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34 閑話
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少し残酷な表現あり。これを読まなくても、本編に差し支え有りません。
********************
ガルドが駆けつけた時には、既にクロエは息絶えていた。
剣を胸に突き刺したまま、何の感情もない顔でクロエを抱きしめているイサーク。
そして、それを愉快そうに眺めている、アドラ。
その現実を理解するや否や、カッと目の前が真っ赤になり、イサークをクロエから引き剥がし剣を振り下ろす。
驚いたように叫ぶアドラも、剣を横に振りきりその首を落とした。
その場に残るはクロエの亡骸を腕に、剣を持つガルドのみ。
彼は剣を落としクロエを抱き上げ、寝台へと横たえた。
そして、ゆっくりと服を脱がし始める。
胸には刺された跡がぱっくりと開いていた。
白い裸体を前にガルドはゆっくりと覆いかぶさる。
まだぬくもりが残る唇に己のを重ね、舌を絡めた。
顔中に口付けそして首筋に、乳房にと愛撫を施す。
そして、自分も服を脱ぎ捨てるとクロエの足を開き己を突き刺した。
其処はまだ生きている様に温かく、ガルドを迎え入れる。
腰を動かしながら、ガルドは知らず知らず涙を流した。
こんな形で抱く事になろうとは。
抱き返してくれる腕もなく、虚しさが胸を満たしていく。
クロエの尊厳を踏みにじるような行為。
だが、この衝動を止める事は出来なかった。
長い、長い間愛していた。
初めてその姿を見た時から。
何処で間違ったのか。初めからなのか。今となっては分からない。
アドラにはクロエに対し指一本触れるなと厳命していた。
なのにこんな事をするとは。
アドラには情をかけてやったのに、と憎々し気に思いを馳せた。
ガルドとアドラは異母兄妹だ。
生まれながらの王太子に憎悪を向けてくる異母兄弟は多くいた。
だが、その中でアドラだけは違っていた。ガルドに懐き媚びも何もない笑顔を向けてくる。
次第に彼等の距離は近くなり、身体を重ねるまでさほど時間はかからなかった。
単純にアドラはガルドの容姿が好みだったのだ。そして、その頃はまだ王子然とした態度も。
だから、例え半分血が繋がっていても関係ないと思っていた。彼も望んでくれているのだからと。
だがある日、ガルドはクロエを見つけてしまう。
その日を境に、彼等の関係も変わっていった。
あれほど毎日のように情を交わしていたものが、後宮に沢山の女を囲い始めたのだ。
しかも黒髪青目という容姿がことのほか多い。半分以上は占めている。
そしてアドラには見向きもせず、後宮に通い始めるガルド。
そこで初めてアドラは自分の感情に気付く。後宮の女たちに向けるのは嫉妬。そしてガルドに向けるのは恋情だと。
ガルドは後宮を持ってからは指一本アドラに触れる事は無かった。
ただの兄妹としての触れ合いはある。だが、それだけ。
悶々とした日々を過ごしていると、フェルノア帝国への輿入れを決められてしまった。
それほどまでに自分が邪魔なのかと思ったが、イサークに会ってみればこれまたガルドとは違う美丈夫。
一瞬で心奪われた。そして彼の横に立つ女に、ハッとする。
この女が、ガルド兄様の心を奪ったのか・・・
再燃する嫉妬心。結局アドラは、イサークもガルドも両方手に入れようとしたのだ。
クロエには指一本触れるなと厳命されていた。
なのにアドラは軽く考えていた。
クロエを傷つけても、本気で自分を怒る事は無いと。
あれだけ後宮に黒髪青目の女を集めていたのに。彼女は見誤ったのだ。
ガルドがアドラに向けていた感情は、ただの慰め。
対しクロエに向けていたのは、正に狂愛。
クロエの為に世界を手にしようとしていたガルドの計画を、アドラが潰してしまった瞬間だった。
クロエが生きていれば、此処まで酷い惨劇になる事は無かった。
ガルドは感情の赴くまま世界を蹂躙していく。そして誰も彼に楯突くものはいなかった。
彼の横には常に美しい棺が置かれていた。
見事な彫刻と宝石に彩られたそれは、一目見ただけで棺と思う者はいない。まるで宝箱のようだったから。
そして中を見たものは、誰もいなかった。
次々と国を征服していくガルド。
