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47話 アーセン・ゴドルフィン
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おかしい。本来、今頃は学園生活を楽しく満喫しているはずだったのに、何故、お城の訓練場でゴリラからしごかれているのだろうか。もちろん、少しでもレッドドラゴンを倒せるように頑張らなくてはならないのは理解しているつもりだ。それでも目の前にいるゴリラもとい、ゴドルフィン様がとても怖い。
日焼けしたような褐色の肌に筋骨隆々の威圧感ある体型。このゴリラが最強の召喚師アーセン・ゴドルフィン様だ。上級召喚獣のミスリルゴーレムがパートナーである。しかもこのゴーレム、馬にトランスフォームできてしまう優れものである。
「ルーク、誰が休んでいいと言った。余裕があるようなら、ノルマを倍に増やすぞ」
「や、休んでおりません。イメージトレーニング中でございます。す、すぐに続きを行います!」
「言い訳を言うな!」
「も、申し訳ございませーん!」
僕が今やっているのが身体能力を高める訓練というやつだ。さっきから魔力が空っぽになるまで出しまくっている。魔力ポーションは朝から既に五杯目に突入していて、ちょっともう気持ち悪い。
手っ取り早く強くなるには、召喚獣のレベルを上げて、その恩恵である魔法を習得していくことが近道ではある。そういう意味で言うとサバチャイさんは、城の召喚師さん達と無限対戦中なので、僕が一人へばっている場合ではない。
ちなみに、この訓練の最終目標は魔力を身体全体に纏うことで、自分のステータス以上の運動能力を引き出すことにあるらしい。そんな魔法は聞いたことがなかったのだけど、ゴリラが言うには上級召喚師程度の魔力濃度を持っていれば、身体全体を覆ったり、必要な部位を強化することなどが可能になるのだという。
「もっと魔力を深く感じろ! 濃度をもっと高めて練り上げろ! お前は常日頃から考え事が多すぎる。戦場ではお前の判断が二十秒遅れるだけで二十人が死ぬのだ! よく覚えておけっ! 何も考えられないぐらいになるまで、しばらく走ってろ。訓練場の外周を俺がいいというまでずっとだ。わかったかっ!」
「イエッサー!」
僕は軍人ではないし、むしろ商人の息子なので、そんなことを言われても余計に考え込んでしまう気がするんだよね。
「走りながら、足に魔力を集中させろ。いいか、魔力が無くなるまで全部出し切れよ。残すんじゃねぇぞ。手を抜いていたら、終わらねぇからな」
「イエッサー!」
このゴリラめ、本当に身体強化なんて魔法を使えるようになるんだろうな。このゴリラは僕の目の前で身体強化魔法を使って見せた。一瞬で僕の懐に入ると、そのまま服を掴まれて一本背負いで叩きつけられた。僕には気づいたら空を見上げていて、背中に強い痛みが走ったぐらいにしかわからなかった。
ゴリラが言うには、自分のステータスの三倍程度アップすることができるらしい。このゴリラは百メートル走を十秒フラットで走れるそうなので、身体強化を使うことで約三秒で駆け抜けてしまう哺乳類になる。目で追うのも難しいだろう。確かに、この魔法を習得できるようになればレッドドラゴン戦においても、戦いのオプションが増えるはずだ。
とは言っても、普段からそこまで魔力を感じたことがない人間に、いきなり集中しろとか言われてもピンとこないのも確か。何となくはわかるけど、足に集中させろとか言われても正直どうしたらいいかわからない。
「考えるな、感じるんだ! お前はもっと頭を空っぽにしろ、ボケがっ!」
ゴリラには僕の考えなど全てお見通しなのだ。外周を走っている僕の後ろをトランスフォームした馬に乗ってトロットで追い掛けてくるゴドルフィン様がいる。ちなみにトロットというのは馬のスピードのことで、常歩と駈歩との中間の歩調のことをいう。
「い、痛たっ! ちょ、やめてください!」
後ろを振り向くとゴリラの愛馬キングゴドルフィンには戦用の装備が装着されており、そのトゲトゲが容赦なく僕を襲っている。こいつら、僕をひき殺すつもりだ……。
「足に身体強化魔法が使えるようになれば、キングに追いつかれることはない。まあ、身体強化魔法が使えるようになったら駈歩に変更するのだがな」
死ねばいいのに。このゴリラ死ねばいいのに。
「なんだ、その目は。まだまだ元気そうだな。何も考えられなくなるまで走り続けろ! 体で覚えるのが一番手っ取り早いからな」
「ひっ、ひぃー、イエッサー!」
教官を変えてもらいたい。僕は褒められて伸びるタイプの人間なんだ。こういう、昔ながらの特訓とか、今どき流行らないから勘弁してもらいたい。
「キング、数回ぐらいならひき殺してもいい。すぐに治癒魔法で治せば問題ないからな」
ヒヒーンっ!
こ、こいつら、本気だ……。後ろを振り向くと、ゴリラと馬がニヤニヤしながら追いかけてきている。
ねぇ、これ本当に魔法の特訓なんだよね?
