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1話 召喚の儀式
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学園では一年生の最初の授業で召喚獣を呼び出す儀式が行われる。これから戦いを共にするパートナー、そして自らの将来を決めることにも繋がるだけに、とても重要な儀式といえる。
呼び出した召喚獣に応じてクラス分けもされるらしいので、上位で卒業するためにも力の入るとても大事な儀式になるのだろう。まぁ、僕には関係のない話なんだけどね。
周りを見渡しても、緊張で震えている者が多い。気楽に構えているのは一部の上位貴族のご子息やご令嬢ぐらいだろう。
召喚獣は家系や魔力量などに影響を大きく受ける。緊張感は半端ない。でも強い召喚獣を呼び出すことができれば人生がガラリと変わる。
とはいっても、自信があるのは優秀な家系の貴族たち。英才教育で小さい頃から魔法の訓練も受けているらしいし、僕のような者には下級召喚獣がいいとこだろう。
不安に思っているのは、僕のように商人の出だったり、騎士や男爵家などの貴族の中でも身分の低い家柄の者たちだ。
しかしながら、不安もあるが淡い期待も持っている。だからこそ、緊張しているのだ。家柄に関係なく、ごく稀に力の強い召喚獣を呼び出し、成功を収めた者も僅かながらいるのだから。
「どうしましょう……」
「緊張するよね」
「いえ、召喚場が少し狭いのではと思いまして……」
誰かわからずに緊張をほぐそうと声を掛けたつもりが、なんとレイクルイーズ公爵家ご令嬢のシャーロット様だった。
どうしよう、普通にタメ口で話し掛けてしまった……これからの学園生活で取り巻きの方々にいじめられ続けるかもしれない。
「あ、あの、すみません。シャーロット様とは思わずに、普通に話し掛けてしまいました」
「普通に話し掛けたらいけないのですか?」
「い、いえ、私は商家の出ですから身分が違いすぎます」
「構いませんわ。同じ学園で学ぶ者同士です。それに……あなたの魔力はとても美しいわ。よかったら私とお友達になりませんか?」
この学園には要注意人物として今年四人の生徒が入学している。その内の一人が、僕の隣でニコニコしながら絶賛握手を求めて手を伸ばしている少女シャーロット様だ。
何をもって要注意かというと、高位の貴族の頂点に立つ方々だからだ。おそらく卒業までの間に会話することもないと思っていたのだけど、初日から話をすることになるとは予想外もいいところだ。しかも思っていたより、なんだかとてもフレンドリー。
「わ、私なんかでよろしいのでしょうか?」
「嫌ですか?」
「と、とんでもございません! ぜ、是非、お願いします!」
「良かった。それでは、今から敬語は無しでお願いしますね。私達は友達なのですから」
そう言って、微笑むシャーロット様はとても美しく、ボーッと見惚れてしまった僕は、何も考えずにその細く綺麗な手を握ってしまった。
「おいっ、お前、誰の手を握っていると思っている。今すぐその手を離せ!」
急に後ろから引っ張られるようにして、引きずり倒された僕が見上げた先には、もう一人の要注意人物が立っていた。グランデール侯爵家のテオ様だ。
「何をするの、テオ。彼は私の友達の……あらっ、お名前を聞いてませんでしたわ」
「名前も知らないような奴が友だと? シャル、お前はもう少し友を選んだ方がいい。身分の差がありすぎると、その商人の息子も迷惑であろう」
「あなたに私の友達を決められたくないわ。大丈夫ですか? あなたの名前を教えてくれるかしら」
尻餅をついていた僕を引き起こそうとして、再び細く綺麗な手が近づいてくる。何で、シャーロット様は僕なんかに優しくしてくださるのだろう。理由もわからず、ただその優しい瞳に吸い込まれそうになりながら、再びその手をとった。
「わ、私は、私の名はルーク。ルーク・エルフェンです」
「そう、ルーク。これからよろしくお願いしますね」
「は、はい」
「こんな奴を友と呼ぶなど、頭がおかしくなったのか? 俺は認めんぞ」
「あら? あなたに認められなければ、私は友達をつくれないのかしら?」
「うるさい! その内にわかる。召喚獣を見れば否が応でも理解するだろうぜ」
「うーん、確かにそうかもしれませんね」
強い召喚獣を呼び出せれば、国を守る召喚師に成れるかもしれない。それが難しくても高位の貴族から声を掛けられる可能性はある。この瞬間に人生を懸けている生徒はきっと多いはずだ。
僕は将来、商人として自分の身を自分で守れるぐらいの強さが、手に入ればいいかなぐらいに思っている。もちろん、強い召喚獣が来てくれたら嬉しいし、まかり間違ってレイクルイーズ公爵家で働かせてもらえたら、それは父も泣いて喜ぶだろう。
父としては、僕に将来に繋がる貴族の友人を得るようにと学園に入れた節がある。うちは商人としてもそれなりに成功をしており、お金にはそこまで困ってはいない。そこそこに裕福な家庭では育ったと思う。
おそらく男爵家相当の優雅な暮らしは送ってきたと自負している。もちろん、上級貴族と比べちゃいけない。そこはレベルが違いすぎるだろうから。
また僕には兄がいるので、跡を継がなければならないということはない。ただなんとなく、兄を手伝って将来は商人になるんだろうなという漠然とした思いがあった。
「それでは、これから順に召喚の儀式を行う。名前を呼ばれた者は魔方陣の前まで来なさい」
担当教員のジアス先生が召喚の際の注意点を再度説明している。元々優秀な召喚師をしていたという先生らしい。周りでは多くの先生方が自分が担当する魔方陣ごとに生徒へ説明をしている。早いところでは、早速召喚が行われている魔方陣もあった。
