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二話目 ブンボッパ村の秘密
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「村長様、ただいま参りました!」
「おぉ、エリオにレックス。よく来てくれたのぉ。本来なら街へ行き、観光がてら職業を授かるものであるのだが、今年は豊作とはいえ、まだまだ油断はできぬからの。それに、ちょっと今年は例外があるかもしれんので、すまんなぁ」
「いえ、村長様。身寄りのなかった私を育ててくれたご恩は忘れておりません。村の役に立てるようこれからも頑張って参ります」
まるで孫を見るかのように、目を細めて僕たちを見つめる村長様はもうすぐ七十歳になる。まだまだ歳の割には元気ではあるが、そろそろ息子であるトールさんと交代するタイミングに差し掛かっているのだろう。
「レックス。お主はどのような職業を授かるのか皆目見当もつかぬ。もしも良い職業を授かったのなら、街へ出るのもいいかもしれん」
街へ!? 想像もしていなかった村長からの言葉に驚く。少なくとも、身寄りのない自分を育てたのは、村の役に立ってもらうという考えがあるはずだと思っていたのだ。今だって、畑の世話をして作物の収穫をしたりと、小さい頃と比べたら少しだけど村の役に立っていると思っていたのだ。
「い、いいえ、村長様。私はこの村の発展のために、授かった職業を活かしたいと思っております。そ、その、私が村に居続けてはいけないのでしょうか?」
「村長様、レックスは防具屋さんになって私と一緒に父の店を継ぐんです! 追い出すようなことを言わないでください」
「おー、すまんすまん。そういうつもりではなかったのじゃ。この村は少々特殊じゃから、街へ出た方がレックスもいいかと思ったのじゃよ」
「ブンボッパ村が特殊……ですか?」
「そうじゃな。そろそろ二人にも、この村の秘密について話をするとしよう」
「ひ、秘密ですか?」
「実はな、この村って勇者の生まれる村なんじゃよ」
「ふぁっ?」
「ゆ、勇者!?」
「そう、勇者。初代も、二代目も三代目も何故か、このブンボッパ村から出てる」
「三代目って、この前、引退したばかりのドゥマーニ様ですよね!?」
「そうそう、あれ、宿屋のガリウスの息子じゃ」
「ええっ!!!」
「勇者ドゥマーニ様が宿屋の息子……」
「ドゥマーニの護衛をしていたのが、ギベオンじゃ」
「ギベオンおじさんって、えっ、狩人の!?」
「うむ。ギベオンは、あー見えて剣聖などと呼ばれておってな、勇者パーティでも活躍していたのじゃよ。麦農家の次男坊のくせにね」
「で、でもギベオンさんって、弓を使っている所しか見たことないですよ」
「奴も結構な歳じゃからの。足を悪くしてからは弓を使っているそうじゃ。そもそも、この辺りで奴に剣を使わせるような敵はおらんしな」
「ギベオンさん、腕は確かだと思っていたけど、想像以上だったわね……」
そういえば、エリオはギベオンさんが狩った鹿肉や猪肉のおこぼれをよくもらっていたような気がする。弓の名手かと思いきや、まさかの剣聖とは……。
「あ、あれっ? さ、三代目が引退したってことは!?」
「うむ。おそらくではあるが、エリオが次の勇者になる可能性が高いと思っておる」
「えーっ、わ、私なの!?」
「レックスはこの村の出身ではない。それに、お前たちより下の子供らは、まだまだ小さいじゃろ」
「レックス、どうしよう。私、レックスと一緒に武器屋さんやりたかったのに……」
「で、でも、勇者とか、とても栄誉なことなんじゃないかな。僕、エリオを応援するよ」
頑張り屋のエリオなら、きっと大変な試練も乗り越えて、立派な勇者として活躍するのではないかなと思う。
「で、でも、勇者になったら、この村を出ていかなきゃならないんでしょ。レックスとも会えなくなっちゃう……」
「そ、そうだね。多くのモンスターを退治するための旅に出なければならないんだよね。あと、魔王を討伐するんだっけ?」
この世界には勇者と対をなす者として、魔王が生まれるという。勇者の使命は、魔王を倒すこと。三代目勇者のドゥマーニ様が魔王討伐を果たしているので、しばらくは大丈夫だと言われている。それでも、世代交代が行われたのならば、魔王もまた新しく生まれる可能性が高いと言わざるをえない。
「もしも私が勇者で、レックスの職業が戦闘職だったら……そ、その、私についてきてくれないかな」
僕の日頃の運動神経から戦闘職を授かるということはまずないだろう。自分で言うのも悲しいが、どう考えてみても農家一直線だ。作物の成長を見守ったり、新しい農具を作ったりする方が僕の性格にも合っているだろう。
「難しいとは思うけど、もしもギベオンおじさんみたいな、すごい戦闘職だったら……ね」
「う、うん。ありがとう、レックス」
「それでは、話はここまでじゃ。二人とも、明日に備えて今日はゆっくり休むといい。エリオも少しは心構えが出来たであろう」
