

「知っています」
「じゃあ、あんたはなぜあゆみ・・・がここに来たのかも知ってるのか?」
「……その問いに答えるのは私ではありません」

 今度は答えまで暫く時間がかかった。
 もしかして私たち、ルディンさんのお母さんを困らせてるのかな。
 そんな心配をする私とは違い、黒猫君はグッと難しい顔になってすぐにまた問いかける。

「今さっき、『試した』って言ってたよな。なにを試したんだ?」
「それは──」

 なにか言いかけてたルディンさんのお母さんが、突然息を詰めるようにして黙っちゃった。川の向こう側、しばらく身体を揺すって少し苦しそうに身動ぎを繰り返してたルディンさんのお母さんは、諦めたようにため息一つついてから先を続けた。

「一週間ほど前」
「ここより少し南で強い魔力が発散されて」
「様子を見にいったこのルディンの兄が」
「山が半分ほど消えていたと報告してきました」

 そう言って川下のほうを見てうなずく左隣のドラゴンさんをルディンさんのお母さんが見やる。
 あ、あれ、ルディンさんのお兄さんだったんだ。へー、山半分かぁ……
 思わず現実逃避気味に手元に視線を落とした私に、追いかけるようにルディンさんのお母さんの声が続ける。

「そしてわずか二日前」
「ルディンの様子を見にこの上空を旋回していたこちらの者に向かって」
「真っ直ぐに強い光魔法が飛んで来たそうです」
「幸い避けられたようですが」

 そう言って、今度は右側に座ってるドラゴンさんを見た。
 う、うわあああ……

「あれはあゆみ、どちらもあなたの魔法だったんじゃありませんか?」
「ご、ご、ご、ご、ごめんなさい!!!」

 腕組みして黙っちゃった黒猫君とバッカスを横目に、私は思わず土下座する勢いでその場で謝罪した。
 言われてみればあの時私の魔法、なぜか上空で変な方向に曲がってたよね。まさかあんな適当に出した光魔法がたまたま上空にいる誰かにぶつかりそうになるなんて、思っても見なかった!
 横で黒猫君が「いやあれは俺も悪かったけど、いや元はと言えばルディンの奴が──」とか言いかけるのを慌てて止めた。だって撃っちゃったのは私だし、山消えちゃったのも事実だし。もうどっちも言い訳のしようがないよ。
 そんな私たちのやりとりを遠目に見てたルディンさんのお母さんが、またため息をついて先を続ける。

「やっぱり」
「山での件は現場になにも状況を説明するものが見つからなかったと聞きましたし」
「先日のここでのことも暗い夜のことでしたので」
「この者も自分を狙って攻撃したのか定かではないと言っていました」
「状況を知りたくてあの子に何度も精神会話で連絡したのですが全く返事がなくて」
「まあ、それはいつもの事なんですけれど」

 そう言ってルディンさんのお母さんが困ったように首を振る。ルディンさん、まるでお母さんからの電話無視してた元彼の誰かさんみたい。

「問いただそうにもドワーフたちは基本、人の名前を覚えられませんし」
「え?」

 そう言えばドワーフさん、まだ私たちの名前を一度も呼んでくれてなかった!
 驚く私にルディンさんのお母さんが説明してくれた。

「ドワーフは三文字以上の言葉がちゃんと覚えられないのです」
「覚えられないと言うか、覚える気がないと言うか……」

 ルディンさんのお母さんの代わりにそう言ってるドンさんたちは、全く悪気なさそうに全身で頷いてる。

「ですから」
「先ほどここであゆみの存在に気づいた私は」
「あゆみが簡単に攻撃を選ぶ脅威であるかを先に試させてもらったのです」

 そう言って、川の向こう側に座る五匹のドラゴンさんたち全てが私に視線を集中させる。

「ご心配おかけして本当にすみませんでした!」

 見つめられる私はもう、縮こまって謝るよりほか思いつけない。
 うわ、私、試されるほど心配お掛けしちゃったのか……
 本当に光魔法は絶対もう使っちゃダメだよね。封印封印……
 正直突然飛んできて黒猫君まで震え上がるほど威圧されて、私だってちょっとは思うところもあったんだけど。もうこれは仕方なかったとしか言えないよ。だって今までに私が軽々しくしちゃった行動の結果が返ってきてただけだもん。

「でもあなたはあの状況で、誰でもない自分だけの判断で、私を攻撃することより誰も傷つけない方法を選びました」

 一人項垂れて反省してた私に、思わぬルディンさんのお母さんの優しい口調がドンさんを通して伝わってきた。

「あなたがその力を持つに足る人で本当によかったわ」

 その声音は、まるで私を褒めてるみたいで……
 それがこそばゆく、でも普段の行動が考えなしな自分がそう言ってもらうのはあまりに申し訳なくて。
 居たたまれず、またも俯いた私に少し厳しいルディンさんのお母さんの声がドンさんを通して響いてきた。
 
「でも覚えておきなさい」
「その時は必ず来ます」

 その時って?
 ……そう尋ねようとしてた私は、続くルディンさんのお母さんの言葉に一旦その疑問を放棄した。

「願わくば、その時まで貴方がこの地を滅ぼさぬことを祈りましょう」
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

コンバット

サクラ近衛将監
ファンタジー
 藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。  ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。  忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。  担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。  その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。  その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。  かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。  この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。  しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。  この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。  一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...