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ある晴れた日の、爽やかな午後。
私とリズは彼等に見つからないよう、ちょうど角になっている壁に隠れてこそこそゴニョゴニョやっていた。
「ほら、行け!」
そう言いながら背中をグイグイ押してくるリズに、私は顔を歪めながら抗議の声を上げた。勿論、小声で。
「ちょっとリズ、押さないでよ!それに貴女・・・口調が素に戻ってるわよ・・・」
彼女は元々、アリオスと共にこの国を護る魔法騎士だ。武骨な男どもを相手にしているのだから、本来の口調だってこんな感じなのだが・・・
「サーラ様がさっさと動かないからですわ」
「いや・・・だって、男女の痴話喧嘩にはまったら、馬に蹴られるというか・・・何と言うか・・・」
「んな事どーでもいいから、さっさと行け!ほらっ!」
リズの口調が素に戻っているという事は、彼にとって相当ヤバイという事なのだろうか・・・この、目の前で繰り広げられている展開が・・・
「アリオス様!お慕いしております!」
そう言いながら、流れる赤い髪を揺らしながら美しい女性がアリオスにしがみ付く・・・と言った表現が正しい様な勢いで、抱き着いた。
長い長い廊下のど真ん中で、まるでメロドラマの撮影でもしているのではないかと思うほど、美男美女で絵になってるもんだから、ついつい見惚れてしまうワタクシ。
そう。私には、ただただ何時もの恒例行事にしか見えていなかった。
貴族令嬢がアリオスに色目を使って媚びるというその光景は。
なんで、私たちがこんな覗き見みたいなことをしているのかと言うと、わざとではなく、本当に偶然だった。
後から考えれば、それはお妃教育なのだとわかるけど、その時には全くそんな事だとは思っていなかった私。
だって、礼儀作法もままならない私が、契約とはいえ王太子の婚約者となったのだから、最低限の作法は習得していなくてはならないと思っていたし、この勉強はきっとこの先も役には立てど邪魔にはならないと思うから。
時折、公務らしきものまでやらされて、沼に嵌っていくかの様にかなりの危機感を感じてきている今日この頃でもあるのだけどね。
婚約解消が、遠のいていく・・・・
そんな事を思いながら私は「はぁ~~~」と疲れ切った溜息を吐き行儀悪くもソファーに寝ころんだ。
さっきまで、数日後に控えている病院の視察に伴い、色々叩き込まれていたのだ。
「サーラ様・・・ジェラール先生に見られたら、お勉強が更に厳しくなりますよ」
その言葉に、私は弾かれる様に姿勢を正した。
ジェラール先生とは、私の行儀作法の先生で、ことのほか厳しいジェントルマン。
彼の授業を受けた後の私はいつもこんな状態になる・・・精根尽き果てるとは、まさにこの事だ・・・。
「でも、疲れたんだもん・・・慣れないんだもん・・・」
グチグチ言う私に、リズは呆れたように笑いながらも、私の喜ぶ様な提案をしてくれた。
「居住区の庭の花が見ごろなのですが、気晴らしに行ってみますか?」
「いく!」
すぐさまいい返事を返した私は、後にもの凄く後悔をする事など知る由もない。
今、目の前ので繰り広げられているドラマの様な状況と遭遇してしまうのだから。
王族居住区内の庭だから当然、フードなど被らなくても良い。
最重要区内だけれど、人影はほとんど見受けられない。
と言うのも、其処彼処に防犯の術式が張り巡らされているから。
そして、最低限の近衛兵しか配置されていない。
それもほとんど私に付けられている護衛であるのだが・・・
爽やかな風を身体全体で感じる事が出来、それもまた嬉しくて、先ほどまでとは違う軽い足取りで私とリズは庭を目指し歩いていた。
そしてもうすぐ庭だ・・・と言う時に、声が聴こえてきたのだ。
王族居住区とはいっても、そこにたどり着くまでには長い長い廊下がある。
その廊下までであれば、許可された者のみ入る事は出来るが、居住区には王族の者しか入ることはできない。
そんな、長い長い廊下の・・・真ん中あたりでそれは繰り広げられていた。
「ねぇ、リズ・・・あの美人さん、誰?」
アリオスに言い寄っている美女。髪は燃えるような赤。そして遠目からでも見える、涙で潤むその瞳は深い緑色をしていた。
「彼女は宰相閣下のご息女、スカーレット様です」
「宰相閣下・・・って・・・あぁ・・・」
私は数回しか会ったことのない彼をなんとなく思い出した。
確かに彼も、燃えるような赤い髪と、緑色の瞳をしたイケメンナイスミドルだったような・・・気がする。
少し首を傾げる私に「覚えていないのでしょ?」とリズにチクリと嫌味を言われる。
まぁ、正直、こんな状況になると思ってなかったから、あんまり人の顔は覚えていない。
でも、宰相とはこの間の婚約式でも顔を合わせているのでなんとなくだけど覚えていたのだ。
「彼女って・・・美人よね」
「そうですわね。この国で一、二位を争うくらいには美しいかと・・・」
言葉の端端に棘が見受けられるが、リズがそう言うのだから多分そうなのだろう。でも・・・
「一番美人なのはリズだけどね」
なんとはなしに漏れた本音に、リズはびくりと身体を揺らしたかと思うと、小さな溜息を吐いた。
「ん?リズ??」
私が無理くり顔を上げれば、ちょっと照れたような怒ったような複雑な表情をしたリズがいる。
「サーラ様は、本当に馬鹿ですわ」
誉めたのに貶される・・・ムッとはしたものの、「照れない照れない」と軽く返し、アリオス達に視線を戻した。
またもリズは、今度は明らかに呆れた様な溜息を吐きつつも、同じように彼等に視線を戻したのだった。
