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レイシア王妃のお願い

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防音の魔法を起動させ、私側の従者をすべて退出させた。​

少女の従者はそのままにしている。​



「で、あなた、誰なの?」​

と私が単刀直入に聞くと。​



「私はボルクス。光の精霊さ。」​

とアイリスと同じ顔でフランクに答えた。​



「アイリスちゃんは無事なの?」​

と聞くとボルクスと名乗った精霊はちょっと困った顔になる。​



「無事と言えば無事だけど・・・。」​

と言葉を濁す。​



私は思わず、ボルクスの襟首を掴みそうになる・・・が、グッと我慢した。​



「まぁ、うん。意外だけど、アイリスのこと考えてくれている人間もいたんだなー。意外だ。」​

と嬉しそうに笑った。​

そして、一つの封筒を私に渡してきた。​



「血族以外の人間が気付いたら、これを渡せって言われているんだ。」​

とボルクスは言って、早く開けるように催促した。​



おずおずと受け取り、青い蝋で封されている手紙をペーパーナイフで開ける。​



そこには絶望的なことばかりが書かれていた。​



アイリスが、既に人間界にいないこと。​

アイリスの親がまるでアイリスに関心がなく、いろいろ訴えたが、なしの飛礫だったこと。​

アイリスが使用人によって、虐待されていたこと。​

それは性的な虐待も含まれていた。​

一歩間違えば、処女を奪われる寸前までいったことが書かれている。​

アイリスの私物を盗まれていることも書かれていた。​

それを親に言ったら、信じてもらえず、折檻されたことなども書かれている。​

王太子の婚約者になったとこで兄からの八つ当たりの内容も刻々と書かれていた。​



(なんで、私は気付いてあげれなかったんだろう。)​

と物凄く悲しくて悔しい気分になった。​



そして、最後に書かれていた文言に何とも言えない気分になる。​



この手紙を受け取ってくれた方へ。​

気付いてくれてありがとうございます。​



と。​



涙が、ボロボロと零れた。​



堪えようとしても涙が止まらず、ボルクスたちを混乱させてしまった。​



どのくらい泣いたかわからないが、ようやく涙が止まったころ、ボルクスが少し嬉しそうに私に言った。​



「アイリス、ちゃんと見てくれる人がいたんだね。私は10年経ってもアイリスがいなくなったの気付く人いないって思ってたけど、私節穴だったなー。」​

と。​



10年。​



10年経てば、16歳になり、アイリスが王家に入ってくる。​

思わず、ボルクスを睨む。​



「いやいや、王家に入って、いろいろしようって話じゃないよ?!落ち着いて!」​

とボルクスが慌てる。​



ふと、彼女の従者が一枚の紙を渡してきた。​



「預言書のようなもん。10年後に、アイリスが婚約破棄されて、国外追放になる。​

そして、その道中で暗殺されるということが書かれているんだ。​

ちなみに、暗殺指示者は、王太子だよ。」​



と事も無げに言った。​



思わず目を見開き、その紙をひったくって、読む。​



その予言書には聖女召喚のことや学園での出来事などいろいろと書かれていた。そして、アイリスが行っていない事件なのに、彼女のせいにされる旨も記されている。​



「ちなみに、この予言書のことはアイリスも知らない。アイリス・・・これ以上悲しませなくていいと思って。」​

とボルクスが悲しそうに言う。​



「もし、これが本当なら・・・私は一体・・・どうすればいいの?」​

と思わず、私がつぶやいてしまった。​



「どうもしなくていいよ。調べてみたら、王妃様、頑張ってるのに報われてないじゃん。​

今、従者が調べているんだけど、この国の王も側近も腐ってるね。どうしようもないよ?​

どう頑張っても、王妃様じゃ、王子様の教育どころか、会うことも難しいだろうし、更生は無理だ。​

いくら帝国の姫だからって、正妃なのに、なんでこんなことになってんだか。​



・・・人間ってよくわかんないよね。」​



とボルクスは心底理解できないという顔でいる。​



「私はね。10年経ってもアイリスの周りの人間が、誰一人アイリスがいなくなったことに気付かなかったら、この国を滅ぼして、精霊の国にしちゃおうとの命令を私の主にされていたんだ。」​

と言って、続けて、こう言った。​

「ちょっと残念だったなー。一日で気付かれるんだもの。」​

と言った。でも、その顔は残念そうと言う割に、少し嬉しそうだった。​



私は少し考える。​

そして、改めて、アイリスの最後の手紙を読み返す。​



少し読み返す度、目つきが悪くなっている気がする。​

「あ、待って待って、そこに出ている人間。アイリスに危害を加えていた人間は親兄弟以外はもう、交換しているから、虐めないでね!」​



私がやろうとしたことを察したのか、ボルクスは慌ててそう言った。​



私がやろうとしていたこと。​

それは、使用人たちへの復讐だった。​



「こ、交換?」​

と恐る恐る聞く。​



「もう、交換済みだよ。」​

とボルクスは繰り返した。​



そうだ。今日、アイリスと共に来た従者は突然質が上がっていた。​

侯爵家の従者はいつだって質が悪いのに。​



(10人ほど来ているアイリスの従者が全員交換されたということか?)​

と思っていたら、その心を読んだかのようにボルクスは​



「全員交換したから、安心していいよ。」​

とにこやかに笑った。​



(全員?全員ってなんだろう?)​

「侯爵家の従者、全員総入れ替えしているから、安心していいよ?って意味。あれ?違った?」​

とボルクスは不安そうに言った。​



「詠み間違えた?」​

と不安そうに聞く。​



「いえ、合ってるわ。ありがとう。」​

と答えると​

「どういたしまして!」​

とボルクスは答える。​



「ねぇ、ボルクス。お願いがあるの。」​

「うん!何でも言ってみて!アイリスのこと気づいてくれたあなたのお願いなら、ある程度聞くよ!」​

ボルクスはにこやかに笑って答えた。​



そして、私は一つの決断をした。​

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