3 / 5
3
しおりを挟む
実はセオドアもまたジョアンと同じく、焦っていた。
セオドアにとってジョアンは、初恋の人でもあり、現在進行形で愛する人でもある。
セオドアとジョアンは高等部から学園に通っていた為、頻繁に顔を合わせるという事は無かった。
茶会や夜会で顔を合わせても、挨拶する程度。
本当は婚約の申し込みをしたかったのだが、モテる割には非常に奥手だったりする。
というのも、この容姿のせいで女性に囲まれる事が多く、皆あの手この手で彼を手に入れようとし、いろんな意味で暴走する女性達からの被害に逢っていたからだ。
その所為もあって色々と拗らせ気付けば女嫌いとなり、そのくせ好きな女性には安易に近づけない難儀な性格になっていた。
学園に通ってもそれは変わらず、下心満載で自分に近づいてくる女性には冷たく『氷月の貴公子』とセオドアにとっては不名誉な二つ名までつけられていた。
だが、二学年に進級しジョアンと同じクラスになれた時には内心、転げまわるくらい大喜びしていた事を知る者はいない。
そしてジョアンだけに向けられる、甘く蕩けるような眼差し。
これまでの彼を知る人達からは、幽霊にでも会ったかのような顔で二度見されてしまうほどで、これまでの態度からは想像できないものなのだ。
誰がどう見ても、セオドアはジョアンに好意を持っている。
ジョアンが、セオドアが誰にでも優しいと勘違いしているのは、ジョアンに好かれたい一心の行動から生まれたものなのだから。
同じクラスになれたのだから、これを機にジョアンと一気に仲を深めたい。彼女は非常にモテるので、早く彼女を手に入れなければ。
それなのに、意外な邪魔が入り二の足を踏む事になるとは。
それが、カレン・ルーミー子爵令嬢。
ジョアンと親しくしたいセオドアに対し、それを邪魔するかのようにカレンが割り込んできたのだ。
これまでもそんな女は数多くいた。そのたびに冷たくあしらって遠ざけていたのだが、この女はジョアンの友人・・・そう思っただけで無下にはできなかった。
全ては、ジョアンに嫌われたくなくて・・・・
後になって気づいたのだが、そもそもその考えからして間違っていたのだ。
ジョアンを通し出会った頃から、せわしなく周りをうろうろとする、気の利かない女だな・・・・とは思っていた。
そんな事もあってかセオドアは、カレンを信用してはいなかった。
初めの頃は、好きだったジョアンの友人という事で、ジョアンと少しでも一緒にいられるならと、本来は得意ではないグループで集まる事も受け入れていた。
ジョアンと言葉を交わせる事に、その愛しい存在に舞い上がりあまり深く考えていなかったが、気付けば前よりもジョアンの存在が遠くなっていることに気が付いた。
何故だ?と考えてみると、そこには常にカレンが関わっている事に気がつく。
それが最高学年になり、ジョアンとクラスが分かれカレンと同じになった事で、嫌な方へと事態が動き出した。
鬱陶しいほどに、カレンがセオドアの世話をしようとし始めたのだ。周りが勘違いしてしまうほどに。
セオドアとしてはジョアンの友人として付き合いはするが、それ以上でもそれ以下でもない彼女を持て余していた。
セオドアが思いを寄せるのはジョアンにだけ。美しい虹色のトパーズの様な瞳に見つめられるだけで、幸せで幸せで、愛しくて。
勇気をもって告白すればよかった・・・と今となってはその臆病な自分に後悔しかない。
ずっとずっと好きだった、初恋の君。
ジョアンに誤解されたくなくて、カレンに対し距離を取ろうとするのだが、彼女には何一つ伝わっていなかったのか、しつこく纏わりついてくる。
彼女はジョアンの友達ではなかったのか?
