それぞれの愛のカタチ

ひとみん

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当然、二人の結婚は反対された。
カーネルの両親から反対されるのは覚悟していたが、まさかキャロルの両親からも反対されるとは思っていなかった。
侯爵家と縁ができれば、援助だってしてくれるはず。何故、反対するのかがキャロルにはわからない。
そして反対されればされるほど、反発したくなるというもので、結局は、周りが折れる形で結婚が許可された。

結婚をしたのだから、次期侯爵夫人である。当然、それにふさわしい教養は必要となる。
だが、本人にやる気がないのだから身に付くわけもない。
なんせ当人が「何でこんな事をしなくちゃいけないの!」と思っているのだから。根本的に彼女は楽して贅沢したいだけの愚者なのだ。

そんなキャロルは、フレデリカが嫌いだった。
厳しいから、というだけではない。
初めてフレデリカに会った時の衝撃は、未だに忘れることは無い。
そこにいるだけで、ひれ伏してしまいそうになるほどの威厳。
そして、女神と見まごうばかりの美貌。
それを鼻にかけるわけでもなく、話してみれはとても気さくで気遣いの人。

何もかもが次元が違い、自分がみじめに感じたと同時に、腹が立ってきたのを鮮明の覚えている。
クラブで働いていた時は、自分は女王だった。
自分に敵う人などいなかったのだから。
でも、それは貴族意識とは相反する平民感覚を武器に媚びて強請って掴んだ地位。
ライバルとしては、没落したため元貴族令嬢ではあったが、淑女教育を終えた完璧令嬢もいたが、人気はキャロルには今一歩及ばなかった。
だが、一定の固定客が付き、安定した人気を保持していた。
それに対しキャロルは、単に物珍しさからの浮動客がほとんどで、女王の様に君臨していたがその足元はいつも不安定だった。
正直、キャロルにとってその令嬢はとても邪魔な存在だった。
その令嬢の話し方、完璧と思われるその所作、時折見せる可愛らしい仕草がとても鼻につく。
そしてフレデリカを見ていると、無性にその令嬢を思い出し苛立ちが募る。
生まれながらの王族でもあるフレデリカの足元にも及ばない令嬢だったが、どこか根底にあるものが似ているのだ。
それが何なのか、キャロルにはわからないし、わかろうとも思わない。


フレデリカへの反発と、自分の思い通りに事を進めようとするキャロルに対し、周りは次第に必要最低限の接触しかしないようになっていった。
彼女にとってはうるさい事を言われなくなり、悠々自適に贅沢ができるのだから、願ってもない事。
客観的に見て、単に相手にされなくなっただけなのだが、それすらもポジティブに捉えていく。それがある意味、彼女の強みなのかもしれない。

そんな中でのキャロルの出産。
フレデリカによく似た長女を見た瞬間、嬲り殺してしまいたいほどの憎悪が湧いてきた。
その感情は今も変わらず、王都へ戻ってきたユスティアを見た瞬間から再燃したほど。

あの娘を殴った瞬間、とてもすっとしたわ。
ババァには何もできなかったから、あいつの代わりに痛めつけてもいいわよね。
本当、あの目といい仕草といい言葉づかいといい・・・腹が立つ・・・

力ない子供を殴った罪悪感の欠片すらない彼女は、あれ以来姿を見せない娘など気にも留めていない。
使用人達からカーネルに事件のあらましが告げられ、事実なのかと問われるも、いつもの癇癪で有耶無耶にした。
今まで三人で楽しく暮らしてきたのに、また邪魔者が現れたのだ。
それを排除して何が悪いのか。
自分のおこないがどれほど非道な事なのかもわかっていないキャロルは、ライト公爵家へと呼びつけられ今に至るのだった。

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