面白いように簡単に彼等は服従していった。長い間戦が無く、皆平和ボケしていた所為もあるのかもしれない。
だが、ガルドはこの行為自体に何の意味も見いだせなくなっていた。
愛しい人が隣にいない。
いや、隣に居るが笑いかけてくれる事は無い。
棺を開け、あの頃と変わりない姿で横たわるクロエを抱き上げ、共に寝台に横たわる。
彼女が纏うは、贅を尽くした白いドレス。
その身体を抱きしめながら、その頬に、開く事の無い瞼にと口付けていく。
「あぁ・・・クロエ・・・」
熱に浮かされたかのような吐息を彼女に流し込む。
そしてゆっくりとそのドレスを脱がしていった。
大陸、島国とを手中に収めるまで、さほど時間はかからなかった。
魔薬を使ったおかげか、さして大きな抵抗を見せなかったからだ。
しいて言うなら、大陸より島国の方が反撃してくる手ごたえがあった。
だが、世界を手に入れたのも束の間、ガルドはあっさりと反逆者に殺される事となる。
ガルドを討ち取ったのは、シェルーラ国のサイラス。
彼は父ルドルフにギリギリのところで逃がされ、数人の護衛と共に生き延びていたのだ。
さして抵抗らしい抵抗もせず討たれたガルド。
最後は、美しい棺の中へと自ら入り、中に横たわるものを抱き寄せた。
その死に顔は、何故かとても幸せそうだったという。
噂の、彼の側に常に置かれていたという棺。
初めてその中を見る事になったサイラスは、ガルドが大切に抱きしめるソレを見て息を呑んだのだった。
その後の世界は、サイラスが先頭となり、生き延びた人達を集めそれぞれの国を再建していった。
まるで早送りの様に再築していく世界。
一息ついた頃には、サイラスは王位を息子に譲り、静かな余生を送れるまでに情勢は回復していた。
サイラスはよくこの小高い丘に立ち、海を眺めていた。
今だ瞼の裏に焼き付いて離れないのは、あの棺。
彼等の墓はこのシェルーラ国のこの場所に、ひっそりと建てられていた。
一見、墓には見えないそれは、対のオブジェの様に並んで建っている。
彼が望んでいた事は正直、未だに分からなかった。
ただ、こうして並んで海を眺める場所に眠る。
きっと、こんな幸せが欲しかったのだろうと、それだけは分かる気がした。
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ガルドが駆けつけた時には、既にクロエは息絶えていた。
剣を胸に突き刺したまま、何の感情もない顔でクロエを抱きしめているイサーク。
そして、それを愉快そうに眺めている、アドラ。
その現実を理解するや否や、カッと目の前が真っ赤になり、イサークをクロエから引き剥がし剣を振り下ろす。
驚いたように叫ぶアドラも、剣を横に振りきりその首を落とした。
その場に残るはクロエの亡骸を腕に、剣を持つガルドのみ。
彼は剣を落としクロエを抱き上げ、寝台へと横たえた。
そして、ゆっくりと服を脱がし始める。
胸には刺された跡がぱっくりと開いていた。
白い裸体を前にガルドはゆっくりと覆いかぶさる。
まだぬくもりが残る唇に己のを重ね、舌を絡めた。
顔中に口付けそして首筋に、乳房にと愛撫を施す。
そして、自分も服を脱ぎ捨てるとクロエの足を開き己を突き刺した。
其処はまだ生きている様に温かく、ガルドを迎え入れる。
腰を動かしながら、ガルドは知らず知らず涙を流した。
こんな形で抱く事になろうとは。
抱き返してくれる腕もなく、虚しさが胸を満たしていく。
クロエの尊厳を踏みにじるような行為。
だが、この衝動を止める事は出来なかった。
長い、長い間愛していた。
初めてその姿を見た時から。
何処で間違ったのか。初めからなのか。今となっては分からない。
アドラにはクロエに対し指一本触れるなと厳命していた。
なのにこんな事をするとは。
アドラには情をかけてやったのに、と憎々し気に思いを馳せた。
ガルドとアドラは異母兄妹だ。
生まれながらの王太子に憎悪を向けてくる異母兄弟は多くいた。
だが、その中でアドラだけは違っていた。ガルドに懐き媚びも何もない笑顔を向けてくる。
次第に彼等の距離は近くなり、身体を重ねるまでさほど時間はかからなかった。
単純にアドラはガルドの容姿が好みだったのだ。そして、その頃はまだ王子然とした態度も。