自分がジョアンを好きだという事は知っているはずなのに、彼女と話す事すらできない気味の悪い状況が続いていたある日、カレンが衝撃的な事を告げたのだ。
「ジョアンはエドワード・オーブリー様と婚約が内定したみたいですわ」
一瞬にしてセオドアの視界から色が抜け落ちた。
あまりの衝撃にただ茫然とするしかない自分に、カレンは大層耳障りの良い言葉を並べたてていたような気がするが、その声が、言葉が鬱陶しくもイラつき返事を返す事すらしなかった。
何もかもがどうでも良くて、毎日懲りずにカレンが何やら話しかけてきていたが、適当に言葉を返しやり過ごしていたある日、ジョアンから声をかけられたのだ。
短い会話だったが、言葉を交わした事で心が満たされそして、とても切なかった。
心の中ではこのままでは駄目だとわかっていたから、真実を知りけじめをつけるにはいい機会なのだとも思った。
そう、鬱陶しいカレンがいないこの日に。
そして、ジョアンからの思いがけない告白。
驚きと共に、やはりすべての元凶はカレンだったのだと納得する自分。
話をするようにと声をかけてくれたメリアには、感謝してもしきれない。
カレンの言葉がすべて嘘だったとわかったのなら、ジョアンに対してすることは一つ。
セオドアはジョアンの手を取り、片膝をついた。
「私、セオドア・アンダーソンはジョアン・オーブリー令嬢を愛しています。どうか私と結婚してください」
思ってもみなかった展開に、目を見開き固まるジョアン。
そんな彼女を愛しそうに見つめ、指先に口づけた。
「臆病で哀れな私に、あなたの愛を与えてくださいませんか?」
夢にまで見た愛しい人からの求婚。ジョアンの目からは、今度は幸せに満ちた涙が溢れる。
「・・・喜んで・・・私も、愛しています・・・」
初めて抱きしめて、初めて口づけて、このまま離れたくはなかったが、二人には早急にしなくてはいけない事があった。
二人は幸せの余韻に浸りたいのを振り切り、帰宅するために馬車へと急いだのだった。
セオドアにとってジョアンは、初恋の人でもあり、現在進行形で愛する人でもある。
セオドアとジョアンは高等部から学園に通っていた為、頻繁に顔を合わせるという事は無かった。
茶会や夜会で顔を合わせても、挨拶する程度。
本当は婚約の申し込みをしたかったのだが、モテる割には非常に奥手だったりする。
というのも、この容姿のせいで女性に囲まれる事が多く、皆あの手この手で彼を手に入れようとし、いろんな意味で暴走する女性達からの被害に逢っていたからだ。
その所為もあって色々と拗らせ気付けば女嫌いとなり、そのくせ好きな女性には安易に近づけない難儀な性格になっていた。
学園に通ってもそれは変わらず、下心満載で自分に近づいてくる女性には冷たく『氷月の貴公子』とセオドアにとっては不名誉な二つ名までつけられていた。
だが、二学年に進級しジョアンと同じクラスになれた時には内心、転げまわるくらい大喜びしていた事を知る者はいない。
そしてジョアンだけに向けられる、甘く蕩けるような眼差し。
これまでの彼を知る人達からは、幽霊にでも会ったかのような顔で二度見されてしまうほどで、これまでの態度からは想像できないものなのだ。
誰がどう見ても、セオドアはジョアンに好意を持っている。
ジョアンが、セオドアが誰にでも優しいと勘違いしているのは、ジョアンに好かれたい一心の行動から生まれたものなのだから。
同じクラスになれたのだから、これを機にジョアンと一気に仲を深めたい。彼女は非常にモテるので、早く彼女を手に入れなければ。
それなのに、意外な邪魔が入り二の足を踏む事になるとは。
それが、カレン・ルーミー子爵令嬢。
ジョアンと親しくしたいセオドアに対し、それを邪魔するかのようにカレンが割り込んできたのだ。