「ひ、ひぎゃっふぅー!!!!」
こうして、三回ぐらい殺されかけながら本日の特訓は終わったようだ。というのも、気がついたら寝室に運ばれていた様なので、後半は何も覚えたいない。いや、覚えているのは馬の嘶きとゴリラの笑い声ぐらいか……。
「に、逃げたい」
日焼けしたような褐色の肌に筋骨隆々の威圧感ある体型。このゴリラが最強の召喚師アーセン・ゴドルフィン様だ。上級召喚獣のミスリルゴーレムがパートナーである。しかもこのゴーレム、馬にトランスフォームできてしまう優れものである。
「ルーク、誰が休んでいいと言った。余裕があるようなら、ノルマを倍に増やすぞ」
「や、休んでおりません。イメージトレーニング中でございます。す、すぐに続きを行います!」
「言い訳を言うな!」
「も、申し訳ございませーん!」
僕が今やっているのが身体能力を高める訓練というやつだ。さっきから魔力が空っぽになるまで出しまくっている。魔力ポーションは朝から既に五杯目に突入していて、ちょっともう気持ち悪い。
手っ取り早く強くなるには、召喚獣のレベルを上げて、その恩恵である魔法を習得していくことが近道ではある。そういう意味で言うとサバチャイさんは、城の召喚師さん達と無限対戦中なので、僕が一人へばっている場合ではない。
ちなみに、この訓練の最終目標は魔力を身体全体に纏うことで、自分のステータス以上の運動能力を引き出すことにあるらしい。そんな魔法は聞いたことがなかったのだけど、ゴリラが言うには上級召喚師程度の魔力濃度を持っていれば、身体全体を覆ったり、必要な部位を強化することなどが可能になるのだという。
「もっと魔力を深く感じろ! 濃度をもっと高めて練り上げろ! お前は常日頃から考え事が多すぎる。戦場ではお前の判断が二十秒遅れるだけで二十人が死ぬのだ! よく覚えておけっ! 何も考えられないぐらいになるまで、しばらく走ってろ。訓練場の外周を俺がいいというまでずっとだ。わかったかっ!」
「イエッサー!」
僕は軍人ではないし、むしろ商人の息子なので、そんなことを言われても余計に考え込んでしまう気がするんだよね。
「走りながら、足に魔力を集中させろ。いいか、魔力が無くなるまで全部出し切れよ。残すんじゃねぇぞ。手を抜いていたら、終わらねぇからな」
「イエッサー!」
このゴリラめ、本当に身体強化なんて魔法を使えるようになるんだろうな。このゴリラは僕の目の前で身体強化魔法を使って見せた。一瞬で僕の懐に入ると、そのまま服を掴まれて一本背負いで叩きつけられた。僕には気づいたら空を見上げていて、背中に強い痛みが走ったぐらいにしかわからなかった。
ゴリラが言うには、自分のステータスの三倍程度アップすることができるらしい。このゴリラは百メートル走を十秒フラットで走れるそうなので、身体強化を使うことで約三秒で駆け抜けてしまう哺乳類になる。目で追うのも難しいだろう。確かに、この魔法を習得できるようになればレッドドラゴン戦においても、戦いのオプションが増えるはずだ。
とは言っても、普段からそこまで魔力を感じたことがない人間に、いきなり集中しろとか言われてもピンとこないのも確か。何となくはわかるけど、足に集中させろとか言われても正直どうしたらいいかわからない。
「考えるな、感じるんだ! お前はもっと頭を空っぽにしろ、ボケがっ!」
ゴリラには僕の考えなど全てお見通しなのだ。外周を走っている僕の後ろをトランスフォームした馬に乗ってトロットで追い掛けてくるゴドルフィン様がいる。ちなみにトロットというのは馬のスピードのことで、常歩と駈歩との中間の歩調のことをいう。
「い、痛たっ! ちょ、やめてください!」
後ろを振り向くとゴリラの愛馬キングゴドルフィンには戦用の装備が装着されており、そのトゲトゲが容赦なく僕を襲っている。こいつら、僕をひき殺すつもりだ……。
「足に身体強化魔法が使えるようになれば、キングに追いつかれることはない。まあ、身体強化魔法が使えるようになったら駈歩に変更するのだがな」
死ねばいいのに。このゴリラ死ねばいいのに。
「なんだ、その目は。まだまだ元気そうだな。何も考えられなくなるまで走り続けろ! 体で覚えるのが一番手っ取り早いからな」
「ひっ、ひぃー、イエッサー!」
教官を変えてもらいたい。僕は褒められて伸びるタイプの人間なんだ。こういう、昔ながらの特訓とか、今どき流行らないから勘弁してもらいたい。
「キング、数回ぐらいならひき殺してもいい。すぐに治癒魔法で治せば問題ないからな」
ヒヒーンっ!
こ、こいつら、本気だ……。後ろを振り向くと、ゴリラと馬がニヤニヤしながら追いかけてきている。
ねぇ、これ本当に魔法の特訓なんだよね?
「ひ、ひぎゃっふぅー!!!!」
こうして、三回ぐらい殺されかけながら本日の特訓は終わったようだ。というのも、気がついたら寝室に運ばれていた様なので、後半は何も覚えたいない。いや、覚えているのは馬の嘶きとゴリラの笑い声ぐらいか……。
「に、逃げたい」
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