だから、例え半分血が繋がっていても関係ないと思っていた。彼も望んでくれているのだからと。
だがある日、ガルドはクロエを見つけてしまう。
その日を境に、彼等の関係も変わっていった。
あれほど毎日のように情を交わしていたものが、後宮に沢山の女を囲い始めたのだ。
しかも黒髪青目という容姿がことのほか多い。半分以上は占めている。
そしてアドラには見向きもせず、後宮に通い始めるガルド。
そこで初めてアドラは自分の感情に気付く。後宮の女たちに向けるのは嫉妬。そしてガルドに向けるのは恋情だと。
ガルドは後宮を持ってからは指一本アドラに触れる事は無かった。
ただの兄妹としての触れ合いはある。だが、それだけ。
悶々とした日々を過ごしていると、フェルノア帝国への輿入れを決められてしまった。
それほどまでに自分が邪魔なのかと思ったが、イサークに会ってみればこれまたガルドとは違う美丈夫。
一瞬で心奪われた。そして彼の横に立つ女に、ハッとする。
この女が、ガルド兄様の心を奪ったのか・・・
再燃する嫉妬心。結局アドラは、イサークもガルドも両方手に入れようとしたのだ。
クロエには指一本触れるなと厳命されていた。
なのにアドラは軽く考えていた。
クロエを傷つけても、本気で自分を怒る事は無いと。
あれだけ後宮に黒髪青目の女を集めていたのに。彼女は見誤ったのだ。
ガルドがアドラに向けていた感情は、ただの慰め。
対しクロエに向けていたのは、正に狂愛。
クロエの為に世界を手にしようとしていたガルドの計画を、アドラが潰してしまった瞬間だった。
クロエが生きていれば、此処まで酷い惨劇になる事は無かった。
ガルドは感情の赴くまま世界を蹂躙していく。そして誰も彼に楯突くものはいなかった。
彼の横には常に美しい棺が置かれていた。
見事な彫刻と宝石に彩られたそれは、一目見ただけで棺と思う者はいない。まるで宝箱のようだったから。
そして中を見たものは、誰もいなかった。
次々と国を征服していくガルド。
面白いように簡単に彼等は服従していった。長い間戦が無く、皆平和ボケしていた所為もあるのかもしれない。
だが、ガルドはこの行為自体に何の意味も見いだせなくなっていた。
愛しい人が隣にいない。
いや、隣に居るが笑いかけてくれる事は無い。
棺を開け、あの頃と変わりない姿で横たわるクロエを抱き上げ、共に寝台に横たわる。
彼女が纏うは、贅を尽くした白いドレス。
その身体を抱きしめながら、その頬に、開く事の無い瞼にと口付けていく。
「あぁ・・・クロエ・・・」
熱に浮かされたかのような吐息を彼女に流し込む。
そしてゆっくりとそのドレスを脱がしていった。
大陸、島国とを手中に収めるまで、さほど時間はかからなかった。
魔薬を使ったおかげか、さして大きな抵抗を見せなかったからだ。
しいて言うなら、大陸より島国の方が反撃してくる手ごたえがあった。
だが、世界を手に入れたのも束の間、ガルドはあっさりと反逆者に殺される事となる。
ガルドを討ち取ったのは、シェルーラ国のサイラス。
彼は父ルドルフにギリギリのところで逃がされ、数人の護衛と共に生き延びていたのだ。
さして抵抗らしい抵抗もせず討たれたガルド。
最後は、美しい棺の中へと自ら入り、中に横たわるものを抱き寄せた。
その死に顔は、何故かとても幸せそうだったという。
噂の、彼の側に常に置かれていたという棺。
初めてその中を見る事になったサイラスは、ガルドが大切に抱きしめるソレを見て息を呑んだのだった。
その後の世界は、サイラスが先頭となり、生き延びた人達を集めそれぞれの国を再建していった。
まるで早送りの様に再築していく世界。
一息ついた頃には、サイラスは王位を息子に譲り、静かな余生を送れるまでに情勢は回復していた。
サイラスはよくこの小高い丘に立ち、海を眺めていた。
今だ瞼の裏に焼き付いて離れないのは、あの棺。
彼等の墓はこのシェルーラ国のこの場所に、ひっそりと建てられていた。
一見、墓には見えないそれは、対のオブジェの様に並んで建っている。
彼が望んでいた事は正直、未だに分からなかった。
ただ、こうして並んで海を眺める場所に眠る。
きっと、こんな幸せが欲しかったのだろうと、それだけは分かる気がした。
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