どうやら、神官様に村に来てもらうのは街で騒ぎにならないようにするためだったのだという。勇者といえども、最初はとても弱い。魔王の手下に見つからないように秘密裏に育てていくのだそうだ。
そうして迎えた翌朝。まさか、こんなことになろうとは誰も予想していなかったに違いない。僕もいまだに信じられないのだから……。
「おぉ、エリオにレックス。よく来てくれたのぉ。本来なら街へ行き、観光がてら職業を授かるものであるのだが、今年は豊作とはいえ、まだまだ油断はできぬからの。それに、ちょっと今年は例外があるかもしれんので、すまんなぁ」
「いえ、村長様。身寄りのなかった私を育ててくれたご恩は忘れておりません。村の役に立てるようこれからも頑張って参ります」
まるで孫を見るかのように、目を細めて僕たちを見つめる村長様はもうすぐ七十歳になる。まだまだ歳の割には元気ではあるが、そろそろ息子であるトールさんと交代するタイミングに差し掛かっているのだろう。
「レックス。お主はどのような職業を授かるのか皆目見当もつかぬ。もしも良い職業を授かったのなら、街へ出るのもいいかもしれん」
街へ!? 想像もしていなかった村長からの言葉に驚く。少なくとも、身寄りのない自分を育てたのは、村の役に立ってもらうという考えがあるはずだと思っていたのだ。今だって、畑の世話をして作物の収穫をしたりと、小さい頃と比べたら少しだけど村の役に立っていると思っていたのだ。
「い、いいえ、村長様。私はこの村の発展のために、授かった職業を活かしたいと思っております。そ、その、私が村に居続けてはいけないのでしょうか?」
「村長様、レックスは防具屋さんになって私と一緒に父の店を継ぐんです! 追い出すようなことを言わないでください」
「おー、すまんすまん。そういうつもりではなかったのじゃ。この村は少々特殊じゃから、街へ出た方がレックスもいいかと思ったのじゃよ」
「ブンボッパ村が特殊……ですか?」
「そうじゃな。そろそろ二人にも、この村の秘密について話をするとしよう」
「ひ、秘密ですか?」
「実はな、この村って勇者の生まれる村なんじゃよ」
「ふぁっ?」
「ゆ、勇者!?」
「そう、勇者。初代も、二代目も三代目も何故か、このブンボッパ村から出てる」
「三代目って、この前、引退したばかりのドゥマーニ様ですよね!?」
「そうそう、あれ、宿屋のガリウスの息子じゃ」
「ええっ!!!」
「勇者ドゥマーニ様が宿屋の息子……」
「ドゥマーニの護衛をしていたのが、ギベオンじゃ」
「ギベオンおじさんって、えっ、狩人の!?」
「うむ。ギベオンは、あー見えて剣聖などと呼ばれておってな、勇者パーティでも活躍していたのじゃよ。麦農家の次男坊のくせにね」
「で、でもギベオンさんって、弓を使っている所しか見たことないですよ」
「奴も結構な歳じゃからの。足を悪くしてからは弓を使っているそうじゃ。そもそも、この辺りで奴に剣を使わせるような敵はおらんしな」
「ギベオンさん、腕は確かだと思っていたけど、想像以上だったわね……」
そういえば、エリオはギベオンさんが狩った鹿肉や猪肉のおこぼれをよくもらっていたような気がする。弓の名手かと思いきや、まさかの剣聖とは……。
「あ、あれっ? さ、三代目が引退したってことは!?」
「うむ。おそらくではあるが、エリオが次の勇者になる可能性が高いと思っておる」
「えーっ、わ、私なの!?」
「レックスはこの村の出身ではない。それに、お前たちより下の子供らは、まだまだ小さいじゃろ」
「レックス、どうしよう。私、レックスと一緒に武器屋さんやりたかったのに……」
「で、でも、勇者とか、とても栄誉なことなんじゃないかな。僕、エリオを応援するよ」
頑張り屋のエリオなら、きっと大変な試練も乗り越えて、立派な勇者として活躍するのではないかなと思う。
「で、でも、勇者になったら、この村を出ていかなきゃならないんでしょ。レックスとも会えなくなっちゃう……」
「そ、そうだね。多くのモンスターを退治するための旅に出なければならないんだよね。あと、魔王を討伐するんだっけ?」
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「もしも私が勇者で、レックスの職業が戦闘職だったら……そ、その、私についてきてくれないかな」
僕の日頃の運動神経から戦闘職を授かるということはまずないだろう。自分で言うのも悲しいが、どう考えてみても農家一直線だ。作物の成長を見守ったり、新しい農具を作ったりする方が僕の性格にも合っているだろう。
「難しいとは思うけど、もしもギベオンおじさんみたいな、すごい戦闘職だったら……ね」
「う、うん。ありがとう、レックス」
「それでは、話はここまでじゃ。二人とも、明日に備えて今日はゆっくり休むといい。エリオも少しは心構えが出来たであろう」
どうやら、神官様に村に来てもらうのは街で騒ぎにならないようにするためだったのだという。勇者といえども、最初はとても弱い。魔王の手下に見つからないように秘密裏に育てていくのだそうだ。
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