私とリズは彼等に見つからないよう、ちょうど角になっている壁に隠れてこそこそゴニョゴニョやっていた。
「ほら、行け!」
そう言いながら背中をグイグイ押してくるリズに、私は顔を歪めながら抗議の声を上げた。勿論、小声で。
「ちょっとリズ、押さないでよ!それに貴女・・・口調が素に戻ってるわよ・・・」
彼女は元々、アリオスと共にこの国を護る魔法騎士だ。武骨な男どもを相手にしているのだから、本来の口調だってこんな感じなのだが・・・
「サーラ様がさっさと動かないからですわ」
「いや・・・だって、男女の痴話喧嘩にはまったら、馬に蹴られるというか・・・何と言うか・・・」
「んな事どーでもいいから、さっさと行け!ほらっ!」
リズの口調が素に戻っているという事は、彼にとって相当ヤバイという事なのだろうか・・・この、目の前で繰り広げられている展開が・・・
「アリオス様!お慕いしております!」
そう言いながら、流れる赤い髪を揺らしながら美しい女性がアリオスにしがみ付く・・・と言った表現が正しい様な勢いで、抱き着いた。
長い長い廊下のど真ん中で、まるでメロドラマの撮影でもしているのではないかと思うほど、美男美女で絵になってるもんだから、ついつい見惚れてしまうワタクシ。
そう。私には、ただただ何時もの恒例行事にしか見えていなかった。
貴族令嬢がアリオスに色目を使って媚びるというその光景は。
なんで、私たちがこんな覗き見みたいなことをしているのかと言うと、わざとではなく、本当に偶然だった。
後から考えれば、それはお妃教育なのだとわかるけど、その時には全くそんな事だとは思っていなかった私。
だって、礼儀作法もままならない私が、契約とはいえ王太子の婚約者となったのだから、最低限の作法は習得していなくてはならないと思っていたし、この勉強はきっとこの先も役には立てど邪魔にはならないと思うから。
時折、公務らしきものまでやらされて、沼に嵌っていくかの様にかなりの危機感を感じてきている今日この頃でもあるのだけどね。
婚約解消が、遠のいていく・・・・
そんな事を思いながら私は「はぁ~~~」と疲れ切った溜息を吐き行儀悪くもソファーに寝ころんだ。
さっきまで、数日後に控えている病院の視察に伴い、色々叩き込まれていたのだ。
「サーラ様・・・ジェラール先生に見られたら、お勉強が更に厳しくなりますよ」
その言葉に、私は弾かれる様に姿勢を正した。
ジェラール先生とは、私の行儀作法の先生で、ことのほか厳しいジェントルマン。
彼の授業を受けた後の私はいつもこんな状態になる・・・精根尽き果てるとは、まさにこの事だ・・・。
「でも、疲れたんだもん・・・慣れないんだもん・・・」
グチグチ言う私に、リズは呆れたように笑いながらも、私の喜ぶ様な提案をしてくれた。
「居住区の庭の花が見ごろなのですが、気晴らしに行ってみますか?」
「いく!」
すぐさまいい返事を返した私は、後にもの凄く後悔をする事など知る由もない。
今、目の前ので繰り広げられているドラマの様な状況と遭遇してしまうのだから。
王族居住区内の庭だから当然、フードなど被らなくても良い。
最重要区内だけれど、人影はほとんど見受けられない。
と言うのも、其処彼処に防犯の術式が張り巡らされているから。
そして、最低限の近衛兵しか配置されていない。
それもほとんど私に付けられている護衛であるのだが・・・
爽やかな風を身体全体で感じる事が出来、それもまた嬉しくて、先ほどまでとは違う軽い足取りで私とリズは庭を目指し歩いていた。
そしてもうすぐ庭だ・・・と言う時に、声が聴こえてきたのだ。
王族居住区とはいっても、そこにたどり着くまでには長い長い廊下がある。
その廊下までであれば、許可された者のみ入る事は出来るが、居住区には王族の者しか入ることはできない。
そんな、長い長い廊下の・・・真ん中あたりでそれは繰り広げられていた。
「ねぇ、リズ・・・あの美人さん、誰?」
アリオスに言い寄っている美女。髪は燃えるような赤。そして遠目からでも見える、涙で潤むその瞳は深い緑色をしていた。
「彼女は宰相閣下のご息女、スカーレット様です」
「宰相閣下・・・って・・・あぁ・・・」
私は数回しか会ったことのない彼をなんとなく思い出した。
確かに彼も、燃えるような赤い髪と、緑色の瞳をしたイケメンナイスミドルだったような・・・気がする。
少し首を傾げる私に「覚えていないのでしょ?」とリズにチクリと嫌味を言われる。
まぁ、正直、こんな状況になると思ってなかったから、あんまり人の顔は覚えていない。
でも、宰相とはこの間の婚約式でも顔を合わせているのでなんとなくだけど覚えていたのだ。
「彼女って・・・美人よね」
「そうですわね。この国で一、二位を争うくらいには美しいかと・・・」
言葉の端端に棘が見受けられるが、リズがそう言うのだから多分そうなのだろう。でも・・・
「一番美人なのはリズだけどね」
なんとはなしに漏れた本音に、リズはびくりと身体を揺らしたかと思うと、小さな溜息を吐いた。
「ん?リズ??」
私が無理くり顔を上げれば、ちょっと照れたような怒ったような複雑な表情をしたリズがいる。
「サーラ様は、本当に馬鹿ですわ」
誉めたのに貶される・・・ムッとはしたものの、「照れない照れない」と軽く返し、アリオス達に視線を戻した。
またもリズは、今度は明らかに呆れた様な溜息を吐きつつも、同じように彼等に視線を戻したのだった。
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