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序章 新たな火種
01 “第二次大陸間戦争”勃発
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序章
男が目覚めると、女が自分を見つめていることに気付いた。
いや、見つめているというよりは睨み付けているといったほうが正確な表現だろう。
その美しい顔と青い瞳に、明確な怒りの色を帯びて男をにらみ付けていた。
男の名は“グレン・バルザード”
まだ40代ながら、肩までの伸ばし、後ろで一つに結われたその髪の毛は、量こそ豊かながら一本残らず真っ白に染まっている。
その傷だらけの顔面は、シワこそ丸で無いが無精髭で覆われていた。
「閣下...この非常時によくもまぁ・・・本当に夢の世界に旅立つのがお好きですのね?
いっそのこと本当に軍を飛び出して自分探しでもされては如何ですか?」
会話早々に女が強烈な嫌味をぶつける。
「ちっ、お前かよ・・・最低の寝起きだよ、失せろ」
不愉快なモーニングコールをぶつけられたグレンは不機嫌を隠そうともしない。
「閣下!」
その余りにぶしつけな態度に思わず女も声を荒げる。
女の名は“エミリア”グレンの部下と思われる、20も半ばの、絶世の美女と呼ぶに相応しい容貌の女である。
「ああ・・悪かったよ、お前らが前線と西方軍令部を掛けづり回っ取る間に眠りこけてたのは確かに
俺が悪い・・・それでいいか?」
明らかに自分が悪いが、大人しく謝罪するのも癪だと感じたグレンは不貞腐れたような態度を見せる。
「ご自分に非があると感じておいでならば、もう少し部下に感謝の気持ちを見せても
罰は当たりませんよ?そもそも閣下には・・・」
「分かった分かった悪かった!申し訳なかった!以後気をつけさせて頂きます」
話が長くなる気配がしたためグレンは強引に話を打ち切った。
「で?」
エミリアは明らかに納得がいかないといった表情をしていたが、強引に切り替えることにした。
「・・・・・・大公国が動きました。我が國の国境線を犯し、侵攻を開始したとの情報が・・・」
「やっぱり来たか、案外のんびりだったの?第二軍団の管内か、ヴェルトレンに指示を飛ばせ
俺も準備が出来次第動くと伝えろ。アリア、お前は第五師団連れて先に応援に行け」
「はっ、デュランとランドにも至急伝えます」
アリアと呼ばれた女は、指示を受けると同時に部屋を飛び出していった。
「見ろよ、健気だろ?アリアは。お前もアレぐらいの可愛げを見せた方が出世できるぞ?
西方軍にいる内は」
“はっはっはっはぁ”と乾いた笑い声が二人だけの部屋に響いた。
その完全になめ腐った態度に、エミリアの堪忍袋は限界を迎えた。
「可愛げで戦争が出来るかボケ!いいからさっさと支度しろ!お前、机で寝ながら勤務時間
を過ごして國から給金貰うとか、國民と、西方軍と、何より目の前の部下舐めてんのか!
立てや!動け!行くぞ!」
そうまくし立てるや否や、エミリアはグレンの襟首を掴むと強引に部屋の外に連れ出したのだった。
グレンよりも幾分背が高いエミリアに、半ば摘み上げられるような形だった。
親子ほどに離れた二人のこのやり取りは、傍から見ると酷く滑稽だっただろう。
男が目覚めると、女が自分を見つめていることに気付いた。
いや、見つめているというよりは睨み付けているといったほうが正確な表現だろう。
その美しい顔と青い瞳に、明確な怒りの色を帯びて男をにらみ付けていた。
男の名は“グレン・バルザード”
まだ40代ながら、肩までの伸ばし、後ろで一つに結われたその髪の毛は、量こそ豊かながら一本残らず真っ白に染まっている。
その傷だらけの顔面は、シワこそ丸で無いが無精髭で覆われていた。
「閣下...この非常時によくもまぁ・・・本当に夢の世界に旅立つのがお好きですのね?
いっそのこと本当に軍を飛び出して自分探しでもされては如何ですか?」
会話早々に女が強烈な嫌味をぶつける。
「ちっ、お前かよ・・・最低の寝起きだよ、失せろ」
不愉快なモーニングコールをぶつけられたグレンは不機嫌を隠そうともしない。
「閣下!」
その余りにぶしつけな態度に思わず女も声を荒げる。
女の名は“エミリア”グレンの部下と思われる、20も半ばの、絶世の美女と呼ぶに相応しい容貌の女である。
「ああ・・悪かったよ、お前らが前線と西方軍令部を掛けづり回っ取る間に眠りこけてたのは確かに
俺が悪い・・・それでいいか?」
明らかに自分が悪いが、大人しく謝罪するのも癪だと感じたグレンは不貞腐れたような態度を見せる。
「ご自分に非があると感じておいでならば、もう少し部下に感謝の気持ちを見せても
罰は当たりませんよ?そもそも閣下には・・・」
「分かった分かった悪かった!申し訳なかった!以後気をつけさせて頂きます」
話が長くなる気配がしたためグレンは強引に話を打ち切った。
「で?」
エミリアは明らかに納得がいかないといった表情をしていたが、強引に切り替えることにした。
「・・・・・・大公国が動きました。我が國の国境線を犯し、侵攻を開始したとの情報が・・・」
「やっぱり来たか、案外のんびりだったの?第二軍団の管内か、ヴェルトレンに指示を飛ばせ
俺も準備が出来次第動くと伝えろ。アリア、お前は第五師団連れて先に応援に行け」
「はっ、デュランとランドにも至急伝えます」
アリアと呼ばれた女は、指示を受けると同時に部屋を飛び出していった。
「見ろよ、健気だろ?アリアは。お前もアレぐらいの可愛げを見せた方が出世できるぞ?
西方軍にいる内は」
“はっはっはっはぁ”と乾いた笑い声が二人だけの部屋に響いた。
その完全になめ腐った態度に、エミリアの堪忍袋は限界を迎えた。
「可愛げで戦争が出来るかボケ!いいからさっさと支度しろ!お前、机で寝ながら勤務時間
を過ごして國から給金貰うとか、國民と、西方軍と、何より目の前の部下舐めてんのか!
立てや!動け!行くぞ!」
そうまくし立てるや否や、エミリアはグレンの襟首を掴むと強引に部屋の外に連れ出したのだった。
グレンよりも幾分背が高いエミリアに、半ば摘み上げられるような形だった。
親子ほどに離れた二人のこのやり取りは、傍から見ると酷く滑稽だっただろう。
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