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第4章 執務
閑話:黒猫君の葛藤
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俺は黒猫だ。
名は、『黒猫君』だ。
この猫の身体にもやっと慣れてきた。今朝だって、あゆみに真っ裸の下半身見られても、もういいやってやっと思えてた。
なのに。
なんでだ?
今更人間に戻るとか。
いや、あゆみの言葉通りこれは人間に戻ったのとは違う。多分、「進化」が一番近い。
身体の見た目は以前に近いが、筋肉の付き方や反射神経が全く違う。
生前……じゃなかった魂を移転される前の身体も自慢じゃないがかなり丈夫だった。結構鍛えてたし、元々目が良かったこともあってかなり喧嘩も強かった。
だが、この身体。
今なら白人のレスラーとガチでやりあっても多分勝てる。
猫の身体の時には気づかなかったが、目が見えすぎるほど良く見えてる。髭がないのに髭があった時と同じように風で周りの動きが分かる。猫の五感と人間の五感が混じり合った、不思議な感覚だ。
だが同じ進化をするならせめて見た目ももう少しマシになればいいものを。
あゆみがすぐに俺を認識したことからしても、水に映っていた姿からも、前と同じドギツイ三白眼の斜睨みのままだ。
案の定、この姿を見たあゆみはすくみ上がって凍りついてた。それからも挙動不審に周りを見回し、俺と目を合わせようともしない。
まあ、こんな反応には慣れてるが。流石にここしばらく一緒にやってきたコイツにこの反応をされるのは堪える。
だが、悪いが日本にいた時みたいに素通りしてもらうわけにもいかない。ここまで来て逃げられてはたまらない。がっちりあゆみを押さえ込んで、しっかり腹割って話した。
最初はあやふやに疑問形で答えながら逃げ腰だったあゆみも、どこかでなんとか吹っ切れてくれたようで、途中からいつも通りのあゆみに戻っていった。
あゆみに見えないところで安堵のため息がこぼれた。
流石軍人だけのことはあって、他の奴らは俺の風貌も気にならないらしい。
パットは……結構すぐに慣れてたな。タッカーの対処にしても、コイツは本当に拾い物だった。
夕食後、あゆみを部屋に送った。持ち上げたあゆみの身体はあまりにも軽くて、ズキリと心臓が痛んだ。
せめて今日くらいは運ばせてもらわないと俺の中にわだかまっていた変な罪悪感が収まらない。
あゆみを部屋に残して自分の部屋に入る。
誰もいなくなった途端。
涙がこぼれた。
唇を噛んだ。
唇が噛めた。
手を広げて指を折る。
ベッドに乗って手足を伸ばした。
こぼれる涙は手の甲で拭った。
泣きながら……いつの間にか眠りについた。
* * * * *
夢を見た。
猫の夢だ。
夢の中で俺は猫の中に居た。
俺が猫なのではなく、猫の意識はそこにあって、俺はただその身体に入っているだけだ。
猫は俺の意識を乗せたまま平原を走っていく。
どこまでもどこまでも広い平原を。
身体が熱い。
ものすごく熱い。
熱が……平原を走る風に煽られて空に向かって登っていった。
* * * * *
そして朝が来た。
目覚めたとき。
俺は……猫だった。
名は、『黒猫君』だ。
この猫の身体にもやっと慣れてきた。今朝だって、あゆみに真っ裸の下半身見られても、もういいやってやっと思えてた。
なのに。
なんでだ?
今更人間に戻るとか。
いや、あゆみの言葉通りこれは人間に戻ったのとは違う。多分、「進化」が一番近い。
身体の見た目は以前に近いが、筋肉の付き方や反射神経が全く違う。
生前……じゃなかった魂を移転される前の身体も自慢じゃないがかなり丈夫だった。結構鍛えてたし、元々目が良かったこともあってかなり喧嘩も強かった。
だが、この身体。
今なら白人のレスラーとガチでやりあっても多分勝てる。
猫の身体の時には気づかなかったが、目が見えすぎるほど良く見えてる。髭がないのに髭があった時と同じように風で周りの動きが分かる。猫の五感と人間の五感が混じり合った、不思議な感覚だ。
だが同じ進化をするならせめて見た目ももう少しマシになればいいものを。
あゆみがすぐに俺を認識したことからしても、水に映っていた姿からも、前と同じドギツイ三白眼の斜睨みのままだ。
案の定、この姿を見たあゆみはすくみ上がって凍りついてた。それからも挙動不審に周りを見回し、俺と目を合わせようともしない。
まあ、こんな反応には慣れてるが。流石にここしばらく一緒にやってきたコイツにこの反応をされるのは堪える。
だが、悪いが日本にいた時みたいに素通りしてもらうわけにもいかない。ここまで来て逃げられてはたまらない。がっちりあゆみを押さえ込んで、しっかり腹割って話した。
最初はあやふやに疑問形で答えながら逃げ腰だったあゆみも、どこかでなんとか吹っ切れてくれたようで、途中からいつも通りのあゆみに戻っていった。
あゆみに見えないところで安堵のため息がこぼれた。
流石軍人だけのことはあって、他の奴らは俺の風貌も気にならないらしい。
パットは……結構すぐに慣れてたな。タッカーの対処にしても、コイツは本当に拾い物だった。
夕食後、あゆみを部屋に送った。持ち上げたあゆみの身体はあまりにも軽くて、ズキリと心臓が痛んだ。
せめて今日くらいは運ばせてもらわないと俺の中にわだかまっていた変な罪悪感が収まらない。
あゆみを部屋に残して自分の部屋に入る。
誰もいなくなった途端。
涙がこぼれた。
唇を噛んだ。
唇が噛めた。
手を広げて指を折る。
ベッドに乗って手足を伸ばした。
こぼれる涙は手の甲で拭った。
泣きながら……いつの間にか眠りについた。
* * * * *
夢を見た。
猫の夢だ。
夢の中で俺は猫の中に居た。
俺が猫なのではなく、猫の意識はそこにあって、俺はただその身体に入っているだけだ。
猫は俺の意識を乗せたまま平原を走っていく。
どこまでもどこまでも広い平原を。
身体が熱い。
ものすごく熱い。
熱が……平原を走る風に煽られて空に向かって登っていった。
* * * * *
そして朝が来た。
目覚めたとき。
俺は……猫だった。
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