これまでもそんな女は数多くいた。そのたびに冷たくあしらって遠ざけていたのだが、この女はジョアンの友人・・・そう思っただけで無下にはできなかった。
全ては、ジョアンに嫌われたくなくて・・・・
後になって気づいたのだが、そもそもその考えからして間違っていたのだ。
ジョアンを通し出会った頃から、せわしなく周りをうろうろとする、気の利かない女だな・・・・とは思っていた。
そんな事もあってかセオドアは、カレンを信用してはいなかった。
初めの頃は、好きだったジョアンの友人という事で、ジョアンと少しでも一緒にいられるならと、本来は得意ではないグループで集まる事も受け入れていた。
ジョアンと言葉を交わせる事に、その愛しい存在に舞い上がりあまり深く考えていなかったが、気付けば前よりもジョアンの存在が遠くなっていることに気が付いた。
何故だ?と考えてみると、そこには常にカレンが関わっている事に気がつく。
それが最高学年になり、ジョアンとクラスが分かれカレンと同じになった事で、嫌な方へと事態が動き出した。
鬱陶しいほどに、カレンがセオドアの世話をしようとし始めたのだ。周りが勘違いしてしまうほどに。
セオドアとしてはジョアンの友人として付き合いはするが、それ以上でもそれ以下でもない彼女を持て余していた。
セオドアが思いを寄せるのはジョアンにだけ。美しい虹色のトパーズの様な瞳に見つめられるだけで、幸せで幸せで、愛しくて。
勇気をもって告白すればよかった・・・と今となってはその臆病な自分に後悔しかない。
ずっとずっと好きだった、初恋の君。
ジョアンに誤解されたくなくて、カレンに対し距離を取ろうとするのだが、彼女には何一つ伝わっていなかったのか、しつこく纏わりついてくる。
彼女はジョアンの友達ではなかったのか?
自分がジョアンを好きだという事は知っているはずなのに、彼女と話す事すらできない気味の悪い状況が続いていたある日、カレンが衝撃的な事を告げたのだ。
「ジョアンはエドワード・オーブリー様と婚約が内定したみたいですわ」
一瞬にしてセオドアの視界から色が抜け落ちた。
あまりの衝撃にただ茫然とするしかない自分に、カレンは大層耳障りの良い言葉を並べたてていたような気がするが、その声が、言葉が鬱陶しくもイラつき返事を返す事すらしなかった。
何もかもがどうでも良くて、毎日懲りずにカレンが何やら話しかけてきていたが、適当に言葉を返しやり過ごしていたある日、ジョアンから声をかけられたのだ。
短い会話だったが、言葉を交わした事で心が満たされそして、とても切なかった。
心の中ではこのままでは駄目だとわかっていたから、真実を知りけじめをつけるにはいい機会なのだとも思った。
そう、鬱陶しいカレンがいないこの日に。
そして、ジョアンからの思いがけない告白。
驚きと共に、やはりすべての元凶はカレンだったのだと納得する自分。
話をするようにと声をかけてくれたメリアには、感謝してもしきれない。
カレンの言葉がすべて嘘だったとわかったのなら、ジョアンに対してすることは一つ。
セオドアはジョアンの手を取り、片膝をついた。
「私、セオドア・アンダーソンはジョアン・オーブリー令嬢を愛しています。どうか私と結婚してください」
思ってもみなかった展開に、目を見開き固まるジョアン。
そんな彼女を愛しそうに見つめ、指先に口づけた。
「臆病で哀れな私に、あなたの愛を与えてくださいませんか?」
夢にまで見た愛しい人からの求婚。ジョアンの目からは、今度は幸せに満ちた涙が溢れる。
「・・・喜んで・・・私も、愛しています・・・」
初めて抱きしめて、初めて口づけて、このまま離れたくはなかったが、二人には早急にしなくてはいけない事があった。
二人は幸せの余韻に浸りたいのを振り切り、帰宅するために馬車へと急いだのだった。
100
あなたにおすすめの小説
