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レイシア王妃と偽アイリス
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王国歴230年4月21日
私、レイシア・ホフマンはホフマン王国の王妃をしている。
政略により、クリスティナ帝国からここに嫁ぐことになり、早13年になる。
王子と王女の2人の子宝に恵まれたが、自分の子供に自ら会うことさえも制限され、見るからに教育されていない自分の子供を見るたびにため息が出る。
わがまま放題の子供を諫めるものが誰もいないのだ。
王に何度もお願いしたのだが、未だにまともな返答はない。
正直、帝国に戻りたいというのが本音だ。
最近では、召喚の儀とか言う訳のわからないものまで試そうとしている様子。
聖女を呼ぶんだと必死だ。
一応、何度も止めていはいるが・・・多分、無駄だろう。
思わず、ため息をつきながら、昨日、6歳を迎えたばかりの少女の王妃教育の為の準備をする。
(昨日はちょっと厳しくし過ぎたなぁ。所作を間違えた時に思わず、扇で叩いてしまった。傷薬は塗ったが、腫れが引いていないようなら、湿布をしなくては。。)
王妃教育を行っている少女は、アイリス・レミリアと言う。
レミリア侯爵家の長女だ。
金髪碧眼でとても優しく賢い少女。
彼女が自分の子供ならいいのにと私は常々思う。
10時の鐘が鳴り、アイリス到着の知らせが届く。
従者と共に中庭に向かう。
既に到着していたアイリスが、見事なカテーシーで迎えてくれ、挨拶をした。
教えたとおりの見事なカテーシーに思わず、笑みがこぼれる。
貴族らしくないので、扇で隠すが、内心教えたとこをちゃんとやってくれるこの子は本当にいい子だなぁとしみじみ思う。
2、3会話をして、アイリスの右手を見た。
あれから手当てをしていない少し腫れた右手があった。
(あそこの使用人は本当に何をしているんだろうか?あれから手当てをしていないのか?私は従者に言ったんだが・・・。またか。。)
アイリスの家・・・レミリア侯爵家の家であるにも関わらず、使用人の質が悪い。
あそこは、優秀な血族で使用人もまとめているとか侯爵は言っていたが、血統だけのボンクラしかいないんではなかろうかと思う。
テーブルに案内し、アイリスの右手に湿布をし、包帯で固定する。
王妃自ら、そんなことを!とか言われるが、無視した。
いずれ、この娘が私の義理の娘になる、その時まで私がちゃんと見てあげよう。
そう、心に誓おうとして、違和感に気付く。
(アイリスは、こんな顔の子だっただろうか?)
アイリスはいつものような理想的な笑顔と所作でこっちを見ている。
(なんだろう?この違和感。)
アイリスが困ったように焦れ始めるが、それでもジッとアイリスを見続けた。
そして、アイリスの父である侯爵が、中庭から見える建物の2階の廊下を渡っているのをアイリスが気付き、一瞬、表情が変わった時に気付いた。
(この子、アイリスじゃない!!!!)
それは、怖気にも似た感覚だった。
見た目も声も雰囲気も彼女そのものなのに、全く違う生き物がそこに居て、大事なアイリスに成り代わっているのだ。
今度は怒りの感情。
しかし、表情には出さないように努力した。
ところが、目の前のアイリスのような少女は、私が気付いたことに気付いたらしい。
意外そうに目を見開き、周りの従者に手で合図した。
従者はうやうやしく、礼を取り、数人、中庭から離れた。
「・・・アイリスちゃん、今日は私の部屋にある珍しい花を見せたいの。来てくれるかしら?」
と私が言うと、私の方の従者がちょっと慌てだす。
それを私は手で合図し、専属の侍女に私室の人払いと防音の魔道具の準備をお願いする。
「はい、王妃様。ぜひ。」
アイリスのようなものは、そう言って、微笑む。
私は、心の底からゾッとしてしまった。
私、レイシア・ホフマンはホフマン王国の王妃をしている。
政略により、クリスティナ帝国からここに嫁ぐことになり、早13年になる。
王子と王女の2人の子宝に恵まれたが、自分の子供に自ら会うことさえも制限され、見るからに教育されていない自分の子供を見るたびにため息が出る。
わがまま放題の子供を諫めるものが誰もいないのだ。
王に何度もお願いしたのだが、未だにまともな返答はない。
正直、帝国に戻りたいというのが本音だ。
最近では、召喚の儀とか言う訳のわからないものまで試そうとしている様子。
聖女を呼ぶんだと必死だ。
一応、何度も止めていはいるが・・・多分、無駄だろう。
思わず、ため息をつきながら、昨日、6歳を迎えたばかりの少女の王妃教育の為の準備をする。
(昨日はちょっと厳しくし過ぎたなぁ。所作を間違えた時に思わず、扇で叩いてしまった。傷薬は塗ったが、腫れが引いていないようなら、湿布をしなくては。。)
王妃教育を行っている少女は、アイリス・レミリアと言う。
レミリア侯爵家の長女だ。
金髪碧眼でとても優しく賢い少女。
彼女が自分の子供ならいいのにと私は常々思う。
10時の鐘が鳴り、アイリス到着の知らせが届く。
従者と共に中庭に向かう。
既に到着していたアイリスが、見事なカテーシーで迎えてくれ、挨拶をした。
教えたとおりの見事なカテーシーに思わず、笑みがこぼれる。
貴族らしくないので、扇で隠すが、内心教えたとこをちゃんとやってくれるこの子は本当にいい子だなぁとしみじみ思う。
2、3会話をして、アイリスの右手を見た。
あれから手当てをしていない少し腫れた右手があった。
(あそこの使用人は本当に何をしているんだろうか?あれから手当てをしていないのか?私は従者に言ったんだが・・・。またか。。)
アイリスの家・・・レミリア侯爵家の家であるにも関わらず、使用人の質が悪い。
あそこは、優秀な血族で使用人もまとめているとか侯爵は言っていたが、血統だけのボンクラしかいないんではなかろうかと思う。
テーブルに案内し、アイリスの右手に湿布をし、包帯で固定する。
王妃自ら、そんなことを!とか言われるが、無視した。
いずれ、この娘が私の義理の娘になる、その時まで私がちゃんと見てあげよう。
そう、心に誓おうとして、違和感に気付く。
(アイリスは、こんな顔の子だっただろうか?)
アイリスはいつものような理想的な笑顔と所作でこっちを見ている。
(なんだろう?この違和感。)
アイリスが困ったように焦れ始めるが、それでもジッとアイリスを見続けた。
そして、アイリスの父である侯爵が、中庭から見える建物の2階の廊下を渡っているのをアイリスが気付き、一瞬、表情が変わった時に気付いた。
(この子、アイリスじゃない!!!!)
それは、怖気にも似た感覚だった。
見た目も声も雰囲気も彼女そのものなのに、全く違う生き物がそこに居て、大事なアイリスに成り代わっているのだ。
今度は怒りの感情。
しかし、表情には出さないように努力した。
ところが、目の前のアイリスのような少女は、私が気付いたことに気付いたらしい。
意外そうに目を見開き、周りの従者に手で合図した。
従者はうやうやしく、礼を取り、数人、中庭から離れた。
「・・・アイリスちゃん、今日は私の部屋にある珍しい花を見せたいの。来てくれるかしら?」
と私が言うと、私の方の従者がちょっと慌てだす。
それを私は手で合図し、専属の侍女に私室の人払いと防音の魔道具の準備をお願いする。
「はい、王妃様。ぜひ。」
アイリスのようなものは、そう言って、微笑む。
私は、心の底からゾッとしてしまった。
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