これから、僕の召喚獣が呼ばれるんだ。
呼び出した召喚獣に応じてクラス分けもされるらしいので、上位で卒業するためにも力の入るとても大事な儀式になるのだろう。まぁ、僕には関係のない話なんだけどね。
周りを見渡しても、緊張で震えている者が多い。気楽に構えているのは一部の上位貴族のご子息やご令嬢ぐらいだろう。
召喚獣は家系や魔力量などに影響を大きく受ける。緊張感は半端ない。でも強い召喚獣を呼び出すことができれば人生がガラリと変わる。
とはいっても、自信があるのは優秀な家系の貴族たち。英才教育で小さい頃から魔法の訓練も受けているらしいし、僕のような者には下級召喚獣がいいとこだろう。
不安に思っているのは、僕のように商人の出だったり、騎士や男爵家などの貴族の中でも身分の低い家柄の者たちだ。
しかしながら、不安もあるが淡い期待も持っている。だからこそ、緊張しているのだ。家柄に関係なく、ごく稀に力の強い召喚獣を呼び出し、成功を収めた者も僅かながらいるのだから。
「どうしましょう……」
「緊張するよね」
「いえ、召喚場が少し狭いのではと思いまして……」
誰かわからずに緊張をほぐそうと声を掛けたつもりが、なんとレイクルイーズ公爵家ご令嬢のシャーロット様だった。
どうしよう、普通にタメ口で話し掛けてしまった……これからの学園生活で取り巻きの方々にいじめられ続けるかもしれない。
「あ、あの、すみません。シャーロット様とは思わずに、普通に話し掛けてしまいました」
「普通に話し掛けたらいけないのですか?」
「い、いえ、私は商家の出ですから身分が違いすぎます」
「構いませんわ。同じ学園で学ぶ者同士です。それに……あなたの魔力はとても美しいわ。よかったら私とお友達になりませんか?」
この学園には要注意人物として今年四人の生徒が入学している。その内の一人が、僕の隣でニコニコしながら絶賛握手を求めて手を伸ばしている少女シャーロット様だ。
何をもって要注意かというと、高位の貴族の頂点に立つ方々だからだ。おそらく卒業までの間に会話することもないと思っていたのだけど、初日から話をすることになるとは予想外もいいところだ。しかも思っていたより、なんだかとてもフレンドリー。
「わ、私なんかでよろしいのでしょうか?」
「嫌ですか?」
「と、とんでもございません! ぜ、是非、お願いします!」
「良かった。それでは、今から敬語は無しでお願いしますね。私達は友達なのですから」
そう言って、微笑むシャーロット様はとても美しく、ボーッと見惚れてしまった僕は、何も考えずにその細く綺麗な手を握ってしまった。
「おいっ、お前、誰の手を握っていると思っている。今すぐその手を離せ!」
急に後ろから引っ張られるようにして、引きずり倒された僕が見上げた先には、もう一人の要注意人物が立っていた。グランデール侯爵家のテオ様だ。
「何をするの、テオ。彼は私の友達の……あらっ、お名前を聞いてませんでしたわ」
「名前も知らないような奴が友だと? シャル、お前はもう少し友を選んだ方がいい。身分の差がありすぎると、その商人の息子も迷惑であろう」
「あなたに私の友達を決められたくないわ。大丈夫ですか? あなたの名前を教えてくれるかしら」
尻餅をついていた僕を引き起こそうとして、再び細く綺麗な手が近づいてくる。何で、シャーロット様は僕なんかに優しくしてくださるのだろう。理由もわからず、ただその優しい瞳に吸い込まれそうになりながら、再びその手をとった。
「わ、私は、私の名はルーク。ルーク・エルフェンです」
「そう、ルーク。これからよろしくお願いしますね」
「は、はい」
「こんな奴を友と呼ぶなど、頭がおかしくなったのか? 俺は認めんぞ」
「あら? あなたに認められなければ、私は友達をつくれないのかしら?」
「うるさい! その内にわかる。召喚獣を見れば否が応でも理解するだろうぜ」
「うーん、確かにそうかもしれませんね」
強い召喚獣を呼び出せれば、国を守る召喚師に成れるかもしれない。それが難しくても高位の貴族から声を掛けられる可能性はある。この瞬間に人生を懸けている生徒はきっと多いはずだ。
僕は将来、商人として自分の身を自分で守れるぐらいの強さが、手に入ればいいかなぐらいに思っている。もちろん、強い召喚獣が来てくれたら嬉しいし、まかり間違ってレイクルイーズ公爵家で働かせてもらえたら、それは父も泣いて喜ぶだろう。
父としては、僕に将来に繋がる貴族の友人を得るようにと学園に入れた節がある。うちは商人としてもそれなりに成功をしており、お金にはそこまで困ってはいない。そこそこに裕福な家庭では育ったと思う。
おそらく男爵家相当の優雅な暮らしは送ってきたと自負している。もちろん、上級貴族と比べちゃいけない。そこはレベルが違いすぎるだろうから。
また僕には兄がいるので、跡を継がなければならないということはない。ただなんとなく、兄を手伝って将来は商人になるんだろうなという漠然とした思いがあった。
「それでは、これから順に召喚の儀式を行う。名前を呼ばれた者は魔方陣の前まで来なさい」
担当教員のジアス先生が召喚の際の注意点を再度説明している。元々優秀な召喚師をしていたという先生らしい。周りでは多くの先生方が自分が担当する魔方陣ごとに生徒へ説明をしている。早いところでは、早速召喚が行われている魔方陣もあった。
これから、僕の召喚獣が呼ばれるんだ。
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