氷の公爵の婚姻試験
潮海璃月
恋愛
ある日、若き氷の公爵レオンハルトからある宣言がなされた――「私のことを最もよく知る女性を、妻となるべき者として迎える。その出自、身分その他一切を問わない。」。公爵家の一員となる一世一代のチャンスに王国中が沸き、そして「公爵レオンハルトを最もよく知る女性」の選抜試験が行われた。
【完結】顔が良ければそれでいいと思っていたけれど、気づけば彼に本気で恋していました。
朝日みらい
恋愛
魔物を討伐し国を救った若き魔術師アリア・フェルディナンド。
国王から「望むものを何でも与える」と言われた彼女が選んだ褒美は――
「国一番の美男子を、夫にください」
という前代未聞のひと言だった。
急遽開かれた婿候補サロンで、アリアが一目で心を奪われたのは、
“夜の街の帝王”と呼ばれる美貌の青年ルシアン・クロード。
女たらし、金遣いが荒い、家の恥――
そんな悪評だらけの彼を、アリアは迷わず指名する。
「顔が好きだからです」
直球すぎる理由に戸惑うルシアン。
だが彼には、誰にも言えない孤独と過去があった。
これは、
顔だけで選んだはずの英雄と、
誰にも本気で愛されたことのない美貌の青年が、
“契約婚”から始める恋の物語。
元婚約者からの嫌がらせでわたくしと結婚させられた彼が、ざまぁしたら優しくなりました。ですが新婚時代に受けた扱いを忘れてはおりませんよ?
3333(トリささみ)
恋愛
貴族令嬢だが自他ともに認める醜女のマルフィナは、あるとき王命により結婚することになった。
相手は王女エンジェに婚約破棄をされたことで有名な、若き公爵テオバルト。
あまりにも不釣り合いなその結婚は、エンジェによるテオバルトへの嫌がらせだった。
それを知ったマルフィナはテオバルトに同情し、少しでも彼が報われるよう努力する。
だがテオバルトはそんなマルフィナを、徹底的に冷たくあしらった。
その後あるキッカケで美しくなったマルフィナによりエンジェは自滅。
その日からテオバルトは手のひらを返したように優しくなる。
だがマルフィナが新婚時代に受けた仕打ちを、忘れることはなかった。
そんな世界なら滅んでしまえ
キマイラ
恋愛
魔王を倒す勇者パーティーの聖女に選ばれた私は前世の記憶を取り戻した。貞操観念の厳しいこの世界でパーティーの全員と交合せよだなんてありえないことを言われてしまったが絶対お断りである。私が役目をほうきしたくらいで滅ぶ世界なら滅んでしまえばよいのでは?
そんなわけで私は魔王に庇護を求めるべく魔界へと旅立った。
殺され聖女は嗤う
ひとみん
恋愛
アリアドネは聖女である。そのため、無能でもある。
聖女とは何なのか。どのような存在であるのか。
数百年以上も生まれていなかった聖女。
聖女に関しての伝聞は途絶え、僅かな歴史書にしか残されていない。
聖女が産まれる国であるのに、聖女とは何であるかを忘れたリンデル国は、本物の聖女を間違えた。
そんな国に訪れるのは・・・・
ご都合主義の何十番・・・何百番煎じなのか・・・ってお話です。
楽しんでいただければ幸いです!
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
【完結】リゼットスティアの王妃様
通木遼平
恋愛
リゼットスティアという美しく豊かな国があった。その国を治める国王も美しいと評判で、隣国の王女フィロメナは一度でいいから彼に会ってみたいと思い、兄である王子についてリゼットスティアに赴く。
フィロメナはなんとか国王にアピールしようとするが国王にはすでに強引に婚姻に至ったと噂の王妃がいた。国王はフィロメナに王妃との出会いを話して聞かせる。
※他のサイトにも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる